売られたケンカは高く買いましょう
無理じゃなくてやるんだよ!
「デデ、あなた私の持参金を使って遊び回ってたけど……。不貞を理由に婚約を破棄した以上、持参金は五倍返しってわかってますわよねえ。もちろん慰謝料と共に耳を揃えて支払いな。期限は明日だ」
「そ、そんなの無理だ」
「無理じゃなくてやるんだよ! 甘えてるんじゃねえ! 婚約破棄っていうもんは、借りたもんは全部一括で返済してゼロにした上で詫びとして慰謝料を一括で渡して縁を切ってもらうもんだ。踏み倒そうもんなら、裁判でその臓器を売り払う許可をもらうこともできる。もちろんその女も胎の子もね」
「それでも持参金には到底足りぬ」
私たち親子に脅されたことで、ようやく自分たちの愚かさを理解したのか二人の表情が凍りついた。
「さっさと座れ、無能ども」
「お待ちください。お前たちオーラシア様に謝罪を」
「いらん。そいつらの謝罪など鉄貨1枚の価値もない」
キッと睨めあげてくるゼア。
その隣で怯えた表情を見せるデデ。
……どっちが男だ?
「言われなければ謝罪もできない、振られても謝罪パフォーマンスすらみせられない無能に価値はない。そうでしょ、お父様」
「そうだな。さっさと片付けて次の問題解決に入りたいものだ」
父がそのまま進行を続けると宣言をして、アルドラに目を向けた。
「オーラシア様からお預かりした持参金の返却と慰謝料。これは全額明日の朝までに用意いたします。本日中の支払いだったのを猶予くださり感謝します」
そう言って私に頭を下げるアルドラ。
今はもう指示を出した執事によって、王都の屋敷にある家財にドレスや宝石を売り払われて屋敷も売却された頃だろう。
すでに消えることが決まった一族、王都に屋敷は必要ない。
足りなければ、領都にある屋敷にある家宝もすべて売却される。
アインはルーブンバッハ家にこのまま住めばいいので困らない。
「また当家といたしまして、大変無念ながらルーブンバッハ侯爵家との共同政策を続けられず……。アインをルーブンバッハ家に婿養子として、差し出し、当家を……ルーブンバッハ侯爵家に…………差し出すことで……」
言葉が途切れるのは悔しいからだろう。
陛下に息子の愚行による叱責を受けたのだから。
リッツン侯爵家は長く続いた貴族のひとつ。
それが息子の愚行で幕を下ろす。
そう、侯爵家がひとつ婚姻という形で吸収されることとなった。
それが陛下が当主会議に同席した理由のひとつ。
「待ってください! 俺は!」
「だから廃棄物だと言ってるでしょう。あなたたちは二人とも実家からの廃籍。一般人ではなく賎民に降格。それが国王陛下からの王命」
「そんな、バカな!」
「バカはあんたなの。物分かりの悪いあなた方のために、順序よくお教えしましょうか? まず此度の騒動の責任をとる形でデデは侯爵家より廃籍。次期当主であろうと無爵だから問題はない。そして子爵家令嬢ゼアと婚姻。これは当主代筆によりすでに受理。デデは子爵家に婿入り。しかし、此度の問題で子爵位は長子ブラームに譲られ、ゼアは『当主交代により既婚者は家から出る』という貴族法に則り無爵のまま平民へ。そこで、此度の慰謝料という借金を背負った二人に平民税の支払いはできないと判断されて平民権の剥奪。賎民として、納税の免除の代わりに居住区の指定及び行動の制限が命じられた」
「責任……」
「そう。あなたたちの婚約破棄により、共同事業が頓挫したのよ。それも国家事業だったものを。その責任を国から問われて当然。当事者が廃籍の処分をされるのも当然。よかったわね、責任を問われたときに処刑論もでたのよ。でも生かした方が処罰らしいということで処刑は見送られたの」
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コメント
ルールー
この主人公、口は悪いけど言っていることはかっこいい。
「婚約破棄っていうもんは、借りたもんは全部一括で返済してゼロにした上で詫びとして慰謝料を一括で渡して縁を切ってもらうもんだ」
思わず「そうだな」って納得したよ。
このセリフ、婚約破棄物の小説すべてに当てはまるよね。
このあとにある「バカはあんたなの」から始まるセリフがわかりやすい。
これで分からなければバカだ。
続きが気になる。