最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第1080話 先を見越す力を持つ者達
『妖魔退魔師』の総長シゲンは、ゲンロクを含めた『妖魔召士』達を相手に、これまでの借りを返すかの如く宣戦布告を行った。
『妖魔召士』達の長であるゲンロクは、今すぐに決断が出来ない様子だった為、ひとまずは『妖魔退魔師』側の意向をそのまま伝えた後、ゲンロクの屋敷を出て行くのであった。
シゲンはゲンロクの返事を数日間待つ事にしたが、あの様子であれば確実に妖魔山の管理を渡す事を選ぶだろう。ゲンロクを含めた今の『妖魔召士』達に『妖魔退魔師』と争う覚悟がない事は今回の会合でよく理解が出来た。
ゲンロク達の妖魔召士の里の出口で、一度だけシゲンは屋敷の方を振り返った。
(まぁ今回のような争いは過去を遡って省みても一度も無かった事なのだから、ゲンロク殿の態度が普通なのかもしれないが、それでもやはり私達から見れば、今の『妖魔召士』達は甘すぎる)
ここにシゲン達が来る前までならば、まだ彼らも本気で『妖魔退魔師』達と、事を構えるとは考えてなかったのかもしれないが、こうして目の前で戦争を起こすと告げた相手を見送り、そのまま見張りを放つような事もせずに静観して里を出ていく事を許す自体が、信じられぬ程に甘い事だと考えて、それだけで今後ゲンロク達が取る選択肢が、手に取るように分かるシゲンであった。
(しかしこれで確実に妖魔山の管理は、うちに回して来る事は間違いがないだろう。ゲンロク殿はヒュウガや退魔組の連中には手を掛ける真似はせず、どうせまた何か言い訳をつけながら、うちに交渉を求めて来るだろうが、それならばそれでこちらがまた有利に運べばいいだけの話だ。先に手を出したのが彼らの組織である以上、今後はずっと『妖魔退魔師』の風下に立つ事になるのだ。何も急ぐ必要はない)
最後にシゲンが考えた事は、前回この里に訪れたヒノエもまた考えていた事であった。
大きな力を持つ組織が中途半端に同規模の組織に仕掛けた場合、よっぽど利を手にしている場合を除き、先に手を出した方が泣きを見る。
これはどの分野においても同じことが言える事であり、まだ中小の力しか持たぬ組織が、やぶれかぶれで手を出して来る方が、大きな組織にとっては面倒な事なのである。
やがて再び前を向いたシゲンは、隣に並び立っていたミスズに口を開いた。
「どうやらお前が懸念を抱いていたイダラマ殿の企みは、ゲンロク殿とは何も関係がなかったようだな」
「え?」
唐突にシゲンにイダラマの名を出された事で、今後のゲンロク達への対応を考えていたミスズは、困惑するような声を出しながら顔をあげてシゲンの方を見た。
「妖魔山の管理の一件を持ち出してきたのはイダラマ殿だ。どうやらゲンロク殿とは繋がってはいなかったようだが、お前の読みではこの里の誰かと裏で繋がっていて、今回の一件もイダラマ殿が何か企んでいると、そう考えていたのだろう?」
裏でこっそりとイダラマの動向を探っていたミスズであったが、その事は総長シゲンにも相談をしてはおらず、今回の事にしても表向きは『妖魔山』の管理の問題と『予備群』の一件を『妖魔召士』達との会合の中心に話を持っていったミスズだが、山の管理問題の話を出しながら内心では、この会合に参加していた『妖魔召士』達の表情をこっそりと窺って、誰がイダラマと結託しているかを陰ながら探っていたミスズであった。
ミスズは会合の中で常に先手を取れるように話を持っていきながら、相手が反論する材料を出してきたところを総長の威圧で上手くコントロールしてもらい、再び相手につけこむやり方を維持しつつ『妖魔召士』一人一人の表情から、裏の顔を出さないかとミスズは見ていたのだが、どうやらあの中にはイダラマの妖魔山の話と関わりを持っていそうな人物は見当たらなかった。
つまりはあの場に居なかった『ヒュウガ』達が『イダラマ』と組んでいる可能性が高く、またそうでなかったとしてもミスズは、その卓越した洞察力とこれまでの経験を踏まえてあのイダラマは、きっと何かよからぬ事を考えていると、決して話をそのまま鵜呑みにしてはいけないのだと、常に心の中で警鐘を鳴らしていたのであった。
「流石総長、私の考えている事などすべてお見通しですか」
感服したとばかりに小さく溜息を吐きながら、ミスズはシゲンに笑みを向けた。
「しかしお前がそこまで気に掛かっている以上、この里で何もなかったからと言って油断は出来ぬ。当初の予定通り、ケイノトのキョウカに今回の事を伝えてヒュウガ達の動向や、イダラマ殿の様子もしっかりと捉えておく必要があるだろうな」
「はい、私も同意見です」
副総長のミスズはシゲンに言葉を返した後に、後ろで同じように足を止めて、一糸乱れぬ隊列を組んでいた『妖魔退魔師』達に視線を向けると、そちらに居た目的の人物に声を掛けた。
「ヒサト、前に出なさい」
……
……
……
『妖魔召士』達の長であるゲンロクは、今すぐに決断が出来ない様子だった為、ひとまずは『妖魔退魔師』側の意向をそのまま伝えた後、ゲンロクの屋敷を出て行くのであった。
シゲンはゲンロクの返事を数日間待つ事にしたが、あの様子であれば確実に妖魔山の管理を渡す事を選ぶだろう。ゲンロクを含めた今の『妖魔召士』達に『妖魔退魔師』と争う覚悟がない事は今回の会合でよく理解が出来た。
ゲンロク達の妖魔召士の里の出口で、一度だけシゲンは屋敷の方を振り返った。
(まぁ今回のような争いは過去を遡って省みても一度も無かった事なのだから、ゲンロク殿の態度が普通なのかもしれないが、それでもやはり私達から見れば、今の『妖魔召士』達は甘すぎる)
ここにシゲン達が来る前までならば、まだ彼らも本気で『妖魔退魔師』達と、事を構えるとは考えてなかったのかもしれないが、こうして目の前で戦争を起こすと告げた相手を見送り、そのまま見張りを放つような事もせずに静観して里を出ていく事を許す自体が、信じられぬ程に甘い事だと考えて、それだけで今後ゲンロク達が取る選択肢が、手に取るように分かるシゲンであった。
(しかしこれで確実に妖魔山の管理は、うちに回して来る事は間違いがないだろう。ゲンロク殿はヒュウガや退魔組の連中には手を掛ける真似はせず、どうせまた何か言い訳をつけながら、うちに交渉を求めて来るだろうが、それならばそれでこちらがまた有利に運べばいいだけの話だ。先に手を出したのが彼らの組織である以上、今後はずっと『妖魔退魔師』の風下に立つ事になるのだ。何も急ぐ必要はない)
最後にシゲンが考えた事は、前回この里に訪れたヒノエもまた考えていた事であった。
大きな力を持つ組織が中途半端に同規模の組織に仕掛けた場合、よっぽど利を手にしている場合を除き、先に手を出した方が泣きを見る。
これはどの分野においても同じことが言える事であり、まだ中小の力しか持たぬ組織が、やぶれかぶれで手を出して来る方が、大きな組織にとっては面倒な事なのである。
やがて再び前を向いたシゲンは、隣に並び立っていたミスズに口を開いた。
「どうやらお前が懸念を抱いていたイダラマ殿の企みは、ゲンロク殿とは何も関係がなかったようだな」
「え?」
唐突にシゲンにイダラマの名を出された事で、今後のゲンロク達への対応を考えていたミスズは、困惑するような声を出しながら顔をあげてシゲンの方を見た。
「妖魔山の管理の一件を持ち出してきたのはイダラマ殿だ。どうやらゲンロク殿とは繋がってはいなかったようだが、お前の読みではこの里の誰かと裏で繋がっていて、今回の一件もイダラマ殿が何か企んでいると、そう考えていたのだろう?」
裏でこっそりとイダラマの動向を探っていたミスズであったが、その事は総長シゲンにも相談をしてはおらず、今回の事にしても表向きは『妖魔山』の管理の問題と『予備群』の一件を『妖魔召士』達との会合の中心に話を持っていったミスズだが、山の管理問題の話を出しながら内心では、この会合に参加していた『妖魔召士』達の表情をこっそりと窺って、誰がイダラマと結託しているかを陰ながら探っていたミスズであった。
ミスズは会合の中で常に先手を取れるように話を持っていきながら、相手が反論する材料を出してきたところを総長の威圧で上手くコントロールしてもらい、再び相手につけこむやり方を維持しつつ『妖魔召士』一人一人の表情から、裏の顔を出さないかとミスズは見ていたのだが、どうやらあの中にはイダラマの妖魔山の話と関わりを持っていそうな人物は見当たらなかった。
つまりはあの場に居なかった『ヒュウガ』達が『イダラマ』と組んでいる可能性が高く、またそうでなかったとしてもミスズは、その卓越した洞察力とこれまでの経験を踏まえてあのイダラマは、きっと何かよからぬ事を考えていると、決して話をそのまま鵜呑みにしてはいけないのだと、常に心の中で警鐘を鳴らしていたのであった。
「流石総長、私の考えている事などすべてお見通しですか」
感服したとばかりに小さく溜息を吐きながら、ミスズはシゲンに笑みを向けた。
「しかしお前がそこまで気に掛かっている以上、この里で何もなかったからと言って油断は出来ぬ。当初の予定通り、ケイノトのキョウカに今回の事を伝えてヒュウガ達の動向や、イダラマ殿の様子もしっかりと捉えておく必要があるだろうな」
「はい、私も同意見です」
副総長のミスズはシゲンに言葉を返した後に、後ろで同じように足を止めて、一糸乱れぬ隊列を組んでいた『妖魔退魔師』達に視線を向けると、そちらに居た目的の人物に声を掛けた。
「ヒサト、前に出なさい」
……
……
……
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
1512
-
-
755
-
-
0
-
-
35
-
-
55
-
-
17
-
-
6
-
-
159
-
-
1168
コメント