最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第746話 哀愁を帯びた背中
「お主の言いたい事は分かった。しかしもう少しだけ待つことは出来ぬか?」
ソフィの言葉にミューテリアは神妙な顔をするが、やがて儚く笑いながら頷きを見せた。
「分かった。妾たちはお主達の保護下に居る事でこの魔界で生きていられている。お主がそう言うのであれば従おう。しかしソフィよ、人間達に真実を伝えるつもりなのは本気だという事は、理解しておいて欲しい」
「……うむ、分かった。」
(しかし共に魔王を倒す為に勇者に加護を与える存在の精霊達が、その敵である魔王の保護下に置かれていたと知れば混乱は避けられないだろうな。下手をすればミューテリアや、この小さき精霊達も辛い思いをさせてしまうかもしれぬ)
だが人間達にすれば精霊までもが魔族側だと知れば、残された人間達は絶望し、失意のどん底まで落ちてしまうだろう。人間側にとっても精霊側にとってもこのタイミングで知らせるのは、好ましくは無いとソフィはそう考えるのだった。
再びアレルバレルの世界の情勢を戻し、そしてどうする事が安寧に繋がる最善かをソフィは考え始める。ふとそこでリラリオのラルグ魔国に居た頃の事が頭に過るソフィだった。
リラリオの世界にあるヴェルマー大陸とミールガルド大陸。
アレルバレルの世界の魔界と人間界。
似ているところはあるが、根底の部分では全く違う。
リラリオの世界では魔王レアが居た頃はまだしも、その後は魔族は『ヴェルマー』大陸で魔族同士で争い続けたおかげで『ミールガルド』大陸の人間達には、魔族達は何も干渉していなかった。
しかしこの世界では我や魔族達は人間に対して非情な行いをしていたと、組織やミラが数千年掛けて人間達を洗脳し続けて今もその教えを忠実に守っており、更にはそのミラの教えを布教する教会や聖堂などもある。
人間が魔族に抱く思想や感情はリラリオの世界とアレルバレルの世界を比較すれば、全く違うものだろう。
ソフィは跳ばされた仲間の事を意識しながらも、このままこの問題を放置し続けるわけにもいかないだろうと考えるのだった。
こうしている間にも魔界の魔族達は『煌聖の教団』が居なくなったことを知り、再び動きを見せ始めるかもしれない。
出来れば九大魔王達全員を取り戻し、再び魔界全土に網を張って、勝手な事をしでかしそうな者達へ、抑止をしたかったところではあるが、そこまでの時間の猶予はもう無い事だろう。
「また準備が整ったら我から連絡をする。ミューテリア、悪いがそれまではもう少し様子を見てくれるか?」
「ええ……。勝手な事を言ってごめんなさいソフィ。貴方が多忙である事も重々承知はしているのよ」
ミューテリアはそう言うと、心底申し訳なさそうな顔を浮かべながら謝罪をするのだった。
「構わぬ。何か他にも必要なものがあれば、いつでも魔王城へ来るがよい。配下の者達には伝えてある」
「ええ、恩に着るわ」
「うむ。それでは……な」
ソフィはそう告げるとそのまま踵を返して歩いて行こうとする。
哀愁を帯びたソフィの背中に、ミューテリアから声が掛けられる。
「ねぇソフィ! 今度はリーネ王妃も連れて来てね。また会いたいって、この子たちも言っているの!」
ソフィはその言葉に振り返ったかと思うと、やがて嬉しそうな笑みを見せるのだった。
「うむ! 必ず連れてこよう」
今度こそソフィは歩いていく。
――ミューテリアはその後ろ姿を眺め続けた。その姿が見えなくなるまで。
……
……
……
精霊の森から戻り魔王城が見え始めた頃、ソフィはその足をゆっくりと止めて空を見上げる。
アレルバレルの魔界は暗黒の世界。いつ見上げても漆黒の闇が広がる鬱屈とさせる世界だったが、ミューテリアの最後の一言を聞いたソフィはそれまでの気持ちとは違った温かな感情が、胸の辺りに広がっていた。
「リーネに会いたいな」
会って色々あったことをリーネに聞いてもらいたい。そして何よりもリーネの顔が見たいとソフィは、暗い闇が広がる空を見上げながら強く想うのだった。
ソフィの言葉にミューテリアは神妙な顔をするが、やがて儚く笑いながら頷きを見せた。
「分かった。妾たちはお主達の保護下に居る事でこの魔界で生きていられている。お主がそう言うのであれば従おう。しかしソフィよ、人間達に真実を伝えるつもりなのは本気だという事は、理解しておいて欲しい」
「……うむ、分かった。」
(しかし共に魔王を倒す為に勇者に加護を与える存在の精霊達が、その敵である魔王の保護下に置かれていたと知れば混乱は避けられないだろうな。下手をすればミューテリアや、この小さき精霊達も辛い思いをさせてしまうかもしれぬ)
だが人間達にすれば精霊までもが魔族側だと知れば、残された人間達は絶望し、失意のどん底まで落ちてしまうだろう。人間側にとっても精霊側にとってもこのタイミングで知らせるのは、好ましくは無いとソフィはそう考えるのだった。
再びアレルバレルの世界の情勢を戻し、そしてどうする事が安寧に繋がる最善かをソフィは考え始める。ふとそこでリラリオのラルグ魔国に居た頃の事が頭に過るソフィだった。
リラリオの世界にあるヴェルマー大陸とミールガルド大陸。
アレルバレルの世界の魔界と人間界。
似ているところはあるが、根底の部分では全く違う。
リラリオの世界では魔王レアが居た頃はまだしも、その後は魔族は『ヴェルマー』大陸で魔族同士で争い続けたおかげで『ミールガルド』大陸の人間達には、魔族達は何も干渉していなかった。
しかしこの世界では我や魔族達は人間に対して非情な行いをしていたと、組織やミラが数千年掛けて人間達を洗脳し続けて今もその教えを忠実に守っており、更にはそのミラの教えを布教する教会や聖堂などもある。
人間が魔族に抱く思想や感情はリラリオの世界とアレルバレルの世界を比較すれば、全く違うものだろう。
ソフィは跳ばされた仲間の事を意識しながらも、このままこの問題を放置し続けるわけにもいかないだろうと考えるのだった。
こうしている間にも魔界の魔族達は『煌聖の教団』が居なくなったことを知り、再び動きを見せ始めるかもしれない。
出来れば九大魔王達全員を取り戻し、再び魔界全土に網を張って、勝手な事をしでかしそうな者達へ、抑止をしたかったところではあるが、そこまでの時間の猶予はもう無い事だろう。
「また準備が整ったら我から連絡をする。ミューテリア、悪いがそれまではもう少し様子を見てくれるか?」
「ええ……。勝手な事を言ってごめんなさいソフィ。貴方が多忙である事も重々承知はしているのよ」
ミューテリアはそう言うと、心底申し訳なさそうな顔を浮かべながら謝罪をするのだった。
「構わぬ。何か他にも必要なものがあれば、いつでも魔王城へ来るがよい。配下の者達には伝えてある」
「ええ、恩に着るわ」
「うむ。それでは……な」
ソフィはそう告げるとそのまま踵を返して歩いて行こうとする。
哀愁を帯びたソフィの背中に、ミューテリアから声が掛けられる。
「ねぇソフィ! 今度はリーネ王妃も連れて来てね。また会いたいって、この子たちも言っているの!」
ソフィはその言葉に振り返ったかと思うと、やがて嬉しそうな笑みを見せるのだった。
「うむ! 必ず連れてこよう」
今度こそソフィは歩いていく。
――ミューテリアはその後ろ姿を眺め続けた。その姿が見えなくなるまで。
……
……
……
精霊の森から戻り魔王城が見え始めた頃、ソフィはその足をゆっくりと止めて空を見上げる。
アレルバレルの魔界は暗黒の世界。いつ見上げても漆黒の闇が広がる鬱屈とさせる世界だったが、ミューテリアの最後の一言を聞いたソフィはそれまでの気持ちとは違った温かな感情が、胸の辺りに広がっていた。
「リーネに会いたいな」
会って色々あったことをリーネに聞いてもらいたい。そして何よりもリーネの顔が見たいとソフィは、暗い闇が広がる空を見上げながら強く想うのだった。
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