追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活

ヒーター

千二百話記念:あるいはこんなゲームプレイ


※このお話は千二百話を記念した本編とはあまり関係のないお話です。
 キャラ崩壊もあるかもしれないのでご注意ください。
 読み飛ばしても問題ありません。



















「ぐへへへへへ、スミレちゃんを世俗に汚れた物で穢してやるぜ……!」
「変な言い方すんなビャク。ただのゲームだろうが」

 私は再び、夢の中で謎の地に訪れていた。
 以前この夢を見たのはいつだったか。具体的には思い出せないが、ともかくこの場所に来た時に以前見た夢と同じでクロ殿達の前世の世界と似た場所だと理解した。

「というか、私が居て良かったの? おうちデートでしょ、おうちデート。アダルティなゲームならワンシーン入る奴だよ。居て良いの?」
「それ言われて邪魔だから居なくなれと言うと思うか。というか今日は普通に菫さんとゲームをやるだけだぞ」
「動物園の動物の中には、その動物用のアダルティ映像を見せて繁殖を促す事もあるらしいよ」
「アダルティなゲームはせんわ!」

 ただ以前と違うのは、前回は(多分)学校だったのに対し、クロ殿……クロさんとビャクさんの家、という所だ。
 家、と言っても宿屋のように一つの建物に様々な家族が部屋を分けて住んでいて(アパートというらしい)、部屋は一つだけでキッチンとお風呂場とトイレがあるような部屋。そしてそれらを合わせてもハートフィールド邸の一部屋や廊下と比べても小さい。……話には聞いていたが、クロ殿達の前世はこういった部屋に住んでいたのだろうか。まぁ、そこは確認しようが無い。恐らく前回と同じく、目が覚めればこの夢は覚えていないだろうから。

「クロど――黒さん。私はげぇむとやらを知ってはいるが、よく分かりはしない。まずは見ているから、クロさん達がしているのを見ていても良いだろうか?」
「了解です。では基本を覚えれば後はやれば出来るゲームでもしてみるか、ビャク
「オッケー。じゃあ桃太郎が電車で物件を買うゲームの99年いっとく?」
「俺達の間にヒビでもいれる気か」

 とはいえ、目が覚めるまで楽しめる物は楽しんでおこう。
 夢なのに私の知らない景色が見える、という仕組みは分からないが、話だけは聞いていたげぇむについても知る事も楽しそうだ。

「待ってくれ、なんだろうかこの絵は……動いている? なに、操作が出来る? なにを言って……本当に動かしている!? 小人のような存在が……まさか、捕らわれているのか!?」
「おお、どうしよう黒兄。思ったよりも反応が楽しめそうだよ」
「うん、俺も驚きだ」

 ……だがその前に、私に理解出来るかどうかは分からないが。……だが見ているだけでも楽しいかもしれないし、大人しく見ているとしよう。







「横必殺掴みからの――地獄へ一緒に行こう黒兄!」
「残機が二つなのを良い事に自爆特攻を!?」
「あはは、等価交換ってやつだよ!」
「ふざけるな、一発喰らえば吹っ飛ぶビャクに、0%の残機一の俺じゃ――ああ、くそ、蛇腹剣が崖に届かない――あああああ!」
「ふ、いくら一撃が強くても浮きにくい黒兄のキャラじゃこの技に勝てないんだよ! さぁて、後は菫ちゃんを悠々と倒して――」
「む、必殺のボール? が取れたから……ええと、必殺の技を……えい」
「あ。ちょ、待って待って! その場所で巨大化されると復活したてでも画面外に押し出されて――あああああ!」
「む、これは勝った、で良いのだろうか? 初勝利だ!」
「くっ、初心者に負けた……!」
「地味な嫌がらせを繰り返す罰だな」
「一発当てればとりあえず勝てるからって大技連発する黒兄に言われたくない」
「だって当たれば気持ち良いんだよ。大体ビャクだってそうだし」



「黒兄、馬鹿の一つ覚えのようにローラーでひいていくのはどうかと思う!」
「当てるのが苦手なんだ。とりあえず相手にぶつければ倒せるこの武器が俺のベストチョイス――そして相手全ロックしてのミサイル!」
「嫌がらせの極致だね!」
「筆で動きまくって裏を取ってヘイト稼ぎまくったり、ボム連発するビャクに言われたくない」
「撃って来るのを尻目に去っていくのも、ボムを避けようと逃げ惑うのを見るのも楽しんだよ!」
「嫌がらせの極致だな。……けど、それはそれとして」
「溜めて――撃って――溜めて――撃って――移動しながら――スナイプ! よし、上手くいっているぞ。役に立てているか、黒さん、ビャク!」
「はい、ほぼ一発で一殺をするので俺達の中で一番役立ってます」
「二人が動きを制限してくれているからこそだし、二人も私が逃した相手を始末しているじゃないか」
「あはは、自分で言うのもなんだけど、相手が可哀想なくらい圧倒しているね」
「全員が既に少なくとも5キルはしているからな……」



「ま、待て赤い甲羅! ビャクが使った緑の時は壁に当てても大丈夫だったのに、一回でやられるとは根性が足りないぞ!」
「根性の問題じゃ無いですよ、仕様の問題です菫さん――って棘の甲羅が飛んでくる音がする! 待って今空を飛んで――ええいちくしょう、狙ったなビャク!」
「ふふふ、当然だよ。ついでに溜めておいたスターで追い打ちをかける!」
「復活直後にわざわざ突っ込んで来るな!」
「あはは、策略だよ! これで一位だやっほう!」
「お、雷だ」
「え」
「ええと、こううして……ぽちっと」
「無敵が切れた直後に――い、いや、この程度平気だよ――ああ、黒兄がわざわざ潰して来た!」
「お返しだ!」
「くっ、だが一位は渡さない!」
「望む所だ!」
「む、ミサイルのような物が二つ取れたな」
『え』
「ごー! ……そして、切れた所にさらなるごー!」
『え、嘘、負けた!?』







「ふぅ、楽しかった!」

 最初はよく分からないげぇむであったが、やってみると思いのほか楽しめた。
 熱くなりすぎも良くないのだが、気が付くと黒さんとビャクと一緒に夢中でやっていたし、とても楽しかった。
 身体を動かしている訳でも無いのに全員で共通の事をして遊ぶ。というのは奇妙な話ではあったが、やってみると思いのほか夢中になれた。

「菫ちゃん、強いね」
「いや、ビギナーズラック、というやつだ。それに半分以上はそちらが勝っていたしな」
「あはは、十分凄いよ。ね、黒兄?」
「そうだな。けど、菫さんが楽しめたのならば嬉しいです」
「うむ、私も楽しかった」

 なにより一番楽しかったのは“皆と一緒にやった”という所だ。恐らく私一人であれば、今日のように楽しめなかっただろう。

――しかし、私の知らない物で楽しめる夢とは一体……?

 少なからずこの夢は私の知らない物しか出て来ていない。
 黒さんは同じ年齢だし、ビャクは一つ年下らしいし、全く知らないロボのようなげぇむも当然知っているはずがない。なのに鮮明に体験出来ている
 一体この夢はどういう仕組みなのだろうか……?

「あ、そうだ。最後にこれちょっとやらない?」
「これって……乙女ゲームだろ。皆で集まってやるものじゃなくないか?」
「良いじゃない。全く知らない菫ちゃんの反応を楽しむのも楽しいよ?」
「初見プレイを楽しむ感じの奴か。まぁ菫さん次第だな」
「ねぇ、菫ちゃん、このゲームやってみない? スミレちゃんによく似ている――」







「……覚めたか」

 気が付くとすっかり見慣れた自分とクロ殿の部屋に居て、カーテンが朝日を通し始めてほのかに明るくなり始める早朝だった。
 どうやら夢を見ており、早めに目が覚めたようである。

「どうかしましたか、ヴァイオレットさん……」
「む、すまない。起こしてしまったか?」
「いえ、俺もぼんやりと起き始めていた所なので」
「それなら良いのだが」
「なにか良い夢でも見られていたので?」
「何故だ?」
「俺も起きたてだったので曖昧ですけど、楽しそうな顔だった気がするんで」
「そうだな。なにか楽しかった気がするが……あまり覚えていないな」
「まぁ夢ですものね。ではどうします? もう一度寝る時間はありそうですけど」
「そうだな、寝はしないが、もう少しこうして寝転びつつ夢の余韻でも楽しむよ」
「では一緒にしましょうか」
「そうだな。そうしよう。……ところでクロ殿」
「なんです?」
「……クロ殿は前世で、未成年から成年向けの作品を楽しんでいたのだろうか」
「……はい?」

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