追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活

ヒーター

リクエスト話:シキ住民の学園生活


 ※この話は活動報告にて募集いたしましたリクエスト話(ifなど)になります。細かな設定などに差異があるかもしれませんが、気にせずにお楽しみ頂ければ幸いです。

リクエスト内容「シキ住民が学園生徒、または先生な学園生活のIF」





 俺の名はクロ・ハートフィールド。
 前世持ちの転生者で、王国の名門、アゼリア学園にて教師をやっている。
 前世の知識を含めても勉強は出来ない部類の俺ではあるが、運動方面で評価されて教師をやれているのである。
 正直言うと貴族の柵とか身分差の軋轢とかが不安であったのだが、案ずるより産むが易しとでもいうべきか、なんとかやっていけている。
 さらには「彼以上に、戦闘を教わる事で己を鍛えられる教師は居ない」と評され、慕われる程度までにはなった。
 そんな姿を評価され、今年度から俺はクラスを受け持つ担任教師となることになった。負担は増えるが、任されたからには頑張っていこうと思う。

――新設のクラスかー。

 なんでも今年度入学人数は多いらしく、ルナマーズマーキュリージュピターヴィナスに続く六クラス目の担任を俺が務めるらしい。
 クラス名はシキ組だそうだ。
 前世の苗字が一色イッシキであった俺に相応しいクラスメイト言えよう。
 さぁ、担任として頑張るぞ!



「クロ先生、制服のスカートにスリットの許可を! 教義的に下着は着用できませんが、一体化型スリットスカートなら問題無いはずです!」
「問題あるわ!」
「じゃあ私に下着無しスカートを履けと言うのですか、変態先生!」
「腸骨稜までスリット入れる方が変態だ! 大体教会関係者は既に一体型スカートになっているだろうが!」

「フゥーハハハ! 我の名はこの混沌に満ちた学園を支配するアプリコット! 我が支配するまでの束の間の平和を楽しむが良いわ! 行くぞ、同士グレイ!」
「はい、アプリコットちゃん! 学園生徒会長を目指し、共に頑張っていきましょう!」
「君達ー、もう授業始まるから、机の上に立つのはやめようねー?」
「安心いたせよ、クロ教諭。靴は脱いだし、ハンカチの上に立っているからな!」
「うん、そこじゃ無いよアプリコット君」
「そこじゃない……はっ、私めがアプリコットちゃんを持ちあげれば万事解決という事ですねクロ様先生!」
「そこでも無いよグレイ君。あと様要らないから」

「クロ先生、アイボリー君が実技の授業で怪我した人に治しに走っていき、興奮するから困ると言う苦情が!」
「ええい、連れ戻しに行ってくる! アッシュ君、それまでクラス頼んだ!」
「え!?」

「クロ先生、エメラルドちゃんがまた毒を飲んで机に突っ伏して痙攣を! クロ先生お得意の見事な一撃で毒を吐かせてください!」
「殴るのが趣味みたいに言わないでくれるかな、シルバ君――おらぁ!」
「ゴホッゴホッ!? くそ、毒草だけをピンポイントに、だと……!」
「おお、やっぱり殴るのすごいやクロ先生は!」
「やめてシルバ君。本当にその評価やめて」

「クロ先生パンダが、ネコが猫なのにパンダが大熊猫なんです! パンダパンダで日が暮れます!」
「じゃじゃ馬――じゃない、それは彼女の特徴だから気にしないで。落ち着いてね、シャトルーズ君」

「ククク……クロ先生、ウツブシちゃんが変身に失敗したようだから、保健室まで連れて行くよ……ククク……!」
「ああ、うん。オーキッド君は信用できるから任せるけど……そっち窓だよ?」
「それではいってきます――ククク!!」
「!? オーキッド君が闇の炎に抱かれて窓へ消えて行った……!?」

「クロ先生、俺は在学期間中に学園中の皆を愛して見せるぜハッハー!」
「ああ、うん。同意の愛は良いモノだと思うから応援しているけど、同意でない愛であったり、責任を取らないような愛を紡いだ場合は骨を214本折るからな」
「クロ先生、当然そんな事はしないが怖いぜ。というかありとあらゆる骨全部折れて無いか、それ」
「大丈夫、人間には215本も骨があるんだ、214本ぐらいなんという事でも無い。――分かったね、カーキー君。俺にそんな事をさせないでくれよ?」
「はい、クロ先生が怖いという事はよく分かったぜ。という訳でクロ先生今夜どうですかだぜハッハー!」
「お前凄いな」

「ロボ君。遅刻した理由を聞こうか」
「海ノ神ノ危機ヲ察知シ、急行シ解決シタ後。山ノ神ガ大地ヲ揺ルガソウトシタノデ、止メテ来マシタ。ソノ後、エネルギー不足デ上手ク飛ベズ、遅刻ヲ……申シ訳ナイデス」
「んー……つまり頭痛だな?」
「ソウデスネ」
「よし、じゃあそういう事で。次は気を付けろよー」
「ハイ。アリガトウゴザマス」
「クロ先生、それで良いんですか!? というか頭痛扱いになるんですか!?」

「ぐー……むにゃ……」
「ブラウン君、起きなさい」
「……はっ!? ……大丈夫です、寝てませんクロ先生。今日も授業は頑張ります」
「今日の授業の全日程は終わったよ。……他の先生方なにしてたんだ……」
「そういえば今日はやけにフォーンを見つけられた気がしますよ、クロ先生。不思議なくらい見つけて、なにか気を逸らしていた気がします」
「見つけられた、という感想はどうかと思うが、理由は分かった。ありがとうヴァーミリオン君。そしてこっそりと気配を消して去ろうとしているフォーン君は説教だ」

コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス
アイスアイスアイスアイスアイスアイスアイスアイスアイスアイス
「クロ先生、ベージュ君とベージュさんが校庭で殺し合いを! み、皆の避難をさせないと!」
「……うん、お願いねスカイ君。俺は止めて来るから」
「え、クロお兄――」
「お前ら。愛し合うのには場所を弁えろと言ったよな」
「あ!? ……なんだクロ先公かよ」
「人間の先公は黙ってろよ。俺達の愛に場所なんて関係ねぇ」
「ああ、周囲がどうなろうと、俺達の愛の前には些事――」
「……強化A
『ぐぺっ!?』
「……よし、と。……スカイ君。ちょっと先生はこの後二人に指導があるから、次の授業は自習にさせておいてくれ」
「は、はい。……大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。……ちょっとイラついているだけだから」
「ひっ。クロお兄ちゃんがイラつきをわざわざ口に……!?」

「なぁ、クロ先生。同じ先生として相談したい事があるんだ。無理なら無理と言ってくれて構わねぇんだが……」
「なんですブライ先生。貴方は副担任なんですから、クラスの一蓮托生のようなモノ。相談くらいいくらでも聞きますよ」
「助かる。……実はな……クラスにグレイ君が居るだろう」
「はい、あの他の子と比べるとちょっと見た目が幼いですが、きちんとした良い子ですよね」
「ああ。……成人した彼なら、同意の上で近付いても――」
「あ、ノワール学園長! 副担任の変更について相談が!」
「待てクロ先生! 手は出さない、近付いて見守るだけだ!」
「犯罪者は大抵そういった所から入るんだよ!」

「クロ先生。真実の愛を見つけたので、婚約破棄後に貴族も騎士の身分を全部捨てて学園を辞めて半ゴブリンである彼と一緒に幸せな家庭を築きます。実家は私を婚約破棄する役立たずと言って追い出そうとしましたが、実は本当に出て行くと思っていなかったみたいで、今は戻って来て欲しいと言われていますが、もう遅いので迷わずに行って溺愛し合うスローライフな生活を送ろうと思います。今までお世話になりました!」
「Gob!」
「待ってホリゾンブルー君。情報が渋滞している」



 これ、学級崩壊じゃなかろうか。
 学級委員長のアッシュ君や、同じく長のスカイ君。ヴァーミリオン殿下やシャトルーズ君などはまだ良いのだが……全体的に個性が強すぎるぞ。
 でもなんとなく「この程度では、コイツらの場合は学級崩壊とは言わない」という言葉が脳裏に過ったが――気のせいだ。気のせいに違いない。
 ノワール学園長め、俺の事を評価したから担任にしたんだとかいっていたけど、面倒な奴らを一カ所に固めて押し付けただけじゃ無かろうな。もしそうだとしたら、今度あの若作り学園長の美男子生徒会ハーレムの結成を阻止してやる。

「クロ先生、大丈夫ですか?」

 そして担当のクラスについて頭を痛めていると、とある女生徒が話しかけてきた。

「ん? ああ、大丈夫だよ」
「無理はなさらないでくださいね。……シキ組は大変でしょうから」
「はは、大丈夫。個性豊かだけど、悪い奴ら……うん、悪い奴らじゃ無いから」
「迷いましたね」

 綺麗な菫色髪の少女は、蒼い目で心配そうに俺を見て来る。
 ……うん、数少ない癒し要素だな、彼女は。

「君の方こそ、大丈夫? 公爵家として色々大変と聞いたけど……」
「はい、大丈夫ですよ。……あ、クロ先生、ネクタイが緩んでいますよ」
「え。ああ、そういえばさっき動くために緩めたっけ」
「ジッとしていてください。私が直しますので」
「いや、生徒である君にして貰うのは……」

 確かに彼女は俺の――だが、生徒である彼女にそれをして貰うのは……

「したいんです」
「……はい。どうぞ」

 しかし強めの口調に押され、つい許してしまう。……彼女には弱いな、俺は。

「…………よし、これで良いですよ」

 キチンと締めたネクタイを満足げに見る彼女。

「ありがとう。ヴァ――」

 そんな可愛らしい少女に俺は感謝の言葉を――

「あー、先生が学校でイチャついてるー」
「――はっ!?」

 言おうとして、担当クラスの子達に見られている事に気付いた。
 くそっ、どいつもこいつも俺を揶揄おうとしているような、おもちゃを見つけたような目で俺を見て来る……!
 だが今回は俺が良くなかったんだ。俺が油断して服装の乱れがあったから――

「先生、普段は色々言っているのに、生徒に照れてるー!」
「不純異性交遊だー!」
「いけないんだー!」
「ひゅーひゅー。お熱いこってー!」
「これは俺達の行動も許して貰わなくちゃー!」
「そうだよなー!」
「なんたって先生がこれだものー!」
「俺達の個性も許して貰わなくっちゃな!」
「ああ、なにせ個性だものな!」
「個性を潰しちゃ、イケないよな!」

 ……よし。

「生徒達、喜べ。今俺になにか言った生徒達の、その個性を伸ばすために、今度の実地研修でとある事をさせてやる」
「とある事?」
「ああ。【不浄観ふじょうかん】といってな。とても良い研修なんだ。お前達は喜ぶぞ」
「へー、それってどんな内容ですか、イチャつきクロ先生ー」
「俺も受けたいですー」
「ああ。綺麗な異性の裸体をな、眺めるんだよ」
「お、先生がついに生徒にエロを――」
「身体が腐っていく様を、ずっとな」
『え』
「大丈夫だ、普段から周囲に迷惑をかけているお前達。お前達が本当は良い奴らなのは知っているから――これからの楽しい学園生活のために、俺が全力を持って【不浄観】の研修をさせてやるからな!!」
『嫌です!』

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