追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活
大抵大人しくなる(:淡黄)
View.クリームヒルト
眠そうであり、何所となく疲れた様子のヴェールさんから現在の状況に関しての説明を受けた。
昨日とある場所で調査を行った所、王国特有の魔力が突如溢れたらしい。それは防ぎきる事が出来ず、魔力が全員に包むかのようにまとわりついたかと思うと、妙な変質をしたようだ。
恐らくその場に居たメンバーに合わせて変質したそうだが、全ての解明には至っておらず、結果的にその場に居たハク以外の皆の気を失わせた後に記憶ごと若返らせたそうである。
ヴェールさんは年齢故なのか別の理由かは分からないが、多少の混乱はあったものの記憶は元のままであり、その後すぐに調べるために気を失い若返った皆を運び、王城の医療魔法師などが出張ったけど回復には至らず。
挙句には目を覚ましたら記憶の欠如。解決のための協力を本人達にも仰ぐ事が出来ずにてんやわんやだったそうだ。
そして今、なんとか眠らせる事に成功し、ヴェールさんは学園に行ってノワール学園長に話して今に至る、という事である。
「――じゃあ、そういう事だから……一時間ほどよろしく……」
と、いう説明をした後、目を開けているのがやっとといった様子のヴェールさんは自室とやらに戻っていった。多分戻って来るのは一時間では済まなさそうである。
「……どうしよっか」
そして取り残された皆に、私が最初に声を出して聞いた。
内容が内容だけに、協力出来る事はしよう、というのは私達の共通認識だとは思う。だが、同時にもう一つの共通認識があると思う。それは、
――この年齢の頃の殿下達って絶対に扱いが難しい……!
と、いう事だ。
今でこそ寝ているので可愛らしいが、あの何事もそつなくこなすヴェールさんもあの様子であるし、起きたら大変な事は明白だ。
シルバ君は入学前の父親以外は信じないような冷たい性格だろう。
アプリコットちゃんはシキに来る前の状態ならば他者を信じない性格かもしれない。
グレイ君は多分、虐待を受けていた当時で怯えやすいだろう。
ヴァーミリオン殿下は多分、あらゆる相手が敵に見えて壁を作っていた時期だろう。
生徒会長さんは……よく分からないけど見失わないようにしよう。
――どうしよう、皆一番ヤバい時期だ。
今は黒兄とかメアリーちゃんのお陰で人あたりが良くなってはいるが、間違いなく対応に疲れる。何事もそつなくこなすヴェールさんは疲れ、一応は育ての母であるコーラル王妃様も拒否られたのだ。一筋縄ではいかないだろう。
「と、とりあえず役割分担をして頑張りましょう」
「そうだね。寝ている内に決める事を決めた方が良さそうだ」
そして私の言葉にアッシュ君がまず提案し、エクル兄さんが方向性を決める。
状況が分からないのは共通しているけど、見ているだけというのも良くない。難しくとも、やらなければならない事もあるんだ。大丈夫、黒兄とかメアリーちゃんと比べたらやる事は簡単な部類のはずなのだから。
とりあえず私はこの状況で出来る事と言ったら……思った事を提案しよう。
「フューシャちゃん、そしてスカイちゃん。生徒会女子ズで面倒を見るのはシルバ君かグレイ君、あるいはヴァーミリオン殿下の男の子ズにしない?」
「グレイ君は……そうですね。以前は大人の男性というだけでも怖がっていたと聞きますし、その方が良いかもしれませんね」
「ヴァーミリオン兄様は……私には……ずっと優しかったから……私が対応するのも分かるけど……」
「何故男の子だけなんです?」
当然の疑問と言えば疑問ではある。だけどこういったシチュエーションの時、前世の記憶を呼び起こすと、私達が対応するのは男の子の方が良い。何故なら。
「あはは、精神もショタ化した男の子は、可愛いといって抱きしめておっぱいの柔らかさを味合わせれば照れて大人しくなるんだよ!」
そう、ショタ化した男の子を「可愛い!」と愛でるような感じで抱きしめる。
こういう場合は“男”から“男の子”に変わった事により、女の子キャラが性的忌避感とやらが無くなって身体的接触のハードルが下がり、抱きしめる事に躊躇いが無くなるのだ。だから迷わず顔を埋めさせたりする。たまに一緒にお風呂に入ったりもする。
対してショタ化した男の子は可愛く照れてしまったりする事が多く、反発しても「先程の感触が……!」みたいな感じで悶々として大人しくなる。
そして大人に戻った暁には、覚えている場合は思い出して互いに照れる所までがセットである。
「そういうものだと私は前世の本で読んだんだよ!」
「エクル先輩。妹が妙な事言ってますよ、放っておいていいんですか」
「はははー、……私ですら本でそういうものはあると、よく分かる内容ではあるね」
「そうなのですか!?」
生憎と私は抱きしめて埋めさせるほどの立派なモノはないが、フューシャちゃんやスカイちゃんならいけるはず……!
メアリーちゃんが居れば是非ともヴァーミリオン殿下の相手をし、やって欲しいものだ。今の状態のヴァーミリオン殿下なら「可愛い!」と言って抱きしめそうだし、それをキッカケに元に戻った後には距離が……近付けば良いなぁ。……遠ざかるかな?
「クリームヒルト。色々言いたい事はありますが……」
と、私がメアリーちゃんの部分以外を熱弁した所でスカイちゃんが少し言い辛そうに私になにか言おうとする。
流石にないと思われたかな。例えショタ化したとはいえ、相手はよく知っている男の子だ。可愛くとも思う所はあるのかもしれないね。
「そもそも男性って、気になる相手に抱きしめられて胸に埋められれば年齢問わずに大抵照れて大人しくなるんじゃありませんか?」
「あ、そこなんだ」
……うん、確かにショタ状態で照れる女の子相手なら、男の子なら年齢問わずに照れて大人しくなりそうだ。……うん、そうだね。
「エクル先輩、言われていますが良いのですか?」
「はははー、だけど君達だって、メアリー様相手だったら否定出来ないだろう。少なくとも私は出来ない」
「…………」
「アッシュ、そこで黙るな」
「うるさいぞシャル。お前は否定できるのか」
「…………まぁな」
「間が気になるけど、否定出来て偉いねシャルくん。ティー殿下は……クリームヒルトの場合かな?」
「……あ、あまりそういった内容は話す事ではないかと」
「そうだね。申し訳ない、ティー殿下」
……ふーん、そっか。ティー君は照れてそういう反応するのかー。ふーん。
………………なるほどねー。
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