追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活
リクエスト話:なろうテンプレ的なダンジョン攻略
※この話はなろう様活動報告にて募集いたしましたリクエスト話(ifなど)になります。細かな設定などに差異があるかもしれませんが、気にせずにお楽しみ頂ければ幸いです。
リクエスト内容「シキのパーティによるなろうテンプレ的なテンプレダンジョン攻略」
※時期は本編開始前です。
ダンジョン。
RPGなどで言うと、モンスターが徘徊する迷路のような空間である。
この世界ではダンジョンとは、本来の「地下牢」という意味ではなく“モンスターや動物を除く種族によって住処とされていない一定以上の広さを持つ屋内”という意味だ。ようはRPGでのダンジョンの意味に近い。
そしてそんなダンジョンが最近、シキの近くで発見された。遺跡のような場所らしい。
俺は国に申請をして、結果調査を行う事になった。冒険者ギルドの依頼という形になる。
今回は最近運動不足だったのと、正式な冒険者に依頼すると高くつくので俺も同行する事になった。
そこで新たなダンジョンに興味を持ち、動けるメンバーを集めてダンジョン攻略になったのだが……
「ああ、良い。良いですこの空間! ジメジメしてキノコの栽培に良いですよ!」
「ククク! 危ないぞ、カナリアクン。モンスターが襲い掛かって来ている!」
「俺が相手しようオーキッド! 俺のテクニックで落として見せるぜハッハー!」
「あ、キノコだ! ……あれ、なんでカーキー君が蜘蛛型魔物の雌型モンスターを追いかけてるの?」
「ニャー!」
「ああ、成程。いつもの事なんだねウツブシ。あ、新種のキノコかも!」
「ククク……それはただの苔だよカナリアクン。そして足元……」
「え? ぎゃー落とし穴!?」
……ちょっとメンバー間違えたかな。オーキッドは頼りになるけど、他二名が大分足を引っ張っている。
「気をつけろカナリア。もっと慎重にいけ」
「ふっ、キノコへ興奮の前には罠なんて些細なんだよ。ともかくありがとう」
「どういたしまして。あとこれ落とし穴じゃなくって窪みだからな」
「……エルフの前では落とし穴なんだよ」
「エルフ関係無いからな」
俺はカナリアが足元の窪みにとらわれ体勢を崩す前に腕を掴む。
カナリアは未開拓ダンジョンの調査にも関わらずあっちへフラフラ、こっちへフラフラとしている。正直危なっかしい。その癖に一番年上だからとリーダーのように振舞っている。あと相変わらずカナリアはウツブシが喋っている事分かるんだな。猫相手でも喋れるのはエルフだからなのだろうか。
「さぁその美しき瞳を複数持つ美しきお嬢さん。この未開拓な場所で俺と会ったのも運命だ。――どうだい、熱き抱擁を俺と交わさないか?」
『KISYA!?』
「おお、そうか。同意してくれるか嬉しいぜハッハー!」
『KISYAaaaaaaAAAA!?』
「追いかけっこか! 良いぜ、追いついてみせるぜハッハー!」
カーキーに至っては、俺達を襲おうとした蜘蛛型魔物が女性型と見るや否や興奮して逆に襲い掛かっている。ついでに言うと多分堕とせると思うので、しばらくここで休憩していよう。戻って来ないのなら放っておこう。
「というか、シアンやアプリコットとかは良かったの? あの二人だったらダンジョン攻略とか好きそうだけど」
「シアンはシスターとしての仕事。神父様の手前だからそっち優先。アプリコットは色んなモノが重なった体調不良。だから断られたよ」
「そうなんだ」
まぁシアンもアプリコットも悔しそうにしていたが。アイツらこういう力試しが出来る所って大好きだし。
後はロボとかブラウンとかは戦力としては十分だが、屋内調査には向いていないからな。攻撃でダンジョンを破壊しかねない。
とはいえ、このメンバーの実力自体は本物だ。世間一般的には評価されにくいが、頼りには一応している。マイナスも多いが――
「……ん?」
俺が休憩をしようとすると、なんだか妙な気配を感じた。
モンスター……にしては気配が変な感じがする。妙な体温も感じるような……
「上だ! 総員警戒しろ!」
『っ!?』
俺はすぐさまソレの危険な気配を察知し、構えながら全員に警戒をするように伝える。
俺は武器である短刀を手にしながら、その気配の方へと視線を動かすと――
「触手!?」
触手が居た。
あれだ。前世のR指定がかかったり、紳士向けなアニメやゲームとかでよく出る触手そのものであった。ヌメヌメしていて蠢いていて……うん、気持ち悪い!
この世界でこんな生物に出会えるとは思わなかった。あの纏っているヌメヌメとした粘液は服を溶かしたり、色々と興奮させたりするエロマンガ媚薬だったりするのだろうか。……ハッ!? だとしたらカナリアが危うい!?
……落ち着け、変な方向に考えるな。だがカナリアをアレと戦わせるのはなんか気が引ける。
俺とオーキッドが前衛で戦って――
「気をつけるんだクロクン! あの触手はメスだ! 男である僕とキミを襲ってくるぞ!」
触手 が 俺 を 目掛けて 襲い掛かって来た !
「触手ってオスメスあるの!? うお、ちょ、ぬるぬるして打撃が通じ辛い!」
「生物だからね! というか大体がメスさ。他生物の種を利用して産むらしい」
「触手ってそんななのか――うお、絡まって来るな!?」
くそ、まさか俺が触手に絡まれる経験を受けるとは……! 絶対絵面が汚いぞ。
……まさか乙女ゲーム世界だから男に絡む触手が必要だったとかないよな? ないと言ってくれ……ってそんな事言っている場合じゃない。早く助けて貰わないと……!
「ククク……苦手な炎を撃てば解決するのだがぶくぶくぶく」
「オーキッドー!?」
「ニャー!?」
頼れる仲間であるオーキッドがなんか俺以上の触手に絡まれて埋没しかけていた。け、結構危ういじゃないのかこの状況!?
「キノコエルフ魔法……炎の拳!」
「ニャー!」
と思っていると、手に炎を纏わせたカナリアが触手に攻撃し、ウツブシも触手に噛みついた。ウツブシはなんか口に炎を纏わせていたような……気のせいだろうか。ともかく、今ので触手の力が弱まった!
「気持ち、悪いっ!」
「ククク……助かったよ――【炎】」
『・・ ― ・- ・・!』
俺は短刀で触手を切り刻み、オーキッドは自身の全身を炎に包ませ互いに脱出する。
「助かった、ありがとうカナリア!」
「ふふん、エルフの特殊魔法を見た? 凄いでしょ?」
「ただの炎の拳だろ。でもありがとな」
「どういたしましてー」
「ククク……ありがとうウツブシ。後でお礼をしよう」
「ニャー!」
触手から視線を逸らさずに、感謝の言葉を投げかける。
後でオーキッドの言うようにお礼をしないと駄目だな。そのためにもまずはこの状況を切り抜けなければ――
「あれは女性なんだな! であれば俺に任せると良いぜハッハー!」
「カーキー!?」
どうしようかと悩んでいると、カーキーが駆け付けて触手に飛び込んだ。
……え、アレもいけるのアイツ!?
「ふふ、子猫ちゃん。情熱的なのは良いが俺はそんな液体に頼らずとも行けるぜ。さぁ、一つになろうじゃないか!」
『・・・ ――― ・・・!』
……なんだろう、触手が心なしか助けを呼んでいる気がする。でもそっちが先に襲い掛かって来たんだ。悪いが助けられない。南無。
「ニャー?」
「ククク……助けるかい? と聞いているよ」
「ええと……放っておこう。アイツの特殊体質なら大丈夫だろう」
「だね」
心配と言えば心配だが、カーキーはダメージに対して異様なほど耐性があるから大丈夫だろう。というか触手に絡まれて喜んでいる男、という絵面をあまり見たくない。頬染めてんじゃねぇ。
「……って、あれ、カナリアは?」
俺がカーキーが大丈夫な事を確認し、これ以上見ていたくないのと、触手がこちらを攻撃してこないとも限らないので、離れようとするとカナリアが居ない事に気付いた。
俺が周囲を見渡すと――
「あ、居た」
少し離れた位置にカナリアを発見した。
どうやら触手は大丈夫だと判断した後に移動したようである。
「おーい、あまり離れるなよカナリア。どんな罠があるか分からないんだから」
「あ、クロ。でもさ、これを見てよ」
「ん?」
俺とオーキッド、ウツブシはなにかを見ているカナリアに近付き、声をかける。するとカナリアがなにかを指さしたのでそちらを見ると……
「スイッチだな」
「スイッチだね」
「スイッチだよね」
「ニャー」
怪しさ満点のスイッチがあった。
なんだろう、この押せばダンジョンが崩壊しそうな赤いスイッチは。
って、なにか書かれているな。なになに……?
「“この研究室を制覇した者よ! だが完全にはまだ一歩足りない! あとはこのスイッチを押す事で完全になるぞ、さぁ押すんだ!” …………」
『………………』
……なんだこれ。
誰が押すと言うんだこんなものが書かれたスイッチ。というか制覇? え、もう? まだそんなに進んでないような――
「ハッハー! 情熱的な触手だな、まさか分裂するとはな!」
「えっ」
「あっ」
「クッ」
「にゃ」
と、俺達が悩んでいると。
触手と戯れていたカーキー、もとい触手の一部が引き千切られ、その触手が――スイッチに丁度当たった。
………………
「地響きだな」
「ククク……カウントダウンが浮かび上がって来たね」
「あれ、なんかジメジメが無くなってキノコが……外から空気が入ってきている?」
「ニャー」
………………
「逃げるぞ」
『了解っ』
俺達は自らの足で全速力で。カーキーは……手籠めにした触手と蜘蛛型魔物に運ばれてダンジョンを脱出した。
そして脱出した瞬間――ダンジョンは崩壊した。
◆
後で知った事だが、あのダンジョンは昔の個人の研究施設であったそうだ。
そこに居たのは変わったモンスター研究家で、昔「芸術はモンスターと爆発だ!」とか何処かで聞いた事のある危ない研究者だったそうだ。そしてある時を境に忽然と姿を消したそうな。多分あの研究室の何処かで亡くなったのだろう。
個人の研究施設だからそんなに進んでいないのに最奥だったのかー。というのはともかく。
「申し訳ありませんが、制覇したとはいえ未開のダンジョンを調査する事による国からの報酬は支払われません。……後処理はやっておきますので」
『はい……』
俺達は冒険者ギルドの仕事の斡旋もしているレモンさんにそう告げられていた。内容は当然と言えば当然である。
しかし完全に今回は骨折り損のくたびれ儲けだな。……まぁ無事だっただけでも良しとしよう。
「はぁ、帰ってお風呂にでも入って汚れでも落とすか……」
「私もいれてー」
「別に良いぞ」
「一緒に入る?」
「別に良いぞ」
「え、良いの?」
「別にお前だって気にせんだろ」
「まぁねー。……けど一緒に入るのはやっぱやめとく」
「ん、どうした?」
「温泉とか川とかならともかく、男女が家のお風呂で一緒、っていうのはやめたほうが良いかな、って。将来クロに嫁が出来た時にさ、誤解されるでしょ?」
「嫁、ねぇ……俺みたいな所に嫁ぐ女性が居るのかねぇ」
「いずれ出来るよ」
「だと良いが」
「ところで、どんな子が良い?」
「ん?」
「クロのお嫁さん。クロがお嫁さんに迎えるとしたら、どんな子が良い? 好みくらいあるでしょ。昔聞いた気がするけど、今はどうなの?」
「うーん、そうだな……」
そうだな。強いて言うなら……いつかのお茶会で見かけた、幼きヴァーミリオン殿下と共に居た、菫色の綺麗な長い髪を一部編み込んだ子みたいな――
「所作が綺麗な子だよ」
「……そこは変わりないんですね」
俺が言うと、昔の様な口調に戻ったカナリアと共に屋敷に戻るのであった。
なろう的なテンプレ① キャラを性的に絡めるだけで具体的な攻撃をして来ない触手
キャラのエロいシーンが見られる! 女性キャラ相手とは限らないよ。
なろう的なテンプレ② モンスター娘も魅了し結ばれる
主人公相手とは限らない。そして羨ましいかどうかは別問題です。
なろう的なテンプレ③ 調査のはずがダンジョン制覇
ただし崩壊しました。
なろう的なテンプレ④ 世間では評価されない一団が実は凄い実力者
実力は有ろうと評価されないのも当然です。
備考1
カナリアが「いずれ出来るよ」を「じゃあ私が嫁ごうか?」と言っていたら、この時点のクロはすぐに了承する可能性が高いです。
備考2
触手と蜘蛛型魔物は野生に帰りました。現在は幸せな家庭を築いています。
リクエスト話は今話までです。
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