女の子を撮影したら、惚れされることができる能力をてにいれた件

執筆用bot E-021番 

悪魔駆除(リコ視点)

 イタチ班とともに48階へと上がった。エレベーターのトビラが開くと、イタチ班の構成員がいっせいに外に出る。


 停電を不審に思って通路に出ている人たちもいた。


 その人たちには、エマコが警察手帳を見せて事情を説明していた。事情――と言っても、もちろん憑人がどうこうと言ったわけではない。電力事故があったために点検に来ているといつもの口上を使っていた。通路に出ていた人たちは、エマコの説明を聞いて素直に部屋に戻ってくれた。


 無人になった通路を、イタチ班が進んで行く。


 エマコがハンドサインを送ると、イタチ班は「4808」と書かれた部屋の前に張り付いた。


 班員のひとりがトビラに耳をつけて、中の音を確認していた。うなずく。突入の合図だ。班長のイタチが突入した。リコもエマコとともに室内に入った。


 間取りは、どこの部屋も変わらない。リコには馴染んだものだった。玄関を入ると、まず廊下がある。左右にトビラがある。右のトビラが風呂で、左のトビラがトイレになっている。


 班員たちが、部屋のひとつひとつをシッカリと確認してゆく。ハンドサインで安全を報せて、奥へと進む。


 奥に行くと、大広間になっている。居間と食堂とキッチンが合同になっている大部屋だ。


 踏み込んだ。


 部屋にはデスクトップパソコンが4機も置かれていた。配線なども多く這っている。停電しているため、どのパソコンも起動していない。


 窓際の部屋の隅。
 机の下に潜り込んでいる男がいた。その男は懐中電灯をつけていた。やや小太りの中年であることが見て取れた。「くそっ。停電とかマジかよ」と愚痴を吐いているのが聞こえた。


「動くな!」
 と、班員たちがいっせいにその中年男に向かって拳銃を向けた。


「うわっ。な、なんだ!」
 と、中年男はビックリしたようで、机の底部で頭をブツけていた。机の上に置かれていたパソコンや周辺機器が衝撃で軽く跳ねていた。ガシャン。派手な音がひびいた。


「両手を頭の後ろで組んで、その場に立て」


「わかった。わかったよ。なんだよいったい。言う通りにするから」


 男は従順だった。
 立ち上がると両手の後ろで頭を組んだ。


「明かりをつけるわよ」
 と、エマコがアプリを起動させることによって、部屋の電気が復旧した。


 これは周辺の電力を回復させるためのアプリだ。リコも持っている。特務課は目星をつけた捜査該当域の電力を必ず落とす。悪魔をインターネットの海に逃がさないようにするためだ。そのさいに、停電したままだと捜査に不便をきたす恐れがあるために、公安内部で独自に開発されたものだった。


「おっ。良かった。電力が戻ったのか」
 と、中年男は自分の置かれている状況を理解しているのか、そう言って安堵した様子だった。


 焦らないのだろうか――とリコは不思議に思う。


 こんな不審な連中が部屋に押し入ってきたら、ふつうはもっと焦るものだと思う。


 特務課は立派な警察ではあるが、傍から見れば不審な連中であることに違いはないのだ。
 停電が直った安心感が、この中年男から警戒心を忘れさせかもしれない。


 アプリの効果範囲はそんなに広くはない。電力が戻っているのは、せいぜいこの一部屋ぐらいだ。


「私たちは公安警察特務課よ。あなたには憑人の疑いがかかっている。部屋を調べさせてもらうわよ」
 と、エマコが警察手帳を見せて言った。


「憑人?」
 と、中年男は首をかしげていた。


「パソコンからスマホといった端末機器まで。インターネットにつながるものを、徹底的に調べてちょうだい。悪魔を見つけ次第、すぐにUSBで抜き取りなさい」
 と、エマコが指示を出してゆく。


 それを受けて、隊員たちが動いた。


 悪魔はインターネットのなかにデータとして潜んでいる。見つけ次第、USBで抽出することになっている。USBこそが悪魔にとっては監獄ということになるのだ。


「あ、こら。オレのパソコンに勝手に触るんじゃないよ」
 と、中年男がそう言って怒る中年男をなだめつつも、隊員のひとりが身体検査をはじめていた。


「はいはい。失礼しますよ」
 と、中年男のカラダを点検してゆく。


 転瞬――。
「どけよ! オレのマルコちゃんに触るんじゃねェ」
 と、中年男は突如として怒鳴って、身体検査を行っていた隊員の首根っこをつかんで、引き寄せたのである。


「動くなッ」
 と、部屋にいた隊員たちはいっせいに「S&W」の銃口を向けた。


 男に首根っこをつかまれた隊員が、中年男の盾になっていて、上手く照準を合わせることが出来ない様子だった。
 特務課の隊員はみんなそれなりに鍛錬を積んでいるはずで、ただの中年男にチカラで負けるというのは妙な話だった。
 いや。相手は、ただの中年男ではないのだ。


「お前ら、オレのマルコちゃんを奪いに来たんだな。オレのマルコちゃんに手出ししたら許さねェぞ」
 そう言う中年男の風貌が、みるみるうちに変貌しはじめた。全身から毛が生えはじめて、背中からは翼が広がった。


 もはや人間ではない。獣である。獣はつかんでいた隊員の首をへし折った。隊員はしばらく暴れていたが、その一撃によって動かなくなってしまった。


 隊員が死んだことによってようやく発砲がはじまったのだが、獣と化した男には銃弾など通じなかった。


「いけない! すでに覚醒がはじまってるわ。イルカとリコちゃんは、フラグメントの展開を!」


「はい」
 と、リコは応じた。


「どけどけ――ッ」
 と、ゴリラとも狼ともつかない獣――いや、悪魔だ。悪魔が、出口の付近にいたリコに向かって猛進してきた。拳銃の弾丸など物ともしない様子だった。


「フラグメント展開」
 と、リコは静かに呟いて、アプリを起動させた。


 フラグメント。捕えた悪魔を利用して作られた武器である。悪魔に対抗するためには、悪魔の異能のチカラが必要だったのだ。


 リコのフラグメントは、父の霧島璧から譲り受けたものだ。《特務のカラス》と呼ばれた男のフラグメントを扱えるのは、リコの他にいなかった。


 リコの全身に青白い電流がはしった。次の瞬間には漆黒の鎧が顕現した。まるで西洋の甲冑のような形状をしている。手にはロングソードと言うにふさわしい剣がにぎられている。甲冑も剣も、すべては黒塗りだ。これが父が、《特務のカラス》と呼ばれたゆえんのひとつである。


 正面。
「うぉぉぉ――ッ」
 と、悪魔が接近してきていた。それを見据えて剣を構えた。


 剣を正眼から、大上段へと持ち上げる。
 一閃――。


 漆黒の光流を描いて剣が振り下ろされた。一刀両断。悪魔は真っ二つに裂けていた。もともと人だったからと言って、リコには罪悪感といった心理的な抵抗はなにひとつなかった。


(また1人父の仇――憑人を討った)


 というその気持ちは、むしろ害虫を駆除したような清々しさに満ちあふれていた。


「悪魔のいる端末機器を発見しました! すぐにUSBで摘出します」
 と、隊員のひとりが言う。


 スマホの画面には、可愛らしい女性の姿が映しだされている。
 悪魔というのは、人の弱い心につけ込もうとする。そのためには、可愛らしい少女であったり、イケメンの男性であったりするほうが好都合なのだろう。


 画面のなかの悪魔は、無事にUSBのなかに封じ込めることが出来た。

コメント

コメントを書く

「現代アクション」の人気作品

書籍化作品