追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活

ヒーター

ラッキー(?)なスケベイ_3(:灰)


View.グレイ


「じゃ、じゃあ私達は服を替えに教会に戻るから、またね……」
「大丈夫? 私取りに行こうか?」
「リムちゃん、大丈夫。ありがとう……応急処置はしたから大丈夫……」
「あはは、無理はしないでねー」

 シアン様は縦に割かれた服を、神父様が作られた布や糸などで簡易的に止め、どこかぎこちない仕草で私達に手を振り教会の方へと去って行った。
 傍らには神父様がおり、今のシアン様を見られない様に周囲を警戒している。同時にシアン様をあまり見ない様にしていた。
 ええと確かああいうのを……そうだ、確かろしゅつぷれい、というやつだ。基本単独で行うそうだが、仲の良い間柄でも出来る事でその場合は相当仲の良い証だとか。今度アプリコット様を誘ってみようか。あるいはクロ様にお教えしようか。

「うーん、布一枚でああなるとは、やっぱりシアンちゃんの格好はえっちぃねぇ……今のはある意味神父様へのアピールになったかもしれないね……」
「アピール? 今のがですか?」
「なんでもないよ。グレイ君にはまだ早い事だから……ううん、案外グレイ君が一番進んでいるからそうでも無いのかな?」
「?」
「あはは、気にしないでー。それよりもエフちゃん」

 私が頭を撫でられながら疑問に思っていると、クリームヒルトちゃんはエフ様の方を改めて見る。
 するとエフ様は少々表情を強張らせた。……お顔が見えるので反応がすぐに分かってしまう辺り、意外と表情に出やすい御方なのだろうか。

「さっきは違う、って言っていたけど、もしかして気にしている? 今のは自分の影響なんかじゃないかーって」
「…………」

 クリームヒルトちゃんの言葉にエフ様は顔を伏せて黙り込んだ。どうやら図星のようである。
 私的にはシアン様のシスター服が裂けて脱げかける、という事がエフ様がフードを取っただけで起きたなど信じられる話ではない。悪い言い方をすれば自意識過剰ではないだろうか。と思わないでもないが……私も昔はちょっとした事で殴られたので、段々と周囲に起きた悪い事が全部自身のせいだと思っていた。
 ようは重なるものが重なり選択肢を狭まっていくと、答えが一つしか見えなくなっていく。エフ様がそうとは限らないが……

「エフ様」
「グレイ君……?」
「女性の手を突然取り、申し訳ありません」

 私はこういう時、私がしてもらった救われた事しか、エフ様にしてあげられる行動が思い浮かばない。
 喜んで貰えたら良いと願いつつ、私はエフ様の右手をとる。

「え……だ、駄目……! 離して……!」
「あはは、じゃあ私は左手を取るよ!」
「え……え……!?」

 そして私の行動を見たクリームヒルトちゃんが、左手を取る。
 そのまま私の顔を見ると互いに不敵に笑う。

「あはは、よし、じゃあ早速最初の目的の!」
「はい沈んだ面持ちではない視線で!」
「私の大切な兄が治めるシキを見よう!」
「私の大好きな父が治めるシキを見ましょう!」
「あ……あの……!?」

 そしてそのままエフ様を無理に引いて、再びシキを案内するために行動を始めた。







「毒~毒~、新しい毒を見つけて~万能薬を作る~。まずは親父の腰痛を治す毒を~」
「あちら毒が大好きエメラルド様です。スカーレット様と仲が良く、この間毒波動砲を開発しました」
「スカーレット、様が言っていた……子……確か凄い薬を開発するって……いう…………え、毒波動……?」
「はい、毒波動砲です。……おや?」
「腰痛を~……む、これは……何故この液体が……?」
「おおーい、エメラルド、ここで会ったのも運命だぜ! この後俺と――」
「む? ああ、カーキーバカか――しまった離れろ!」
「おおっなんだ、これ――おおお!? 服が融けていく!?」
「ああ、今かかったのは服だけを溶かす毒液だ。何故かあったものでな……すまない」
「そんな毒があるのか!? 是非量産して欲しんだぜ!」
「私が悪いのは確かだが、とりあえず隠せ」

「…………つ、次……行こう……!」



「あれ……? あっちに……居るのは……」
「はい? ああ、アッシュ様とロボ様ですね」
「……ロボ……確か……ルーシュ、様の……想い人……え、人……?」
「はい、ロボ様です。どうやら機能テスト中のようですね」
「テスト……?」
「はい、お怪我を成されて最近修復中だったのですが、徐々に回復してきているので、そのテストかと……おや?」
「イキマス――【質量:零ルシオン】!!」
「光魔法――くっ、視界が……! ………………え」
「……エ」
「……何故私の上の服が全部脱げているのでしょう。護身符を持っているはずなんですが……」
「……【質量:零ルシオン】ハ、威力ノ弱イ光魔法ビームナンデスガ……鍛エラレテイマスネ」
「ありがとうございます。身体は資本ですからね――くしっ。……着替えて温泉行ってきます」
「ハイ……スミマセン……」

「あはは、よーし、次に行こう!」



「え、パンダ!? パンダだ! わー、わー!! 可愛い、可愛いよ!」
「っ!? 本当にクリームヒルトもパンダを知っているのだな……」
「あれ、その声もしかしてウツブシちゃん!? もしかして悲劇的伝説がある泉に溺れたとかそんなの!? もしくはパンダ核とかゴリラ核とかあってパンダだがパンダじゃない感じ!?」
「ククク……落ち着け、クリームヒルトクン言っている事が良く分からない――おっと」
「危ない、オーキッド! ――って」
「すまないウツブシ。石に躓いたようだ。……だが何故服が脱げたのだろう。久々に外で外気に晒されたよ」
「………………ハッ!? つい見惚れてしまった。すまない、すぐに着てくれ」
「ご、ごめんね。私が燥いじゃったから……でも初めて見たけどイケメンだね、オーキッドくん」
「ふふ、だろう? 私の夫は全てが素晴らしいのだ」
「あ、夫婦なんだ。あとなんで股間とかには靄がかかっているの?」
「ククク……黒魔術さ。猥褻物をガードする、ね」
「ピンポイントな黒魔術だね」

「……次……行こう……」



「メアリー。シャルが先程フラフラとした足取りだったのだが……なにか知らないか?」
「し、知らないです。……運動で掻いた汗と身を洗うため、温泉に行っているだけですよ」
「? そうか」
「そうです。あれ、ヴァーミリオン君、服が解れていますよ?」
「む、何処だ?」
「ほら、肩の所の――」

 スパァン! という音が、少し離れた位置で見ていた私達の元まで響いた。

「……なにが、起きた」
「……出ている糸に触れたら、上の服が弾け飛びました」
「……そうか。シャツは無事なようだな」
「……ですね。……意外と筋肉質なんですね、ヴァーミリオン君」
「……ありがとう。お前に褒められるのは嬉しい事だ」

「身体を褒め合っていますね。あれが事前交渉というやつでしょうか」
「あはは、違うかな。でも邪魔にならない様に次に行こう!」



「ブラウンさんが寝ぼけて服を脱ぎだしました!」
「あはは、見た目は大人だから色っぽい!」


「カナリア様がブライ様の服をコケて剥ぎました!」
「あはは、鍛冶職人だけあって鍛えられてるね! そしてグレイ君に見られて恥ずかしがってる!」


「シュバルツ様が己が武器を誇るために脱ぎました!」
「あはは、割といつもの事だね!」







「あはは、私は運が良いとか運が悪いとかは、説明が難しい出来事を深く考えずに言うための言葉だと思っているけどさ」

 ある程度見て回ると、クリームヒルトちゃんがそう言いだす。

「エフちゃんのその妙な出来事って、服を脱がす事とかえっちい事に特化しているの?」
「ち、違うよ……!」

 それに対し、エフ様は今までで一番はっきりと否定した。





備考:毒波動砲
毒の波動砲。それ以上でもそれ以下でもない。細かい事を考えてはいけない。

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