追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活

ヒーター

“良”く思われたい(:白)


View.メアリー


「お願いです、お答えください。私にとっては重要な事なのです……!」
「え、ええと……クリームヒルトさんに頼まれた、とかなのでしょうか……?」
「そう思って下さって結構ではありませんが、お答え下さいませんか?」
「結構ではないんですね……」

 アプリコットの件も重要ではありますが、私にとってはこの件も重要です。
 男性は一体どのような下着を着用していたのならば嬉しいのか。先程落として見られた際の反応では分かり辛く、傾向も分かりません。ならば彼の弟であるティー殿下ならば似たような傾向の可能性が高いのです。……いえ、似ているからどうという事は無いのですがね。

「コホン、ええと、下着……下着ですか。この場合の下着とは……」
「ブラとショーツです。可愛いとかセクシーだと思う物を」
「……ですよね。しかし私はそういった類に詳しくは無いのですが……い、いえ。頑張って答えます」

 頬を染めつつ、聞かれたからには真剣に私の問いに答えようとするティー殿下。その心意気がティー殿下らしいと思いつつ、同時に申し訳ないとも思います。……今更ですが、これってセクハラになるのでしょうか。……なりますよね。

「大切な所をキチンと守る、温かそうなものが良いですが……可愛いとか思うのでしたら、ピンク色の、なにやらフリフリしたレース? がついた物でしょうか? クリームヒルトさんの可愛らしさに似合うと思います」
「なるほど」
「セ、セクシーな方は……黒色や濃い赤色で、布自体に刺繍が施された物でしょうか」
「なるほど」

 ティー殿下はどうやら色で印象が違うと感じるようです。ピンクや白のような明るい系統は可愛く、黒や濃い赤のような暗めの系統はセクシーに感じる。……色ですが、なるほど。

「ですがクリームヒルトさんには、シンプルな物が似合うと思います」
「装飾が無いモノ、という事ですか」
「はい。彼女にはシンプルな物にワンポイントついているような物の方が似合うかと。彼女の可愛さに合います」

 ……なるほど。全体的な傾向と、当人に似合うかどうかは別問題という話ですか。私に合うものとなると………………なにになるのでしょう。なにを着れば彼が私らしいと思うのでしょうか。

「なるほどー。つまり明るい色のリボンが付いているようなシンプルな物が良いんだね。大事な所が隠れていないえっちぃ奴だったり、マイクロ的なものじゃなくて良いの?」
「そのような物を着て下さるのは私にとって――とって?」
「あはは、うんうん。ティー君にとってアダルティな下着を着る私はどうなのかな?」

 あ、クリームヒルトです。いつの間に来たのでしょう。

「ほらほら、正直に言って良いんだよ? 着て誘惑して欲しいのかな? 嬉しいのかな?」
「え、ええと……」
「それともやっぱり可愛いのをつけているのを見たい感じなのかな? 仕様がないね。錬金魔法で作って、今履いて見せれば喜ぶのかな? 私はえっちぃ相手に好かれちゃったみたいだね……!」
「ち、違います! 私は私が望む下着を身に着けて欲しいという訳では無いのですから、着用しなくて結構です!」
「なんだって、つまりティー君は私にノーパンノーブラの状態が良いと! そういう事なんだね!」
「何故そうなるのです!?」
「あはは、だって着用しなくて良いって……仕様が無いね、脱いで見せろというのなら、殿下であるティー君に言われた以上は、伯爵令嬢である私は従うしかないね……!」
「そういう事でもありませんし、ぬ、脱がなくて結構ですから!」

 おお、クリームヒルトがここぞとばかりにティー殿下を揶揄っています。見せる気は無いのでしょうが、スカートの裾を掴んで今にもたくし上げをしそうな仕草をしています。……なるほど、好きな人相手だと、ティー殿下はこういう風な反応をするのですね。彼の場合――と、それ所ではありません。私が原因でこうなったのですから、すぐに止めないと。

「クリームヒルト、私が無理に聞いたのです。責めるのであれば私を責めてください」
「あはは、別に責めている訳じゃ無いから大丈夫だし、大体把握しているよ」
「そうなのですか?」
「うん。なんか中庭の人目に付きにくい所で二人居るなー、って思ってこっそり近付いたら、下着の好みの話を聞いているんだもの。ビックリしたよ」

 何故かは分かりませんが、命拾いをした気がします。
 普段のクリームヒルトであれば見かけたら元気よく挨拶をしそうですし、私達を見かけた時に複雑な感情を抱きつつ近付き、会話の内容を聞くためにこっそり聞こうとしていた気がします。……何故かそう思います。

「でも、急にどうしてあんな事を聞いたのメアリーちゃん。……はっ!? まさかティー君の好みの物を身に着けて、誘惑しようとした感じだったり……!」
「そ、そうだったのですかメアリーさん!?」
「違います。その……男女で好みの違いがあるというので、傾向を知りたくてつい……」
「あはは、そうなんだ。という事はメアリーちゃんは男の子に見せたくて聞いた訳なんだね?」
「え? いえ、そういう訳では無いのですが」

 私は男性にどう思われるかを知りたかっただけで、見せる前提の話をしてはいません。
 見せびらかしたくは無いので、今回はただどう思われるかという興味で聞いただけで……

「あれ? でも異性の好みを知りたいという事は、異性に良く見せたいという事でしょ?」
「……そうなるのでしょうか?」
「うん、黒兄も言ってたけど、基本服は自分がどう思うかと、相手がどう思うか、を考えるものだって言ってたし」
「……そうですね。確かに私も特定の相手にどう思われるか、と思い聞きましたね」

 確かに普段は私が可愛いと思ったり、着やすいと思って服を身に着けてます。見られる事も意識はしますが、基本は私が私をどう思うかで選んでいます。

「へぇ、“特定の”相手なんだ。つまりそれって――」

 そして今回は相手がどう思うかと考えたので、クリームヒルトの言う通りであるという事で、その相手とは――

「その“特定の誰か”が好きだから、その相手に良く思われたくて、知りたいと思ったんだね?」







「メアリーさん、大丈夫なのでしょうか。なにやら上の空のご様子でしたが……」
「あはは、大丈夫でしょ。多分目を逸らしていた事に気付きかけている感じ、なだけだと思うよ」
「そうなのですか?」
「うん、そうだね。……メアリーお姉ちゃん、か」
「どうされました?」
「なんでもないよ。……うん、なんでもない」
「?」
「ところでティー君。私には装飾の少ない白色やピンク色を着て欲しいの?」
「あ、いえ、そういう訳ではなく。私は印象の話であり、貴女はなにを着ても素晴らしい物になる――いえ、この言い方は言い方で、変に取られそうで……ええと……!」
「あはは、ティー君顔真っ赤―」
「う、すみません……!」
「謝らなくて良いよ。ティー君らしくて可愛いと思うし」
「可愛い、ですか……複雑です」
「あはは、そんな複雑なティー君に良い事を教えよう! ほら、少し屈んで耳貸して?」
「え? はい、なんでしょうか……?」
「実はね。今の私は――で、――なんだよ」
「へ? い、今なんと……!?」
「さぁ、なんでしょう。一度しか言わないし、確かめたかったら確かめても良いよ?」
「確かめませんよ!」
「そっかー、残念。良く思われたくて言ったんだけどなー」
「それはどういった意味で……!?」
「あはは、さぁね。自分で考えてみよう!」

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