追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活

ヒーター

幕間的なモノ:ゲームとは


幕間的なモノ:ゲームとは?


「そういえばクロ殿。私が見たあの光景に関して気になる事があるのだが」
「なんです?」
「クリームヒルトやエクルによく似た者達があの光景には居たのだが……クロ殿やメアリーは居なかった。私が見ていないだけで、クロ殿達に似た者も登場するのか?」
「端役として居たのかもしれませんが、少なくとも名前とか姿は出ていませんね。物語には関わりません」
「ふむ、そうなのか」
「あー……ですが一つ気になることが有りまして」
「どうした?」
「……あのヴァイオレットさんの結末の一つに、“決闘に敗れ、親に見捨てられ辺境の男に嫁ぐ”というものがあるんです」
「ほう、という事はその者がクロ殿という事になるのだろうか。その私と今の私が一番近い形になるのだろうか。なんだ、幸福な結末もあったんだな」
「辺境の醜男に嫁いで変態的な扱いを受け心身ボロボロになりますが」
「訂正する。製作者はやはりあの私に恨みを持っているのだな」
「正直婚姻の話を聞いた時“え、俺醜男扱い? ……とりあえず変態的な扱いはよそう”と思いましたし」
「クロ殿は世界一格好良いから安心してくれ」
「うぐっ。……ありがとうございます。世界一綺麗な貴女に言われるととても嬉しいです」
「うぐっ。……ところでもう一つ疑問なのだが」
「なんでしょう?」
「今クロ殿が言ったように、複数のあの私がひどい目にあったように……何故複数の結末があるんだ?」
「?」
「ええと……あの作品の主人公はクリームヒルトによく似た女性なのだろう?」
「はい。ちなみにクリームヒルト自身は自分がそうだと気付いていませんでしたが」
「だが彼女はメアリーのように多くの男性と仲良くなっていたが、メアリーのように複数一緒に、という事は無かった。……いや、一部そういった光景もあったが」
「場合によっては殿下達とか全員惚れさせて、王女となり、逆ハーレム的な感じになる可能性もありますし」
「凄いな。だがその“場合によっては”とあるが、何故その場合によってはがあるんだ?」
「? ……ああ、成程。奇妙かもしれませんが、ヴァイオレットさんの見た光景は一つのゲームなんです」
遊戯ゲーム?」
「ええ、本とか演劇では無くて、ゲームと呼ばれる作品なんですよ。ある場面になると選択肢が出て、どう行動するかをプレイしている人が選択すると、結末が変わる作品なんです」
「ほう……そのような作品があるとは。日本NIHONと言う所……いや、クロ殿が居た前世では凄いモノがあるんだな」
「そうですよね。今思い返すとアレは夢だったのではないかとすら思えます」
「だが多くの結末か……」
「はい。ヴァイオレットさんが先程言ったように、仲良くなりたい男性が好みそうな選択肢を選んで、攻略……結ばれる様にするとかそんな感じです」
「その対象は、ヴァーミリオン殿下とアッシュ、エクルに……」
「シャトルーズ卿にシルバですね。その五人から好きな男性と結ばれるような選択肢を選び、物語を楽しむ……と言った感じです」
「ふむ、自分で結末を選ぶ事が出来る作品とは面白そうだ。やってみたくはあるが、まず無理だろうな。……というか自分に似た者が死んだり、知り合いに似た者を口説くゲームはしたくないな」
「でしょうね……まぁそんなゲームばかりじゃないんですが」
「しかし、主人公がクリームヒルトによく似た女性だとすると、彼女はどんな結末があるんだ?」
「そうですね、やはりヴァイオレットさんが見たであろう幸福な結末とかですね。そこも評判が良いんです。“報われてよかった……!”って感じで」
「成程、やはり幸福な結末が……そこ“も”? 他にあるのか?」
「……ええ。とても珍しいゲームでして。色んな結末があるんです。例えば――」







「いやっ……なにをするの、離して! お願い、元のローシェンナ先輩に戻って!」
「ふ、ふふふ……君が悪いんだよ。私のヴァーミリオン殿下を誑かすから……ふ、ふふふふふふふふふふふ!」
「き、きゃ―!?」

【ヴァーミリオンルートバッドエンド:残念、監禁されちゃった】


「……君に出会えて良かったよ」
「そんな事言わないで、それじゃ、まるで今生の――」
「これは私に対する罰なのです。――さようなら」

【アッシュルートバッドエンド:罪を背負わされ永劫の別離】


「貴女を感じる」
「…………」
「貴女を感じる事が出来る」
「…………」
「……一緒に封印の道を選んでくれてありがとう。永い時で、他になにもないけれど。貴女が傍に居れば、永いだけで辛くは無いよ」

【シルバメリーバッドエンド:意識のない彼女と、永久の封印】


「流通を裏から牛耳る組織を、私達で壊滅させようと目指して早数年……まだまだ闇は深いね」
「そうだね。錬金魔法の道具と私の魔法でどうにかなってはいる。……本当に助かるよ」
「それは言わない約束でしょう? 私はエクルさんが好きだから、他に味方が居なくてもこうして二人で頑張るって決めたんだから」
「そうですね。……では、行きましょう!」
「おー!」

【エクルルートノーマルエンド:後に彼女らは違う意味での闇の組織になる】


主人公クリームヒルト、お前また変なモノを作ったな!?」
「失礼な。ヴァーミリオン殿下の妻にして宮廷仕えとして変なモノなんて錬金しつくらないよ!」
「ではこの栄養剤はなんだ!? これを使った植物が意志を持って暴れていたぞ!?」
「ありゃ、配合間違えたかな。ごめんなさい、回収と鎮圧してくるね!」
「いや、鎮圧はしたのだが……宰相として謝る俺の身にもなってくれ」
「ごめんね。……ほら、おいで。ご褒美上げる」
「そう言えば許されると思っていないか?」
「……駄目? 私も抱きしめたいんだけど……」
「……構わない。だが、この前のような使った兵士がハイになって五日ほど叫ぶような薬はやめてくれよ? 遠征から帰って来たら大変だったんだからな」
「はーい」

【ヴァーミリオンノーマルエンド:奥様は甘やかし上手な、凄腕(?)宮廷魔法使い】


「私は――俺は旅に出る」
「えっ……どうしてなのシャル君。私と一緒に騎士になるんじゃなかったの!?」
「ああ。……だが、俺は弱い俺が許せない。いつか必ず――お前を超えて見せる。強くなって帰って来るからな!」
「分かったよ……私は現役騎士団全員倒しちゃって張り合いが無いけど、帰って来るまで最強で居続けるからね!」
「……ああ、正直父上を倒すとは思わなかったよ。しかも二発で」
「私はまだまだだよ。ニノウチイラズにはまだ遠い……!」

【シャトルーズノーマルエンド:強くなってまた会おう。新たな騎士団長は国最強!】


「女同士って、落ち着くね……」
「……あの、今更ながら聞いても良いですか?」
「なにかな、スカイちゃん?」
「没落した私と一緒に来てお店を経営してくれるのは嬉しかったです。ですがその理由って……」
「……想像してよ、スカイちゃん。私を取り合って、最後には私が悪女として扱われる生活をさ……経験無いのに、私は一晩で皆と寝た事になっているんだよ……」
「……ごめんなさい。もう聞きません」

友情スカイルート(?):ハーレムにはご用心】


「弱い、弱い、弱い! ドラゴン程度じゃ準備運動にもならないよ! ――皆、もっと行くよ、ついてこれる!?」
「当然だ、王族としてここで抜けるなど有り得ん!」
「全力で貴女に付いていきます!」
「俺はこの剣は既に貴女のためにあるからな!」
「全ての魔法を持って貴女をサポートします!」
「僕の特殊を貴女に捧げているから大丈夫!」
「よーし、皆行くよー!」
『おー!!』

「……なぁ、正直あの女性が居ればよくない? 俺達兵士や殿下達邪魔じゃない?」
「……言うな」

【ハーレム(?)エンド:鉄の女】







「――と、まぁこんな感じで。異色な結末が多くて、話題になったゲームなんですよ」
「……凄いな、ゲームとは」
「いや、これはとても特殊な例ですから」
「というかヴァーミリオン殿下は甘え体質なのか? いや、違うのは分かるのだが」
「どうなんでしょう? 選択肢によっては“甘えたかったら娼館にでも行ってろ!”と言いながら頭突きすると甘えは無くなりますから、行動次第じゃないですかね」
「凄い台詞があるんだな」

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