最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第1051話 互いの組織の事情
「ねぇイダラマ。君の言う通りにしていれば元の世界へ帰る事の出来る『転置宝玉』をくれるというから僕は君と行動を共にしているんだよ?」
『妖魔山』へと向かいながら苛立ちを隠そうともせずに、隣に居るイダラマに苦言を呈するのは、青髪をした少年『エヴィ』であった。
当初の予定では『ゲンロクの里』の襲撃後、直ぐにサカダイに向かい『妖魔退魔師』の組織で話し合いを終えた後、彼はマジックアイテムの『転置宝玉』を渡してもらい、そこでイダラマと別れるつもりであった。
あくまでゲンロクの里から『転置宝玉』を奪う協力と、サカダイの『妖魔退魔師』達との会合が終わるまでの護衛のつもりだったのである。
しかしその『妖魔退魔師』の会合を終えた今も、その護衛の協力をイダラマから告げられた為に、こうして不満を述べていたのである。
「ああ、分かっているよ『麒麟児』。今回の事が終われば、約束通りお前に『転置宝玉』を渡す。だから今はもう少し協力をしてくれないだろうか」
エヴィは静かにイダラマを見つめて、無言で真意を確かめる。どうやら本当に彼の言葉には、偽りがあるようには見えなかった。
「分かったよ……」
溜息を吐いたエヴィは、もう少しだけ彼に従う事にするのだった。元『予備群』のアコウとウガマは『イダラマ』とエヴィの様子に顔を見合わせて笑顔を浮かべ合う。
どうやらエヴィが契約違反だと告げて暴れるんじゃないかと、互いに心の中で懸念を抱いていたようで、もう少し護衛の延長をするという事をイダラマに約束してくれたエヴィに、ほっと一安心した様子であった。
イダラマ達が妖魔山に向かっている理由は、先日サカダイの『妖魔退魔師』組織との間で行われた会合でイダラマが提示した『妖魔山』の管理についての話が大きく前に進んだ為である。
……
……
……
――イダラマとエヴィ達が『妖魔山』へと向かう前に時は遡る。
あの会合の最後に『妖魔退魔師』の総長『シゲン』と、副総長の『ミスズ』は直ぐに返事をする事は出来ないとイダラマに告げた。
しかしサカダイの領地内に入り込んだ事に対して元々『妖魔退魔師』側は『妖魔召士』側と会合をするという予定は立っていた為、今回の事を一応留意した上で、ミスズ達は最高幹部のヒノエに話を纏めてくるようにと命令を下したのだった。
そして総長、副総長から命令を受けたヒノエはこれを快諾して、自分の組の人間だけが居るヒノエ組の屯所へとこの話を持ち帰り、直ぐに副組長である『ヒナギク』を連れてゲンロクが居る里へと、向かうのであった。
…………
『妖魔召士』達が大勢見ている中、ゲンロクの里の中を『妖魔退魔師』達が歩いていく。
その数は凡そ十人程だろうか。彼らは自分達に注目する『妖魔召士』達を睨み返す。
『妖魔退魔師』達に睨まれた『妖魔召士』達は、悔しそうに顔を歪めて視線を逸らした。それを見た『妖魔退魔師』達の先頭を歩いている女性が足を止めて口を開いた。
「お前ら私達はあくまで話し合いに来たんだ。先に手を出すような真似をして、奴らに隙を見せるんじゃねぇぞ?」
ヒノエ組の者達は、組長のヒノエに釘を刺されて慌てて頷きを返すのだった。
『妖魔召士』達の里の中を我が物顔で歩く『妖魔退魔師』達。その先頭を歩いていくヒノエは、中央に建つ屋敷の前で足を止める。
屋敷の前で待っていた一人の男が『ヒノエ』達に頭を下げて一礼をした後、顔をあげると同時に無表情で口を開いた。
「ご足労頂きありがとうございます。既に皆集まっておりますので、どうぞ中へ……」
ヒノエにそう告げたのは、ゲンロクの側近である『妖魔召士』の男であった。
「ああ、案内を頼むぞ」
ヒノエは自分より二回り程は齢が上であろう『妖魔召士』の男にそう告げると、隣に居る『ヒナギク』の顔を一瞥する。
「貴方たちはここで待っていなさい」
「分かりました、お気をつけて」
どうやらゲンロク達の居る屋敷の中へは組長である『ヒノエ』と、副組長である『ヒナギク』の二人で入るようであった。
「それではこちらです」
『妖魔召士』の案内でヒノエとヒナギクは、ゲンロク達の待つ屋敷の中へと入って行くのであった。
『妖魔山』へと向かいながら苛立ちを隠そうともせずに、隣に居るイダラマに苦言を呈するのは、青髪をした少年『エヴィ』であった。
当初の予定では『ゲンロクの里』の襲撃後、直ぐにサカダイに向かい『妖魔退魔師』の組織で話し合いを終えた後、彼はマジックアイテムの『転置宝玉』を渡してもらい、そこでイダラマと別れるつもりであった。
あくまでゲンロクの里から『転置宝玉』を奪う協力と、サカダイの『妖魔退魔師』達との会合が終わるまでの護衛のつもりだったのである。
しかしその『妖魔退魔師』の会合を終えた今も、その護衛の協力をイダラマから告げられた為に、こうして不満を述べていたのである。
「ああ、分かっているよ『麒麟児』。今回の事が終われば、約束通りお前に『転置宝玉』を渡す。だから今はもう少し協力をしてくれないだろうか」
エヴィは静かにイダラマを見つめて、無言で真意を確かめる。どうやら本当に彼の言葉には、偽りがあるようには見えなかった。
「分かったよ……」
溜息を吐いたエヴィは、もう少しだけ彼に従う事にするのだった。元『予備群』のアコウとウガマは『イダラマ』とエヴィの様子に顔を見合わせて笑顔を浮かべ合う。
どうやらエヴィが契約違反だと告げて暴れるんじゃないかと、互いに心の中で懸念を抱いていたようで、もう少し護衛の延長をするという事をイダラマに約束してくれたエヴィに、ほっと一安心した様子であった。
イダラマ達が妖魔山に向かっている理由は、先日サカダイの『妖魔退魔師』組織との間で行われた会合でイダラマが提示した『妖魔山』の管理についての話が大きく前に進んだ為である。
……
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――イダラマとエヴィ達が『妖魔山』へと向かう前に時は遡る。
あの会合の最後に『妖魔退魔師』の総長『シゲン』と、副総長の『ミスズ』は直ぐに返事をする事は出来ないとイダラマに告げた。
しかしサカダイの領地内に入り込んだ事に対して元々『妖魔退魔師』側は『妖魔召士』側と会合をするという予定は立っていた為、今回の事を一応留意した上で、ミスズ達は最高幹部のヒノエに話を纏めてくるようにと命令を下したのだった。
そして総長、副総長から命令を受けたヒノエはこれを快諾して、自分の組の人間だけが居るヒノエ組の屯所へとこの話を持ち帰り、直ぐに副組長である『ヒナギク』を連れてゲンロクが居る里へと、向かうのであった。
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『妖魔召士』達が大勢見ている中、ゲンロクの里の中を『妖魔退魔師』達が歩いていく。
その数は凡そ十人程だろうか。彼らは自分達に注目する『妖魔召士』達を睨み返す。
『妖魔退魔師』達に睨まれた『妖魔召士』達は、悔しそうに顔を歪めて視線を逸らした。それを見た『妖魔退魔師』達の先頭を歩いている女性が足を止めて口を開いた。
「お前ら私達はあくまで話し合いに来たんだ。先に手を出すような真似をして、奴らに隙を見せるんじゃねぇぞ?」
ヒノエ組の者達は、組長のヒノエに釘を刺されて慌てて頷きを返すのだった。
『妖魔召士』達の里の中を我が物顔で歩く『妖魔退魔師』達。その先頭を歩いていくヒノエは、中央に建つ屋敷の前で足を止める。
屋敷の前で待っていた一人の男が『ヒノエ』達に頭を下げて一礼をした後、顔をあげると同時に無表情で口を開いた。
「ご足労頂きありがとうございます。既に皆集まっておりますので、どうぞ中へ……」
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