売られたケンカは高く買いましょう

アーエル

「はーい、ご主人様」


煩わしい学園という束縛から卒業した私は、また仲間たちと平民狩りを始めた。
金持ちの家に乗り込み、男は殴り(ときどき殺し)、女子供は殴り、陵辱し、たまに別の者の名義で購入した屋敷に持ち帰り、散々陵辱して妊娠したらどこかの町の広場に一糸纏わぬ姿で放り出した。
そして遊ぶ領地・・・・を移動した。

ああ、一時期遊びすぎたことで王都から出られなくなったことがある。
大々的に賊を討伐するためだとのことだった。
ちょうど国際的な会議が近付いていたからだ。

仕方がないから厩舎から馬を連れ出した。
貴族街を通り過ぎるとくつわをつけただけのその裸馬に乗り、市井に向けて駆け出した。
軍馬で普通の馬より大きなその足は逃げ惑う虫ケラ・・・を面白いほど踏み潰す。

「楽しいですね、ウリエラ様」
「この仮面をかぶっているときは名前を言ってはダメだよ」
「はーい、ご主人様」

ゼアの『ご主人様』の言葉が気持ちよかった。
だから、一緒に遊ぶときはこの仮面をかぶっていた。

生き残った虫ケラたちが私たちが騒動の犯人だと騒ぎ出した。
それが大きくなってしまう前に反論に出た。

「私たちは軍馬を連れて歩いていただけです。馬場に出られない軍馬を散歩させるために。ちゃんと轡をつけていたではありませんか。もちろん乗るつもりがなかったため鞍は付けず。ですが……亡くなった方を悪く言いたくはございませんが、彼らが軍馬の前に集団で飛び出したのです。それを軍馬が襲撃だと思い暴れ出した。私たちは手綱を離してはさらなる騒ぎになると。その結果、振り回されて背に乗った次第でございます。実際に振り回されて大怪我をした子息もおります」

手綱が腕に絡み引き摺られただけだが、手足の骨折をしたのは事実だ。
それを引き合いに出す。
簡単に納得する貴族院の裁判官たち。

「その背に少女が笑って乗っていたという証言もあるが?」
「ええ、その少女は幼き頃より母である王妃の開いていたお茶会で仲良くしておりました。ですが彼女が喜んでいたのは軍馬が暴走する前のことにございます」

やはり、王子である私の証言が認められた。
三十人以上の死者に数百人の負傷者。
連れ出した八頭の軍馬が最初に踏み潰した連中を事件の発端に仕立て上げた。
『死人に口なし』だ、呪うならその場に出くわし死んだ自分の不運を恨むんだな。


学園で小さなイザコザがあったらしい。
急いで帰ろうとした虫ケラを妨害していたら偉そうに嗜めてきた奴がいたらしい。

「誰だ、そいつは」
「デデというやつです。リッツン侯爵の長子で」
「リッツン?」
「国家事業を担っている貴族ではないか」

この頃の私たちは共同事業による豊かになった生活を享受していた。
それはいつのまにか当たり前であり、恒久的なものだと信じ込んでいた。

リッツンの娘を殺したことを後悔していない。
いや殺させた・・・・だけで、私に罪はない。
……しかし、それをリッツン侯爵家はどうみている?
ああ、ついでだ。
妹を殺したゼアをあてがい、溺れていく姿を楽しむのもいい。
ゼアは私が命じれば誰にでも足を開く。
学園を卒業するまでの五年半は手をだせなかったが、卒業後に呼んでやったら喜んで寄ってきてリッツン家の・・・・・・娘を殺した・・・・・ご褒美・・・をねだった。
もちろん与えたさ。
三日三晩、私だけでなく命じれば仲間たちにも悦んで抱かれた。
その姿を見て、女を性の捌け口にしたんだ。
子供は男でも尻が柔らかいから女の代わりにできたしな。
ああ、楽しい。
妹の方は愉しめなかったが、デデは壊れるまで楽しませてくれるだろう。
面白いオモチャが手にはいった。

「リッツン侯爵家のデデとやらを仲間に引き込もう。なあに、その真面目そうな奴が転落していくのを特等席で見られるのは面白い」

私の本当の目的は明かさないが、楽しくなりそうだ。

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