追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活

ヒーター

ファンタジーな


「『え、偏見なんですか?』」
「『いや、偏見と言うかなんと言うか……』」
「『でもほら。私の知るファンタジー作品や異世界系? だと、可愛いけど露出が激しい服多いじゃないですか。シアンさんのスリットが可愛く見えるレベルの』」
「『シアンの場合は下着無しだと可愛くは見えないと思いますが……まぁそうですね』」

 エクルの不思議そうな表情に、俺はどう説明した方が良いモノか悩んだ。
 仮にゲームや漫画の世界に入ったとして、それが男性向けの作品であれば全裸に近いはともかく、露出の激しい服の女性が多いというのはなんとなく分かる。
 年齢制限とかアニメ的、漫画的表現で見えない力が作用しているだけで、実際に居たら色々見えるだろう、痴女なのかと突っ込みたくなる作品は多々ある。シアンはその仲間入りしてもおかしくは無いが、アレは教義とかそのあたりなのでスルーしよう。……出来ないかもしれないが。

「『動くとポロリとすぐ見えそうなやつとか、その服装で風紀を取り締まるのは無理でしょ、みたいなやつとか。男性向けだと多いので、男性は好きなのかと思っていましたし』」
「『……否定は致しませんわよ』」
「『クロさん、なんか口調が変ですよ』」

 だって俺も好きだもの。

「『正直言うならば、メアリー様が先程着られていた聖女のような服も乙女ゲーム世界の聖女っぽさがあって良かったと思うんです。下着は有りませんでしたし、聖女とか見た事ないですけど』」

 あ、だからさっきふと思ってこの手の話題になったのか。

「『どういう事です、エクルさん?』」
「『例えばシロ様のやっていたヤツの中だと……なんでしたっけ。タイトルは忘れましたけど、聖女が出て来るアダルトゲームの……ええと……』」
「『……メアリーさんって、前世で十七歳で亡くなられてませんでしたっけ?』」
「『……買ったのは成人していた淡黄(シキ)さんだから良いんですよ。それにあくまでも推奨なはずです』」

 目を逸らすでない。あとそういった類は推奨じゃ無くて制限です。
 ……まぁビャクも俺が持ってた制限かかったゲームを後ろで見てたり、家事とかやっている時に代わりに選択肢選んだりと普通にやってはいたんだけど。
 ……俺もプレイし始めた年齢に関しては人の事を言える訳では無かったりするけど。

「『まぁタイトルは良いです。男性向けだと聖女の服って、なんか布地が薄かったりヒラヒラしているの多くありません?』」
「『女性向けでも多いと思いますが』」
「『そうではなく……ほら、垂れ幕みたいな布を前と後ろに垂らして、横にクロスさせた紐を使って繋ぎ止めました、的なやつとか』」
「『ああ……なんとなく仰りたい事は分かりますが、それは極端な例かと』」
「『でも太腿出したり、下乳出したり上乳出したり谷間出したり。お腹を出したり……聖なるなのに劣情を煽っているのか、と聞きたくなるようなやつとか。シアンさんみたいな感じに』」
「『そういうのは“聞きたくなるようなヤツが記憶に残りやすい”というモノだと思われるかと。シアンみたいな感じに』」
「『成程?』」

 そのてのモノは普通だと印象に残りにくいから奇抜にしている傾向にあるだけだ。ドレスとかと一緒で目立ってナンボの世界なので、聖女というジャンルの中でも「本当に聖女かよ」みたいなものの印象が強いヤツが記憶に残っているのだろう。
 それにエクル……淡黄(シキ)さんの場合は本とか物語は好きらしいが、実写・実話系のほうを好んでいて、俺やビャクシロさんが好きであったタイプのはシロさんのお世話をするまであまり触れなかったらしいし、触れ始めたのはソシャゲとかが流行り出した時期なので露出が多いキャラも多かっただろう。だからそういう印象が強いのかもしれない。
 ……まぁ、女性キャラの露出が多い方が男は喜ぶというのは確かだが。

「『でも良いですよね、ファンタジーエロ服。エクルさんもそう思いません?』」
「『はい、良いですよねファンタジーエロ服。結構可愛かったりしますし』」
「『良いんですか』」

 なに言ってんだこの方々。
 ……そういえばさっきもエクルは可愛いとか言っていたな。モノにもよるが可愛い……のか? 服飾に携わる者として、可愛いなど言わんとしようとしている事は分かるのだが。

「『私アレ好きなんですよ。先程エクルさんが言ってた、なんか垂れ幕みたいな服のヤツ』」
「『ファンタジーだと魔法使いとか格闘家キャラが着ている傾向にあるヤツですよね』」
「『シアンの服がそれっぽいですよね。股間の前にとりあえず垂らして、風が吹けば捲くれそうなやつ』」
「『そして垂らしたヤツの横から見える鼠径部とかから、下着を履いていないんじゃないかと思われる。そういった想像力がかき立てられるのが良いですよね』」
「『分かります』」

 ……なにを言っているんだこの方々。言っている目線が男だぞ。
 いや、片方は今は男だし、女性陣から見たら可愛いに含まれるのだろうか……?

「『まぁでも、確かに私の言う服はファンタジーだから誇張しているのかもしれませんね。実際に劣情を煽る聖職者とかミニスカの騎士とかビキニアーマーとかあったら困りますし。というか十代か二十代しか着れなさそうですし』」
「『はは、あったら面白いですね』」
「『ビキニアーマーはありますよ。俺の誕生日にロボから貰いました』」
「『マジですか』」
「『え、クロさん着るんですか? ビキニで剣携えてモンスターに挑むんです?』」
「『着ませんよ。というか単品で着るモノじゃないですし』」
「『メアリー様。……クロさんが着るんじゃないんですよ』」
「『え? ……あ、すみません、気が利かないで……』」
「『言っておきますがヴァイオレットさんに着せるための服でもありませんから』」
「『違うんですか』」
「『違うんです。あと、実際に見た事は有りませんが、三つ隣の王国騎士はミニスカも採用しているそうですし、劣情を煽ってる聖職者はそこに居ますし。なんなら美しさ誇示のために全裸になる変態も居ます』」
「『……現実は小説よりも奇なり、ですか』」

 出来れば奇をてらっては欲しくなかったが。
 ……しかしビキニアーマーを着たヴァイオレットさんか。あの貰ったビキニアーマーなら調整すればなんとか……そ、それは良くない。いや、良いのだが刺激が強すぎる、色々と。

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