追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活

ヒーター

幕間的なモノ:女共の余暇の過ごし方 inハートフィールド邸


幕間的なモノ:女共の余暇の過ごし方 inハートフィールド邸


「シュバルツ、カナリア、オール。臨時の従者、助かった。お陰で兄様達がシキで過ごす期間を乗り越えられた。改めて感謝する」
「報酬に対する依頼をこなしただけさ。だが、その謝辞は受け取って美へと繋げよう」
「楽しかったし、ヴァイオレットちゃんもお疲れ様ー。そして私はキノコへ繋げるよ」
「今までとは違う経験が出来て楽しかったよ。ならば私は身体の火照りにでも繋げる」
「お前達はなにに繋げようとしているんだ。それと、アンバーも助かった」
「ありがとうございます。御令室様に仕える者として当然の事をしただけであり……え、えっと、従者の経験に繋げます!」
「無理をするな。アンバーには苦労も掛けているからな。バーントと共にしばらく休みを与えるからな」
「いえ、私にはそのような物は不要です。充分休みも頂いていますし」
「臨時手当、とでも思っておけばいい」
「しかし……」
「そうだよアンバー君。折角言われてるんだから、素直に余暇を受け取れば良い。懸命に働くのは美徳だが、休むのも己が内面の美へと繋がるものだ」
「シュバルツに同意するのは少々抵抗があるが、そういう事だ」
「は、はぁ、承知いたしました」
「けど、余暇かー。アンバーちゃんて休みの時どう過ごすの?」
「そうですね、読書をしたり、買い物をしたり……香水が好きなので、自作の香水を作ったりしますね」
「おお、なんか大人の趣味っぽい!」
「アンバーは色んな香りが好きだからな。それにアンバーが作る物はパーティーで使っても問題ないようなものだったから、その道でも問題無いほどだぞ」
「ほう、それは興味深い。行商人として扱ってみる気は無いかな?」
「今の所はその予定はないですね。それに御令室様の傍を離れると、最高の香りが作られなくなるので!」
「そ、そうか。よく分からないが、仕事の合間の息抜きだからこそ作れる、という事なんだな」
「そういう事でお願いします!」
「(ねぇ、あれって……)」
「(ああ、多分アレはヴァイオレット君の香りを高めるために作っているのに、対象が居なくちゃ意味ないし、なにより香水をつけてさらに高まった香りを堪能できない! という感じだろう)」
「(だよねー。アンバーちゃんってシキの領民だってよく分かるよね)」
「(その納得の仕方はどうなんだい?)」
「どうした、カナリアにシュバルツ?」
「なんでもないよー」
「そうだね、ないない」
「? そうか」
「アンバーさん。一つ聞きたいのだが」
「どうされました、オール様?」
「その香水で相手を興奮させる媚薬的な効果を発揮できるものってあったりする?」
「なにを聞いているんだオール!」
「ありますよ」
「あるのかアンバー!?」
「ええ、ただ使った瞬間につけた御方も興奮して、一番効き、相手に効くほどまでになると自分が先に倒れるのが難点ですが」
「それは難点ではなく欠点ではないか」
「よし、それ下さいな。言い値で買います」
「買うのかオール!?」
「むしろヴァイオレットは何故買わないのです」
「いや、そのような物は必要ないと言うか……」
「旦那様につければ相手が動けなくなるのですよ?」
「…………。いや、私には不要だな」
「葛藤があったね」
「ありましたね」
「あったねー」
「ない。今の間は悪用厳禁という事でオールに売るべきでないと考えただけだ」
「ええ、そんな! 折角の私の爛れた余暇を奪うというのですか!?」
「他人のその辺りに口を出すべきでは無かろうが、もっと違う余暇を楽しんでくれ!」
「うぅ、折角の夢にまで見た媚薬こうすいが……!」
「夢に見るな。アンバーもそういった類は出来れば作らないでくれ」
「承知いたしました。とはいえ、これが効くのは御主人様と御令室様とグレイ様だけだと思いますが。御二人の香りを高めるために作っていた偶然の産物なので」
「恐ろしき産物だ……」
「でも、余暇ですか。私はもうそろそろシキを去りますから、と余暇の時間は終わりですね。久々の余暇で楽しかったです」
「久々ってー?」
「一応私はこの国の王族ですし、その前も帝国で働き詰めでしたからね」
「なるほどー。私はその余暇でオールちゃんと会えて嬉しかったよ!」
「ふふ、ありがとうございます。子供の頃とは違った余暇を楽しめて良かったです」
「オール君が子供の頃、どういった事をしたのかな? 同じ帝国民ではあるが、私のようにボール遊びバルシューレで遊んだ、という事は無いだろう?」
「如何に正体がバレずに制限のかかった物を手に入れるかを楽しんでましたよ」
「なるほど、素晴しい事だな」
「え、素晴しいの、シュバルツちゃん?」
「性への興味は美しさを引き立てる要因の一つであるからね。まさに幼少期からのエリート興味が、今のオール君の美しさの基礎となったのさ!」
「おー、なるほどー!」
「私は気付かぬ内にそのような事を……!」
「(……御令室様)」
「(……なにも言うな)」
「(……はい)」
「では、私よりさらに美しい貴女は、そういう事に大いに興味がおありで?」
「ふ、もちろん私の美にはそういった面もあるだろう。だが、私の余暇は全てのあらゆる美、私の私のためにある私だけの美に費やした! 余暇を美に費やしたが故に、こうして美しくなったのさ!」
「おー!!」
「流石ですシュバルツ様!」
美美美ほめても美美美美美うつくしさしか美美美返せんぞ!」
「(……御令室様)」
「(……言うな)」
「(……はい)」
「皆色々やってるんだなー。私なんて余暇はキノコか自然を堪能するくらいしかしてないよ。エルフとはいえ、もう少し増やした方が良いのかな?」
「増やせば良いというものでもないさ。自分らしくあるカナリア君は、それだけでも充分有意義に余暇を過ごしていると言えるさ」
「そうかなー? あ、じゃあヴァイオレットちゃんは余暇ってどんな風に過ごしてたの?」
「私か?」
「うん、シキに来る前とか」
「殿下に相応しくあろうと、余暇など作らずに基本勉強か鍛錬続きだったからな……バレンタイン家の教育としても、余暇など作る余裕は無かったな。趣味もこれと言って無かったし……」
「ですね……御令室様はずっとなにかをされていましたものね……」
「殿下に追いつくために余裕が無かったからな……」
「お、おお。なんかごめんね。じゃあ今はどう過ごしてるの? クロは働き詰めとか許さない性質だろうし、なにかしたりするんでしょ?」
「今こうして話す事が私の余暇とも言えるし、クロ殿や友と語らうのが私の余暇の過ごし方だな」
「そうなんだ?」
「はは、ヴァイオレット君らしい余暇だね」
「ええ、昔を知っている身としては喜ばしく思いますね」
「昔のヴァイオレット君?」
「周囲の空気を引き締める様な、常にオーラを放っていた感じです」
「はは、それもヴァイオレット君らしい」
「う、うるさいぞオール。シュバルツもうるさい」
うん、すまなかったね」
「でも、誰かと一緒に居る事の方が安らぐんだねー。私もそういう時はあるけど、自然の中静かでいる方が安らいだりするんだよね」
「ヒトそれぞれだ」
「エルフだけどね」
「そういう事ではない。カナリアもいずれ分かるかもしれないぞ。なにせシロガネと話す時は色々と楽しそうだったからな」
「ごふっ」
「ああ、それは是非聞きたいと思っていたんだ」
「私もです。何処までイッた……もとい、進んだんですか!」
「ど、何処までもなにもないですよ! ただ文通し合うようになっただけです!」
「そんな、家に連れ込んでナニも無かったというのですか!?」
「連れ込んだだって!?」
「連れ込んだけど、なにも無かったですから! 彼はとても紳士だったんですよ!」
「ほほう、そうなのか」
「そうなんだね」
「そうなんですね」
「そのようなんですね」
「うん、そうなんですよ!」
『…………』
「…………」
『じゃあ、その時の事を詳しく聞かせて貰いましょうか!!』
「うわー、このヒト達怖いですー!」

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