最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第1070話 到着、サカダイの町

 サカダイの町の門前でサシャという女性に呼び止められたソフィ達だったが、そこにスオウが姿を見せる。

「組長、お帰りなさい」

 ソフィ達もその声に背後を振り返る。そこには長い太刀を帯刀する小柄な少年が、石段をのぼってきていた。

「ああ、ただいまサシャ。どうやら俺の勘違いだったみたい、残念ながら何も収穫は無かったよ」

 何やらがっかりした表情を浮かべながら大きく溜息を吐く少年だったが、やがてそこに居るソフィ達に視線を向け始める。

「そうでしたか……。このタイミングで『妖魔召士ようましょうし』の方が居るというのは、何か関係がありそうではありますが。ところで組長、彼らは例の旅籠町の護衛の『予備群よびぐん』と共に行動を行っていた者達のようで、何やら副総長に渡す為の書簡を『予備群よびぐん』の者から預かって来ているそうですが、どうなされますか?」

「君たちがエイジ殿に、道案内をさせていたっていう連中か。やれやれ君たちが何者かは知らないけどさ、天才『妖魔召士ようましょうし』に道案内をさせるなんてホント大した連中だよね。とりあえず中で詳しい話を聞かせてもらうよ」

 ソフィが頷いたのを確認したスオウという少年は、そのままサシャを伴って門の前まで歩いて行った。
 ソフィ達がそのままその場に立っているとスオウと言う少年は、中に居る者に門を開けるように指示を出し始める。

 するとゆっくりと門が開き中に居た数人の男が、少年に頭を下げているところが見えた。スオウと呼ばれていた少年は、男たちに頭を上げるように言った後、そのまま門の中へと入っていくのであった。

「ソフィよ。あいつどことなく『天衣無縫エヴィ』の野郎に雰囲気が似てやがるヤツだと思わねぇか?」

 隣に居たヌーはこっそりとソフィにそう告げて来るのだった。

「クックック、お主もそう感じたか?」

「何をしているの? 君たちも一緒に入りなよ」

 門の中に入っていったスオウ達だが、一向にソフィ達が入ってこないのを見て、ひょいっと門の中から顔を出しながらスオウはそう告げるのだった。

 ソフィとヌーは互いに苦笑いを浮かべながら彼の後について行き、サカダイの門の内側へと足を踏み入れるのであった。

 サシャに組長といわれていたスオウという少年についていき、町の内側に入ったソフィ達だったが、その城郭都市のような造りに驚かされる事となった。

 ソフィ達が入って来た門は一の門と言われており、町の一部ではあるのだが、その周囲は高い壁がそびえ立ち、中は『妖魔退魔師ようまたいまし』の屯所があるだけで、他には何もない事から町と言うより、まるで軍事用の施設のような印象であった。

 そしてスオウ達の歩く前方を見てみると再び大きな門が見える。下の門の上部に櫓が立てられており、五メートル程の高さの所に一の門側を見ている者や、高さを活かして外を見張る者。二の門の内側の町を見張る者といった見張りが数人いるのが分かる。

 そしてそのどの者達も単なる見張りとは思えない程の実力者なのだろう。ソフィが『旅籠町』の『予備群よびぐん』の屯所の中に入った時に感じたような、強い力を持つ者達の気配を感じ取るのだった。

 横に居るヌーもまたソフィが感じていたものを同じようにひしひしと感じていた様子で、眉を寄せながら門の上の人間数人を睨みつけている。

 流石に『代替身体だいたいしんたい』の身ではあっても中身は生粋の大魔王のようで、セルバスもまた、この町の人間はと感じているようだ。

 スオウ達が二の門の前に居る人間に門を開けるように命令すると、直ぐに門番たちは頭を下げて、言う通りに門を開き始めた。振動が地面を伝わり、厳かなサカダイの二の門が開いて行くと、ようやくその内側は町らしい町並みが広がっているのが見えた。

「町の中まで物々しい造りなのかと思ったが、どうやらそういうわけでもなかったようだな」

 ソフィが二の門の内側にある『サカダイ』の町並みにそう感想を漏らしていると、スオウ達が早くおいでとばかりに、こちらを見て手招きをしているのが見えた。

 ソフィはスオウに頷きを見せて、二の門の内側へと一歩足を踏み入れた。

 ――そして次の瞬間。
 至る所からソフィ達に向けて突き刺さるような視線を感じるのであった。

「は……、ははっ……! な、何なんだよここは!?」

 セルバスは背中に冷たい物が流れたのを感じた。それは決して池に落ちた時の水の所為ではなく、視線を受けたセルバスがこの町の脅威を感じ取った所為なのだろう。

 一の門の見張り達も実力者の気配を放っていたが、そんな見張り達とは比べ物にならない『』に近い視線が向けられたのであった。

「おいセルバス。てめぇ今回は大人しくしておけよ? 『旅籠町』でのような騒ぎを起こすと、面倒な事になりそうだ」」

 突然声を掛けられたセルバスは『サカダイ』の人間達を見て、どうやら『煌鴟梟こうしきょう』のアジト内で紫色の虎を見ていた時のように、真剣な表情を浮かべながらヌーに無言で頷いて見せるのであった。

(多くの視線が我らに向いているが、右奥の方から感じる者の視線は、どうやら徒者ではないな。魔力はそこまで大きくはないが、自分の力に対して相当の自信に満ちている者達が居るのが分かる)

 そこまで読み取ったソフィは肩を震わせて笑い始めるのだった。

(クックック! 何と心地良い視線なのだろうか!! どれどれ少し試してみるか?)

 ソフィの目が鋭く細められたかと思うと、右奥の方の視線に対して合わせるようにソフィは視線をそちらに向けて、少しだけソフィは自身に『魔力』を宿して見せるのだった。

「「!!」」

 ――次の瞬間、刀を差した大勢の者達が一斉にソフィ達を取り囲み始めるのであった。

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