気付いたら、豪傑系悪役令嬢になっていた SE
閑話 うつし世は夢
朝。
携帯電話から流れるゲームミュージックで目を覚まし、私はベッドから起き上がった。
適当に髪を整えて制服に着替えると、階段を下りていく。
下りた先のリビングには、弟がいた。
弟は制服姿の上にエプロンを着け、キッチンで朝食を作っている。
うちの両親は共働きで、忙しさから朝が早い。
そのため、朝食は弟が作っていた。
私と妹?
弟の作った物の方が美味しいのに?
「おはよう」
「おはよう。姉貴」
私は弟と挨拶を交わし、テーブルに着いた。
「あっちゃん、朝ごはんまだかかる?」
「ちょっとは手伝えよ」
溜息混じりに、弟は答えた。
私は笑ってそれを誤魔化す。
リビングに、あくびをしながら妹も下りてくる。
「おはよう。アキ」
「おはよう、お姉ちゃん」
挨拶を交わすと、妹も私の隣に着いた。
バレーボール部に在籍する妹は私よりも背が高くて、席についても私はその顔を見上げなければ見る事ができなかった。
ちなみに、弟も私より背が高い。
ほどなくして、弟が朝食を運んでくる。
一緒に朝食を食べ始めた。
朝食を食べ終えて、寝起きでぼんやりとしていた頭がはっきりとしてくる。
「今日は何時に帰ってくるんだ?」
弟が訊ねた。
「私は学校が終わったらすぐ帰ってくるよ」
私は答える。
「大会近いから、アードラーの調整がしたい」
「ゲームか?」
「イグザクトリィ」
答えると、弟は呆れたように溜息を吐いた。
「お兄ちゃん、私は部活で遅くなるよ」
妹が答える。
「おう。迎えに行ってやろうか?」
「いいの? お願い。うちの部にはお兄ちゃんを狙う女豹が多いから、来てくれると私の待遇が良くなる」
「行きたくなくなった……」
「だーめ。申し出たのはそっちなんだから」
「わかったよ」
弟妹のやりとりを聞いていると、楽しくなって笑いが漏れた。
朝食を取ると、学校へ向かう。
クラスメイトと挨拶を交わし、授業を受ける。
昼になって、屋上へ向かった。
そこには、取り分け仲の良い友人達がいた。
「あ、クロ。おっすおっす」
「おっすおっす」
「ヘイヘイ、シスター! 今夜、あたしんちでオールナイトパーティしない?」
何でノリがアメリカンなの?
「いきなり何さ?」
訊ねると、別の友人が補足する。
「今日は、両親が友達と旅行に行ってていないんだって」
「私寂しいの! 寂しんボーイなの!」
そういう事か。
「ガールでしょうよ」
「で、どう? 紅茶キメて、コイバナにパジャマパーティ、あとクソ映画鑑賞して、ハイテンションナイトを楽しもう!」
「とか言って、最終的に麻雀でしょう?」
「楽しけりゃいいでしょうよ」
まぁ、楽しそうではある。
どうしよっかなぁ。
ゲームは泊まりに行ってもできるしなぁ。
ただ、来る人が四人以下だったら麻雀に参加させられそうで、アードラーの調整ができないだろうしなぁ。
うーん。
……行こうか。
一人でのゲームはいつでもできる。
こういう時は、一人でできない事を優先するべきだ。
そういう楽しさは、いつでも味わえるものじゃない。
機会があるなら大切にしないと。
「映画はサメ映画なんだろうね?」
「へへ、もちろんさ」
「オッケー。行くよ」
「やった!」
友達はガッツポーズを取った。
「ヤッチも来るかな?」
ヤッチはヴィーナスファンタジア(格ゲー)ができるので、彼女が来るなら練習もはかどる。
前、上手いイノス使いからボコボコにされたので対策を練りたい。
アードラーの特ステの終わりを見切っての位置調整が絶妙で、コマ投げとリーチの長い強Pを的確に使い分けてこちらの行動を潰す様は芸術的なほど見事だった。
ヤッチにそんな神テクニックを期待するわけではないが、投げ範囲を把握して避ける練習はできるだろう。
「さっき聞いたけど、来るって」
「そう。楽しみだな」
友達と談笑しつつ、私は屋上のフェンスに背中を預けた。
針金を組み合わせたフェンス。
私の体重を受けて沈み込む感触が、私を押し返す。
そのはずだった。
いつもならあるそれが、その日は無かった。
ガタン、と音が鳴った。
次いで、私の視界が回る。
私を押し留める物は何もなかった。
重力に引かれるまま、私は……。
そんな私に向けて、必死の形相で手を伸ばす友人が見えた。
手を伸ばす。
でも、届かない。
その姿が離れて行き……。
ああ、そうだったな。
そうして私は、気付いたら悪役令嬢になっていた。
私、クロエ・ビッテンフェルトは朝日の光に目を覚ました。
あれは、夢だ。
私が死んだ日の夢……。
そして、私はこの世界のクロエとして生まれ変わったんだ。
漠然と、屋上から落ちて死んだという事は覚えていた。
でも、細部を思い出したのは初めてだった。
「約束、守れなかったな……」
学校が終わったらすぐ帰るって約束も、泊まりに行くって約束も……。
家族もみんなも、私が死んで悲しんだだろうか?
だとすれば、悪い事をしたな。
せめて、今ここで元気にしている事を伝えられたらいいと思うんだけど、それもできないからね。
「んー、起きよ」
私はベッドから起き上がって、身支度を整える。
食堂へ向かった。
「これから学校。朝やる事は、今も前世と変わらないんだよなぁ」
食堂には、両親がいた。
母上手作りの料理が並んでいる。
朝だから軽めのものばかりだけれど、品数は多い。
「おはよう。パパ。ママ」
「おはよう」
「おはよう」
挨拶を交わす。
席に着いて、朝食を食べる。
前世では多くの大事な人を残して亡くなってしまったけれど、もしかしたら今世でもそうなってしまうかもしれないんだよね。
私は前世で命を落とし、この世界に転生した。
この世界は私のよく知る『ヴィーナスファンタジア』の世界で、私はそのゲームの登場キャラクターであるクロエ・ビッテンフェルトになっていた。
そしてこのクロエは、ゲーム展開によっては命を落とす可能性があった。
「ねぇ」
食べる手を止めて、私は二人に声をかける。
「何だ?」
「もし、私が二人よりも先に死んだら、悲しい?」
そう訊ねると、父上は不機嫌そうな表情を作り、母上はかすかに眉を顰めた。
「何を言っているんだ!」
「冗談でもそんな事を言わないでちょうだい」
二人は私の問いに答えず、ただ強い口調でそう言った。
父上がそういう声を出す事は珍しくないけれど、母上がこうも感情をあらわにする事は珍しい事だ。
「うん。ごめん。もう、言わない」
私は謝って、申し訳なさから顔を俯けた。
私の放った言葉は、そういった感情を引き出すものだったのだろう。
「何かあったのか?」
父上に問われて、私は逡巡する。
少し考えて、答える事にした。
「……夢を、見たんです。私が死ぬ夢を。それで、残された人達がどんな気持ちになるのか、それが気になって……」
「そうか。俺もそういう夢は見た事がある」
「父上も?」
「戦場に出た時の夢だ。そこで俺は、敵に返り討ちに合って死ぬんだ。だからわかる。そういう夢を見ると、不安になるからな」
当たり前の事だけれど、父上も不安になる事があるんだな。
父上には何も恐ろしい事がないのではないかと思っていた。
「もしかしたら、俺はあの場で死んだのかもしれない。いや、死に行こうとしているのかもしれない。その間際に見る夢こそが、今俺を取り巻く現実なのかもしれない。そう、思ってしまう事がある」
ああ、この気持ちはわかる。
私も前世の記憶を取り戻した時、似たような事を思ったから。
この世界は、屋上から落ちた私が病院のベッドで見ている夢なんじゃないか、と。
父上の言う事は、それと同じだろう。
うつし世はゆめ、夜の夢こそまこと。
そんな言葉を思い出す。
「経験から言わせてもらえば、そんな考えは何か別の事で塗り潰してしまうべきだ」
「はい」
そんな時、メイドの一人が食堂へ入って来た。
たくましい傷だらけの二の腕がチャームポイントの人だ。
この家の使用人は、父上が戦場で雇っていた元傭兵の人が多い。
「お嬢様。アルディリア様とアードラー様が迎えに来てくださいました」
「ありがとう」
私は料理を急いで平らげる。
「いってきます」
「ああ」
「いってらっしゃい」
両親と挨拶を交わし、玄関へ向かう。
たとえこの世界で同じ事があっても、両親を悲しませる事はないだろうな。
フェンス諸共に落ちようが、今の私なら無事で済む気がする。
むしろ今なら、高層ビルから落ちても車の上を狙って着地し、衝撃を和らげるという事もできそうだ。
玄関前に停まっていた馬車へ乗車する。
中では、アルディリアとアードラーが隣り合って座っていた。
仲良いね。
まぁいいけど。
「おはよう。二人共。おっすおっす」
「「おはよう。何、その挨拶?」」
二人の言葉が重なる。
それに気付いて、二人は顔を見合わせた。
仲良いね。
「ちょっとね。昔の事を思い出して。そういう事を言い合う友達が、昔居たんだ」
「誰の事?」
神妙な顔でアードラーが訊ねてくる。
「二人の知らない人だよ」
「ふぅん」
アードラーは素っ気無く言い、アルディリアは首を捻った。
幼馴染の自分が知らないという部分にひっかかったのだろう。
そんな二人の様子に、笑みを浮かべる。
別の事を考えて、嫌な事は忘れてしまう。
そうだな。
この二人と入れば、そういう事はすぐに忘れてしまえそうだ。
そう思える程に、私は二人と一緒にいる時間を尊く思っている。
できる事なら、ずっと三人で居たい。
これから先、何があっても……。
携帯電話から流れるゲームミュージックで目を覚まし、私はベッドから起き上がった。
適当に髪を整えて制服に着替えると、階段を下りていく。
下りた先のリビングには、弟がいた。
弟は制服姿の上にエプロンを着け、キッチンで朝食を作っている。
うちの両親は共働きで、忙しさから朝が早い。
そのため、朝食は弟が作っていた。
私と妹?
弟の作った物の方が美味しいのに?
「おはよう」
「おはよう。姉貴」
私は弟と挨拶を交わし、テーブルに着いた。
「あっちゃん、朝ごはんまだかかる?」
「ちょっとは手伝えよ」
溜息混じりに、弟は答えた。
私は笑ってそれを誤魔化す。
リビングに、あくびをしながら妹も下りてくる。
「おはよう。アキ」
「おはよう、お姉ちゃん」
挨拶を交わすと、妹も私の隣に着いた。
バレーボール部に在籍する妹は私よりも背が高くて、席についても私はその顔を見上げなければ見る事ができなかった。
ちなみに、弟も私より背が高い。
ほどなくして、弟が朝食を運んでくる。
一緒に朝食を食べ始めた。
朝食を食べ終えて、寝起きでぼんやりとしていた頭がはっきりとしてくる。
「今日は何時に帰ってくるんだ?」
弟が訊ねた。
「私は学校が終わったらすぐ帰ってくるよ」
私は答える。
「大会近いから、アードラーの調整がしたい」
「ゲームか?」
「イグザクトリィ」
答えると、弟は呆れたように溜息を吐いた。
「お兄ちゃん、私は部活で遅くなるよ」
妹が答える。
「おう。迎えに行ってやろうか?」
「いいの? お願い。うちの部にはお兄ちゃんを狙う女豹が多いから、来てくれると私の待遇が良くなる」
「行きたくなくなった……」
「だーめ。申し出たのはそっちなんだから」
「わかったよ」
弟妹のやりとりを聞いていると、楽しくなって笑いが漏れた。
朝食を取ると、学校へ向かう。
クラスメイトと挨拶を交わし、授業を受ける。
昼になって、屋上へ向かった。
そこには、取り分け仲の良い友人達がいた。
「あ、クロ。おっすおっす」
「おっすおっす」
「ヘイヘイ、シスター! 今夜、あたしんちでオールナイトパーティしない?」
何でノリがアメリカンなの?
「いきなり何さ?」
訊ねると、別の友人が補足する。
「今日は、両親が友達と旅行に行ってていないんだって」
「私寂しいの! 寂しんボーイなの!」
そういう事か。
「ガールでしょうよ」
「で、どう? 紅茶キメて、コイバナにパジャマパーティ、あとクソ映画鑑賞して、ハイテンションナイトを楽しもう!」
「とか言って、最終的に麻雀でしょう?」
「楽しけりゃいいでしょうよ」
まぁ、楽しそうではある。
どうしよっかなぁ。
ゲームは泊まりに行ってもできるしなぁ。
ただ、来る人が四人以下だったら麻雀に参加させられそうで、アードラーの調整ができないだろうしなぁ。
うーん。
……行こうか。
一人でのゲームはいつでもできる。
こういう時は、一人でできない事を優先するべきだ。
そういう楽しさは、いつでも味わえるものじゃない。
機会があるなら大切にしないと。
「映画はサメ映画なんだろうね?」
「へへ、もちろんさ」
「オッケー。行くよ」
「やった!」
友達はガッツポーズを取った。
「ヤッチも来るかな?」
ヤッチはヴィーナスファンタジア(格ゲー)ができるので、彼女が来るなら練習もはかどる。
前、上手いイノス使いからボコボコにされたので対策を練りたい。
アードラーの特ステの終わりを見切っての位置調整が絶妙で、コマ投げとリーチの長い強Pを的確に使い分けてこちらの行動を潰す様は芸術的なほど見事だった。
ヤッチにそんな神テクニックを期待するわけではないが、投げ範囲を把握して避ける練習はできるだろう。
「さっき聞いたけど、来るって」
「そう。楽しみだな」
友達と談笑しつつ、私は屋上のフェンスに背中を預けた。
針金を組み合わせたフェンス。
私の体重を受けて沈み込む感触が、私を押し返す。
そのはずだった。
いつもならあるそれが、その日は無かった。
ガタン、と音が鳴った。
次いで、私の視界が回る。
私を押し留める物は何もなかった。
重力に引かれるまま、私は……。
そんな私に向けて、必死の形相で手を伸ばす友人が見えた。
手を伸ばす。
でも、届かない。
その姿が離れて行き……。
ああ、そうだったな。
そうして私は、気付いたら悪役令嬢になっていた。
私、クロエ・ビッテンフェルトは朝日の光に目を覚ました。
あれは、夢だ。
私が死んだ日の夢……。
そして、私はこの世界のクロエとして生まれ変わったんだ。
漠然と、屋上から落ちて死んだという事は覚えていた。
でも、細部を思い出したのは初めてだった。
「約束、守れなかったな……」
学校が終わったらすぐ帰るって約束も、泊まりに行くって約束も……。
家族もみんなも、私が死んで悲しんだだろうか?
だとすれば、悪い事をしたな。
せめて、今ここで元気にしている事を伝えられたらいいと思うんだけど、それもできないからね。
「んー、起きよ」
私はベッドから起き上がって、身支度を整える。
食堂へ向かった。
「これから学校。朝やる事は、今も前世と変わらないんだよなぁ」
食堂には、両親がいた。
母上手作りの料理が並んでいる。
朝だから軽めのものばかりだけれど、品数は多い。
「おはよう。パパ。ママ」
「おはよう」
「おはよう」
挨拶を交わす。
席に着いて、朝食を食べる。
前世では多くの大事な人を残して亡くなってしまったけれど、もしかしたら今世でもそうなってしまうかもしれないんだよね。
私は前世で命を落とし、この世界に転生した。
この世界は私のよく知る『ヴィーナスファンタジア』の世界で、私はそのゲームの登場キャラクターであるクロエ・ビッテンフェルトになっていた。
そしてこのクロエは、ゲーム展開によっては命を落とす可能性があった。
「ねぇ」
食べる手を止めて、私は二人に声をかける。
「何だ?」
「もし、私が二人よりも先に死んだら、悲しい?」
そう訊ねると、父上は不機嫌そうな表情を作り、母上はかすかに眉を顰めた。
「何を言っているんだ!」
「冗談でもそんな事を言わないでちょうだい」
二人は私の問いに答えず、ただ強い口調でそう言った。
父上がそういう声を出す事は珍しくないけれど、母上がこうも感情をあらわにする事は珍しい事だ。
「うん。ごめん。もう、言わない」
私は謝って、申し訳なさから顔を俯けた。
私の放った言葉は、そういった感情を引き出すものだったのだろう。
「何かあったのか?」
父上に問われて、私は逡巡する。
少し考えて、答える事にした。
「……夢を、見たんです。私が死ぬ夢を。それで、残された人達がどんな気持ちになるのか、それが気になって……」
「そうか。俺もそういう夢は見た事がある」
「父上も?」
「戦場に出た時の夢だ。そこで俺は、敵に返り討ちに合って死ぬんだ。だからわかる。そういう夢を見ると、不安になるからな」
当たり前の事だけれど、父上も不安になる事があるんだな。
父上には何も恐ろしい事がないのではないかと思っていた。
「もしかしたら、俺はあの場で死んだのかもしれない。いや、死に行こうとしているのかもしれない。その間際に見る夢こそが、今俺を取り巻く現実なのかもしれない。そう、思ってしまう事がある」
ああ、この気持ちはわかる。
私も前世の記憶を取り戻した時、似たような事を思ったから。
この世界は、屋上から落ちた私が病院のベッドで見ている夢なんじゃないか、と。
父上の言う事は、それと同じだろう。
うつし世はゆめ、夜の夢こそまこと。
そんな言葉を思い出す。
「経験から言わせてもらえば、そんな考えは何か別の事で塗り潰してしまうべきだ」
「はい」
そんな時、メイドの一人が食堂へ入って来た。
たくましい傷だらけの二の腕がチャームポイントの人だ。
この家の使用人は、父上が戦場で雇っていた元傭兵の人が多い。
「お嬢様。アルディリア様とアードラー様が迎えに来てくださいました」
「ありがとう」
私は料理を急いで平らげる。
「いってきます」
「ああ」
「いってらっしゃい」
両親と挨拶を交わし、玄関へ向かう。
たとえこの世界で同じ事があっても、両親を悲しませる事はないだろうな。
フェンス諸共に落ちようが、今の私なら無事で済む気がする。
むしろ今なら、高層ビルから落ちても車の上を狙って着地し、衝撃を和らげるという事もできそうだ。
玄関前に停まっていた馬車へ乗車する。
中では、アルディリアとアードラーが隣り合って座っていた。
仲良いね。
まぁいいけど。
「おはよう。二人共。おっすおっす」
「「おはよう。何、その挨拶?」」
二人の言葉が重なる。
それに気付いて、二人は顔を見合わせた。
仲良いね。
「ちょっとね。昔の事を思い出して。そういう事を言い合う友達が、昔居たんだ」
「誰の事?」
神妙な顔でアードラーが訊ねてくる。
「二人の知らない人だよ」
「ふぅん」
アードラーは素っ気無く言い、アルディリアは首を捻った。
幼馴染の自分が知らないという部分にひっかかったのだろう。
そんな二人の様子に、笑みを浮かべる。
別の事を考えて、嫌な事は忘れてしまう。
そうだな。
この二人と入れば、そういう事はすぐに忘れてしまえそうだ。
そう思える程に、私は二人と一緒にいる時間を尊く思っている。
できる事なら、ずっと三人で居たい。
これから先、何があっても……。
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