最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第853話 不穏な空気
「お前達はあそこに居る奴を連れて、先に屯所へ戻っていろ」
イバキは視線をエイジに向けたまま、横に連れて来た『退魔組』の若衆達にそう告げる。
先程までスーに抱き抱えられていた男は、エイジが式札を取り出した瞬間にスーに安全な後方に放り投げられており、今は地面の横で白目を剥いたまま気絶していた。
「は、はい!!」
慌てて二人の若衆は、気絶している仲間を抱えてこの場から去っていった。どうやら『退魔組』の本部である屯所に向かったのだろう。
……
……
……
「おい! 俺達はどうするんだ?」
イバキとスーの二人組が長屋の戸から離れた事でヌーは、普段くらいの音量でソフィにそう言った。
「エイジ殿は我らを庇おうとしてくれておる。あの二人組は決して悪い奴では無いが、このまま戦闘になるというのであれば、我らはエイジ殿に加勢しようと思う」
「そうかよ」
ソフィの言葉を聞いたヌーは、覚悟の色を目に宿らせる。森での戦闘からだいぶ経ち、ある程度はマシにはなったものの彼は、まだ魔力が普段通りという程には回復はしていない。
ヌーが編み出した神域魔法である『邪解脱』とは違い、フルーフの編み出した呪文である『死司降臨』は、死神貴族のテアが現世に留まり続けようともヌーの魔力が消耗し続けるという事は無く、契約時に使った魔力だけで使役し続ける事が出来る。
つまり今の魔力の少ないヌーにとって自身と遜色ない程の力を有する死神『テア』の存在が、かなり重要になってくるのである。テアもまたその事は理解しており、ヌーが戦うと覚悟の目を見せた以上は、テアもまたヌーの盾となって戦うつもりであった。
その様子を後ろで観察していた少年『ゲイン』は、自分の父親に味方をすると告げてくれたソフィに心を許し始めていた。
……
……
……
「落ち着いて下さいよ『エイジ』さん。俺達は貴方と争う為にここに来たワケではありません」
『特別退魔士』であるイバキとその護衛であるスーも実力者だが、組織違いの『妖魔召士』エイジが本気になれば、非常に厄介この上無く、二人掛かりで挑んだとしても勝ち目は薄い。
エイジという『妖魔召士』は、昔ながらの『妖魔召士』であり、現在の『退魔組』に属する多くの退魔士とは違い、自分達の私利私欲の為に妖魔を使わずに、来世の為に徳を積ませて『悪』に染まった存在を『善』へと戻そうとする。昔ながらの『妖魔召士』なのであった。
退魔組の退魔士たちから見れば、自分達の思い通りに言う事を聞かせられる『式』に、面倒なしきたりを重んじて『善』へと戻そうとするエイジ達のような『妖魔召士』は、話の通じない、まさに頑固の塊そのものである為に毛嫌いして嫌っているものも多い。
だが、ミカゲやタクシンのように『式』を使い捨てのように考えてはおらず、妖魔の来世を真剣に考えてくれている『妖魔召士』の扱う『式』の妖魔は術者である『妖魔召士』との絆が、恐ろしく強い。
そういった『式』を司る『妖魔召士』は『式』自身が全力で『妖魔召士』を守ろうとする戦いをする為『退魔組』の退魔士のように護衛など必要ともしない。
そして『妖魔召士』と名乗れるだけの退魔士が使う『式』は『特別退魔士』が使う『式』とは比較にもならない程に強く、もしエイジがこの場で本気で『式』を使役するつもりであれば、イバキ達は今すぐにこの場から逃げる選択肢を取らざるを得なくなるのであった。
「では『特別退魔士』のお主程が、この場に姿を見せた理由を小生に教えてもらおうか?」
サイヨウの弟子と名乗った『エイジ』が、今イバキ達に向けている敵意の程は、相当に恐ろしいものであった。そして言葉を違えればあっさりと命を落としかねない不穏な空気の中、静かにイバキはその口を開き始めるのであった。
……
……
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イバキは視線をエイジに向けたまま、横に連れて来た『退魔組』の若衆達にそう告げる。
先程までスーに抱き抱えられていた男は、エイジが式札を取り出した瞬間にスーに安全な後方に放り投げられており、今は地面の横で白目を剥いたまま気絶していた。
「は、はい!!」
慌てて二人の若衆は、気絶している仲間を抱えてこの場から去っていった。どうやら『退魔組』の本部である屯所に向かったのだろう。
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「おい! 俺達はどうするんだ?」
イバキとスーの二人組が長屋の戸から離れた事でヌーは、普段くらいの音量でソフィにそう言った。
「エイジ殿は我らを庇おうとしてくれておる。あの二人組は決して悪い奴では無いが、このまま戦闘になるというのであれば、我らはエイジ殿に加勢しようと思う」
「そうかよ」
ソフィの言葉を聞いたヌーは、覚悟の色を目に宿らせる。森での戦闘からだいぶ経ち、ある程度はマシにはなったものの彼は、まだ魔力が普段通りという程には回復はしていない。
ヌーが編み出した神域魔法である『邪解脱』とは違い、フルーフの編み出した呪文である『死司降臨』は、死神貴族のテアが現世に留まり続けようともヌーの魔力が消耗し続けるという事は無く、契約時に使った魔力だけで使役し続ける事が出来る。
つまり今の魔力の少ないヌーにとって自身と遜色ない程の力を有する死神『テア』の存在が、かなり重要になってくるのである。テアもまたその事は理解しており、ヌーが戦うと覚悟の目を見せた以上は、テアもまたヌーの盾となって戦うつもりであった。
その様子を後ろで観察していた少年『ゲイン』は、自分の父親に味方をすると告げてくれたソフィに心を許し始めていた。
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「落ち着いて下さいよ『エイジ』さん。俺達は貴方と争う為にここに来たワケではありません」
『特別退魔士』であるイバキとその護衛であるスーも実力者だが、組織違いの『妖魔召士』エイジが本気になれば、非常に厄介この上無く、二人掛かりで挑んだとしても勝ち目は薄い。
エイジという『妖魔召士』は、昔ながらの『妖魔召士』であり、現在の『退魔組』に属する多くの退魔士とは違い、自分達の私利私欲の為に妖魔を使わずに、来世の為に徳を積ませて『悪』に染まった存在を『善』へと戻そうとする。昔ながらの『妖魔召士』なのであった。
退魔組の退魔士たちから見れば、自分達の思い通りに言う事を聞かせられる『式』に、面倒なしきたりを重んじて『善』へと戻そうとするエイジ達のような『妖魔召士』は、話の通じない、まさに頑固の塊そのものである為に毛嫌いして嫌っているものも多い。
だが、ミカゲやタクシンのように『式』を使い捨てのように考えてはおらず、妖魔の来世を真剣に考えてくれている『妖魔召士』の扱う『式』の妖魔は術者である『妖魔召士』との絆が、恐ろしく強い。
そういった『式』を司る『妖魔召士』は『式』自身が全力で『妖魔召士』を守ろうとする戦いをする為『退魔組』の退魔士のように護衛など必要ともしない。
そして『妖魔召士』と名乗れるだけの退魔士が使う『式』は『特別退魔士』が使う『式』とは比較にもならない程に強く、もしエイジがこの場で本気で『式』を使役するつもりであれば、イバキ達は今すぐにこの場から逃げる選択肢を取らざるを得なくなるのであった。
「では『特別退魔士』のお主程が、この場に姿を見せた理由を小生に教えてもらおうか?」
サイヨウの弟子と名乗った『エイジ』が、今イバキ達に向けている敵意の程は、相当に恐ろしいものであった。そして言葉を違えればあっさりと命を落としかねない不穏な空気の中、静かにイバキはその口を開き始めるのであった。
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