最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第915話 別れの選択
屋敷を出たソフィ達はここに来る時に通った森に入り、そしてそのまま、噴水のあった入り口側まで歩いてきていた。
ここに来るまでにソフィは一つの懸念を抱いていた。それは先程の屋敷に居た『ヒュウガ』の存在である。彼は色々とゲンロクには言えない野望を抱えていた筈だ。そんな野望の一部分をソフィ達に『退魔組』の事をバラされた事で明るみに出てしまう事となった。ヒュウガは今後ゲンロクに、色々と詰められる事になるであろう。
そんな彼はソフィ達が部屋を出て行く直前、すれ違う時にソフィに対して恐ろしい形相を見せていた。あの様子であれば、ソフィ達を素直に帰すとはとても思えなかったのである。
ヒュウガ自身は動く事は無いかもしれないが、部屋に居た彼の取り巻きは『ゲンロク』の指示に従うというよりは、ヒュウガの指示に従う者達のように思えた。
里に居る内は手を出して来る事は無いとは思っていたが、その外側の森まで来れば何かしら襲ってくるか、手を出して来るだろうとソフィは考えていたのである。
しかしその兆候は見られず、とくに尾行している者の魔力も感じられない。リーネや『レパート』の世界にある魔法『隠幕』のような物を使われているならば、ソフィも気づくことは出来ないが、前を歩いているエイジは、何も反応を示していない。
彼はこの世界の『妖魔召士』な為に、同じ『妖魔召士』が何か工作じみた結界を使っていた場合、彼ほどの力量を持っている者ならば、何かを気づいていてもおかしくはない。
だがそんな彼が何もアクションを起こす様子が無い以上、追手をこの場では差し向けてこなかったという事に他ならない。
「ふーむ」
「何だソフィ。奴らが仕掛けてこねぇのが、そんなに不服なのか?」
悩む素振りを見せながら声を漏らしたソフィに、先程までテアと話をしていたヌーが声を掛けてきた。
「やはりお主も気づいておったか」
「ハッ! 当然だな。あの爺に媚を売っていた人間は、俺達じゃなければ震えあがっても可笑しくねぇ程の殺気を向けてきやがったからな」
「クックック、殺気だけではないぞ。お主は見ておらんかったかも知れぬが、我に対しては親の仇のような顔を向けてきておった」
ソフィがそう言うと先頭で話を聞いていたエイジが、足を止めてこちらを振り返った。
「ソフィ殿。あやつはあまり侮れぬ男だ。ソフィ達殿であれば確かにあまり問題はないかもしれぬが、油断だけはせぬ方が良いだろう」
「そう言えばゲンロクや、ヒュウガという男もお主を詳しく知っておる様だったが、お主とあやつらは、組織の仲間であったのだったか?」
エイジは今は『妖魔召士』の組織では無いようだが、元々は彼らと同じ組織で動いていた退魔士と聞いている。様子を見ていて、ある程度ヒュウガとの関係は察する事が出来たが、出来るならば直接本人から何があったかを聞いておきたいと、そう思ったソフィはエイジに話を振ってみる。
「そうだ。元々小生も『妖魔召士』の組織の一員だったのだが『サイヨウ』様がこの世界から離れた直後に、とある事件がきっかけでゲンロクや、ヒュウガと揉めて組織を抜けたのである」
ソフィはエイジの話に頷きを見せながら、ここに来る前の長屋に訪れてきた『退魔組』の若い衆の言葉を思い出した。
――この、はぐれ者がいつまでも偉そうに。
このような言葉でエイジは若い『退魔組衆』に罵られていた。
どうやらエイジが組織を抜けた事が起因して、退魔組衆にそう言われているのだろう。
「とある事件というのは、ゲンロクの『術式』の事かな?」
「流石にソフィ達の前であれだけ取り乱しておれば、ばれてしまっていてもおかしくはないか」
長屋でイバキ達とエイジの会話を聞いていたり、屋敷の中でゲンロクに対するエイジの視線を見ていれば、誰であろうと直ぐに理解できるというものだった。
「まぁ当然それだけではなく、事はもっと深い事情があっての事だとは思うがな」
「うむ。ソフィ殿の言う通りだ。色々とゲンロク達との間で思う事が積み重なった上で、あの妖魔に対する仕打ちを見ているとな……。色々と嫌になった」
当時の事を思い出したのだろう。後半に連れて少しずつトーンが下がっていった。
「辛い事を思い出させてすまぬ」
「いやいや、構わぬよ。それよりもさっきも申したが、今問題なのはゲンロクよりもヒュウガだ。あやつの野望はゲンロクとはまた違った方向性で大きい。ゲンロクの前でその野望の一部を明るみにされた以上、何かしら手を出して来る確率は非常に高いだろうからな」
元々同じ組織に居たエイジはソフィ達よりもヒュウガと言う男に詳しいだろう。そのエイジがここまで言うのだから、先程のソフィの考えはどうやら正しかったようだ。この先サカダイに向かう道中も気を付ける心配があるだろう。
「ヌーにテアよ、この世界の人間達はとても強い。これから襲われる可能性が出てきた以上、前にも言った通りここから先は、我一人でエヴィを探しに行こうと思う。お主らとここで別れた方が良さそうだ」
「あぁ? てめぇ、今更何を言っていやがる」
突然のソフィの言葉に『ヌー』は、眉を寄せた後にかつての時のように不機嫌さ露呈させるのだった。
……
……
……
ここに来るまでにソフィは一つの懸念を抱いていた。それは先程の屋敷に居た『ヒュウガ』の存在である。彼は色々とゲンロクには言えない野望を抱えていた筈だ。そんな野望の一部分をソフィ達に『退魔組』の事をバラされた事で明るみに出てしまう事となった。ヒュウガは今後ゲンロクに、色々と詰められる事になるであろう。
そんな彼はソフィ達が部屋を出て行く直前、すれ違う時にソフィに対して恐ろしい形相を見せていた。あの様子であれば、ソフィ達を素直に帰すとはとても思えなかったのである。
ヒュウガ自身は動く事は無いかもしれないが、部屋に居た彼の取り巻きは『ゲンロク』の指示に従うというよりは、ヒュウガの指示に従う者達のように思えた。
里に居る内は手を出して来る事は無いとは思っていたが、その外側の森まで来れば何かしら襲ってくるか、手を出して来るだろうとソフィは考えていたのである。
しかしその兆候は見られず、とくに尾行している者の魔力も感じられない。リーネや『レパート』の世界にある魔法『隠幕』のような物を使われているならば、ソフィも気づくことは出来ないが、前を歩いているエイジは、何も反応を示していない。
彼はこの世界の『妖魔召士』な為に、同じ『妖魔召士』が何か工作じみた結界を使っていた場合、彼ほどの力量を持っている者ならば、何かを気づいていてもおかしくはない。
だがそんな彼が何もアクションを起こす様子が無い以上、追手をこの場では差し向けてこなかったという事に他ならない。
「ふーむ」
「何だソフィ。奴らが仕掛けてこねぇのが、そんなに不服なのか?」
悩む素振りを見せながら声を漏らしたソフィに、先程までテアと話をしていたヌーが声を掛けてきた。
「やはりお主も気づいておったか」
「ハッ! 当然だな。あの爺に媚を売っていた人間は、俺達じゃなければ震えあがっても可笑しくねぇ程の殺気を向けてきやがったからな」
「クックック、殺気だけではないぞ。お主は見ておらんかったかも知れぬが、我に対しては親の仇のような顔を向けてきておった」
ソフィがそう言うと先頭で話を聞いていたエイジが、足を止めてこちらを振り返った。
「ソフィ殿。あやつはあまり侮れぬ男だ。ソフィ達殿であれば確かにあまり問題はないかもしれぬが、油断だけはせぬ方が良いだろう」
「そう言えばゲンロクや、ヒュウガという男もお主を詳しく知っておる様だったが、お主とあやつらは、組織の仲間であったのだったか?」
エイジは今は『妖魔召士』の組織では無いようだが、元々は彼らと同じ組織で動いていた退魔士と聞いている。様子を見ていて、ある程度ヒュウガとの関係は察する事が出来たが、出来るならば直接本人から何があったかを聞いておきたいと、そう思ったソフィはエイジに話を振ってみる。
「そうだ。元々小生も『妖魔召士』の組織の一員だったのだが『サイヨウ』様がこの世界から離れた直後に、とある事件がきっかけでゲンロクや、ヒュウガと揉めて組織を抜けたのである」
ソフィはエイジの話に頷きを見せながら、ここに来る前の長屋に訪れてきた『退魔組』の若い衆の言葉を思い出した。
――この、はぐれ者がいつまでも偉そうに。
このような言葉でエイジは若い『退魔組衆』に罵られていた。
どうやらエイジが組織を抜けた事が起因して、退魔組衆にそう言われているのだろう。
「とある事件というのは、ゲンロクの『術式』の事かな?」
「流石にソフィ達の前であれだけ取り乱しておれば、ばれてしまっていてもおかしくはないか」
長屋でイバキ達とエイジの会話を聞いていたり、屋敷の中でゲンロクに対するエイジの視線を見ていれば、誰であろうと直ぐに理解できるというものだった。
「まぁ当然それだけではなく、事はもっと深い事情があっての事だとは思うがな」
「うむ。ソフィ殿の言う通りだ。色々とゲンロク達との間で思う事が積み重なった上で、あの妖魔に対する仕打ちを見ているとな……。色々と嫌になった」
当時の事を思い出したのだろう。後半に連れて少しずつトーンが下がっていった。
「辛い事を思い出させてすまぬ」
「いやいや、構わぬよ。それよりもさっきも申したが、今問題なのはゲンロクよりもヒュウガだ。あやつの野望はゲンロクとはまた違った方向性で大きい。ゲンロクの前でその野望の一部を明るみにされた以上、何かしら手を出して来る確率は非常に高いだろうからな」
元々同じ組織に居たエイジはソフィ達よりもヒュウガと言う男に詳しいだろう。そのエイジがここまで言うのだから、先程のソフィの考えはどうやら正しかったようだ。この先サカダイに向かう道中も気を付ける心配があるだろう。
「ヌーにテアよ、この世界の人間達はとても強い。これから襲われる可能性が出てきた以上、前にも言った通りここから先は、我一人でエヴィを探しに行こうと思う。お主らとここで別れた方が良さそうだ」
「あぁ? てめぇ、今更何を言っていやがる」
突然のソフィの言葉に『ヌー』は、眉を寄せた後にかつての時のように不機嫌さ露呈させるのだった。
……
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