最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第1034話 警戒心を強める
「当然分かっているさ。副総長ミスズ殿」
ミスズはイダラマの気が確かかどうかを疑うようにその顔を見つめる。
「先程も言った事なのだが今『妖魔召士』側は相当に荒れている状況なのだ。今はまだゲンロク殿や、ヒュウガ殿が表立っては対立をしていないが、爆弾を抱えている状態だ。そうでなくとも『妖魔召士』の組織自体が『守旧派』と『改革派』で割れていたのだ。そこらかしこに火種がくすぶっている状態だと言うのに、このまま改革派内で更に内部分裂が起きるような事が起きれば『妖魔山』の管理に手を回す余裕などなくなると思わないか?」
つまりイダラマはまともな管理状況に無い以上、このまま『妖魔山』に何かあった時に十分な対応が出来ない可能性が高いと『妖魔退魔師』側に暗に告げているのだった。
現状『妖魔召士』が『妖魔山』の管理を全て行っている為に『妖魔退魔師』側は勝手に『妖魔山』に入る事も出来ないのである。
山を降りてきた妖魔が暴れるような事があれば、各町の護衛に出している『予備群』が現場にあたり、そこで更に『予備群』や町民達に被害が出た場合にようやく『妖魔退魔師』側の組織が自由に動く事が可能となるのである。
しかしそんな状況になったとしても、それでもいちいち『妖魔召士』に『妖魔退魔師』側がどう動くかを逐一報告を行った上で、話を通さなければならないのだ。
『妖魔団の乱』以前であればまだ不時の際に、少しくらいの越権行為や、互いの組織間のあらゆる事に目を瞑っていた事だろうが、現在の『妖魔召士』組織の体制になり替わり『妖魔団の乱』以降は更に勝手は許されなくなってしまった。
加護の森の隣にあるサカダイの森に入る事だけで大事になる可能性があるくらいなのである『妖魔山』に関してとなれば『サカダイの森』とは、比較にもならないだろう。
特にゲンロクは暫定の長という座である為、実際に越権行為等々の問題が起きた場合『妖魔達から町人達を守る為だった』という主張であっても、ヒュウガ派や『退魔組』達が騒ぎ立ててどういう判断が下されるか分からない。前時代とは違って今の『妖魔召士』組織達には倫理がないのである。
「確かにこの世界を守る為には『妖魔山』の管理は万全で無ければならないでしょう。ですがそれを、貴方がたの長は認めると思いますか?」
イダラマはそこでたっぷりと間を取った後に、にやりと笑って見せた。
「まぁそれは段階は踏まなくてはならないでしょうが、まずは今回の『妖魔退魔師』側の土地に入り込んだ事に対する処罰を『妖魔召士』側に明確に伝えて頂きたい」
「それは、元々そのつもりでしたが……」
副総長のミスズは今の『妖魔召士』の中で、まだ侮れない者が残っていたという事をこの場で記憶しながらそう告げた。
「今回の一件は『妖魔山』の管理を移すという話の布石として繋げやすい処罰にするべきでしょう。出来るだけ受け入れやすく、しかし次に繋げやすくなる物を……」
イダラマは『妖魔退魔師』では無い為、処罰を明確に提示する事はしない。しかしここまで御膳立てをした以上は、よっぽど『妖魔退魔師』側が、馬鹿の集まりで無ければ『妖魔山』の管理を得るという事に対して何らかの手筈を整えられる筈である。
イダラマは流石にそこまでの心配はしていない。後はこの後のゲンロクとヒュウガ達次第となるが、万が一両名の間に、ボロが出なかったとしてもイダラマにはまだ考えは残されている。
サカダイの管理するあの森で『特別退魔士』であったイバキが、彼の『式』によって、妖魔山方面に飛んで行ったのを見ていたイダラマは『妖魔召士』側の下部組織『退魔組』が『妖魔山』に対して、裏で何かをしようと企んでいると、帳尻と適合性を合わせた『偏向的』で『歪曲論』な捏造話を持ちだせばいい。
イダラマにとっては『ケイノト』側から『サカダイ』側へと『妖魔山』の管理を移す事が出来れば、彼の狙いにまた一歩近づく事が出来るのだから。
どうやらイダラマが今回ここに持ち込んだ話は以上の様子であった。
総長のシゲンは注意を行った後、無言を貫いたままだが『妖魔退魔師』の副総長ミスズは、このイダラマという妖魔召士は油断が出来ないと、警戒心を一段階あげる結果となった。
そしてこの話し合いが行われた数日後『妖魔召士』のヒュウガが放った追手が『予備群』のコウゾウを襲ったという報告が『妖魔退魔師』の組織の元に届けられる事となった――。
……
……
……
ミスズはイダラマの気が確かかどうかを疑うようにその顔を見つめる。
「先程も言った事なのだが今『妖魔召士』側は相当に荒れている状況なのだ。今はまだゲンロク殿や、ヒュウガ殿が表立っては対立をしていないが、爆弾を抱えている状態だ。そうでなくとも『妖魔召士』の組織自体が『守旧派』と『改革派』で割れていたのだ。そこらかしこに火種がくすぶっている状態だと言うのに、このまま改革派内で更に内部分裂が起きるような事が起きれば『妖魔山』の管理に手を回す余裕などなくなると思わないか?」
つまりイダラマはまともな管理状況に無い以上、このまま『妖魔山』に何かあった時に十分な対応が出来ない可能性が高いと『妖魔退魔師』側に暗に告げているのだった。
現状『妖魔召士』が『妖魔山』の管理を全て行っている為に『妖魔退魔師』側は勝手に『妖魔山』に入る事も出来ないのである。
山を降りてきた妖魔が暴れるような事があれば、各町の護衛に出している『予備群』が現場にあたり、そこで更に『予備群』や町民達に被害が出た場合にようやく『妖魔退魔師』側の組織が自由に動く事が可能となるのである。
しかしそんな状況になったとしても、それでもいちいち『妖魔召士』に『妖魔退魔師』側がどう動くかを逐一報告を行った上で、話を通さなければならないのだ。
『妖魔団の乱』以前であればまだ不時の際に、少しくらいの越権行為や、互いの組織間のあらゆる事に目を瞑っていた事だろうが、現在の『妖魔召士』組織の体制になり替わり『妖魔団の乱』以降は更に勝手は許されなくなってしまった。
加護の森の隣にあるサカダイの森に入る事だけで大事になる可能性があるくらいなのである『妖魔山』に関してとなれば『サカダイの森』とは、比較にもならないだろう。
特にゲンロクは暫定の長という座である為、実際に越権行為等々の問題が起きた場合『妖魔達から町人達を守る為だった』という主張であっても、ヒュウガ派や『退魔組』達が騒ぎ立ててどういう判断が下されるか分からない。前時代とは違って今の『妖魔召士』組織達には倫理がないのである。
「確かにこの世界を守る為には『妖魔山』の管理は万全で無ければならないでしょう。ですがそれを、貴方がたの長は認めると思いますか?」
イダラマはそこでたっぷりと間を取った後に、にやりと笑って見せた。
「まぁそれは段階は踏まなくてはならないでしょうが、まずは今回の『妖魔退魔師』側の土地に入り込んだ事に対する処罰を『妖魔召士』側に明確に伝えて頂きたい」
「それは、元々そのつもりでしたが……」
副総長のミスズは今の『妖魔召士』の中で、まだ侮れない者が残っていたという事をこの場で記憶しながらそう告げた。
「今回の一件は『妖魔山』の管理を移すという話の布石として繋げやすい処罰にするべきでしょう。出来るだけ受け入れやすく、しかし次に繋げやすくなる物を……」
イダラマは『妖魔退魔師』では無い為、処罰を明確に提示する事はしない。しかしここまで御膳立てをした以上は、よっぽど『妖魔退魔師』側が、馬鹿の集まりで無ければ『妖魔山』の管理を得るという事に対して何らかの手筈を整えられる筈である。
イダラマは流石にそこまでの心配はしていない。後はこの後のゲンロクとヒュウガ達次第となるが、万が一両名の間に、ボロが出なかったとしてもイダラマにはまだ考えは残されている。
サカダイの管理するあの森で『特別退魔士』であったイバキが、彼の『式』によって、妖魔山方面に飛んで行ったのを見ていたイダラマは『妖魔召士』側の下部組織『退魔組』が『妖魔山』に対して、裏で何かをしようと企んでいると、帳尻と適合性を合わせた『偏向的』で『歪曲論』な捏造話を持ちだせばいい。
イダラマにとっては『ケイノト』側から『サカダイ』側へと『妖魔山』の管理を移す事が出来れば、彼の狙いにまた一歩近づく事が出来るのだから。
どうやらイダラマが今回ここに持ち込んだ話は以上の様子であった。
総長のシゲンは注意を行った後、無言を貫いたままだが『妖魔退魔師』の副総長ミスズは、このイダラマという妖魔召士は油断が出来ないと、警戒心を一段階あげる結果となった。
そしてこの話し合いが行われた数日後『妖魔召士』のヒュウガが放った追手が『予備群』のコウゾウを襲ったという報告が『妖魔退魔師』の組織の元に届けられる事となった――。
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