最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第840話 愛嬌のある男
ソフィ達が食事をしていると店の中に新たに二人組の客が入ってきた。先に食事を終えていたヌーは、水を飲みながら入り口を見る。
「……」
それまで美味しそうに食事をしていたテアと会話をし、柔和な態度を見せていたヌーだったが、真剣な目つきとなり無言で視線を前に居るソフィに移す。
畳の御座席の一番奥の席。ヌーの向かい側に座っていたソフィは、そのヌーの視線に気づいた後、ゆっくりと後ろを振り返る。
「イバキ、呑気に飯屋に来てよかったのか? サテツ殿からは直ぐに戻ってこいとのお達しだったが……」
この食事処に入ってきた二人組の一人で髪をオールバックにした筋肉隆々の男が『ミカゲ』と同じ狩衣の装束を着た自分の息子くらいの年齢の少年にそう告げる。
「これ以上はこちらの都合に構いなく、次から次に勝手な命令を出す頭領殿に振り回されたくはないしね。こっちは朝から何も食べずに【イダラマ】様を捜索していたんだ。食事くらいはさせてもらわないと」
そういうとイバキと呼ばれた少年は、店主に手早く食事を注文する。この二人組はどうやらこの食事処によく来るのだろう。店主は直ぐに頷いて彼らの食べ物を作る用意を始めるのだった。
「いつも繁盛しているけど、今日は輪をかけて大盛況だね」
注文を済ませたイバキは辺りを見回して空いている席が無いかを確認するが、カウンター席も座席もどこも空きが無い為、少し表情を曇らせながらそう呟くのだった。
「ん?」
そこでイバキが奥で自分を見ている『二人組』を発見する。それは『ソフィ』と『ヌー』の二人だった。
イバキが自分を注意深く観察するように見ているソフィ達に、何か用があるのかと声を掛けようとする。
――が、しかしその直前に、そのソフィ達の前の席で食事を終えた四人組が、一斉に立ち上がってイバキに声を掛けるのだった。
「い、イバキ様! 席が無いようでしたら、自分達の所をお使いください!」
「え? それは助かるけど……。いいのかい?」
「は、はい! 宜しければどうぞ! 自分達はもう食事を済ませましたので」
イバキの確認に四人組は直ぐに頷いて見せる。やはりというべきか、どうやらこの四人組は『退魔師衆』とやらなのだろう。
ソフィは座席へ向かう途中に、彼らの『狐面』を見ていた為、多分そうだろうという察しはついていたのだった。
「悪いね、じゃあ君たちの分は僕が出しておくよ」
「え!? い、いやそんなつもりじゃ……」
「いいよいいよ、せっかく寛いでいた所を邪魔しちゃったしね。気にしないでいいから。単なる席料だよ、席料」
四人組は突然のイバキの言葉に遠慮をしようとするが『上役』である『イバキ』に笑顔でそう言われては断るのも失礼だと考えるのだった。
「そ、そうですか? すみません、ありがとうございます!」
「「ありがとうございます!」」
先頭に居た男が頭を下げると、他の三人も一斉にイバキに頭を下げるのだった。
「ホラホラ、頭領殿を待たせるとまた雷が落ちるよ? 早く行った行った」
イバキにそう言われた四人の退魔士たちは、
何度も頭を下げながら、食事処を出て行くのだった。
イバキともう一人のオールバックの男が、
四人組の居たお座席に向かうと慌てて女店員が、
イバキ達の席に駆け寄ってきた。
「すんまへん! お客さん、直ぐに片づけますから」
そう言って店員はテーブルの皿などを片付け始める。
「慌てて落とさないように気をつけてね?」
そう言ってイバキが店員にニコリと微笑みかけながら告げると、女の従業員は顔を赤らめながら頭を下げて、四人組の食べた皿などを運んで行った。
「全く、お前というやつは」
もう一人の男が顔を赤らめて行った店員を見ながらそう言うと、イバキと呼ばれた男は首を傾げていた。どうやらもう一人の男の言いたい事を理解してはいなかったようである。イバキがソフィの隣の席で腰をおろすとソフィは小言で呟く。
「クックック、お主は面倒見のいい素晴らしい者だな」
イバキは突然話しかけられた為、少し驚いた様子で背後を振り返る。そしてその細い目をソフィに向ける。こうして先程と同じく、ソフィとイバキは再び視線を合わせるのだった。
「ふふ、それはどうも」
そう言うとイバキは、ソフィにもニコリと笑いかけるのだった。
……
……
……
「……」
それまで美味しそうに食事をしていたテアと会話をし、柔和な態度を見せていたヌーだったが、真剣な目つきとなり無言で視線を前に居るソフィに移す。
畳の御座席の一番奥の席。ヌーの向かい側に座っていたソフィは、そのヌーの視線に気づいた後、ゆっくりと後ろを振り返る。
「イバキ、呑気に飯屋に来てよかったのか? サテツ殿からは直ぐに戻ってこいとのお達しだったが……」
この食事処に入ってきた二人組の一人で髪をオールバックにした筋肉隆々の男が『ミカゲ』と同じ狩衣の装束を着た自分の息子くらいの年齢の少年にそう告げる。
「これ以上はこちらの都合に構いなく、次から次に勝手な命令を出す頭領殿に振り回されたくはないしね。こっちは朝から何も食べずに【イダラマ】様を捜索していたんだ。食事くらいはさせてもらわないと」
そういうとイバキと呼ばれた少年は、店主に手早く食事を注文する。この二人組はどうやらこの食事処によく来るのだろう。店主は直ぐに頷いて彼らの食べ物を作る用意を始めるのだった。
「いつも繁盛しているけど、今日は輪をかけて大盛況だね」
注文を済ませたイバキは辺りを見回して空いている席が無いかを確認するが、カウンター席も座席もどこも空きが無い為、少し表情を曇らせながらそう呟くのだった。
「ん?」
そこでイバキが奥で自分を見ている『二人組』を発見する。それは『ソフィ』と『ヌー』の二人だった。
イバキが自分を注意深く観察するように見ているソフィ達に、何か用があるのかと声を掛けようとする。
――が、しかしその直前に、そのソフィ達の前の席で食事を終えた四人組が、一斉に立ち上がってイバキに声を掛けるのだった。
「い、イバキ様! 席が無いようでしたら、自分達の所をお使いください!」
「え? それは助かるけど……。いいのかい?」
「は、はい! 宜しければどうぞ! 自分達はもう食事を済ませましたので」
イバキの確認に四人組は直ぐに頷いて見せる。やはりというべきか、どうやらこの四人組は『退魔師衆』とやらなのだろう。
ソフィは座席へ向かう途中に、彼らの『狐面』を見ていた為、多分そうだろうという察しはついていたのだった。
「悪いね、じゃあ君たちの分は僕が出しておくよ」
「え!? い、いやそんなつもりじゃ……」
「いいよいいよ、せっかく寛いでいた所を邪魔しちゃったしね。気にしないでいいから。単なる席料だよ、席料」
四人組は突然のイバキの言葉に遠慮をしようとするが『上役』である『イバキ』に笑顔でそう言われては断るのも失礼だと考えるのだった。
「そ、そうですか? すみません、ありがとうございます!」
「「ありがとうございます!」」
先頭に居た男が頭を下げると、他の三人も一斉にイバキに頭を下げるのだった。
「ホラホラ、頭領殿を待たせるとまた雷が落ちるよ? 早く行った行った」
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四人組の居たお座席に向かうと慌てて女店員が、
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そう言ってイバキが店員にニコリと微笑みかけながら告げると、女の従業員は顔を赤らめながら頭を下げて、四人組の食べた皿などを運んで行った。
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