最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第1024話 隠し床と、隠し通路
ソフィやヌー達が中庭で会話をしていた頃、コウゾウとシグレの護衛隊の二人は『煌鴟梟』の幹部やボスが、建物内に隠れていないかと建物内を調べまわって一通り全ての部屋を二人で手分けして探していたが、結局誰一人として見つける事が出来なかった。
「くそっ! 俺達が外で騒いでいる内に逃げられてしまったか?」
「確かにあれ程の爆音が響き渡っていて、何も気づかないという筈はないでしょうからね」
二人は再び建物内で合流した後、建物内で一番広く豪華に見える部屋に集まった。この部屋が『煌鴟梟』のボスが使っていた部屋で間違いはないだろう。
「隊長、ちょっとここを見て下さい」
「ん?」
ボスが座っていた椅子の下の床をよく目を凝らして見てみると、少しだけ他の箇所より薄く見えた。
シグレとコウゾウは互いに顔を見合わせた後、二人は同時に頷いた。
色が少しだけ違う床を力を入れて押してみると、べこりという音と共に何かが外れるような音が響き、少しだけ床底が奥へと押し込まれる。その床を動かしてみると横へとスライドする事が出来た。
なくなった床の下には旅籠町にある彼らの屯所の隠し梯子と、同じように収納されていたであろう梯子が既に使われていたようで、宙をブラブラと揺れているのが見えた。
どうやら色の違う床をズラす事でその下に引っ掛けられていた梯子が支えを失くして、梯子が出て来る仕掛けになっていたのだろう。
そして綺麗に収納されておらずにこうして既に出ているという事は、最近使用されたそのままで、放置されたという事であり、つまりはまだボスたちは遠くまで行っていないという事を表していた。
「どうやらこの梯子で地下へと降りたらしいな」
「そのようです。ひとまず何処へ続いているのか探ってみましょう」
「ああ……」
二人は床底の色違いの板に引っかけられてブラブラと宙を舞っている梯子を手に取ると、器用に梯子を使って降りていく。
ボスの部屋から相当下に深く掘られていたようで、梯子の一番下まで降りるまで相当に長く感じられた。
二人は梯子から手を離して地下へと降り立つと、人が一人通れる程の狭いスペースの先、微かな灯りが見えた。二人がそのまま灯りが見える方へと進んでいくと、今度は収納梯子ではなく備え付けられていた鉄の梯子を発見した。梯子の先はどうやら地上へと続いているようで、そこから外に出られるようになっていたのだろう。
「急ごう」
コウゾウがそう言うとシグレも頷き、二人はその梯子を登っていくのであった。
……
……
……
『煌鴟梟』のボスの部屋から繋がっていた地下通路を通って出た先は、ソフィたちが入ってきた入口とは反対方向にある地上へと繋がっていたようで、どうやら今回のような時の為に作られた抜け道だったようだ。
「隊長、あそこに!!」
「むっ!」
ソフィ達がここに来るまでに通って来た道の反対方向。ユウゲが使った道側に逃げる三人の姿が映った。
一人目は旅籠町で酒場を経営していた『ミヤジ』。二人目は同じく旅籠町で宿泊施設の経営していた『サノスケ』。そして最後の三人目だが、その三人目の男に二人は面識がなかった。
その男は意識はあるようだが、どこか虚空を見つめたままサノスケに担ぎ上げられていた。どうやらあの三人目の男は自分では歩けないようである。
「シグレ、ひとまず奴らを捕らえるぞ」
「分かりました!」
『予備群』の旅籠の護衛隊の二人は互いに頷き合うと、前を走る『煌鴟梟』の者達に向けて追い縋って行った。
…………
「お、おい! う、後ろだサノスケ!」
「くっ、もう見つかっちまったか」
……
……
……
時は遡り『ミヤジ』と『サノスケ』はソフィ達が襲撃に来た後の事、ヒロキにあの場を任せてボスに危険を知らせる為にボスの部屋に向かった。
そしてボスのトウジの部屋に辿り着いた後、ミヤジはセルバスが『予備群』を引き連れてこの場に戻ってきた事で、これまでの新入りのセルバスに対しての思いが、この緊急時から来る焦りから噴出し『ミヤジ』は愚痴と共に『トウジ』に吐き出されたのだ。
そしてそのミヤジのセルバスに対する思いの発言がトウジに向けられた瞬間、再びトウジは意識を失ってしまった。
虚ろな目を浮かべてこの急いでいる時だというのに、何やらセルバスなら大丈夫だとか、何か考えがあるに違いないなどと世迷言のように『煌鴟梟』のボス『トウジ』は語り始めたのである。
勿論これは『ユウゲ』の時と同じように『セルバス』の『魔瞳』である『金色の目』が発動されたことによる事象なのだが、操られている事など知りもしない『ミヤジ』と『サノスケ』は『ヒロキ』が自分達の為に時間を稼いでくれているというのに、要領の得ない事をダラダラと喋っている『トウジ』に埒があかないと判断して、ブツブツと『セルバス』を褒めたたえるような言葉を吐き続けるボスをそのまま担ぎ上げて彼の部屋から逃亡を図った。
二重底の隠し床の板を外したミヤジは、先にボスを抱えるサノスケを先に降ろさせて、ミヤジは隠し床を下から上手くはめ込んで後処理を終えた後に、自分達も梯子を使って地下へと降り立った。
収納梯子はもう出しっぱなしにしていく他なかったが、急いでいる時にそんな事は気にしていられなかった為、懸念を残しつつも梯子はそのままにしておいた。隠し床さえバレなければ問題はないだろうと、最終的に判断したようである。
そして上手く隠し通路を通って、奴らにバレ無い様に地上へ出た後、ひとまずは旅籠町のある方角と反対方向の、ケイノト方面に向けて逃げようとサノスケと相談を終えて向かい始めた直後、コウゾウ達に見つかったというところであった。
「ハァッハァッ……! な、何でこんなに早くバレるんだよ」
人を一人抱えながら梯子を降りたり昇ったりこうして走ったりと、流石に体力のあるサノスケであっても疲労を隠すことは出来なかった。
「畜生! あの新入りの野郎が絶対、何かヘマをしやがった所為だ! 絶対、絶対そうに決まっている!! 畜生、畜生……!!」
『煌鴟梟』のボスであるトウジに、セルバスを『煌鴟梟』には相応しくないと直談判をしてきたミヤジにとって、今回の起きた出来事は決して許せるような事態ではなかった。
ミヤジはそら見た事かとボスに言いたいところであったが、そのボスが気が狂っているように意識がおかしい上に、そんな事をしている暇は無い為、ミヤジはやりきれない思いを抱えながら『予備群』から逃げようと必死であった。
しかしこのままでは彼らが逃げられる道理はない。
追いかけてきているのは『妖魔退魔師』の組織に属する『予備群』である。
妖魔退魔師には届かないまでも、単なる人間達であるミヤジに、訓練を受けた『予備群』達から逃げ遂せる体力がある筈も無く――。
「止まれ! お前達はもう逃げ場は無いぞ! あの旅籠町で、宿と酒場を営んでいる者達だという事も分かっている。これ以上逃げたところで、もうお前達に未来はないぞ!」
コウゾウの声を聞きながら、ミヤジとサノスケは諦観の表情を浮かべ始める。
(お、俺の未来が……! こ、こんなところで……!!)
『煌鴟梟』の幹部として先代の時代から野望を抱えて来たミヤジは、その未来が閉ざされていくのを感じ取り、走りながら思わず涙が溢れてくるのであった。
「セルばすハ、つぎ……の、さくせんで……」
未だにブツブツと『煌鴟梟』の二代目ボスであるトウジは、サノスケに担ぎ上げられた状態で同じ言葉を吐き続けていた。
必死に逃げるミヤジたちの耳にその声が聞こえるたびに、堪えきれない涙と苛立ちが募るミヤジであった。
(い、イツキ様が『煌鴟梟』のボスのままで居てくれていたら!! く、くそう!! こんな役立たずの所為で! 畜生、畜生ぅ!!)
悔しい思いを抱きながら必死に逃亡を続けるミヤジ達だったが、遂にはコウゾウ達に追いつかれて、そのまま足を止められてしまうのであった。
……
……
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「確かにあれ程の爆音が響き渡っていて、何も気づかないという筈はないでしょうからね」
二人は再び建物内で合流した後、建物内で一番広く豪華に見える部屋に集まった。この部屋が『煌鴟梟』のボスが使っていた部屋で間違いはないだろう。
「隊長、ちょっとここを見て下さい」
「ん?」
ボスが座っていた椅子の下の床をよく目を凝らして見てみると、少しだけ他の箇所より薄く見えた。
シグレとコウゾウは互いに顔を見合わせた後、二人は同時に頷いた。
色が少しだけ違う床を力を入れて押してみると、べこりという音と共に何かが外れるような音が響き、少しだけ床底が奥へと押し込まれる。その床を動かしてみると横へとスライドする事が出来た。
なくなった床の下には旅籠町にある彼らの屯所の隠し梯子と、同じように収納されていたであろう梯子が既に使われていたようで、宙をブラブラと揺れているのが見えた。
どうやら色の違う床をズラす事でその下に引っ掛けられていた梯子が支えを失くして、梯子が出て来る仕掛けになっていたのだろう。
そして綺麗に収納されておらずにこうして既に出ているという事は、最近使用されたそのままで、放置されたという事であり、つまりはまだボスたちは遠くまで行っていないという事を表していた。
「どうやらこの梯子で地下へと降りたらしいな」
「そのようです。ひとまず何処へ続いているのか探ってみましょう」
「ああ……」
二人は床底の色違いの板に引っかけられてブラブラと宙を舞っている梯子を手に取ると、器用に梯子を使って降りていく。
ボスの部屋から相当下に深く掘られていたようで、梯子の一番下まで降りるまで相当に長く感じられた。
二人は梯子から手を離して地下へと降り立つと、人が一人通れる程の狭いスペースの先、微かな灯りが見えた。二人がそのまま灯りが見える方へと進んでいくと、今度は収納梯子ではなく備え付けられていた鉄の梯子を発見した。梯子の先はどうやら地上へと続いているようで、そこから外に出られるようになっていたのだろう。
「急ごう」
コウゾウがそう言うとシグレも頷き、二人はその梯子を登っていくのであった。
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『煌鴟梟』のボスの部屋から繋がっていた地下通路を通って出た先は、ソフィたちが入ってきた入口とは反対方向にある地上へと繋がっていたようで、どうやら今回のような時の為に作られた抜け道だったようだ。
「隊長、あそこに!!」
「むっ!」
ソフィ達がここに来るまでに通って来た道の反対方向。ユウゲが使った道側に逃げる三人の姿が映った。
一人目は旅籠町で酒場を経営していた『ミヤジ』。二人目は同じく旅籠町で宿泊施設の経営していた『サノスケ』。そして最後の三人目だが、その三人目の男に二人は面識がなかった。
その男は意識はあるようだが、どこか虚空を見つめたままサノスケに担ぎ上げられていた。どうやらあの三人目の男は自分では歩けないようである。
「シグレ、ひとまず奴らを捕らえるぞ」
「分かりました!」
『予備群』の旅籠の護衛隊の二人は互いに頷き合うと、前を走る『煌鴟梟』の者達に向けて追い縋って行った。
…………
「お、おい! う、後ろだサノスケ!」
「くっ、もう見つかっちまったか」
……
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時は遡り『ミヤジ』と『サノスケ』はソフィ達が襲撃に来た後の事、ヒロキにあの場を任せてボスに危険を知らせる為にボスの部屋に向かった。
そしてボスのトウジの部屋に辿り着いた後、ミヤジはセルバスが『予備群』を引き連れてこの場に戻ってきた事で、これまでの新入りのセルバスに対しての思いが、この緊急時から来る焦りから噴出し『ミヤジ』は愚痴と共に『トウジ』に吐き出されたのだ。
そしてそのミヤジのセルバスに対する思いの発言がトウジに向けられた瞬間、再びトウジは意識を失ってしまった。
虚ろな目を浮かべてこの急いでいる時だというのに、何やらセルバスなら大丈夫だとか、何か考えがあるに違いないなどと世迷言のように『煌鴟梟』のボス『トウジ』は語り始めたのである。
勿論これは『ユウゲ』の時と同じように『セルバス』の『魔瞳』である『金色の目』が発動されたことによる事象なのだが、操られている事など知りもしない『ミヤジ』と『サノスケ』は『ヒロキ』が自分達の為に時間を稼いでくれているというのに、要領の得ない事をダラダラと喋っている『トウジ』に埒があかないと判断して、ブツブツと『セルバス』を褒めたたえるような言葉を吐き続けるボスをそのまま担ぎ上げて彼の部屋から逃亡を図った。
二重底の隠し床の板を外したミヤジは、先にボスを抱えるサノスケを先に降ろさせて、ミヤジは隠し床を下から上手くはめ込んで後処理を終えた後に、自分達も梯子を使って地下へと降り立った。
収納梯子はもう出しっぱなしにしていく他なかったが、急いでいる時にそんな事は気にしていられなかった為、懸念を残しつつも梯子はそのままにしておいた。隠し床さえバレなければ問題はないだろうと、最終的に判断したようである。
そして上手く隠し通路を通って、奴らにバレ無い様に地上へ出た後、ひとまずは旅籠町のある方角と反対方向の、ケイノト方面に向けて逃げようとサノスケと相談を終えて向かい始めた直後、コウゾウ達に見つかったというところであった。
「ハァッハァッ……! な、何でこんなに早くバレるんだよ」
人を一人抱えながら梯子を降りたり昇ったりこうして走ったりと、流石に体力のあるサノスケであっても疲労を隠すことは出来なかった。
「畜生! あの新入りの野郎が絶対、何かヘマをしやがった所為だ! 絶対、絶対そうに決まっている!! 畜生、畜生……!!」
『煌鴟梟』のボスであるトウジに、セルバスを『煌鴟梟』には相応しくないと直談判をしてきたミヤジにとって、今回の起きた出来事は決して許せるような事態ではなかった。
ミヤジはそら見た事かとボスに言いたいところであったが、そのボスが気が狂っているように意識がおかしい上に、そんな事をしている暇は無い為、ミヤジはやりきれない思いを抱えながら『予備群』から逃げようと必死であった。
しかしこのままでは彼らが逃げられる道理はない。
追いかけてきているのは『妖魔退魔師』の組織に属する『予備群』である。
妖魔退魔師には届かないまでも、単なる人間達であるミヤジに、訓練を受けた『予備群』達から逃げ遂せる体力がある筈も無く――。
「止まれ! お前達はもう逃げ場は無いぞ! あの旅籠町で、宿と酒場を営んでいる者達だという事も分かっている。これ以上逃げたところで、もうお前達に未来はないぞ!」
コウゾウの声を聞きながら、ミヤジとサノスケは諦観の表情を浮かべ始める。
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『煌鴟梟』の幹部として先代の時代から野望を抱えて来たミヤジは、その未来が閉ざされていくのを感じ取り、走りながら思わず涙が溢れてくるのであった。
「セルばすハ、つぎ……の、さくせんで……」
未だにブツブツと『煌鴟梟』の二代目ボスであるトウジは、サノスケに担ぎ上げられた状態で同じ言葉を吐き続けていた。
必死に逃げるミヤジたちの耳にその声が聞こえるたびに、堪えきれない涙と苛立ちが募るミヤジであった。
(い、イツキ様が『煌鴟梟』のボスのままで居てくれていたら!! く、くそう!! こんな役立たずの所為で! 畜生、畜生ぅ!!)
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