最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第926話 意思の疎通
「ひとまずテアがヌーに対してどう思っているか、それを知れただけでも今回は良しとしようか。彼女がどの程度、契約者を守ろうとしておるかが分かっただけでもえらい違いだからな」
「――」(そうね。死神の多くは自分勝手な者達が多いのだけど、この子は中々見所があると思うわ)
「クックック。この数千年でお主が、我と九大魔王以外の者達に対して、好印象を持った者を見るのは初かもしれぬな」
「――」(私を呼び出すとき、だいたいろくでも無い奴が居る時だもの)
ソフィの言葉に心外だとばかりに、魔神は本音を告げるのだった。
「クックック、そうであったかもしれぬな」
「――」(今回はとても楽しかった、また今回みたいに呼んで欲しい)
どうやらテアに拘わらず、これまでは力の魔神は、あまり死神の事を良くは思っていなかったようだ。しかしテアの事は、相当に気に入ったのだろう。ソフィに向ける慈しみの表情とまでは行かないが、テアを見て微笑む魔神であった。
そして笑みを向けられたテアもぎこちなくではあるが、魔神に笑みを向ける。
「――」(貴方は可愛い子ね)
魔神はテアにそう告げた後、ソフィに挨拶をしてこの場から去っていった。
普段はソフィの魔力を魔神に渡してある為、どうしても魔神を使役するときの多くは、今回のように会話メインでは無く戦う時が多い。それはリラリオの世界に行ってからも変わらなかった。そしてその時はいつも魔神は、憤怒の表情を浮かべていた。魔神はその事に不満があったのだろう。
(確かに言われてみれば、我も悪かったな。戦闘以外の時ももっとあやつをよんでやらねばならぬな。話の出来るテアも居る事だし、今後は通訳を頼むついでに色々とこの世界で会話をさせてやろう)
一人納得をするソフィを見て、テアは結局何だったんだろうと、首を傾げるのであった。
(あれかな、ソフィさんはヌーを守りたいと思っていて、そこで私が協力するつもりがあるのかを、確かめたかったのかな……?)
そう結論付けたテアだったが、ひとまずは魔神に嫌われなくてよかったと、ほっとした表情を浮かべて、小さく溜息を吐くのであった。
「ふむ。魔神に通訳を頼むと決まった以上、ひとまずは安心だ。テアよ、お主もヌーを契約以上に守ろうとしてくれておるようだし、その事を知れてよかったぞ」
テアはソフィの言葉は分からなかったが、自分がヌーの事について話した事が、このソフィという魔族には相当に印象を良くしたようで、テアは安心感に包まれるのだった。
(よかった。最初は強制的に『幽世』へ送り還されるのかと思ってすっげぇ心配したけど、よく考えたらこのソフィさんは、悪い御方じゃないもんな……)
言葉自体は分からなかったが、ヌーを通してある程度は聞かされていたし、森の中に居た時から、ケイノトの町やゲンロクの里。そしてここに来るまでにソフィと接していて、そこまで悪い魔族じゃないようだとテアは感じ取っているようだった。
しかしやはり怖いという印象だけは、未だに拭う事が出来ずにいた。そしてその感情は、この宿にきてこうして魔神を召喚した後には、更に大きくはなってしまっていたのは隠しようのない事実であった。
「む?」
テアがソフィの事を考えていると、そのソフィが部屋の入り口を睨む。テアもまた何者かが部屋に近づいてきている気配を感じ取った。
最初ソフィは宿の主人が何かを言い忘れて、伝えて戻ってきたのかとそう思ったのだが、どうやらそれは違うようであった。
ここに近づいてきている者達は、何やら音を消して忍び寄るようにこの部屋へ気配を隠すように向かってきていたからである。
「ヒュウガ殿の追手か?」
ゲンロクの里に居た『妖魔召士』のヒュウガと名乗っていた男は、屋敷の部屋を出る時に、ソフィに対して殺意のような物を隠そうともせずに向けてきていた。ヒュウガは、ゲンロクに余程隠しておきたかった事をバラされた事で、ソフィやエイジ達に何か手を出して来るだろうと予感を感じさせてきていた。
当然、結界が張られていた森に居た頃から追手を差し向けて来るだろうとソフィは考えていた。その兆候が見られずに、怪しいとソフィは感じていたのだが、どうやらこの宿で事に及ぼうとしているのかもしれないと、先程までは考えていたソフィだったが、今、この部屋に近づいてきている者達は、あのヒュウガの手の者にしては余りにもお粗末すぎるのである。
「ふーむ、少し様子を見るとするか」
「――?」(殺りましょうか?)
テアは何も無い空間から大鎌を取り出しながらソフィにそう呟いた。
「……」
テアからの言葉自体は分からなかったが、やろうとしている事が伝わったソフィは首を横に振る。どうやら意思の疎通が出来たようで、テアはコクリと首を縦に振った後、再び具現化した大鎌を消して、成り行きを見守る事にするのだった。
――やがて、ソフィ達の居る部屋の扉が豪快に開け放たれるのだった。
……
……
……
「――」(そうね。死神の多くは自分勝手な者達が多いのだけど、この子は中々見所があると思うわ)
「クックック。この数千年でお主が、我と九大魔王以外の者達に対して、好印象を持った者を見るのは初かもしれぬな」
「――」(私を呼び出すとき、だいたいろくでも無い奴が居る時だもの)
ソフィの言葉に心外だとばかりに、魔神は本音を告げるのだった。
「クックック、そうであったかもしれぬな」
「――」(今回はとても楽しかった、また今回みたいに呼んで欲しい)
どうやらテアに拘わらず、これまでは力の魔神は、あまり死神の事を良くは思っていなかったようだ。しかしテアの事は、相当に気に入ったのだろう。ソフィに向ける慈しみの表情とまでは行かないが、テアを見て微笑む魔神であった。
そして笑みを向けられたテアもぎこちなくではあるが、魔神に笑みを向ける。
「――」(貴方は可愛い子ね)
魔神はテアにそう告げた後、ソフィに挨拶をしてこの場から去っていった。
普段はソフィの魔力を魔神に渡してある為、どうしても魔神を使役するときの多くは、今回のように会話メインでは無く戦う時が多い。それはリラリオの世界に行ってからも変わらなかった。そしてその時はいつも魔神は、憤怒の表情を浮かべていた。魔神はその事に不満があったのだろう。
(確かに言われてみれば、我も悪かったな。戦闘以外の時ももっとあやつをよんでやらねばならぬな。話の出来るテアも居る事だし、今後は通訳を頼むついでに色々とこの世界で会話をさせてやろう)
一人納得をするソフィを見て、テアは結局何だったんだろうと、首を傾げるのであった。
(あれかな、ソフィさんはヌーを守りたいと思っていて、そこで私が協力するつもりがあるのかを、確かめたかったのかな……?)
そう結論付けたテアだったが、ひとまずは魔神に嫌われなくてよかったと、ほっとした表情を浮かべて、小さく溜息を吐くのであった。
「ふむ。魔神に通訳を頼むと決まった以上、ひとまずは安心だ。テアよ、お主もヌーを契約以上に守ろうとしてくれておるようだし、その事を知れてよかったぞ」
テアはソフィの言葉は分からなかったが、自分がヌーの事について話した事が、このソフィという魔族には相当に印象を良くしたようで、テアは安心感に包まれるのだった。
(よかった。最初は強制的に『幽世』へ送り還されるのかと思ってすっげぇ心配したけど、よく考えたらこのソフィさんは、悪い御方じゃないもんな……)
言葉自体は分からなかったが、ヌーを通してある程度は聞かされていたし、森の中に居た時から、ケイノトの町やゲンロクの里。そしてここに来るまでにソフィと接していて、そこまで悪い魔族じゃないようだとテアは感じ取っているようだった。
しかしやはり怖いという印象だけは、未だに拭う事が出来ずにいた。そしてその感情は、この宿にきてこうして魔神を召喚した後には、更に大きくはなってしまっていたのは隠しようのない事実であった。
「む?」
テアがソフィの事を考えていると、そのソフィが部屋の入り口を睨む。テアもまた何者かが部屋に近づいてきている気配を感じ取った。
最初ソフィは宿の主人が何かを言い忘れて、伝えて戻ってきたのかとそう思ったのだが、どうやらそれは違うようであった。
ここに近づいてきている者達は、何やら音を消して忍び寄るようにこの部屋へ気配を隠すように向かってきていたからである。
「ヒュウガ殿の追手か?」
ゲンロクの里に居た『妖魔召士』のヒュウガと名乗っていた男は、屋敷の部屋を出る時に、ソフィに対して殺意のような物を隠そうともせずに向けてきていた。ヒュウガは、ゲンロクに余程隠しておきたかった事をバラされた事で、ソフィやエイジ達に何か手を出して来るだろうと予感を感じさせてきていた。
当然、結界が張られていた森に居た頃から追手を差し向けて来るだろうとソフィは考えていた。その兆候が見られずに、怪しいとソフィは感じていたのだが、どうやらこの宿で事に及ぼうとしているのかもしれないと、先程までは考えていたソフィだったが、今、この部屋に近づいてきている者達は、あのヒュウガの手の者にしては余りにもお粗末すぎるのである。
「ふーむ、少し様子を見るとするか」
「――?」(殺りましょうか?)
テアは何も無い空間から大鎌を取り出しながらソフィにそう呟いた。
「……」
テアからの言葉自体は分からなかったが、やろうとしている事が伝わったソフィは首を横に振る。どうやら意思の疎通が出来たようで、テアはコクリと首を縦に振った後、再び具現化した大鎌を消して、成り行きを見守る事にするのだった。
――やがて、ソフィ達の居る部屋の扉が豪快に開け放たれるのだった。
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