売られたケンカは高く買いましょう

アーエル

あとは金と権力で何とでもなるんですから


ああそうだ、デデ。
あれの妹がお茶会に現れて、第三の性人形ドールにすることに決めた私は言葉巧みに連れ出した。
そしてあの娘に『ドレスをめくって尻を出せ』と命じた。
幼ければ意味もわからず素直に従うと思っていた。
しかし……あのガキは断った。
そして誰の受け売りかわからないが『淑女の嗜み』を説きやがった。

ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく!!!

お茶会に嫌々出された俺が『最初の性人形ドール』に調教したのはキライル家の娘。
嫉妬深いこの娘は、少し煽れば簡単に相手を傷つける。
二番目の性人形ドールに育てた少女も、歳を重ねて反抗的になった。
……私に歯向かう者はいらない。

「最近のポーリーはカワイイなあ」

この言葉で嫉妬したゼアは、お茶会に来なかったポーリーに見舞いと称して訪問し、階段から突き落とした。
自分が足を滑らせて落ちる際に、隣にいたポーリーを掴んで一緒に落ちた。

「私が足を滑らせて落ちたときに、ポーリーが助けようとして伸ばしてくれた手を掴んで一緒に……」

侍女たちが目撃者だ。
ゼアが掴んで落ちたとも、ゼアを助けようと伸ばされた手を掴んだようにも見えただろう。
唯一証言できたであろうポーリーは目覚めることなく逝った。
その結果、疑わしくもゼアの証言のみが認められて事故で処理された。

「あの子を手に入れたいなあ」

会場に戻ろうと去っていったガキの後ろ姿を見ながらそう言った。

「そういえば落とし穴になりそうな陥没があってねえ。中に誰かを落として上から水を入れたら面白そうだなあ」

ゼアはガキを追いかけて行くと陥没しかけた穴の方へ引っ張っていった。
ガキを突き落として、近くの水道から水を運んできた。
どうやらガキは穴に落ちたときに気を失ったようで、ピクリとも動かない。

「ザマアミロ」

私のいうことをきかなかったせいだ。



「ウリエラ、あなたリッツン侯爵の令嬢と一緒ではありませんでした?」

母である王妃にそう言われて、面倒くさく感じながらも「誰です、それ?」と答えた。
しかし、目撃者がいたらしい。

「ああ、その少女のことでしたか。それでしたら、キライルの娘がどこかへ連れて行きましたよ。『この庭は自分の方が詳しい』と言ってね」

嘘ではない。
余計なことを口にしていないだけだ。

ゼアは私に誉めてもらうため、四阿で待っているうちに眠ってしまったようだ。
何度も水を汲みに往復して疲れたのだろう。
大人たちに叩き起こされても「知らない」とだけ言ったのは、私に成果・・をみて欲しかったからに違いない。
いやつめ。
今日は無理だが、次にでも壊れるまで抱いてやろう。


王妃のお茶会は中止された。
その日だけでなくその後も永久的に。
……やりすぎたらしい。
王城で起きた事故・・のため、リッツン侯爵家に見舞金が支払われた。
そして私は学園に入学するまで家庭教師がつけられた。

「母上、少しは休みをください! このままでは息が詰まりそうです!」
「仕方がありませんわ、第三とはいえあなたは王子ですもの。半年の我慢ですよ。良い成績で入学さえすれば、あとは金と権力で何とでもなるんですから」

成績も、教師の弱みを握ってしまえば脅しで何とでもなるらしい。
そうか、二人の兄の成績も金と権力の賜物か。
私は半年我慢して、母が手に入れた入学前クラスわけ試験でほどほどの成績をとった。



「一年生代表、オーラシア・ルーブンバッハ」
「同じくポーリシア・ルーブンバッハ」

私の最終学年時に入学前試験を同点トップで入ってきたのは、侯爵家の双子だった。
同位入学なら二人がともに上がり祝辞を述べる。
入学させてもらった喜びに新入学生の誓いを盛り込むのだが、この双子は自然の流れで組み込み、文章に不自然さは見られない。

「女のクセに」
「生意気な」
「アイツらを輪姦まわしましょう」
「やめておけ。ルーブンバッハ家は侯爵とはいえ先王の王妹が降嫁した家。双子の父親は現王になってたかもしれない男だ。……お前ら、王族と事を構える気か」

私の言葉に取り巻きが青くなって黙る。
今もなお、父を退位させて双子の父親を国王に据えようという輩が多い。
それを抑えているのは当事者であるルーブンバッハその人だ。

「ルーブンバッハ家はリッツン家との共同事業を成功させて国家を支えている。下手に手を出すと国家転覆罪で没落する。けっして手をだすな」

そうだ、あのとき私はそう言ったのに、なぜルーブンバッハ家に手をだしたんだ。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品