醜女の幸せは海の向こうにありました〜美醜逆転嫁取り物語〜

紅葉ももな(くれはももな)

幸せへの旅立ち

 ラーズが急遽海へ飛び込み下船したことで、出港が一日延びることになった。

 一度乗船を済ませた者達は見送りに来た家族たちと過ごせる時間が増えた事を喜んでいる。

 グランデールを預けたフェイはリンカを抱き締めて間に合って良かったねと微笑んだ。

「ラーズ殿、今回の航海は無理でしょうが私とケイロンはユナス大陸に、移住しようと考えています」

「歓迎いたします、なるべくはやくメイロウ大陸へ戻ってまいりますので少しだけお待ちいただけますか? 義母上殿」

「ええ、もちろんです婿殿、私も夫を連れてこなければなりませんから」

 食事の後てっきりフェイの取った宿屋で泊まるのだろうとラーズは思っていたが、リンカはフェイに手を振りラーズと船に向かって歩いていく。

「リンカ、フェイさんと一緒に居なくて良いのか?」

 困惑しながらのラーズの問いにリンカは大きく頷いた。

「だってこれからはラーズさんと夫婦になるんでしょ? 街で休んで出港に、間に合わなかったら嫌だもの、ほら行きましょう?」

「どこへ?」

 差し出された手を取ると、リンカは迷わずに船へとラーズを先導して歩きだす。

「貴方の船に」

 翌朝早朝から昨日の仕切り直しとして出港式が行われた。

 次々と花嫁を乗せた船が出港して行く。

 正装を身に纏いラーズは傍らに立つユナス大陸の女性用ドレスを纏ったリンカを『祈りの鐘』の前に案内する。

 二人で鐘に繋がる縄を持つとそのまま三度打ち鳴らした。
 
 航海の無事と花嫁達の幸せを願ってメイロウ大陸の大地に高く清らかな鐘の音が響き渡った。






  
 

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