最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第799話 いざ、ノックスの世界へ

「しかしこの魔法は本当に難しい魔法なのだな『ことわり』は『レパート』の世界の物を使っておるし、発動羅列は間違い無い筈なのだがな」

 フルーフが再びソフィと再会してから、幾度と無くこうしてフルーフの『概念跳躍アルム・ノーティア』を使うところを見ているソフィだが、未だに使う事が出来てはいない。

 まだ覚えられない事に不満を覚えていたソフィは、こうしてノックスへ向かう為に、準備をしているフルーフの『概念跳躍アルム・ノーティア』の『発動羅列』を眺めながらそう言葉を漏らすのだった。

「ワシ達の世界の『ことわり』も理解出来ておるのか? それに『発動羅列』も覚えておるのなら後は魔力が伴っておれば使える筈だが」

「何、そうなのか? ユファからは、覚えるのに時間が掛かると言われていたがな」

「別世界の『ことわり』を理解するのには時間を要するが、お主程の魔王であれば『ことわり』と発動羅列を理解する事が出来ておれば直ぐに使えると思うぞ」

 確かにソフィは『』までは数日で扱えるようになった。

 それからも一部の汎用神域魔法は『レパート』の世界の『ことわり』で使えている。当然発動羅列を詠唱しながらなので『アレルバレル』の世界の『ことわり』のように、脊髄反射的に使えるワケでは無いが、威力は十分だと言える程である。

 しかしそれでも『時魔法タイム・マジック』である『概念跳躍アルム・ノーティア』は、魔法陣が浮かぶ事すらない。フルーフの言葉を聞いて、発動羅列を間違えて覚えてしまっているのかもしれないと懸念を抱き始めたソフィだったが、そこで魔法陣が出現し始めた。

「よし、準備は出来たぞソフィよ」

「おお、分かった。それでは宜しく頼むぞ」

「うむ『概念跳躍アルム・ノーティア』の事だが、今度またワシが直々に発動羅列から教えよう」

「そちらもよろしく頼む!」

 フルーフは頷くと『スタック』させた魔力を魔法陣に乗せる。

 ――神域『時』魔法、『概念跳躍アルム・ノーティア』。

 発動と同時に三体の魔族は、ヌーから教えられた座標を示す『ノックス』の世界へと、世界間移動が行われるのだった。

 そして次元の狭間を再び移動するソフィ達。これまでであったならばソフィは、それを意識する事も無く、別世界へと移動してきたが『リラリオ』の世界へ跳んだ時に襲われた一件以来、ソフィは僅かコンマ数秒とも呼べるこの次元の狭間の中で、

(どうやら今回も、我一人が跳んでいる時を狙っておるのだろうか?)

 ちらりと無表情のまま次元を旅している『フルーフ』と『ヌー』の顔を一瞥する。ヌーだけでは無く、この魔法を発動させたフルーフですら、この次元間の間は意識を保ってはないようだった。

(無詠唱であれば、この僅かな時間でも数個の魔法は使えそうだな。流石に『スタック』をする暇はないが『レパート』の世界の『ことわり』であれば、魔力を全身に行き渡らせるな)

 コンマ数秒の次元の狭間の中でソフィは、何が出来るかを検証していく。いつあの謎の来襲者が襲ってくるとも限らない。出来る事は何でも試しておこうという判断をするソフィであった。

 そして『レパート』の世界の『ことわり』であれば、魔法を展開するまではいかないが、魔力圧を好きな場所へ、更にはその威力もある程度は持たせられる事を把握する。

(紆余曲折はあったが結果的に『レパート』の世界の『ことわり』を覚えられたことは、とても意義のある事だったな)

 ソフィはそう考えながら次元の狭間の中で満足そうにするのだった。

 ――やがて空間に亀裂が入り『ノックス』の世界へとソフィ達は到達するのだった。

 その世界は『リラリオ』のように青空が広がり、空気の匂いも感じられる程に澄んでいるように感じられた。

 ソフィが周囲を見渡すがどうやら森の中に跳ばされたようで、木々に囲まれていて他には何も見えない。

「どうやら辿り着いたようだが……」

「ここがノックスで間違いないか?」

 フルーフとソフィは、同時にヌーの方を見る。

「ああ。セルバスの奴が言っていた座標通りだ。ここがノックスの世界で、間違いないだろうよ」

 ヌーの言葉を聞いて頷きを見せるソフィだった。

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