醜女の幸せは海の向こうにありました〜美醜逆転嫁取り物語〜
異文化への戸惑い
ラーズが私室として使っている部屋から出ると、隣国スタニア王国の公爵令息で今回船団の一隻を任されているフェデリコ・バートロンが立っていた。
今回の大船団はユナス大陸に国家を構える全ての国がそれぞれ数隻の船を出し、貴賎を問わず自らの花嫁を得るために多くの男性が船に乗り海を越えてきた。
フェデリコ・バートロンもそのうちの一人だ。
「海で漂流していた女をひとり助けたと聞いたが?」
「あぁ、もう聞いたのか。 相変わらず耳が早いな」
部屋から離れるように歩き出せば、フェデリコはラーズに追従するように歩き出す。
「もう直ぐ船団はかの大陸に上陸する、なんとしてもこの国の、いや大陸の国々を真摯に説得し、ひとりでも多くの花嫁を連れて帰らなければならない」
「あぁ、我々はその為に長い航海を越えてきたからなーー」
「そのためにも助けた娘を大地に返すことはユナス大陸の男達にとって紳士ぶりを売り込む良い宣伝になるだろう」
フェデリコの発言に眉間に皺がよる。
「そうだな……助けた娘をきっと家族が捜しているだろうからな……」
ラーズはフェデリコの言葉に立ち止まると、今しがた自分が出てきた部屋のある方を見た。
港に接岸したのだろう、船上から威勢のいい声が、船内まで響いている。
「なんにせよ、これからが本番だ」
「あぁ、ひとりでも多くの花嫁を祖国に連れて変えるんだ」
フェデリコとラーズは手を握り合い決意を新たにメイロウ大陸へ上陸のする指示を出すため船上へと登った。
港には既に沢山のメイロウ大陸の住民が見慣れない形の船に驚き、外界からの襲撃かと大挙している。
船団のうちラーズとフェデリコが乗っている船以外は、要らぬ争いを避けるために港から離した会場に留め置いている。
武器を手にした兵士らしき屈強な女性達が岸壁次々に集結している。
「我々はユナス大陸から来た、あなた方の責任者と話をさせてほしい」
ラーズとフェデリコは岸壁にいる兵士に向かって航海の間に、商人に師事し必死に覚えたメイロウ大陸の言葉で話しかけた。
「責任者は私だ、なんの目的があり我が国へやって来た」
一際身体が大きく、屈強な女性が船上に向かって声を張り上げる。
船上から見える範囲には女性、しかもユナス大陸の男性と遜色ない体格の女性しかいない事を不思議に思いつつも、責任者らしい女性に話しかける。
「我々は国主殿に乞い願うことかあり海を超えてやって来た、取次をお願いしたい」
「直ぐに人を出し女王陛下へ確認を取ろう」
「すまない、長旅で物資が尽きかけている、物資調達のため仮の上陸を許可願いたい!」
「わかった、それについてはもう一隻のみ寄港を許可し監視をつけた上で上陸を許可する! また代表者を決め上陸願いたい」
「了承した、女王陛下へ我が国の国主たちから献上の品々を持参している、荷馬車をお借りしたい」
要求を伝た翌日女王陛下への目通りが叶うこと、そして献上品を積み込むための馬車と移動用の馬車を借りることができた。
「わたしはコレリアン王国の湾岸を護る海軍長フランだ。 これから王都ユーネイまで貴公等の護衛の任を陛下よりたまわった」
「フラン殿、私はラーズ・ダンヴァース、ユナス大陸ダンヴァース王国の王子で、この旅の責任者です、フラン殿はユナス大陸の言葉に堪能なのですね」
「あぁ、私は仕事柄ユナス大陸からの交易商人と接することが多いから一々通訳を介していては政務が滞るからな、覚えた。 私のユナス語はおかしくないだろうか?」
「いえ、大変お上手でいらっしゃいます」
フランと名乗った大柄で筋骨隆々とした女騎士ににこやかに挨拶をつげる。
お互いに同行者すべて挨拶を終える頃には、初めて女性と言う存在に触れた何名かが頬を赤らめている。
噂でメイロウ大陸とユナス大陸の女性の姿形は美醜の観点からかなり違いがあると言われていたため、異性として受け止められるか危惧されていたが、男女比が三十対一まで進んだこと、流行病『女毒死病』で女性を隔離せざるをえなかった為に、女性にあったことが無い者が多数いた事で先入観なく受け入れられそうだった。
「フラン殿、実はこちらに寄港する少し前に女性の漂流者を保護した、もし身元がわかれば身内の元へ返してやりたいのだが」
「漂流者……会わせて貰えるだろうか」
ラーズはフランの申し出に了承し船内に案内すると、助けた少女リンカの居る自室へと案内した。
「リンカ、入るぞ」
数度扉を叩いたが返事がなく部屋へと入れば、床にグッタリと倒れ込むリンカを見つけて駆け寄った。
「リンカ!?」
すぐさま額や首筋に手を当てれば高熱をだしているようだった。
「フラン殿、こちらからが漂流していたリンカです。 高熱を出しているようなのですが医師に見せることは可能でしょうか?」
すぐにでも医者に見せたほうが良いとフランを振り返ればまるで痛ましい者を憐れむ視線を向けている。
「直に医者を手配する……その娘を連れて付いて参られよ」
フランの表情を不思議に思いながらリンカを横抱きにして船外に出れば、岸壁で漂流者を待っていた他の女性騎士達の表情が歪む。
急ぎ担架にのせられて医師の待つ治療院へ運ばれ遠ざかるリンカを目で追う。
「まだ若いのに身投げとはいたわしい事だ、あの容姿ではかなり生き辛かっただろうに」
フランの言葉に驚き見やる。
「身投げ? 彼女のように美しい女性がなぜ身投げなど……」
「美しい? あぁ忘れていた。 ユナス大陸の女は皆男のようにか細いのだったか。 そうだな、我が国……メイロウ大陸の女は皆私の様に逞しい身体付きをしている、そして逞しければ逞しいほど美人とされ求婚が耐えないのだ」
「……あの娘にはきっと生きづらかったやもしれん、年に何人もあの娘のように我が身の不遇を嘆き海へと命を投げ出すものが後を絶たないのだ」
今回の大船団はユナス大陸に国家を構える全ての国がそれぞれ数隻の船を出し、貴賎を問わず自らの花嫁を得るために多くの男性が船に乗り海を越えてきた。
フェデリコ・バートロンもそのうちの一人だ。
「海で漂流していた女をひとり助けたと聞いたが?」
「あぁ、もう聞いたのか。 相変わらず耳が早いな」
部屋から離れるように歩き出せば、フェデリコはラーズに追従するように歩き出す。
「もう直ぐ船団はかの大陸に上陸する、なんとしてもこの国の、いや大陸の国々を真摯に説得し、ひとりでも多くの花嫁を連れて帰らなければならない」
「あぁ、我々はその為に長い航海を越えてきたからなーー」
「そのためにも助けた娘を大地に返すことはユナス大陸の男達にとって紳士ぶりを売り込む良い宣伝になるだろう」
フェデリコの発言に眉間に皺がよる。
「そうだな……助けた娘をきっと家族が捜しているだろうからな……」
ラーズはフェデリコの言葉に立ち止まると、今しがた自分が出てきた部屋のある方を見た。
港に接岸したのだろう、船上から威勢のいい声が、船内まで響いている。
「なんにせよ、これからが本番だ」
「あぁ、ひとりでも多くの花嫁を祖国に連れて変えるんだ」
フェデリコとラーズは手を握り合い決意を新たにメイロウ大陸へ上陸のする指示を出すため船上へと登った。
港には既に沢山のメイロウ大陸の住民が見慣れない形の船に驚き、外界からの襲撃かと大挙している。
船団のうちラーズとフェデリコが乗っている船以外は、要らぬ争いを避けるために港から離した会場に留め置いている。
武器を手にした兵士らしき屈強な女性達が岸壁次々に集結している。
「我々はユナス大陸から来た、あなた方の責任者と話をさせてほしい」
ラーズとフェデリコは岸壁にいる兵士に向かって航海の間に、商人に師事し必死に覚えたメイロウ大陸の言葉で話しかけた。
「責任者は私だ、なんの目的があり我が国へやって来た」
一際身体が大きく、屈強な女性が船上に向かって声を張り上げる。
船上から見える範囲には女性、しかもユナス大陸の男性と遜色ない体格の女性しかいない事を不思議に思いつつも、責任者らしい女性に話しかける。
「我々は国主殿に乞い願うことかあり海を超えてやって来た、取次をお願いしたい」
「直ぐに人を出し女王陛下へ確認を取ろう」
「すまない、長旅で物資が尽きかけている、物資調達のため仮の上陸を許可願いたい!」
「わかった、それについてはもう一隻のみ寄港を許可し監視をつけた上で上陸を許可する! また代表者を決め上陸願いたい」
「了承した、女王陛下へ我が国の国主たちから献上の品々を持参している、荷馬車をお借りしたい」
要求を伝た翌日女王陛下への目通りが叶うこと、そして献上品を積み込むための馬車と移動用の馬車を借りることができた。
「わたしはコレリアン王国の湾岸を護る海軍長フランだ。 これから王都ユーネイまで貴公等の護衛の任を陛下よりたまわった」
「フラン殿、私はラーズ・ダンヴァース、ユナス大陸ダンヴァース王国の王子で、この旅の責任者です、フラン殿はユナス大陸の言葉に堪能なのですね」
「あぁ、私は仕事柄ユナス大陸からの交易商人と接することが多いから一々通訳を介していては政務が滞るからな、覚えた。 私のユナス語はおかしくないだろうか?」
「いえ、大変お上手でいらっしゃいます」
フランと名乗った大柄で筋骨隆々とした女騎士ににこやかに挨拶をつげる。
お互いに同行者すべて挨拶を終える頃には、初めて女性と言う存在に触れた何名かが頬を赤らめている。
噂でメイロウ大陸とユナス大陸の女性の姿形は美醜の観点からかなり違いがあると言われていたため、異性として受け止められるか危惧されていたが、男女比が三十対一まで進んだこと、流行病『女毒死病』で女性を隔離せざるをえなかった為に、女性にあったことが無い者が多数いた事で先入観なく受け入れられそうだった。
「フラン殿、実はこちらに寄港する少し前に女性の漂流者を保護した、もし身元がわかれば身内の元へ返してやりたいのだが」
「漂流者……会わせて貰えるだろうか」
ラーズはフランの申し出に了承し船内に案内すると、助けた少女リンカの居る自室へと案内した。
「リンカ、入るぞ」
数度扉を叩いたが返事がなく部屋へと入れば、床にグッタリと倒れ込むリンカを見つけて駆け寄った。
「リンカ!?」
すぐさま額や首筋に手を当てれば高熱をだしているようだった。
「フラン殿、こちらからが漂流していたリンカです。 高熱を出しているようなのですが医師に見せることは可能でしょうか?」
すぐにでも医者に見せたほうが良いとフランを振り返ればまるで痛ましい者を憐れむ視線を向けている。
「直に医者を手配する……その娘を連れて付いて参られよ」
フランの表情を不思議に思いながらリンカを横抱きにして船外に出れば、岸壁で漂流者を待っていた他の女性騎士達の表情が歪む。
急ぎ担架にのせられて医師の待つ治療院へ運ばれ遠ざかるリンカを目で追う。
「まだ若いのに身投げとはいたわしい事だ、あの容姿ではかなり生き辛かっただろうに」
フランの言葉に驚き見やる。
「身投げ? 彼女のように美しい女性がなぜ身投げなど……」
「美しい? あぁ忘れていた。 ユナス大陸の女は皆男のようにか細いのだったか。 そうだな、我が国……メイロウ大陸の女は皆私の様に逞しい身体付きをしている、そして逞しければ逞しいほど美人とされ求婚が耐えないのだ」
「……あの娘にはきっと生きづらかったやもしれん、年に何人もあの娘のように我が身の不遇を嘆き海へと命を投げ出すものが後を絶たないのだ」
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