最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第1023話 有益な情報を持つセルバス
「そうか魔力を全体に行き渡らせる『レパート』の『理』を無意識に使おうとした結果かもしれぬな」
魔法を発動させる為の『発動羅列』を施すその前段階、魔力をソフィの身体全体に行き渡らせて、スタックの下地状態が出来ていた為、想定していた魔力圧よりも威力が高くなってしまったのだろう。
あくまでこれまでの第三形態よりも魔力が多くなったとか、そう言う事ではなく、アレルバレルの世界の『理』から、レパートの世界の『理』に魔力の発現をシフトチェンジした事による威力の差異であった。
しかし結果的にはこれもまた一つの成長の結果であり、ソフィにとってはまた威力をコントロールする上で、一つの選択肢が増えたという事であった。
…………
「あ、あの姿が、あの化け物の真の姿なのか?」
『妖魔召士』の『チアキ』を一瞬で始末して見せたソフィをヌーの横で見ていたセルバスは、自分の正体がヌーにバレた事など頭から綺麗さっぱり消えて無くなる程の衝撃を受けていた。
(あの野郎……! ようやくその背中が見えてきたかと思えば、また一瞬でこの俺の手が届かねぇところに、いきやがった……)
三色併用という力を体現したヌーだったが『漆黒』の『四翼』の姿をしたソフィを見て、化け物は何処まで行っても化け物だと再認識させられるのであった。
そしてその件のソフィは、地面に横たわるチアキを担ぎ上げるとその身体を魔神に渡す。
「――?」(ちょ、ちょっとソフィ、何でこの人間を渡すの? 邪魔だから処分していい?)
「良いわけがなかろう。そやつを運ぶのを手伝ってくれ。我はこちらを持たねばならぬ」
そう言ってソフィは魔神に言葉で釘を刺して、自分はチアキの『式』である『英鬼』に回復魔法を施して『英鬼』を担ぎ上げると、ゆっくりとヌー達の元へと向かっていくのであった。
「――」(もう、何で神々である私が……!)
ブツクサと言いながらも魔神は、ソフィに頼られたという点では相当に嬉しい出来事だったようで、愚痴を告げてはいるが、その魔神の顔はニコニコと笑みを浮かべていた。
……
……
……
ソフィはチアキの腕も回復させた後、アジトの中庭で『妖魔召士』のチアキとキネツグ。そして『煌鴟梟』の組員達を縛ってその場に集めるのであった。まだチアキもキネツグも意識が戻っていない為に暴れる心配は無い。
現在『予備群』で護衛隊を務めている『コウゾウ』と『シグレ』の二人は隠れているであろう幹部やボス達を探しに『煌鴟梟』のアジトの建物内に入って探している。
ソフィは自分達も手分けして探すと提案をしたのだが、もしかするとまた『妖魔召士』達が来るかもしれないからとソフィ達にこの場を任せて、護衛隊の二人は中に入って行った。
どうやらコウゾウの他の襲撃者達が来た時の為にというのも本心で言った言葉ではあろうが、本音ではソフィ達をこれ以上働かせるのは、申し訳ないとコウゾウは考えたのであろう。
このアジト内に居た『煌鴟梟』の組員達は多く、こうして中庭に一箇所に集められているだけでもその数は二十人近くに上っていた。
『妖魔召士』であるチアキやキネツグは別にしても、縛った組員達はどうにも単なる人攫い集団と言うだけには見えない。
リラリオの世界でソフィが冒険者ギルドのクエストを受けた時に、ミナトの護衛をした時に出会ったような物取り達とは違って、格好も小綺麗で見た目からは人攫いをするような者達には見えない。
どうみても人攫いは本業を隠す為に行っている行為で『煌鴟梟』の組織の仕事は、別に何かあるのではないかとソフィに思わせるのであった。
そしてそんな事を縛った『煌鴟梟』の組員達を見ながら考えていたソフィに、ヌーが声を掛けてきた。
「おい、ソフィ! テメェには色々と聞きたい事があるんだが、その前にこっちも説明しておかねぇといけない事があった」
「むっ、それはどういう事だ?」
唐突なヌーの言葉に『煌鴟梟』の事を考えていたソフィは、ヌーに意識を向けるとその先を促した。
「ククククッ! こいつだよ、コイツ!」
何が可笑しいのか愉快そうにヌーは、隣に居るセルバスの肩を叩きながら笑うのであった。
「確かお主は……『煌鴟梟』に属するこの世界の魔族だったか?」
セルバスはもう逃げても無駄だと理解している様子で顔を歪めながら、自分の肩を叩くヌーを睨んでいた。
「コイツはな『煌聖の教団』の幹部だった『セルバス』という男だ。お前が『アレルバレル』の世界に戻る前に『神速の奴』に敗北した後、この世界に用意していた『代替身体』で蘇ったんだとよ」
『煌聖の教団』の名前を出した瞬間にソフィの目の色が変わる。その組織に所属する者達はソフィの居た世界を荒らしまわり、挙句にソフィを別世界へと隔離させた後、二度と戻って来れないようにとソフィの大事な仲間達を襲わせた者達の居た組織なのである。
総帥であるミラを始めとする大魔王『ハワード』や大賢者『ユーミル』など。組織の大幹部達は、ソフィやその仲間達の手によって壊滅させられたが、どうやらその生き残りがまだ居たらしい。
「す、すまなかった!! た、頼む許してくれ! に、二度とお前達には手を出さない! それに、な、何か俺に出来る事ならば、何でもやる。顔を見せるなというのならば二度と『アレルバレル』の世界には足を踏み入れぬ。だ、だから頼む、この通りだ」
セルバスは後ろ手に縛られた状態で、強引に頭を地面に向けて頭を下げながら必死に謝罪をして、ソフィに許しを乞うのであった。
「お主はまだ戻って来ぬ我の仲間達が何処へ行ったか、それを存じているか?」
ソフィがセルバスにそう言うと、嘘や一切の演技は許されないとセルバス自身に自覚させる程の恐ろしいまでの重圧を向ける。
「ま、魔王城に居た者達の多くは『ヨールゲルバ』の世界だ。と、跳ばしたのは俺じゃない!! 魔王城の管轄対象は『ユーミル』と『リベイル』の二体が対応にあたっていた。そ、それに九大魔王達の居場所も、あ、ある程度分かっている! 『女帝』は『神速』を庇って跳ばされていた。た、確か『アサ』と呼ばれる世界に居る筈だ。あ、後は、後は……! そ、そうだ! この世界にもお前の配下が居るんだ! 『天衣無縫』のエヴィだ! 司令官殿が一番厄介な『天衣無縫』を他の九大魔王達から引き剥がせたと、自慢げに俺に言いやがったんだ!」
まるでまくし立てるかのように恐ろしい程の早口で、ソフィ達の配下達の居場所を教えてくれるセルバスであった。
どうやら余程に先程のソフィの姿が恐ろしく映っていたのだろう。そして今は通常状態に戻っているソフィだが、それでも恐ろしい重圧を向けられている事には変わりなく、必死に殺されないようにと、セルバスは有益だと思う情報を次から次に、ソフィ達に知らせてくるのであった。
「なぁソフィ。こいつは口も普段の態度も悪い奴だが、味方にしておけば、色々と便利で使える野郎だぜ? それに色々と事情通であるし、生かしておいてもいいんじゃねぇか?」
何とテア以外の存在をまるでゴミとしか思っていないようなヌーが、セルバスを庇うような口振りで、味方に引き込んでおけと暗にソフィに告げてくるのであった。
「ふむ、お主はセルバスといったか。我の仲間達を取り戻す事に協力すると誓うか?」
「ち、誓う!! 任せてくれ! 俺に出来る事は多い筈だ。それに俺にはもう戻る場所は無いんだ。今更アンタを裏切っても……さ。俺には何のメリットも無いんだよ」
そこまで口にして彼の崇拝していた大賢者ミラの存在を思い出して、セルバスは感傷的に浸り始めるが、それを見たソフィは頷きを見せた。
「そうか……、分かった。我に協力するというのであれば、生かしておいてやってもいいだろう」
セルバスはその言葉に勢いよく顔をあげて嬉しそうにする。
「だが、これだけは忘れるなよ? 我は仲間を傷つける者だけは決して許さぬ。今後もしもだが、我の配下を傷つけるような真似をすれば、お前は死よりも恐ろしい苦痛を、永遠に味わう事になる」
それは決して脅しではないと言う事を『アレルバレル』の世界で生きてきたセルバスは、十分に理解していた。
「わ、分かった! あ、アンタの役に立つ事だけを考えて、俺はこれから生きていく事にする。俺に出来る事があれば、何でも言ってくれ! か、必ず役に立つ事を証明して見せる!」
『煌聖の教団』の大幹部にして、あらゆる世界を渡り歩いてきたセルバスだが、ソフィの配下となったワケでは無いにも拘らずにセルバスは自身がこの時を以て、大魔王ソフィを自分の主として今後見る事に決めたのであった。
「ふん、良かったじゃねぇか」
「あ、ああ……、ヌー。お前もありがとうな?」
ヌーは自分と同じような状況に置かれて尚、あっさりと許されたセルバスにそう告げた。
同じ立場のような身ではあるが、ヌーはソフィに協力した後もまだ大魔王フルーフと戦うという契約が残されている。
そしてこれまでのヌーであれば、わざわざセルバスに優しい言葉を掛ける事はなかったであろう。これまで自分の裁量で物事を推し進めてきたヌーだが、他者の存在を認めて第三者が行う善し悪しを行動を共にする事で、ヌーはようやく客観的に物事を捉えるという事が出来るようになった。
この『ノックス』という世界に来た事で、魔族として大きく成長するに至った大魔王『ヌー』であった。
……
……
……
魔法を発動させる為の『発動羅列』を施すその前段階、魔力をソフィの身体全体に行き渡らせて、スタックの下地状態が出来ていた為、想定していた魔力圧よりも威力が高くなってしまったのだろう。
あくまでこれまでの第三形態よりも魔力が多くなったとか、そう言う事ではなく、アレルバレルの世界の『理』から、レパートの世界の『理』に魔力の発現をシフトチェンジした事による威力の差異であった。
しかし結果的にはこれもまた一つの成長の結果であり、ソフィにとってはまた威力をコントロールする上で、一つの選択肢が増えたという事であった。
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『妖魔召士』の『チアキ』を一瞬で始末して見せたソフィをヌーの横で見ていたセルバスは、自分の正体がヌーにバレた事など頭から綺麗さっぱり消えて無くなる程の衝撃を受けていた。
(あの野郎……! ようやくその背中が見えてきたかと思えば、また一瞬でこの俺の手が届かねぇところに、いきやがった……)
三色併用という力を体現したヌーだったが『漆黒』の『四翼』の姿をしたソフィを見て、化け物は何処まで行っても化け物だと再認識させられるのであった。
そしてその件のソフィは、地面に横たわるチアキを担ぎ上げるとその身体を魔神に渡す。
「――?」(ちょ、ちょっとソフィ、何でこの人間を渡すの? 邪魔だから処分していい?)
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そう言ってソフィは魔神に言葉で釘を刺して、自分はチアキの『式』である『英鬼』に回復魔法を施して『英鬼』を担ぎ上げると、ゆっくりとヌー達の元へと向かっていくのであった。
「――」(もう、何で神々である私が……!)
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ソフィは自分達も手分けして探すと提案をしたのだが、もしかするとまた『妖魔召士』達が来るかもしれないからとソフィ達にこの場を任せて、護衛隊の二人は中に入って行った。
どうやらコウゾウの他の襲撃者達が来た時の為にというのも本心で言った言葉ではあろうが、本音ではソフィ達をこれ以上働かせるのは、申し訳ないとコウゾウは考えたのであろう。
このアジト内に居た『煌鴟梟』の組員達は多く、こうして中庭に一箇所に集められているだけでもその数は二十人近くに上っていた。
『妖魔召士』であるチアキやキネツグは別にしても、縛った組員達はどうにも単なる人攫い集団と言うだけには見えない。
リラリオの世界でソフィが冒険者ギルドのクエストを受けた時に、ミナトの護衛をした時に出会ったような物取り達とは違って、格好も小綺麗で見た目からは人攫いをするような者達には見えない。
どうみても人攫いは本業を隠す為に行っている行為で『煌鴟梟』の組織の仕事は、別に何かあるのではないかとソフィに思わせるのであった。
そしてそんな事を縛った『煌鴟梟』の組員達を見ながら考えていたソフィに、ヌーが声を掛けてきた。
「おい、ソフィ! テメェには色々と聞きたい事があるんだが、その前にこっちも説明しておかねぇといけない事があった」
「むっ、それはどういう事だ?」
唐突なヌーの言葉に『煌鴟梟』の事を考えていたソフィは、ヌーに意識を向けるとその先を促した。
「ククククッ! こいつだよ、コイツ!」
何が可笑しいのか愉快そうにヌーは、隣に居るセルバスの肩を叩きながら笑うのであった。
「確かお主は……『煌鴟梟』に属するこの世界の魔族だったか?」
セルバスはもう逃げても無駄だと理解している様子で顔を歪めながら、自分の肩を叩くヌーを睨んでいた。
「コイツはな『煌聖の教団』の幹部だった『セルバス』という男だ。お前が『アレルバレル』の世界に戻る前に『神速の奴』に敗北した後、この世界に用意していた『代替身体』で蘇ったんだとよ」
『煌聖の教団』の名前を出した瞬間にソフィの目の色が変わる。その組織に所属する者達はソフィの居た世界を荒らしまわり、挙句にソフィを別世界へと隔離させた後、二度と戻って来れないようにとソフィの大事な仲間達を襲わせた者達の居た組織なのである。
総帥であるミラを始めとする大魔王『ハワード』や大賢者『ユーミル』など。組織の大幹部達は、ソフィやその仲間達の手によって壊滅させられたが、どうやらその生き残りがまだ居たらしい。
「す、すまなかった!! た、頼む許してくれ! に、二度とお前達には手を出さない! それに、な、何か俺に出来る事ならば、何でもやる。顔を見せるなというのならば二度と『アレルバレル』の世界には足を踏み入れぬ。だ、だから頼む、この通りだ」
セルバスは後ろ手に縛られた状態で、強引に頭を地面に向けて頭を下げながら必死に謝罪をして、ソフィに許しを乞うのであった。
「お主はまだ戻って来ぬ我の仲間達が何処へ行ったか、それを存じているか?」
ソフィがセルバスにそう言うと、嘘や一切の演技は許されないとセルバス自身に自覚させる程の恐ろしいまでの重圧を向ける。
「ま、魔王城に居た者達の多くは『ヨールゲルバ』の世界だ。と、跳ばしたのは俺じゃない!! 魔王城の管轄対象は『ユーミル』と『リベイル』の二体が対応にあたっていた。そ、それに九大魔王達の居場所も、あ、ある程度分かっている! 『女帝』は『神速』を庇って跳ばされていた。た、確か『アサ』と呼ばれる世界に居る筈だ。あ、後は、後は……! そ、そうだ! この世界にもお前の配下が居るんだ! 『天衣無縫』のエヴィだ! 司令官殿が一番厄介な『天衣無縫』を他の九大魔王達から引き剥がせたと、自慢げに俺に言いやがったんだ!」
まるでまくし立てるかのように恐ろしい程の早口で、ソフィ達の配下達の居場所を教えてくれるセルバスであった。
どうやら余程に先程のソフィの姿が恐ろしく映っていたのだろう。そして今は通常状態に戻っているソフィだが、それでも恐ろしい重圧を向けられている事には変わりなく、必死に殺されないようにと、セルバスは有益だと思う情報を次から次に、ソフィ達に知らせてくるのであった。
「なぁソフィ。こいつは口も普段の態度も悪い奴だが、味方にしておけば、色々と便利で使える野郎だぜ? それに色々と事情通であるし、生かしておいてもいいんじゃねぇか?」
何とテア以外の存在をまるでゴミとしか思っていないようなヌーが、セルバスを庇うような口振りで、味方に引き込んでおけと暗にソフィに告げてくるのであった。
「ふむ、お主はセルバスといったか。我の仲間達を取り戻す事に協力すると誓うか?」
「ち、誓う!! 任せてくれ! 俺に出来る事は多い筈だ。それに俺にはもう戻る場所は無いんだ。今更アンタを裏切っても……さ。俺には何のメリットも無いんだよ」
そこまで口にして彼の崇拝していた大賢者ミラの存在を思い出して、セルバスは感傷的に浸り始めるが、それを見たソフィは頷きを見せた。
「そうか……、分かった。我に協力するというのであれば、生かしておいてやってもいいだろう」
セルバスはその言葉に勢いよく顔をあげて嬉しそうにする。
「だが、これだけは忘れるなよ? 我は仲間を傷つける者だけは決して許さぬ。今後もしもだが、我の配下を傷つけるような真似をすれば、お前は死よりも恐ろしい苦痛を、永遠に味わう事になる」
それは決して脅しではないと言う事を『アレルバレル』の世界で生きてきたセルバスは、十分に理解していた。
「わ、分かった! あ、アンタの役に立つ事だけを考えて、俺はこれから生きていく事にする。俺に出来る事があれば、何でも言ってくれ! か、必ず役に立つ事を証明して見せる!」
『煌聖の教団』の大幹部にして、あらゆる世界を渡り歩いてきたセルバスだが、ソフィの配下となったワケでは無いにも拘らずにセルバスは自身がこの時を以て、大魔王ソフィを自分の主として今後見る事に決めたのであった。
「ふん、良かったじゃねぇか」
「あ、ああ……、ヌー。お前もありがとうな?」
ヌーは自分と同じような状況に置かれて尚、あっさりと許されたセルバスにそう告げた。
同じ立場のような身ではあるが、ヌーはソフィに協力した後もまだ大魔王フルーフと戦うという契約が残されている。
そしてこれまでのヌーであれば、わざわざセルバスに優しい言葉を掛ける事はなかったであろう。これまで自分の裁量で物事を推し進めてきたヌーだが、他者の存在を認めて第三者が行う善し悪しを行動を共にする事で、ヌーはようやく客観的に物事を捉えるという事が出来るようになった。
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