気付いたら、豪傑系悪役令嬢になっていた SE
六話 そして運命の舞台へ
それから、父上と鍛錬を積み、アルディリアと友好を育み、三年の月日が流れた。
私は前よりも強くなり、トリッキーな戦い方をしなくても父上と渡り合えるようになった。
これはアクションゲームごっこで培った戦い方を実用的になるようアレンジし、自分の技として昇華させた結果だ。
とはいえ、父上に易々と勝てるようになったわけでもない。
父も自己鍛錬に打ち込んでいるらしく、今ではほとんど五分五分の勝率だ。
アルディリアとはさらに打ち解けて、今では砕けた口調で話すようになった。
そして私の身長はメキメキと伸び、手足はスラリと長く、顔つきは全体的に鋭くなり、腹筋がバキバキに割れた。
背筋がロールシャッハテストの模様みたいに盛り上がるし、肩甲骨も自由自在に動かせる。
ちょっと女の子としては嬉しくない成長を遂げたわけである。
ただ、その姿はゲームに登場するクロエそのものだった。
つまり私は、ついに運命の舞台へ上がる事になったのである。
王立シュエット魔法学園。
女神の名を冠した、魔法と知と教養を学ぶための学び舎。
私は今日、ここへ入学する事になっていた。
それは私が、死の運命への一歩を踏み出す事を意味していた。
この学園で私は、主人公と出会う事になる。
そして主人公がアルディリアとのルートへ突入した場合、戦争が勃発。
私は戦場で凄惨な死を迎える事になるのである。
私はその運命の入り口に立っている。
これから始まるであろうゲーム本編の舞台を前に、私は緊張を覚えていた。
場所は学園の講堂。
そこで入学式が執り行われていた。
広々とした室内には、王国中の貴族の子弟達が並べられた椅子に座って前方の壇上を向いていた。
私もその中の一人として席に座っており、隣にはアルディリアが座っている。
皆、晴れの舞台に気合の入った礼服で自身を着飾っている。
ちなみに私は父が用意してくれた黒い軍服姿だ。
もしかして、私のイメージカラーが黒なのは父上の趣味だからなのだろうか?
洋風だけど、どことなく日本の学生服に見えなくもない。学ランの方だけど。
粛々とした様子で耳を傾けるのは、壇上の人物の言葉。
今、壇上では入学した学生の代表がスピーチしている最中だった。
金色の髪。青い目。柔らかく優しげな表情。
白を基調とし、金の刺繍が施された制服に身を包む彼の言葉には、王族特有の気品が滲み出ているようだった。
彼の名はリオン・アールネス。
この国の第一王子である。
「王子様、格好良いね」
「そうだね」
「憧れちゃうなぁ」
アルディリアは顔を上気させて呟く。
アルディリア、本当に女の子だったりしないよね?
実は双子で、病弱な兄のフリをする妹とかいう設定じゃないよね?
まぁ、それはいいとして。
今はリオン王子の事だ。
なんと彼は今年十五歳になり、この魔法学園に入学する事となったのだ。
光栄な事に今年度の入学者は彼の同級生になれるという事だ。
なんという偶然だろー。
なんてね。
実の所、私は彼と同級生になる事を生まれる前から知っていたのだ。
生まれてからはしばらく忘れていたけど。
何故知っていたかと言えば、彼が攻略対象の一人だからだ。
リオン・アールネスは物語のメインに位置するキャラクターである。
パッケージでは堂々と正面を飾り、シナリオも一番タイトルに沿った内容となっている。
というか、彼のシナリオ以外はタイトルを無視していると言って良い。
ちなみに、パッケージの裏にはライバル令嬢達のシルエットが印刷されており、それをバックにゲーム画面とあらすじが載っている。
私の愛用キャラが真ん中なので、目に入るとちょっと嬉しい。
「私は女神の膝元たるこの学園において、みなさんと共に机を並べられる事を誇りに思います。これからの三年間、よろしくお願いします」
王子が礼をすると、生徒からも教師からも拍手が上がった。
私も一応、拍手する。
本来のクロエなら腕組みしてふんぞり返ってそうだが、私はそんな世紀末覇者みたいな雰囲気は出せない。
そうして、王子のスピーチが終わると入学式は幕を閉じた。
それからクラス分け表を見てこれから一年間通う教室に向かう。
残念ながら、アルディリアは別のクラスになってしまった。
彼以外の貴族とは交流がないので、見知った顔がいなくてちょっと心細い。
その後、教師の進行で席順を決めてから、自己紹介をした。
「クロエ・ビッテンフェルトです。よろしくお願いします」
笑顔で挨拶する。
「あれが家では「パパ、だーい好き」と父親に甘えているという、あの……」
うおおおおおぉっ!
なんかヒソヒソと聞き捨てならない言葉が聞こえてくるんですが!?
ヤメロォ!
そんな目で私を見るな!
恥ずかしさに内心悶えながら自分の席へ戻った。
しばらく羞恥心と戦っていると、ある少女が自己紹介する。
「マリノー・フカールエルです。よろしくお願いします」
淡い緑のドレスに身を包む、金髪碧眼の少女だ。
ただ、同じ碧眼でも王子よりもその色は濃い。
吸い込まれそうなディープブルーだ。
目は少し垂れていて、見るからにおとなしそうな印象の少女だった。
そして、私とは逆のベクトルで良い体をしている。
何と言えばいいのか、柔らかそうだ。
実は彼女、ライバル令嬢の一人である。
なるほどな。
この教室には、攻略対象とライバル令嬢が一人ずついるわけだ。
彼女とも仲良くなれるといい……かな?
私は前よりも強くなり、トリッキーな戦い方をしなくても父上と渡り合えるようになった。
これはアクションゲームごっこで培った戦い方を実用的になるようアレンジし、自分の技として昇華させた結果だ。
とはいえ、父上に易々と勝てるようになったわけでもない。
父も自己鍛錬に打ち込んでいるらしく、今ではほとんど五分五分の勝率だ。
アルディリアとはさらに打ち解けて、今では砕けた口調で話すようになった。
そして私の身長はメキメキと伸び、手足はスラリと長く、顔つきは全体的に鋭くなり、腹筋がバキバキに割れた。
背筋がロールシャッハテストの模様みたいに盛り上がるし、肩甲骨も自由自在に動かせる。
ちょっと女の子としては嬉しくない成長を遂げたわけである。
ただ、その姿はゲームに登場するクロエそのものだった。
つまり私は、ついに運命の舞台へ上がる事になったのである。
王立シュエット魔法学園。
女神の名を冠した、魔法と知と教養を学ぶための学び舎。
私は今日、ここへ入学する事になっていた。
それは私が、死の運命への一歩を踏み出す事を意味していた。
この学園で私は、主人公と出会う事になる。
そして主人公がアルディリアとのルートへ突入した場合、戦争が勃発。
私は戦場で凄惨な死を迎える事になるのである。
私はその運命の入り口に立っている。
これから始まるであろうゲーム本編の舞台を前に、私は緊張を覚えていた。
場所は学園の講堂。
そこで入学式が執り行われていた。
広々とした室内には、王国中の貴族の子弟達が並べられた椅子に座って前方の壇上を向いていた。
私もその中の一人として席に座っており、隣にはアルディリアが座っている。
皆、晴れの舞台に気合の入った礼服で自身を着飾っている。
ちなみに私は父が用意してくれた黒い軍服姿だ。
もしかして、私のイメージカラーが黒なのは父上の趣味だからなのだろうか?
洋風だけど、どことなく日本の学生服に見えなくもない。学ランの方だけど。
粛々とした様子で耳を傾けるのは、壇上の人物の言葉。
今、壇上では入学した学生の代表がスピーチしている最中だった。
金色の髪。青い目。柔らかく優しげな表情。
白を基調とし、金の刺繍が施された制服に身を包む彼の言葉には、王族特有の気品が滲み出ているようだった。
彼の名はリオン・アールネス。
この国の第一王子である。
「王子様、格好良いね」
「そうだね」
「憧れちゃうなぁ」
アルディリアは顔を上気させて呟く。
アルディリア、本当に女の子だったりしないよね?
実は双子で、病弱な兄のフリをする妹とかいう設定じゃないよね?
まぁ、それはいいとして。
今はリオン王子の事だ。
なんと彼は今年十五歳になり、この魔法学園に入学する事となったのだ。
光栄な事に今年度の入学者は彼の同級生になれるという事だ。
なんという偶然だろー。
なんてね。
実の所、私は彼と同級生になる事を生まれる前から知っていたのだ。
生まれてからはしばらく忘れていたけど。
何故知っていたかと言えば、彼が攻略対象の一人だからだ。
リオン・アールネスは物語のメインに位置するキャラクターである。
パッケージでは堂々と正面を飾り、シナリオも一番タイトルに沿った内容となっている。
というか、彼のシナリオ以外はタイトルを無視していると言って良い。
ちなみに、パッケージの裏にはライバル令嬢達のシルエットが印刷されており、それをバックにゲーム画面とあらすじが載っている。
私の愛用キャラが真ん中なので、目に入るとちょっと嬉しい。
「私は女神の膝元たるこの学園において、みなさんと共に机を並べられる事を誇りに思います。これからの三年間、よろしくお願いします」
王子が礼をすると、生徒からも教師からも拍手が上がった。
私も一応、拍手する。
本来のクロエなら腕組みしてふんぞり返ってそうだが、私はそんな世紀末覇者みたいな雰囲気は出せない。
そうして、王子のスピーチが終わると入学式は幕を閉じた。
それからクラス分け表を見てこれから一年間通う教室に向かう。
残念ながら、アルディリアは別のクラスになってしまった。
彼以外の貴族とは交流がないので、見知った顔がいなくてちょっと心細い。
その後、教師の進行で席順を決めてから、自己紹介をした。
「クロエ・ビッテンフェルトです。よろしくお願いします」
笑顔で挨拶する。
「あれが家では「パパ、だーい好き」と父親に甘えているという、あの……」
うおおおおおぉっ!
なんかヒソヒソと聞き捨てならない言葉が聞こえてくるんですが!?
ヤメロォ!
そんな目で私を見るな!
恥ずかしさに内心悶えながら自分の席へ戻った。
しばらく羞恥心と戦っていると、ある少女が自己紹介する。
「マリノー・フカールエルです。よろしくお願いします」
淡い緑のドレスに身を包む、金髪碧眼の少女だ。
ただ、同じ碧眼でも王子よりもその色は濃い。
吸い込まれそうなディープブルーだ。
目は少し垂れていて、見るからにおとなしそうな印象の少女だった。
そして、私とは逆のベクトルで良い体をしている。
何と言えばいいのか、柔らかそうだ。
実は彼女、ライバル令嬢の一人である。
なるほどな。
この教室には、攻略対象とライバル令嬢が一人ずついるわけだ。
彼女とも仲良くなれるといい……かな?
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