追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活
天然と天然(:灰)
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最近、学園の生徒会の皆様の様子がおかしい。
いや、おかしいと言うよりは変わった、とでも言うべきなのだろか。
その変わった対象というのは生徒会の女性の方々(主にメアリー様)もそうではあるのだが、男性の方々が変わったように思える。
特にヴァーミリオン様が変わっただろうか?
ついこの間までは好いているメアリー様のために攻めようとし、何故か避けられ続け表面上は平然としているものの落ち込み続けていた姿が多かった。だが最近はなにかに吹っ切れ、メアリー様に対し今までのようなアピール……執着とでもいうのだろうか? 執着をみせなくなった。
「執着を見せなくなった。つまりヴァーミリオン様はメアリー様のストーカーを辞められたという事なんですね!」
「ええと……」
そしてその事を、生徒会の男性陣の中では比較的変わらず、同じクラスメイトであり一番仲の良いティー君に話してみた。するとティー君は何処か困ったようにしていたが、とりあえず私の話の続きを聞いてくれるようである。
ヴァーミリオン様はメアリー様と結ばれるのを諦めたという訳では無い。むしろ自然に……余裕を持つようになったように見える。
必要な事を、必要な時に。
自分を磨き、磨いた己を。
愛す女性に、愛を見せる。
ヴァーミリオン様はそんな何所となく、一皮剥けた男性になった気がするのである。
「一皮むけた……つまり、男の子から男になったという事なのですかね」
「あ、聞いた事あるな、それ。確か……そう、女性を知った、と言うやつ!」
「なるほど!」
なるほど、ヴァーミリオン様は女性を知ったというやつだったのか。後でその事を伝えておこう。
さて、女性を知り余裕を持ち始めたヴァーミリオン様以外に対し、何所となく焦っているように思える男性の御方もいる。
それはアッシュ様とシルバ様である。
メアリー様を愛している御二人なのだが、先程言ったヴァーミリオン様の様子が変わった事に気付いて焦っているように思える。
一度は攻めが弱くなった事に日和ったと思っていた御二人の様であるが、いくつかの会話の後に私と同じで一皮むけた事を感じ取り、同時にメアリー様も変わった事に戸惑っているのである。
メアリー様自身も「なんでも無いですよ?」と振舞っているので、なにかが変わったのになにが原因かが分からない。そして好きな相手と親友の事なのに自分が蚊帳の外な事にどうすれば良いかと戸惑っているようである。
「これが父上達が居た世界の用語で、いわゆる脳が破壊される、という状況だそうです」
「破壊されるの!? ……怖いなぁ」
あれ、BSSだっただろうか。それともただの失恋で良かったのだろうか。
……よし、後でクリームヒルトちゃんに聞いておこう。
ああ、それと私にとって一番驚いた変化をしたのがシャル様だ。
シャル様はヴァーミリオン様と同様に一皮むけたように、成長為さったように思える。だがその変わった理由はヴァーミリオン様のような愛が深まったのではなく、むしろ……失恋したように思える。
以前よりメアリー様よりも近い距離で話せているし、自然体で振舞えている。けれどそこに恋愛関係は見られない。
「……なんとなく思うのですが、私めがシャル様の立場であれば、あのように振舞えないと思うのです」
「……そうだね」
私は好きな女性がいる。
シャル様は嫌われていないものの、好きな女性に対しての恋を失った。
私の気持ちがもし通じないと分かったのならば、あのように振舞えるだろうか。疑問に思う。
あのように振舞えるなんて、シャル様の気持ちは……いや、違う。この考えは良くはない。
なにせ疑問には思うけど、シャル様は強いからこそ、あのようなメアリー様との絆関係になれたのだと分かるのだから。どうしようもないほどの覚悟をし、乗り越えたからこそ今があるのだと分かるのだから。
「つまり纏めるとシャル様は……」
「脳が破壊されつつも女性を知り、一皮むけた大人の男、というやつになる感じかな」
「そうですね!」
シャル様はそうなったからこそ、今のシャル様があるのだろう。今度シキに帰ったらシャル様の事を父上達そう伝えるとしよう、そうしよう。
そして最後に気になる、変わった男性がもう一人おられる。これはほんのつい最近の事のだが……
「エクル様、この課外学習の目的地が決まってから様子がおかしくありませんか?」
「ああ、それは私も気がしてたなぁ」
今現在、私達は馬車に揺られつつ課外学習先へ移動中である。
本来私達は生徒会メンバーとして、二名ずつほど課外学習グループの代表として振り分けられる予定だったのだが、今は生徒会のメンバー+複数名が同じ目的地に向かっているのである。ちなみにこの馬車に乗っているのは、今回の課外学習グループの一年生メンバーの男性メンバーであり、周囲に気を使って静かに話している。
私達が急に一つの学習先に行くようになった理由は一応聞きはしたのだが、その事を疑問に思うよりも元々決まっていた予定が大きく変わったための調整に忙しく、その理由について考える余裕は無かった。
その忙しい最中にエクル様とも何度か話はしたのだが、どうも様子がおかしい気がする。
気がする、というようなわずかな違い程度ではあるのだが、シアン様と比べると他者の機微には疎い私やティー君でも気はするほどには、違いを感じたのである。
――ついこの間までメアリー様の変化に何処か喜ばしそうだったのに……なにがあったのでしょう。
そんな疑問を思いつつ、私達は目的地まで馬車に揺られるのであった。
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