売られたケンカは高く買いましょう

アーエル

『面白いから』


私はユンキムに誘われて自警団に加わった。
貴族のため剣術はできる。
自分にできることで日銭が稼げる。
少しずつ生活は上向いてきた。

そしてゼアが出産した。
ゼアによく似たピンク色の髪をした娘。
……かわいい!
はじめて生命を尊いと思った。
この生命を…………私はどれだけ傷つけてきたのだろうか。


ある日、奪われた。
私の幸せ、私の宝物を。

貴族の少年たちに、妻を三人の娘たちを……嬲られた。
下の子は七歳にもかかわらず、男たちの精にけがされた全裸を投げ出し倒れていた。
殴られたのか顔が腫れ上がって、手足には青あざができ、骨が折れて腫れ上がって痛々しい。

「誰が……! 相手は誰だ!」
「犯人は…………」



「きみだよ」

男性の声に私はハッとした。
ここは……?
見えているのは白く明るい天井。
自分は横になってる?
私はあのとき倒れたのか?

「気がついた?」

その声に気付いて横を向くと青年が立っていた。
どことなく見覚えのある顔に私は「アイン、か」と声に出して確認する。

「呼び捨てにしないでくれる? 今の僕は精霊国ルーブンバッハの女王ユーレシアの王配。ルーブンバッハは今や国として独立したんだよ」
「ゼアは……娘たちは」
「そんなの、いやしないよ」
「そんなはずは……」
「夢、さ。……そうじゃなきゃ、娘たち・・・だっけ? その子たちが実際に殺されてしまうだろ。いくら父親がクズでもな、子供に罪はないと……ポーリシア義姉さんが傷ついた心でそういうんだよ。……だから擬似体験をしてもらうことにした。あれは娘を奪われた男の記憶を元にさせてもらったよ」
「じゃあ……」
「残念だけど、娘は生まれなかったよ。ゼアには出産後に擬似体験をしてもらうことになってたんだけどさ」

そう言って開かれた隣の部屋。
そこにいたのは『見えないなにか』に怯えるゼアの姿。

「覚えてる? セルティーナのこと」

アインの言葉に可愛い妹の笑顔と泥まみれの姿で見つかった亡骸を思い出した。
五歳で亡くなった妹は王城で開かれた子供だけのお茶会に出てて……
王家から見舞金としては多額のお金が出された。

「可愛かったよね、セルティーナ。僕たちの後ろを追いかけてきてさ。あの女がさ、お茶会で見たセルティーナが可愛いってだけで沼に突き落として殺したんだよ」
「う、嘘だ」
「ほんと。これってオーラシア義姉さんがゼアを調べててわかったんだ。でもね、王城に沼があると思う? それも危険だとわかるような沼が。子供たちを集めたお茶会の会場の近くに」

アインがゼアに薬を使って自供させた。
第三王子がゼアを唆してセルティーナを殺させたのだ。
理由は簡単、『面白いから』。
その前からゼアは第三王子の性人形ドールとしてお茶会の度に関係を持っていた。

「そうなると、ゼアのお腹の子は誰の子かわからないよね」

死産だったというその子は……

「第三王子の子だったよ」

そう判断されたのは赤ん坊の髪だった。
第三王子と同じ緑色の髪。
アインが見せてくれた、保存液に入れられたその赤ん坊の標本は男の子だった。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品