追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活
別の雰囲気(:黄褐)
View.エクル
「ところでメアリーちゃん。ヴァーミリオン殿下にいつになったら告白して、男女の仲になるの?」
「ごふっ」
ある放課後の生徒会室にて。私とメアリー様、クリームヒルトにスカイ、アプリコットという私以外が女性が居る中、妹であるクリームヒルトはメアリー様に何気なく問いかけた。
問いかけられたメアリー様は優雅に紅茶を飲んでいた最中の問いかけであったので、優雅に紅茶を咽ていた。しかし紅茶を零しはしない辺り、流石はメアリー様である!
「きゅ、急にどうしたのですクリームヒルト」
「いや、この前からメアリーちゃんは、ようやく少年漫画のハーレム系漫画の主人公みたいな雰囲気をやめたでしょ?」
「なんですその雰囲気」
「色んなタイプの異性をキープして“私はそんなつもりないけど困っちゃうぜ”的な?」
「出してませんよ!?」
「あはは、どう思う皆?」
「出していたな」
「出していましたね」
「!? え、エクルさん、そんな事無いですよね!?」
「…………」
「エクルさん!?」
メアリー様は魅力的な女性であり、多くの男性女性を虜にする御方であり、私は彼女以上の女性を知らない。万が一私の正体を知らなかった時に選ばれていたのなら、喜んで付き合っていたと言える。
しかしそれはそれとして、メアリー様がクリームヒルトの言ったような雰囲気であった事は否定しない。私はどちらかというと補助にあたっていたので大丈夫だったが、他の皆はあの状態は気が気でなかっただろうな、とも思うのである。
「で、ハーレム雰囲気を止めて、今度は学校の年上お姉さん先輩的な恋愛強者っぽい雰囲気出してたじゃん?」
「はぁ、出していましたかね? 私としては別の感じを狙ったんですが」
「小悪魔的な?」
「そんな感じです」
「メアリー様は私にとってはいつでも心を惑わす小悪魔ですよ!」
「エクル先輩。今は話が進まぬから落ち着くのである」
むぅ、可愛い後輩に言われては仕様が無い。大人しく従うとしよう。代わりにこのメアリー様は小悪魔としても素晴らしいという気持ちは内に秘め、魔法研究に反映させ【小悪魔闇魔法】という魔法開発に活かすとしよう。
「で、ハーレムをやめたメアリーちゃんは、ついに相手の一本化を図ろうとした訳でしょ」
なんだか借金みたいだね。
「でもさ、相手を決めて、そんな雰囲気を出していたからなにか進むのかなーって思っていたんだけど、なにも進んでいなさそうだからさ。実は私達に内緒でなにか進んだのかなーって思ってね」
「はぁ、なるほど。質問の意図は理解しましたが……何故ヴァーミリオン君なんです?」
「だってメアリーちゃん、ヴァーミリオン殿下の事本気で好きって認めたでしょ?」
「それはそうですが」
「(え。……どう思います、アプリコット?)」
「(うむ、スカイ先輩のお見合いの前後でそのような感じはしたのだが……あくまで違和感程度である)」
「(確かに私も感じましたが……こうも簡単に認めるとは)」
確かにここ最近のメアリー様はヴァーミリオン殿下に相手を決めた様に思いはしていた。
しかしわざわざ聞くのも野暮であるし、私はあくまでもメアリー様を支える者。必要な時に必要な補助を為すだけであるが、求められなければ必要以上に事を為さない。いつでも応えられるように準備はしても、メアリー様が自分の力で好きな相手を虜にしたいというのなら私は見守るだけだ。
しかしそれはそれとして、現状がどうなのか気になりもしていたので、クリームヒルトの問いには私も興味はある。
だって私に全然頼ってくれないんだもの。見守るつもりではあるけど、ちょっと悲しんですよ私。せっかく女と男の両方の気持ちを分かる特異例なんだから、もっと頼ってくれても良いんですよメアリー様!
「生憎と進んでいませんよ。互いに告白もしていませんし、むしろ会話も減っている気もします」
「え、もしかして後退?」
と、いう心の声は仕舞っておくとして、今はメアリー様の現状把握だ。
そして会話が減るとは何事だヴァーミリオン殿下め。もしもメアリー様を悲しませる事があれば泣くぞ。私が。
「いいえ、準備期間のようなモノです。心配せずとも、私は絶対にヴァーミリオン君と付き合いますから」
だが、メアリー様の返答は何処か大人びた女の余裕のようでもあり、獲物を追い求める捕食者のようでもあり、一人の男性を想う乙女のようでもあった。
……本当にメアリー様は変わられたようである。
「あはは、なるほど、日和った訳だね!」
「日和った訳であるな」
「日和った訳なのですね」
確かにそうとも取れなくもないが、キミ達はもう少しオブラートに包もう。
大体キミ達は――
「違います。そもそも絶賛日和りまくっている貴女達に言われたくありません」
『うぐ』
……誰も付き合っている訳でも無いキミ達が、メアリー様にとやかく言ったらこう返されるのは気付かない物なのだろうか。
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