最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第1056話 組長同士の争い
ソフィ達が『煌鴟梟』の者達を捕縛して『旅籠町』に戻ってきた頃『妖魔召士』達の元には既に『浮梟』から報告が届けられており、それに遅れる形ではあるが『妖魔退魔師』の組織の元にも『妖魔召士』が『予備群』を襲ったという話が届けられた。
前回ゲンロクの居る里へ話し合いに向かったヒノエは『予備群』が襲撃されたという知らせに流石に予想外すぎたのか、信じられないといった様子で呆れた笑いをヒナギクに見せていた。
「私はアイツらによく考えろと言ったつもりだったが、あいつらにとって『妖魔山』の管理権をうちに移す事がそこまで許容出来ない事であったというワケか?」
「どうなのでしょうか……。これは『妖魔召士』側の総意とは、いや『ゲンロク』殿の思惑から外れた出来事なのかもしれませんよ」
あの場に参加していなかった『妖魔召士』が、勝手に動いた事なのだろうと『ヒナギク』は予想をする。
(しかし私の予感がこのような形で実現されてしまうとは……)
ヒノエと共にゲンロクの里に向かったヒナギクだったが、その帰り際にヒノエに『妖魔退魔師』と『妖魔召士』が武力衝突を起こした歴史はないと告げられた。
しかしあの時ヒナギクはヒノエの背中を見ながら近い未来、その武力衝突が起こされるのではないかと予感めいた物を感じていたのであった。
「ゲンロク殿の思惑ではなかったとしても、もう今回の一件は冗談でしたでは済まされないだろう。ひとまず本部へ行くぞヒナギク!」
「了解です。ヒノエ組長」
…………
そして招集された『妖魔退魔師』の本部で話された議題は、やはり今回の『妖魔召士』の襲撃事件が本題であった。
副総長のミスズによる会議の進行で、今回の襲撃の場所である襲われた『予備群』名前や襲った相手など事細かく説明が行われていった。
『妖魔退魔師』側に報告を行った者は、ケイノトの町に放っていた間諜であった。
ゲンロクの里に居るヒュウガ派の『妖魔召士』が放った『式』の『浮梟』によって伝えられた情報をケイノトにある『妖魔召士』の下部組織『退魔組』に居るサテツ達に伝えられた情報がそのまま間諜に伝わり、その情報がサカダイに届けられたという事である。
つまり『妖魔退魔師』側にこの情報が届けられる頃には、退魔組を含めた『妖魔召士』側の組織の全体に伝わっているという事であり、既に『妖魔召士』側はこちらが動く前に、何らかの対策や準備を行い始めている頃だろう。
「これから我々は『妖魔召士』達の長であるゲンロク殿の元へ向かい、今回の事について、詳しい事情を聞きに行きます。全ては向こう側の態度一つですが、弁明次第では武力を伴った解決を行う予定ですので皆さんもそのつもりでお願いしますね」
淡々と副総長である『ミスズ』が決定事項を口にしているが、これまでの『ノックス』の世界の歴史上、両組織での武力を伴った戦争は過去には一度も行われてはいない。それは前時代までの互いの組織が、それだけは起こしてはならないと考えた上で気を付けた行動を取ってきたからに他ならない。
しかし今回は死人こそ出てはいなかったが、妖魔退魔師側の下部組織の予備群が傷つけられた上に、文句があるなら直接『妖魔召士』の長にいってこいと告げられたのである。
――『妖魔退魔師』側にも面子という物がある。
ここまで舐められた態度を取られている以上、何もせずに静観はあり得ない。この場に集まったそれぞれの組長や、副組長達はそれぞれが気を引き締めた表情を浮かべて副総長の言葉を耳に入れるのであった。
「我々がこの町を離れる間。町の警護は退魔師衆と精鋭の『予備群』に任せるつもりですが、最高幹部のヒノエ組、スオウ組、キョウカ組の三組の中から、一組だけケイノトの町に向かって頂きます」
「ケイノト? ああ『退魔組』の存在の為か」
ヒノエが訝しげに眉を寄せたが、そこには『妖魔召士』の下部組織『退魔組』がある事を思い出して直ぐに合点がいった様子だった。
「はい、その通りです。戦争になれば当然『退魔組』も『妖魔召士』の組織である以上、敵側の一部となる為、まずは相手の動向を窺う為に三組のどこかの組長がそちらに回って頂きたいと思っています」
『退魔組』に居る『妖魔召士』は現場の頭領であるサテツのみであり、その他は『特別退魔士』数人と『上位退魔士』達だけである為『妖魔退魔師』衆が数人と『予備群』が十名程向かえば、それだけで何とか出来る戦力はあるのだが、何か予想外の出来事が生じた時に臨機応変に動く事が出来て確実な作戦遂行を求めるのであれば、最高幹部を伴った組長が、指揮を執ることが望ましいと考えたようである。
「前回の事も踏まえて、事情をよく知るヒノエさんにそちらを任せたいと考えているのですが」
「いや、待ってください、ミスズ副総長」
副総長のミスズは最高幹部の中でも序列の一番高いヒノエ組を『ケイノト』の町に派遣しようと考えていた為、この場でそれを告げようとした。しかしそこで副総長のミスズの言葉を遮る形で『二組』の組長である『スオウ』から待ったの言葉が掛けられるのであった。
「事情をよく知るという事であれば、ヒノエ組長達にはゲンロク殿達との会合に参加した方が、宜しいのではないですか? ここ最近戦果を挙げられ始めたヒノエ組長はとても立派ですが、その組員達は最近ヒノエ組に抜擢された者達であり、今回のような非常に重要な任務を任せるのは酷だと思うのです。僕たち『二組』であれば数こそヒノエ組には劣りますが、組員全員が古参であり、戦闘経験の豊富な者達が揃っています。僕たち二組に退魔組は任せて頂きたいのですがどうでしょうか? 副総長」
「また始まった……」
誰にも聞こえない程の小さな声で副総長ミスズはぽろりと言葉を漏らす。
元々は一組を預かる最高幹部であったスオウだが、近年その『一組』の座をヒノエ組に奪われてしまったスオウ組は何かにつけて『一組』となった『ヒノエ組』を敵視していたのであった。
「おいおい、副総長殿が決めた事にいちいち文句言ってんじゃねぇよ? クソガキ」
聞き分けの悪い子供を相手にするかのような声で告げると、ヒノエは大きく溜息を吐いた。
スオウの眉がピクピクと動いたかと思うと、ぎりっと歯噛みした後に直ぐに表情を戻して無理矢理に笑みを作った。
「強欲だよねぇ、ヒノエってさ。どんな汚い手を使って手柄を立ててきたのかは知らないけどさぁ? まだ足りないのかなあ、それとも総長に気にいられたくて必死なのかな?」
こちらも隣に居る『ヒノエ』達だけに聞こえるような声で『ヒノエ』を煽る『スオウ』であった。
「あ? もういっぺん言ってみろよ、クソチビ!」
「ああ? 何度でも言ってあげるよ、このうどの大木!!」
総長にそこまで気に入られたいのかとスオウに言われたヒノエは、隣に居たスオウの髪の毛を強引に掴んだかと思うと、スオウも負けじとヒノエの胸倉を掴みあげる。
「な、何をしているのですか、今は大事な会議の最中なんですよ!」
進行を務めていた副総長ミスズが慌てて止めに入るのだった。総長のシゲンはその様子をみて、腕を組みながら溜息を吐くのであった。
前回ゲンロクの居る里へ話し合いに向かったヒノエは『予備群』が襲撃されたという知らせに流石に予想外すぎたのか、信じられないといった様子で呆れた笑いをヒナギクに見せていた。
「私はアイツらによく考えろと言ったつもりだったが、あいつらにとって『妖魔山』の管理権をうちに移す事がそこまで許容出来ない事であったというワケか?」
「どうなのでしょうか……。これは『妖魔召士』側の総意とは、いや『ゲンロク』殿の思惑から外れた出来事なのかもしれませんよ」
あの場に参加していなかった『妖魔召士』が、勝手に動いた事なのだろうと『ヒナギク』は予想をする。
(しかし私の予感がこのような形で実現されてしまうとは……)
ヒノエと共にゲンロクの里に向かったヒナギクだったが、その帰り際にヒノエに『妖魔退魔師』と『妖魔召士』が武力衝突を起こした歴史はないと告げられた。
しかしあの時ヒナギクはヒノエの背中を見ながら近い未来、その武力衝突が起こされるのではないかと予感めいた物を感じていたのであった。
「ゲンロク殿の思惑ではなかったとしても、もう今回の一件は冗談でしたでは済まされないだろう。ひとまず本部へ行くぞヒナギク!」
「了解です。ヒノエ組長」
…………
そして招集された『妖魔退魔師』の本部で話された議題は、やはり今回の『妖魔召士』の襲撃事件が本題であった。
副総長のミスズによる会議の進行で、今回の襲撃の場所である襲われた『予備群』名前や襲った相手など事細かく説明が行われていった。
『妖魔退魔師』側に報告を行った者は、ケイノトの町に放っていた間諜であった。
ゲンロクの里に居るヒュウガ派の『妖魔召士』が放った『式』の『浮梟』によって伝えられた情報をケイノトにある『妖魔召士』の下部組織『退魔組』に居るサテツ達に伝えられた情報がそのまま間諜に伝わり、その情報がサカダイに届けられたという事である。
つまり『妖魔退魔師』側にこの情報が届けられる頃には、退魔組を含めた『妖魔召士』側の組織の全体に伝わっているという事であり、既に『妖魔召士』側はこちらが動く前に、何らかの対策や準備を行い始めている頃だろう。
「これから我々は『妖魔召士』達の長であるゲンロク殿の元へ向かい、今回の事について、詳しい事情を聞きに行きます。全ては向こう側の態度一つですが、弁明次第では武力を伴った解決を行う予定ですので皆さんもそのつもりでお願いしますね」
淡々と副総長である『ミスズ』が決定事項を口にしているが、これまでの『ノックス』の世界の歴史上、両組織での武力を伴った戦争は過去には一度も行われてはいない。それは前時代までの互いの組織が、それだけは起こしてはならないと考えた上で気を付けた行動を取ってきたからに他ならない。
しかし今回は死人こそ出てはいなかったが、妖魔退魔師側の下部組織の予備群が傷つけられた上に、文句があるなら直接『妖魔召士』の長にいってこいと告げられたのである。
――『妖魔退魔師』側にも面子という物がある。
ここまで舐められた態度を取られている以上、何もせずに静観はあり得ない。この場に集まったそれぞれの組長や、副組長達はそれぞれが気を引き締めた表情を浮かべて副総長の言葉を耳に入れるのであった。
「我々がこの町を離れる間。町の警護は退魔師衆と精鋭の『予備群』に任せるつもりですが、最高幹部のヒノエ組、スオウ組、キョウカ組の三組の中から、一組だけケイノトの町に向かって頂きます」
「ケイノト? ああ『退魔組』の存在の為か」
ヒノエが訝しげに眉を寄せたが、そこには『妖魔召士』の下部組織『退魔組』がある事を思い出して直ぐに合点がいった様子だった。
「はい、その通りです。戦争になれば当然『退魔組』も『妖魔召士』の組織である以上、敵側の一部となる為、まずは相手の動向を窺う為に三組のどこかの組長がそちらに回って頂きたいと思っています」
『退魔組』に居る『妖魔召士』は現場の頭領であるサテツのみであり、その他は『特別退魔士』数人と『上位退魔士』達だけである為『妖魔退魔師』衆が数人と『予備群』が十名程向かえば、それだけで何とか出来る戦力はあるのだが、何か予想外の出来事が生じた時に臨機応変に動く事が出来て確実な作戦遂行を求めるのであれば、最高幹部を伴った組長が、指揮を執ることが望ましいと考えたようである。
「前回の事も踏まえて、事情をよく知るヒノエさんにそちらを任せたいと考えているのですが」
「いや、待ってください、ミスズ副総長」
副総長のミスズは最高幹部の中でも序列の一番高いヒノエ組を『ケイノト』の町に派遣しようと考えていた為、この場でそれを告げようとした。しかしそこで副総長のミスズの言葉を遮る形で『二組』の組長である『スオウ』から待ったの言葉が掛けられるのであった。
「事情をよく知るという事であれば、ヒノエ組長達にはゲンロク殿達との会合に参加した方が、宜しいのではないですか? ここ最近戦果を挙げられ始めたヒノエ組長はとても立派ですが、その組員達は最近ヒノエ組に抜擢された者達であり、今回のような非常に重要な任務を任せるのは酷だと思うのです。僕たち『二組』であれば数こそヒノエ組には劣りますが、組員全員が古参であり、戦闘経験の豊富な者達が揃っています。僕たち二組に退魔組は任せて頂きたいのですがどうでしょうか? 副総長」
「また始まった……」
誰にも聞こえない程の小さな声で副総長ミスズはぽろりと言葉を漏らす。
元々は一組を預かる最高幹部であったスオウだが、近年その『一組』の座をヒノエ組に奪われてしまったスオウ組は何かにつけて『一組』となった『ヒノエ組』を敵視していたのであった。
「おいおい、副総長殿が決めた事にいちいち文句言ってんじゃねぇよ? クソガキ」
聞き分けの悪い子供を相手にするかのような声で告げると、ヒノエは大きく溜息を吐いた。
スオウの眉がピクピクと動いたかと思うと、ぎりっと歯噛みした後に直ぐに表情を戻して無理矢理に笑みを作った。
「強欲だよねぇ、ヒノエってさ。どんな汚い手を使って手柄を立ててきたのかは知らないけどさぁ? まだ足りないのかなあ、それとも総長に気にいられたくて必死なのかな?」
こちらも隣に居る『ヒノエ』達だけに聞こえるような声で『ヒノエ』を煽る『スオウ』であった。
「あ? もういっぺん言ってみろよ、クソチビ!」
「ああ? 何度でも言ってあげるよ、このうどの大木!!」
総長にそこまで気に入られたいのかとスオウに言われたヒノエは、隣に居たスオウの髪の毛を強引に掴んだかと思うと、スオウも負けじとヒノエの胸倉を掴みあげる。
「な、何をしているのですか、今は大事な会議の最中なんですよ!」
進行を務めていた副総長ミスズが慌てて止めに入るのだった。総長のシゲンはその様子をみて、腕を組みながら溜息を吐くのであった。
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