追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活
幕間的なモノ:とある人物の活動日記2。(:?)
とある人物の活動日記2。
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メアリー様には幸福になる権利がある。
彼女は素晴らしく、美しく、清純なお方だ。だから幸福になるべきなんだ。
故に私は行動をする。
例え私は罰せられようとも良い。
お傍にいられなくなっても良い。
メアリー様に嫌われようとも良い。
メアリー様の幸福のために不安要素は取り除く。利用できる者は利用する。
そしてこの世界の元となった、あるいは似た世界であるカサスのハッピーエンドのような幸せで楽しい人生を送って貰わなけれならない。
それが私の今世での使命である。
けれど予想外な事は起こるものだ。
私は例の暴走をした馬鹿共を■■■の力を借りて……というよりは協力する形で処理していた。
このようなイベントはカサスにおいて起こりえなかった出来事、つまりは私が原因だ。出来うる限り影響を受けないようにと最大限の持ちうる限りの力を使って処理をしていた。私だけではなく、実家の貴族としての権力も利用した。
彼らには遠くの出る事が出来ない僻地で重労働を頑張ってもらおう。完全週休二日制なんて認めない。週休二日制の完全週休一日制だ。少ない休日は自由にして良い。私もそこまで鬼じゃない。ただし給料はやらんから使える金は無い。公共の本とかの娯楽物資は仲良く使うんだぞ。
伴侶は認める。きちんと働くのならば子供を産み育てるのも許可する。子供は国の宝だからね。可愛いし。
――……それは後々やるとして。
私は周囲に合わせた“私”らしい事をしなければ。
そう思う理由は単純だ。メアリー様及びカサスにおける重要人物に問題が起きたからだ。
恐らく、というよりは確実に私が原因だ。私がアイツらを御しきれなかったのが悪いのだろう。だから修正しつつ、“私”らしい最善の行動をとらねばならない。
“私”が今回の様な予想外の場面でどのような思考に至り、どのような行動に行きつくのか。メアリー様に怪しまれぬ範囲で、最善の行動をとらねばならない。
以下、彼らの行動を纏める。
メアリー様と反目した■■■が、退学して武者修行の旅に出た。
後ほど出会った■■■の■■と接した所、■■■の■■と同じ行動との事だ。
■■■が■■■の武者修行を予測し、先回りして一緒に行動をした。■らしい行動と言えるだろう。
メアリー様が彼らを■■■と■■■と協力して追い駆けた。文字通り、駆けた。シキまでの距離は馬ですら走れば休憩が必要なのに、ほぼ全速力で駆けた。
――素晴らしい、ああ、素晴らしい! 前世では走る事すらままならなかったのに、あのように全速で駆けられるとは! なんて素晴らしい事なのだろうか!! コホン、落ち着こう。
メアリー様が追い駆けたりしている中、アゼリア生徒会長が■■■と■■■とスカイに対し、
「……ごめん、スカイ君。生徒の間でヴァーミリオン君やシャトルーズ君達が突然いなくなった事に動揺が走っている。問題が起きて向かったのではないかとね。……生徒会メンバーとして、彼らは今までの問題を得て先行して向かったと説明した後、君達は戻って来るように説得して欲しい。調査までに戻って来るか、調査まで滞在して良いから……うっ、胃が……」
と、言ったらしく、■■■は向かう事にした。その間の生徒会の仕事は全て会長が背負うそうだ。激務にはなるがこなす事自体は出来るらしい。……影は薄いが、相変わらず優秀な生徒会長である。今度会長に会う時は、胃に優しい紅茶でもプレゼントをしようと思う。
しかし■■■が説得するまでもなく、シキに辿り着いた頃には■■■の武者修行関連は解決し、学園に戻って来る事にはなっていたのだが。
その他にも第四王子・第三王女が来たり。
男女問わず恋愛にかまけた相談を多くしたり。
第四王子がクリームヒルト(髪が短くなった)に惚れたり。
カサスではあんまり出て来ない、傍迷惑なメアリー様のお師匠様(何故か女体化)が現れたり。
メアリー様と■■■がデートをする事になったり。
様々な事があり、調査期間までは■■■も滞在する事となった。
――……なんか色々対応していたら、疲れたなぁ。
ともかく、素晴らしきメアリー様の尽力も有り収まる所に収まった感はある。流石はメアリー様!
……ただ、デートを意識してのメアリー様の初デートが、同日に五人というのはどうかと思うけど。
――それと、もう一つ気になる事がある。
いや、正しくは面倒……いや……奇怪……? ともかく、私は変な事に巻き込まれたように思える。
「お前が■■■か。……俺の事は知っているか?」
「っ、貴方は……何故ここに!?」
「流石に知っているか」
……我が王国の第二王子こと、カーマイン殿下が私に接触をはかって来たのだ。
時期は私が今回の一連の騒動のためにシキに行く準備をしている最中であった。
カーマイン殿下は護衛をつけていない単独での接触。あまりにもの予想外の接触に私はつい身構えた。
「なに、身構える必要は無い。お前がシキに行くと聞き、こうして会いに来た訳だ」
「それだけが理由で? ……ああ、シキの領主に因縁があるから――」
「それもあるがな。……ふふ」
「……なんの御用でしょうか。申し訳ありませんが、シキの領主を貶める事は出来ませんよ。恨まれているのは分かりますが、彼とはそれなりに……」
「その必要は無い。ただ様子を確認しに来ただけだからな。それに俺はクロ・ハートフィールドを恨んではいないからな」
「……?」
……なにを言っているのだろう。カーマイン殿下はクロさんを恨んでいる。クロさんはカーマイン殿下を憎んでいる。あの学園祭の惨状を知っていれば誰でも思う事であり、事実カーマイン殿下はクロさんに嫌がらせをしているし、クロさんは明確に嫌っているではないか。
「さて。俺はもう帰るとする」
「……なんの御用だったのでしょうか」
「様子を確認しに来ただけと言っただろう」
「確認したい事は確認できたので?」
「ああ。――面白い事が出来そうだとな」
カーマイン殿下はそう言うと、本当に去って行った。
……なんだか分からないが、なにかをしようとしているのは確かであろう。警戒すべき対象が増えてしまった。
だが全てはメアリー様のため。頑張るぞ私!
――それはそれとして、今日は疲れたし楽しかったなぁ。
五人と同日デートと言うのはどうかと思うが、楽しそうにしているメアリー様を見られたのだ。
途中からは私は用事があったので見る事が出来なかったが、楽しそうならばそれ以上に善きものは無い。
――そういえば、他のデート組はどうしたのだろう。
クロさんとヴァイオレット。グレイとアプリコットは復調したロボに連れられ隣街でデート。
シアンとスノーホワイト神父。クリームヒルトと第四王子&第三王女はシキでデート。
彼らもデートを楽しめていれば良いのだが。色々やってはいるのだが、上手く行って欲しいとは思う。……まぁクロさん達隣街組は上手く行ったようだ。服とかお土産を大量に買ってご満悦であるし、甘々しているし。ちなみに服の類はよく分からない機能でロボが全て格納しているそうだ。……よく分からないで済ませて良いのだろうか。
――だけどなんでクロさん達は第一王子を連れて来たのだろう。
なんでも隣街で会い、クロさんの弟君も連れてシキに来たそうなのだが……まぁロボに惚れているようであるし、彼ら王子・王女の破天荒ぶりは今に始まった事ではない。警戒だけして、深くは考えないようにしよう。
――さて、後は明日までゆっくりしていようかな。
色々思う所はあるが、まだ見ていないシアン組やクリームヒルト組などのデートの結果などを確認して今日はゆっくりしよう。
どうせ明日からは学園や騎士団や軍などが混ざった面倒な者達が調査で来るのだ。さらには王子達も集中しているし、迷惑な錬金魔法使いも居る。絶対に面倒な事になる。
そのためにスタミナが付くモノでも食べようかな。肉を食べたい、肉を。大量にあるものをかぶりつきたい。そして若い身体って素晴らしい。肉を食べて運動をあまりしなくても太らないし、胃もたれもしない。
――若い身体って最高!
前世では運動しても身体のたるみを感じ始めていたし、油モノを食べるとすぐ“うっ”となった。本当に若いって良いなぁ……それにこの身体だと■■も無いし。まぁ違う所が面倒にはなったけど。
「お肉~っ。A5とか比較にならない美味しいお肉~。A5の味とか思い出せないけど~」
それはともかく、私は英気を養うためにお肉を食べに、酒場であり食堂へと歩いていったのであった。
……今思えば、この時警戒していればこの後の事にもう少し私も行動できたのだとは思う。
……今更言っても仕様がないけれど。
「クロ兄様、どうかされましたか?」
「……なぁ、カラスバ。聞きたい事があるんだが」
「はい。私に答えられる事であれば答えますが」
「これをヴァーミリオン殿下に渡されて、“とある所で手に入れた、これに関しての説明を後でしたい”と言われたんだ。その後すぐにメアリーさんの所に行ったんだが」
「これ?」
「これ」
「……これは貴族内の夫婦マンネリ防止に使われるという玩具ですね。ロイロ姉様とスミ姉様の所にありました」
「マジで!?」
「マジです。姉様達は分かりませんが、一般的には主に妻が夫に使うモノとか」
「うわ、知りたくなかった……マジでか……」
「マジです。……え、これをヴァーミリオン殿下がクロ兄様に?」
「うん。……どう思う?」
「クロ兄様に使いたいというアピールでは? クロ兄様を乙女じゃ無くしたいんですよ」
「……冗談と言ってくれ」
「冗談ですよ。まぁ説明を待ちましょう。……ちょっと私はヴァーミリオン殿下に尋――用事がありますので、これで」
「え、カラスバ?」
あと、大人な棒状の玩具を持ってのハートフィールド兄弟の会話はなんだったのだろうか。
カラスバの方からなにか妙な気配……メアリー様が好みそうな、少し違うような気配を感じたのは気のせいだろうか。
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