最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第958話 態度の悪い男
そして屯所から遂に喧嘩沙汰という罪状で捕らえられていた『煌鴟梟』の男が三日ぶりに出てくるのであった。
当然見張っていた『煌鴟梟』の別の男たちは、慌ててミヤジの酒場にこの事を伝えに行った。
ミヤジの酒場は昨日も普段通りに営業を行っていて、朝になる数時間前に店を閉めたところであった。屯所を交代で見張っていた男は、直ぐに店の裏口から鍵を使って中へ入ると、そこはちょうど店の事務室に繋がっていた。見張っていた男が酒場の事務室に入ると、事務室に置いてある横長のソファーにふんぞり返りながら酒瓶を片手に寛いでいる長身の男が居た。
「おい、新入り! 出番だ、奴らが出て来たぞ」
見張りの男が扉から入ってきた時は、視線を一度だけ向けた長身の男だったが、見張りの男が仕事だと言ってもぐびっぐびっと喉を鳴らしながら酒を呷り続けている。
「おい! 聞こえてんのかてめぇ!」
自分より後に入ってきた新入りの余りの態度に見張りの男が怒鳴り声をあげると、店の酒を勝手に呑んでいた男は、持っていたその酒瓶を入り口に居る見張りの男に向けて投げ飛ばして来た。
男は慌ててその場から飛び退ると、酒瓶を投げた男を睨みつけて、注意しようと口を開きかけたが、その前にその相手から怒鳴り声を浴びらせられる。
「るっせぇんだよボケ!! んなでけぇ声で喚くんじゃねぇ殺すぞ」
怒鳴り声をあげた男は寝ころんでいたソファーから立ち上がると、注意しようとしていた見張りの男に近づいて行く。
「くっ、くぅ……!!」
自分に近づいてくる凄みのある男に言葉を出せなくなった見張りの男は、手を前に出しながら男が近づいてきた分だけ後ろへ下がっていく。
「ククッ、びびってんじゃねぇよ。ダサい野郎め」
「うぐっ……!!」
見張りの男が悔しそうに声をあげるが、そんな見張りの男の顔を覗き込みながら酒を呑んでいた男が、思いきり背後の壁をどんっと叩いた。
「今後、俺に舐めた口利くんじゃねぇぞ? 敬語を使えやボケ」
「ひ、ヒィッ……!!」
へにゃへにゃと壁にもたれ掛かって怯えていた見張りの男は、そのまま地面にずり落ちて行った。
『煌鴟梟』に最近入ってきた新入りで長身の男『セルバス』は、自分の脅しで震えあがっている『煌鴟梟』の先輩の姿を見て、嘲笑いながら馬鹿にするような視線を向けた。
「ヒャハハッ、まぁいいだろう。話にあった捕らえられている男が遂に出てきたか。じゃあ、ここからがようやく俺の仕事ってわけだ」
そう言って『セルバス』は壁を背もたれにして座って震えている男の肩を掴んで強引に立ち上がらせると、男は再び悲鳴のような声をあげた。
「おいおい、仮にもアンタは人攫いの組織の人間何だろう? そんなびびってちゃ、仕事なんてできねぇんじゃねぇのか先輩よぉ」
ひゃははははと再びセルバスは煽るように怯えている先輩を嘲笑し、そのまま見張りの男の腹に膝蹴りを打ち込んだ。
「ぐっ……! うえぇ……。ゲホッゲホッ……」
男に膝蹴りを腹に入れられて、情けない声をあげながら苦しみ出す。
「ヒャハハハ、仕方ねぇからお前の言う通りに仕事してやるよ。お前はそこで這いつくばって寝てろや、セ・ン・パ・イ」
『煌鴟梟』の先輩の男に向かって、馬鹿にするようにそう告げた後、男が入ってきた店の裏口からセルバスは屯所へ向けて出て行った。
見張りの男は床で倒れ伏しながら遠ざかっていく『セルバス』の背中を唇を噛んで、悔しそうに見ているだけしか出来なかった。
…………
「さぁてと。さっさと回収して、ミヤジとかいう奴の所へ届けに行くか」
ミヤジという『煌鴟梟』の幹部から命令されて、二、三日前からこの旅籠町の酒場に潜伏していたセルバスは、昨日から先程までノックスの世界にあるきつい酒を呑んでいた所為で、ふらふらする足元を見て気持ちよさそうに笑っていた。
この時に至ってもまだこの世界を侮っていたセルバスは、この後に信じられない光景を目の当たりにする事となるのであった。
……
……
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当然見張っていた『煌鴟梟』の別の男たちは、慌ててミヤジの酒場にこの事を伝えに行った。
ミヤジの酒場は昨日も普段通りに営業を行っていて、朝になる数時間前に店を閉めたところであった。屯所を交代で見張っていた男は、直ぐに店の裏口から鍵を使って中へ入ると、そこはちょうど店の事務室に繋がっていた。見張っていた男が酒場の事務室に入ると、事務室に置いてある横長のソファーにふんぞり返りながら酒瓶を片手に寛いでいる長身の男が居た。
「おい、新入り! 出番だ、奴らが出て来たぞ」
見張りの男が扉から入ってきた時は、視線を一度だけ向けた長身の男だったが、見張りの男が仕事だと言ってもぐびっぐびっと喉を鳴らしながら酒を呷り続けている。
「おい! 聞こえてんのかてめぇ!」
自分より後に入ってきた新入りの余りの態度に見張りの男が怒鳴り声をあげると、店の酒を勝手に呑んでいた男は、持っていたその酒瓶を入り口に居る見張りの男に向けて投げ飛ばして来た。
男は慌ててその場から飛び退ると、酒瓶を投げた男を睨みつけて、注意しようと口を開きかけたが、その前にその相手から怒鳴り声を浴びらせられる。
「るっせぇんだよボケ!! んなでけぇ声で喚くんじゃねぇ殺すぞ」
怒鳴り声をあげた男は寝ころんでいたソファーから立ち上がると、注意しようとしていた見張りの男に近づいて行く。
「くっ、くぅ……!!」
自分に近づいてくる凄みのある男に言葉を出せなくなった見張りの男は、手を前に出しながら男が近づいてきた分だけ後ろへ下がっていく。
「ククッ、びびってんじゃねぇよ。ダサい野郎め」
「うぐっ……!!」
見張りの男が悔しそうに声をあげるが、そんな見張りの男の顔を覗き込みながら酒を呑んでいた男が、思いきり背後の壁をどんっと叩いた。
「今後、俺に舐めた口利くんじゃねぇぞ? 敬語を使えやボケ」
「ひ、ヒィッ……!!」
へにゃへにゃと壁にもたれ掛かって怯えていた見張りの男は、そのまま地面にずり落ちて行った。
『煌鴟梟』に最近入ってきた新入りで長身の男『セルバス』は、自分の脅しで震えあがっている『煌鴟梟』の先輩の姿を見て、嘲笑いながら馬鹿にするような視線を向けた。
「ヒャハハッ、まぁいいだろう。話にあった捕らえられている男が遂に出てきたか。じゃあ、ここからがようやく俺の仕事ってわけだ」
そう言って『セルバス』は壁を背もたれにして座って震えている男の肩を掴んで強引に立ち上がらせると、男は再び悲鳴のような声をあげた。
「おいおい、仮にもアンタは人攫いの組織の人間何だろう? そんなびびってちゃ、仕事なんてできねぇんじゃねぇのか先輩よぉ」
ひゃははははと再びセルバスは煽るように怯えている先輩を嘲笑し、そのまま見張りの男の腹に膝蹴りを打ち込んだ。
「ぐっ……! うえぇ……。ゲホッゲホッ……」
男に膝蹴りを腹に入れられて、情けない声をあげながら苦しみ出す。
「ヒャハハハ、仕方ねぇからお前の言う通りに仕事してやるよ。お前はそこで這いつくばって寝てろや、セ・ン・パ・イ」
『煌鴟梟』の先輩の男に向かって、馬鹿にするようにそう告げた後、男が入ってきた店の裏口からセルバスは屯所へ向けて出て行った。
見張りの男は床で倒れ伏しながら遠ざかっていく『セルバス』の背中を唇を噛んで、悔しそうに見ているだけしか出来なかった。
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