追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活

ヒーター

根本は憧れ(:偽)


View.メアリー


 現れたのは片言の言葉を話す、人型のロボット。
 なんなのでしょう。彼女? は明らかにおかしい存在です。この世界での機械は失われたロスト技術テクノロジー扱いで繁栄はしておらず、代わりに魔法が日常生活を支えています。
 ですがどう見ても彼女の外見は正にロボットそのものです。というよりは全身鎧を身に纏うSFチックな存在です。機械があった前世からみても明らかに未来オーバー技術テクノロジーです。
 怪しいです。怪しいのですが……

「待て、ヴァイオレット。コイツはお前の地の領民だと言うのか」
「はい。我がシキにおける善良なる領民です」
「……巫山戯ては……いない、ようだな」

 ヴァーミリオン君は私の前に立ち、庇いながら問いかけますが、ヴァイオレットだけではなく他の子達や、何故かクリームヒルトまで肯定するかのように頷いていたので巫山戯てはいないのだと認めました。
 ですが警戒は怠らず、私を庇うように立ち続けます。

「マァ、イキナリ信用ヤ信頼サレヨウトハ思ッテハイマセンヨ。トコロデ、私ヲ呼ンデドウシタノデス?」
「ああ、実は――」

 彼女は今までの経験からすぐに信じてはもらえないと理解しているのか、説明するよりも先に何故呼ばれたかを問いました。
 聞いている間、ウィーンやピピピ、といった駆動音が聞こえてきます。……ぅず。

「――という訳でな。悪いが帰るのに一緒に連れて行ってもらえるか?」
「構イマセンヨ。チョット途中デ古城ニ住ム吸血鬼ヲ浄化シマズガ、イイデスカ?」
「ああ、うん了解。討伐中は外でお茶でも飲むから」
「待て、ハートフィールド。今のは寄り道の範疇で済まして良い要件なのか」
「いや、まぁロボですし」
「……ヴァイオレット」
「ロボさんですから。今更ですね」
「……そうか」

 吸血鬼はピンからキリですが、ついでで討伐されるような存在ではありません。
 ですがクリームヒルトも含め「うん、まぁ……やってもおかしくないかな」みたいな反応です。ブルストロード兄妹は無表情で、何処か諦めたかのような表情です。……うず
 ヴァーミリオン君は反応を見て、どう対応すべきかと頭を悩ませている間、私はヴァーミリオン君から少し離れてクロさんに近付きこっそりと聞きたい事を聞きます。
 
「クロさん、クロさん」
「? どうしました、メアリーさん」
「彼女? に関してなんですが……前世で見たような物語とかの、クロさんの転生特典的な感じですか? アレを身に着けて闘えば無尽蔵の戦闘能力を誇って魔王を軽く屠ったり、中に居る子がクロさんに宿って一心同体で戦うとかあります?」
「言いたいことはなんとなく分かりますが、違います。ロボは古代技術きかいに身を包む女性ですよ。俺は特に関係無いですし、カサスも関係無いです」

 クロさんは少し説明し辛そうに、私の問いに対して答えます。私はそれを聞いて一気に――

「という事は、やっぱり人型ヒューマン人造フォーム機械ロボットなんですね!」
「えっ」
「メアリー、急にどうした?」

 私はそれを聞いて一気にテンションが上がります。
 ああ、漫画やアニメの中の存在だけだと思っていたのに、まさかこの世界で自立型のロボットと出会えるなんて! まさに浪漫の塊です。

「いえ、中身は人が入っていますから、人造機械とは違いますが」
「ですが宙に浮いたりしているじゃないですか! 私も魔法を使えばやろうと思えば出来ますが、魔法も使わずに機械だけで飛ぶなんて!」
「出来るんですね――ってメアリーさん!?」

 私はロボさんに一気に近付き手を握ろうとしますが、勝手に触るのは失礼なのとはしたないという事で、コホンと咳払いをして挨拶をします。

「初めまして、ロボさん。私はメアリー・スーと言います。ロボさんのその身に纏う――機械スーツ的なモノに触っても良いですか?」
「コレハコレハゴ丁寧ニ。構イマセンヨ」
「待て、メアリー。正体が不明の相手に気安く――」
「ありがとうございます! わ、わー……! ほ、本当に金属の感触で、魔力を感じられないのに妙な力を感じる……!」
「メ、メアリー?」

 材質はよく分からない金属で、仕組みもよく分からない構造です。ようはなにも分かりません。
 ですがこういうのは細かい説明をすっ飛ばして稼働するから良いのです。事象のイベント境界面ホライズンとかマックスウェルの悪魔を否定して無限のエネルギーを生成するとかそういう構造なんです。原理を僅かに漂わせる程度が良いんです。

「もしかして、ビームとか打てます? こう、手を差し出して」
「フ、イイデショウ。ゴ期待ニハ答エネバナリマセン。行キマス、【第六感シックス衝撃砲キャノン】ヲ―――」
「おい、やめろロボ! それ飛翔小竜種ワイバーンを分子分解する衝撃砲じゃないか!」
「エー、デハ【神カラノ杖】ヲ降ラセ――」
「地下数百メートルの対象すら粉微塵に破壊する技もやめろ!」
「待て、ハートフィールド! 本当にコイツは危険生物じゃないんだろうな!」

 おお、どちらも見てみたいです。シックス・キャノンは分かりませんが、神からの杖は名前から察するに、前世であったマッハ9.5の運動エネルギーをぶつける科学兵器の事でしょう。まさに空想科学の域。一度でいいから見てみたいです!

「私ハ、カ弱イ王国民デスヨ、殿下」
「お前のようなか弱い国民が居てたまるか! 己の価値つよさはきちんと認識しろ! 危険でないならお前は一国民だから構わないのだが」
「あ、認める事は認めるんだ」
「ロボさん、私も着る事ってできます?」
「顔以外ナラ、一時的ニ付与シテモイイデスヨ」
「今すぐ着たいです! あ、でもクロさんと一緒に帰るのなら……私もシキに行って、シキで着た方が良いかもしれませんね!」
「メアリー!?」

 そうと決まればさっそく準備をしなければ。
 学園も冬季休業に入りますし、空間歪曲石を申請してシキに行かなくてはなりません……!


「……なんというか、意外な一面だな。ス……メアリーがあのように我を忘れるとは」
「あはは、そうだね。私もロボちゃんを見た時は初めは混乱したけど、メアリーちゃんはロボちゃんみたいな古代技術? が好きなんだね」
「そういえばシキの子供……特に男の子も好いていたな。確か浪漫……だったか?」
「みたいだね。…………」
「どうした、クリームヒルト?」
「ううん、なんでもないよ。あ、そうだ。休みの内にシキに遊びに行くかもしれないから、よろしくね」
「ああ、分かった」
「うん、よろしくー。………………ロボット、ね」

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