追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活

ヒーター

デート、出来ない奴らの場合_3


「でも、こうしてデートについて話してはいるけど、相手がいなければ意味ないよねー」
「まぁそうだねー」
「そうだな」
「そうですね」
「そうかもしれないね」
「ありゃ、皆意外と淡泊。皆は相手欲しくないの?」
「男を作るよりは万能薬を作りたい」
「女性よりは多くの皆を怪我から救いたいのですよ」
「男性を相手するより、美しさを共有したいかな」
「欲しいかもだけど、今はキノコを育てたりする方が楽しいかな」
「よく分からないけど、夫婦? よりは眠ったり遊んだ方が楽しいかな」
「私も惑いはしましたが、殿下の傍で護衛する方が性に合っています」
「ブラウン君はともかく、皆独身で良い感じかー。でも皆はさ、私と違って特殊な魅力があるんだから、相手はあっさりと見つかりそうじゃない?」
「特殊?」
「ほら、平凡な相手よりはなにか一つに特化した方がモテたりするじゃない。シキも結構相手が居ると言うか。フリーの方が少なかったりするじゃない。しかも結構仲良いし」
「仲良い……夫婦……ホリゾンブルー先輩……ゴブ――アップルグリーンさんと濃厚な――うっ、頭が……!」
「スカイ君落ち着いてくれ。なんだかトラウマになっているようだけど、彼女らは幸せなんだ」
「スカイは置いといて、アイボリー君やカナリアもあっさり相手とか見つかるかもしらないよ? エメラルドは私が面倒みても良いよ!」
「やかましい。……男なー。子供を作れる身体かどうかも危うい私をなぁ……。領主みたいな私そのものを心配しながらも応援・協力するやつか……珍しいし、居ても私は相手しないだろう」
「うーん、つまりはキノコの栽培を一緒にしてくれる男性か、応援してくれる男性……いや、それよりも重要なのはドジを踏んでも許してくれるおおらかな男性かー……いるかなー……クロとか珍しいタイプだろうしなー……」
「……私は怪我を前にすると我を忘れます。そして家庭を顧みず突っ走ります。相手を待たせるだけになるような男が、家庭を持つべきでは無いでしょう。……クロのようなヤツなら社会不適合者なでも待ってくれるかもしれませんが」
「クロ君か。彼は私と一緒になったとしても、私が拒否すれば手は出さないだろうな。それに彼の作る服は裸身以外の私美しさを引き立たせるし……受け入れてくれる、というのは良いかもしれないね」
「僕もクロお兄ちゃんは好きー。色々気にかけてくれるし、化物扱いしないし、優しいからー」
「え、なに。クロ君ってなにか洗脳や魅了系の魔法でも使えたりする? なんで男も理想の異性としてクロ君を最初に想像するの」
「数年でこの地の領民に認められるくらいですからね。長年かけても難しい事をやってのけるならこの位じゃないと駄目というやつです」
「なんでスカイが誇らしげなの。好きなお兄ちゃんが褒められて嬉しいとかいうやつ?」
「ごふっ。……な、何故それを知っているんですか!?」
「さっきの話はこっそり聞いてたからねー。大丈夫、失恋を経験した女はより美しくなると言うよ!」
「んなもん余計なお世話なんや――なんです!」
「わぁ、こわーい」
『こわーい』
「くっ、これじゃ私を揶揄う方が増えただけや……!」
「ところで、スカイお姉ちゃんって偶にいつもと違う口調になるけど、普段は僕にも敬語なのはなんで?」
「私は油断すると訛りが出るので、誰にでも敬語を使って己を律しているんですよ」
「スカイは訛り気にしすぎじゃない?」
「そうだね。訛りは言葉のアクセサリーだから、スカイ君の自然な美しさを引き立たせると思うよ」
「……訛りって、ある程度好意を持っていない相手以外にはプラスにはならないと思うのですが……」
「そう言うヒトもいるみたいだけど、スカイは気にし過ぎなんだって」
「ああ、男はふと出るその素にトキメクと聞くぞ。そうだろう医者」
「俺に聞くな。……だがまぁ、クロは好くだろうな。アイツは普段律している女のふとした日常的な瞬間が好きそうだ」
「そういえばクロってそういえば普段は私を意識してないけど、脱衣とかお風呂とかは結構気にしてたなぁ……なんか日常では見ない、己だけに見せてくれる仕草にドキッとするとか」
「そうそう、だからスカイも――」
「……だんねとゆわれてもえんやけど、出身の中でも私はおぞい訛りなんや」
「え、な、なに?」
「スカイ君、だれもえんところやと別にええんと違うんけ?」
「え、シュバルツちゃん?」
「そうはゆうけど、私はてなわんといけずにのくてぇ女やから、話しとるとこそばのーなって訛りを無くそうとせんとあかんのや」
「そりゃもつけねーの。使いわければえい武器と思うになるんやけどの」
「訛りで昔よーけものごい思いしたさけ、私には無理や。……以上です。私が訛りを使うとこうなりますが、気にせず使って良いですか?」
「……ゴメン」
「レットお姉ちゃん、謝る時は目を逸らさずにキチンと謝ったほうが良いよ。あと詳しい内容を言わずに謝るは良くないと思う」
「ぐふっ」
「ブラウン、やめてあげろ」
「別に私は良いとは思うけどね。この地では互いに分かり合う事も重要だから、クロ君は喜んで学んでくれると思うよ」
「接する前の話す事にハードルがある時点で駄目じゃないですか?」
「そうかもしれないね。でもさっきも言ったけど、ふと使うと良いかもしれないよ」
「そういう男性なら考えますがね……というかシュバルツさん、話せたんですね」
「行商では言語を話すのも大切だからね。スカイ君の出身は割と分かりやすいよ」
「そうですかね……?」
「そうだよ。ああ、そういえばふと思い出したんだけど、最近こういうモノが手に入ったんだけど、見てみるかい?」
「こういうモノ?」
「まず帝国最新の怪我を治すための種族別解体書」
「なに!?」
「そしてこちらが組み合わせによる薬の最新調査書」
「なっ!?」
「あとこちらが最新の安眠枕と、キノコ図鑑」
「見せて!」
「買うよー。はい、お金」
「っ!? ブラウン君、これって……」
「え、冒険稼業で稼いだお金。足りない?」
「いや、これ相場の数倍だからね。……お金持ちなんだね」
「ともかく商品を見せろ」
「はいはい。ではこちらの商品は――」
「彼女って商人なんだ。てっきり踊り子とかそういう芸術方面かと思ってたよ」
「……スカーレット殿下、よろしいでしょうか」
「んー、なにスカイ? 訛りに関しては改めてゴメンね、変に煽っちゃって」
「それは構いません。シュバルツさんが皆様の気を引いて、周囲の目からこちらを防いでいる内に聞きたいのですが」
「……やっぱり、あのタイミングで新しい商品を出したのは、こうやって話させるのが目的なんだね」
「そのようですね」
「で、なにが聞きたいの? エメラルドと私の蜜月? 愛の記憶メモリー?」
「存在しないモノを語られても困ります。……スカーレット殿下の目的です」
「目的ならさっき言って……ないね。まぁかたっ苦しい王族の責務から解放されたかっただけだよ」
「確かにスカーレット殿下は王族の責務から逃げ出して、冒険者稼業にかまけてはローズ殿下に怒られるような王族としては相応しくないと思う事が多い王女様です」
「あははー、おい」
「ですが、今回のスカーレット殿下は……なにか様子が違うようでしたので。なにかしらの危機を感じ取って来たのかと」
「買い被りすぎじゃない? この年齢になってもオボコな不良王族だよ?」
「……貴女様は普段、周囲に迷惑をかけ、理解されない行動をとられる事が多いです。ですが同時に貴女様は人知れず危機を回避させ、自ら泥を被って陰で誰かを庇う事が多いのも知っています」
「…………」
「その危機への対応をする時のスカーレット殿下と同じ空気を感じられたので。なにかあったのかと」
「……さてね。気のせいだよ。」
「…………」
「…………」
「……私は王族を守護する者ではありますが、私の主な役目はティー殿下の護衛です。ティー殿下の危機が迫っているのならば、教えて頂きたいのですが」
「今の時点では違うよね。少なくとも平民とのデートを放置しているよね」
「その通りです。ですが、それは私の責任と判断の問題です。危機に対する情報を得るとは別問題です」
「真面目だね。一応私は王族なんだけど……目上に対してその態度じゃ、敵を多く作るよ」
「ええ、我が一家はそれが原因で敵を多く作り、没落寸前になりましたから。その血なのでしょう」
「言うねー。もっと色々柔らかい方が生きやすいのにねー。…………」
「スカーレット殿下、何故そこで私の胸を見るのです。何故狙いを定めるかのように手をワキワキさせているのです」
「私さ、親友であるエメラルドと仲良くなるために、よく女同士のコミュニケーションの一つである胸を揉む、っていうのをやっているんだけどさ」
「それはコミュニケーションではなくセクハラと言います」
「だけどエメラルド以外あんまり楽しくないんだよね。……スカイって服を着ていると私とそう変わらないのに、脱ぐとすごい全身鍛えられた身体だよね。けど胸は柔らかいよね」
「お待ち下さい。にじり寄らないでください。王女である貴女様がそのような下賤を為さってはなりません」
「ふふふ、クロ君もスカイがヴァイオレットのように巨乳になれば振り向いている可能性もあるよ。そして大きくするには揉むのが一番……!」
「お、お止め下さ――……っ、……!?」
「ふむ、感じないように黙って我慢しているんだね」
「……お言葉ですが、こういうのは異性に揉まれたりするから気持ちよくなるもので、同性に揉まれても、痛いだけ――んっ!?」
「こういうのはテクニックだよ。あまり感じないエメラルドですら少しずつ感じさせるようになった私のロイヤルなテクを味わえ……!」
「別の所でロイヤルをお使いくだ――っ、んっ、あ゛ゅ!?」
「ははは、私に不可能は無いよ! …………スカイ、さっきの質問だけど」
「ん、にゅ、あ……耳元で囁かないでください――いあ゛っ!?」
「実はね――――、――だよ」
「……え、それって……?」
「えいやっ」
「ゃぁんっ!? ……はっ!?」
「おお、エロい声。ここが弱点かー」
「レットお姉ちゃん。弱点をつくとエロい? 声が出るの?」
「そうだよ、スカイちゃんの場合はこの下をなぞってからの同時――」
「…………スカーレット殿下」
「え、ス、スカイ?」
「初めて出たような、嬌声を周囲に聞かれた女の感情、分かりますか」
「な、なんだかローズお姉様のようなオーラが出ているんだけど……」
「私は護衛の立場といえど、時に鬼にならねばならねばならない時があるのです。――覚悟してくださいね」
「ちょ、待っ――――」


【後書き】
備考
「……だんねとゆわれてもえんやけど、出身の中でも私はおぞい訛りなんや」
「スカイ君、だれもえんところやと別にええんと違うんけ?」
「そうはゆうけど、私はてなわんといけずにのくてぇ女やから、話しとるとこそばのーなって訛りを無くそうとせんとあかんのや」
「そりゃもつけねーの。使いわければえい武器と思うになるんやけどの」
「訛りで昔よーけものごい思いしたさけ、私には無理や」



「構わないと言われても、出身の中でも私は古い訛りなんです」
「スカイ君、誰も居ない所なら別に構わないと違うのかい?」
「そうは言いますが、私は賢く無くて馬鹿な女ですから、話しているとくすぐったくなって訛りを無くそうとしないと駄目なんです」
「それは勿体ない。使いわければ良いっ武器になると思うだけどね」
「訛りで昔とても悲しい思いをしたので、私には無理です」

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