最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第890話 新たな特別退魔士達
「タクシンの野郎が殺された……?」
「あやつがやられるとは……」
「『妖魔団の乱』でも相当に活躍を見せた『タクシン』の坊主がか……」
『特別退魔士』の面々は、流石の内容に口々に言葉を漏らすのだった。
「事の重大さが理解出来たか? もう分っているだろうが、別任務で忙しいお前らを無理に呼んだのは『加護の森』に現れた妖魔討伐にあたってもらいたいからだ」
『特別退魔士』達が無言でサテツの話を聞いていると、言葉を繋ぐように横に居たイツキが口を開いた。
「今回の任務はサテツ様が仰られた通り『加護の森』に現れた二人組の妖魔の討伐となりますが、もし二人組がランク『5』以上の存在であったならば、直ぐに戦闘から離脱して相手の情報を持ち帰ってきていただきます」
「この事は『ゲンロク」様にはもう伝えているのですか?」
それまで話を聞いていた額に大きな傷を持つ男『特別退魔士』の『クキ』がサテツの顔を見ながら質問を投げかけた。
「いや、まだだ。まだ森に現れてからそんなに日数は経っていない。詳しい情報を得た後に俺から直接話すつもりだ」
「そうですか」
明らかに何か別の理由があるだろうという事は明白であった。
どうせ『退魔組』の監督を任せられている自分の体裁を保つ為とか、そういった下らない事が理由であろうとクキは理解していたが、わざわざそれを口には出さなかった。雑に片付けられてはいるが、椅子やら机の破片の残骸が、床に散らばっているところを見るに短気な『サテツ』が暴れたのだろう。
つまり今の彼は相当に機嫌が悪いとみえる。ここでいらぬ事を言ってもいい事は無いと判断した為であった。
「タクシンがやられた以上は油断が出来ない相手だという事だ。気を引き締めて任務にあたれ」
「分かりました」
「分かったよ頭領」
「承知した」
三人の『特別退魔士』は椅子から立ち上がると、サテツに一礼をしてそのまま自分達の護衛達に目配りをした後、事務所の部屋から出て行くのであった。
「彼の言う通り、ゲンロク様に伝えなくても宜しいのですか? 既にタクシン殿がやられた以上は遅かれ早かれ上の耳に入ると思われますが」
イツキは部屋にサテツと二人になった後、直ぐにそう口にするのだった。
「分かってるよ。だが出来る事なら全てを終えてから伝えたい。俺の面子に関わってやがるのは、てめぇも理解出来るだろう?」
気の弱い人間であれば今のイツキを睨む『サテツ』の目を見ただけで震えあがる事だろう。しかしイツキはその目を見ても平然としながら頷くのであった。
「面倒な事になりましたね」
「全くだ『妖魔山』や、サカダイの管理下であったならば、喜んで上に報告していたんだが……。何もわざわざケイノトの管理している森に出なくてもいいだろうに」
不機嫌さを隠そうともせずに、サテツはイツキを見て舌打ちをするのだった。
……
……
……
その頃イバキの『式』である妖魔『劉鷺』は、サテツ達に連絡を終えた後、再び『加護の森』へと向かっていた。
これまでも『退魔組』や『サテツ』の事を良くは思っていなかった『劉鷺』だったが、今回の事で完全に愛想を尽かした様であった。
劉鷺は他の『退魔士』達とは違い、主である『イバキ』の事は相当に気に入っている。他の『退魔士』達とは違い、強引に同胞達を『式』にはしていないし、彼の仲間や人間達を守りたいという信念には尊敬の念すらも抱いている。
イバキは『妖魔召士』では無い『退魔士』だが、劉鷺から見れば立派に『妖魔召士』だと思える程であった。
劉鷺は自分から彼と契約を交わして『式』になっている。そんな主であるイバキに対して冷たくあたるような組織は滅びてしまえばいいとさえ、彼は考えているのだった。
「いつの世も人間達は人付き合いが面倒そうだな。俺達『妖魔』みたいに自由に行動出来ればいいと思うんだがな」
『加護の森』に向かう道中の空で小さく溜息を吐きながら、そんな事を口にする『劉鷺』であった。
……
……
……
「あやつがやられるとは……」
「『妖魔団の乱』でも相当に活躍を見せた『タクシン』の坊主がか……」
『特別退魔士』の面々は、流石の内容に口々に言葉を漏らすのだった。
「事の重大さが理解出来たか? もう分っているだろうが、別任務で忙しいお前らを無理に呼んだのは『加護の森』に現れた妖魔討伐にあたってもらいたいからだ」
『特別退魔士』達が無言でサテツの話を聞いていると、言葉を繋ぐように横に居たイツキが口を開いた。
「今回の任務はサテツ様が仰られた通り『加護の森』に現れた二人組の妖魔の討伐となりますが、もし二人組がランク『5』以上の存在であったならば、直ぐに戦闘から離脱して相手の情報を持ち帰ってきていただきます」
「この事は『ゲンロク」様にはもう伝えているのですか?」
それまで話を聞いていた額に大きな傷を持つ男『特別退魔士』の『クキ』がサテツの顔を見ながら質問を投げかけた。
「いや、まだだ。まだ森に現れてからそんなに日数は経っていない。詳しい情報を得た後に俺から直接話すつもりだ」
「そうですか」
明らかに何か別の理由があるだろうという事は明白であった。
どうせ『退魔組』の監督を任せられている自分の体裁を保つ為とか、そういった下らない事が理由であろうとクキは理解していたが、わざわざそれを口には出さなかった。雑に片付けられてはいるが、椅子やら机の破片の残骸が、床に散らばっているところを見るに短気な『サテツ』が暴れたのだろう。
つまり今の彼は相当に機嫌が悪いとみえる。ここでいらぬ事を言ってもいい事は無いと判断した為であった。
「タクシンがやられた以上は油断が出来ない相手だという事だ。気を引き締めて任務にあたれ」
「分かりました」
「分かったよ頭領」
「承知した」
三人の『特別退魔士』は椅子から立ち上がると、サテツに一礼をしてそのまま自分達の護衛達に目配りをした後、事務所の部屋から出て行くのであった。
「彼の言う通り、ゲンロク様に伝えなくても宜しいのですか? 既にタクシン殿がやられた以上は遅かれ早かれ上の耳に入ると思われますが」
イツキは部屋にサテツと二人になった後、直ぐにそう口にするのだった。
「分かってるよ。だが出来る事なら全てを終えてから伝えたい。俺の面子に関わってやがるのは、てめぇも理解出来るだろう?」
気の弱い人間であれば今のイツキを睨む『サテツ』の目を見ただけで震えあがる事だろう。しかしイツキはその目を見ても平然としながら頷くのであった。
「面倒な事になりましたね」
「全くだ『妖魔山』や、サカダイの管理下であったならば、喜んで上に報告していたんだが……。何もわざわざケイノトの管理している森に出なくてもいいだろうに」
不機嫌さを隠そうともせずに、サテツはイツキを見て舌打ちをするのだった。
……
……
……
その頃イバキの『式』である妖魔『劉鷺』は、サテツ達に連絡を終えた後、再び『加護の森』へと向かっていた。
これまでも『退魔組』や『サテツ』の事を良くは思っていなかった『劉鷺』だったが、今回の事で完全に愛想を尽かした様であった。
劉鷺は他の『退魔士』達とは違い、主である『イバキ』の事は相当に気に入っている。他の『退魔士』達とは違い、強引に同胞達を『式』にはしていないし、彼の仲間や人間達を守りたいという信念には尊敬の念すらも抱いている。
イバキは『妖魔召士』では無い『退魔士』だが、劉鷺から見れば立派に『妖魔召士』だと思える程であった。
劉鷺は自分から彼と契約を交わして『式』になっている。そんな主であるイバキに対して冷たくあたるような組織は滅びてしまえばいいとさえ、彼は考えているのだった。
「いつの世も人間達は人付き合いが面倒そうだな。俺達『妖魔』みたいに自由に行動出来ればいいと思うんだがな」
『加護の森』に向かう道中の空で小さく溜息を吐きながら、そんな事を口にする『劉鷺』であった。
……
……
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