最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第736話 小太刀を構える魔族
「イリーガルの野郎……! たかが戦力値500億前後の奴ら相手に一体どれだけ本気でやってやがるんだ!」
ブラストは先程のイリーガルの衝撃波を結界で打ち消したが、そのイリーガルの攻撃力の高さに不満を漏らす。
ブラストの張っている結界は『大魔王最上位』領域の攻撃でさえ、数度であれば何とか持ち堪える事の出来る魔族の結界の域では、最高峰と呼べる程の結界である。
しかしそんな彼の結界であっても、今のはかなり危なかった。
序列入りを決める選定であってもこれまでのイリーガルは、ここまで戦力値を上昇させた事は無い。
だが、今のイリーガルはどう考えてもAクラスの魔族相手にするだけであれば、余りにも過剰すぎる程の戦力値コントロールを行って上昇させているようである。
「あの中立の者達を纏めている魔族の所為か?」
ブラストは小太刀を構えて『オーラ』を纏わせているステアに注目しながら、そう言葉に出すのであった。そしてそのブラストの考えた通り、試験官として立ち開かるイリーガルは、ステアの攻撃に意識を向けた事で、他の魔族達に対する対応に余裕を失くしてしまったのである。
(これはまずいな……。ステア殿は間違いなく、こちら側の領域だが、他の者達はそこまで強くは無い)
単純にAクラスの者達だけを相手にするならば、もう少し戦力値を落として手加減が出来るが、その状態で戦えば小太刀を構えて、こちらの様子を見ているステアの相手を務められない。かといって先程のイリーガルの戦力値で、ステアを相手にする状態で戦えば他のAクラスの魔族達に、大怪我をさせてしまう可能性がある。
つまり手加減をしすぎると、ステアに一撃を入れられて試験は終了してしまうし、手加減をせずに戦えば、ステアの相手は出来るが他の魔族達にとっては、試験どころでは無くなってしまうのであった。
そしてイリーガルがそう考えるように仕向ける事こそが『ステア』の本当の狙いでもあったのであった。
(……Aクラスの試験。別に私が合格をする必要は無く、この場に居る誰かがイリーガル殿に、一撃を入れる事が出来ればそれで良い。そうであるならば、この試験は決して難易度は高くは無い)
そこまで考えたステアは、小太刀を右手に持ち替えながら、再びイリーガルに向けて飛び出していく。そしてステアに全幅の信頼を寄せる魔族達も、また一気に駆け出していく。
イリーガルは思案する際中に、再び行動をする事を余儀なくされた。
戦力値を上げるでもなく、そして下げるでもなく中途半端な状態で動かされる。
戦闘の最中に自在に小太刀を持ち替えながら、器用にイリーガルの死角に入り込みながら次々とイリーガルに斬りかかっていく。
イリーガルはその全てのステアの攻撃を防ぎきるが、そうしている間にも次々とAクラスの魔族達が間合いに入り込んでくる。
イリーガルは一撃でも入れられると、試験を終了せざるを得なくなる。
『二色の併用』状態のイリーガルであれば、戦力値が500億付近の彼らであれば、容易にイリーガルに傷をつけられる。
「くっ……!」
ここで初めてイリーガルは『高速転移』を使って後退をさせられた。
…………
「あ、あのイリーガル様が下がらされた!?」
「馬鹿めが……っ! 下がるくらいなら斬り伏せて不合格を突きつけやがれ!!」
「へぇ? やるわね。あの魔族」
喫驚の感情を見せた者は『神速』のリーシャ。
ライバルの後退に苛立ちを見せて叱咤した者は『破壊』のブラスト。
そして壁である『イリーガル』を立ち退かせた相手に対して、関心を示した者は『女帝』エイネであった。
大魔王ソフィの魔王軍所属の最高幹部『九大魔王』の三体の魔族はそれぞれ、同じく九大魔王である『イリーガル』が後退した事で、それぞれがそれぞれの言葉を発するのだった。
これまでイリーガルが、序列入りを決める選定の試験官を務めた時、決して下がったことは無かった。
その『壁』と呼ばれる九大魔王『イリーガル』は、今回ステアによって下がらされた。そして一つの結論を出したイリーガルは、他の魔族達を一度視野から外した後、大刀を持つ手に『青のオーラ』を集約し始めて狙う対象を一体の魔族に絞る事にするのだった。
……
……
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ブラストは先程のイリーガルの衝撃波を結界で打ち消したが、そのイリーガルの攻撃力の高さに不満を漏らす。
ブラストの張っている結界は『大魔王最上位』領域の攻撃でさえ、数度であれば何とか持ち堪える事の出来る魔族の結界の域では、最高峰と呼べる程の結界である。
しかしそんな彼の結界であっても、今のはかなり危なかった。
序列入りを決める選定であってもこれまでのイリーガルは、ここまで戦力値を上昇させた事は無い。
だが、今のイリーガルはどう考えてもAクラスの魔族相手にするだけであれば、余りにも過剰すぎる程の戦力値コントロールを行って上昇させているようである。
「あの中立の者達を纏めている魔族の所為か?」
ブラストは小太刀を構えて『オーラ』を纏わせているステアに注目しながら、そう言葉に出すのであった。そしてそのブラストの考えた通り、試験官として立ち開かるイリーガルは、ステアの攻撃に意識を向けた事で、他の魔族達に対する対応に余裕を失くしてしまったのである。
(これはまずいな……。ステア殿は間違いなく、こちら側の領域だが、他の者達はそこまで強くは無い)
単純にAクラスの者達だけを相手にするならば、もう少し戦力値を落として手加減が出来るが、その状態で戦えば小太刀を構えて、こちらの様子を見ているステアの相手を務められない。かといって先程のイリーガルの戦力値で、ステアを相手にする状態で戦えば他のAクラスの魔族達に、大怪我をさせてしまう可能性がある。
つまり手加減をしすぎると、ステアに一撃を入れられて試験は終了してしまうし、手加減をせずに戦えば、ステアの相手は出来るが他の魔族達にとっては、試験どころでは無くなってしまうのであった。
そしてイリーガルがそう考えるように仕向ける事こそが『ステア』の本当の狙いでもあったのであった。
(……Aクラスの試験。別に私が合格をする必要は無く、この場に居る誰かがイリーガル殿に、一撃を入れる事が出来ればそれで良い。そうであるならば、この試験は決して難易度は高くは無い)
そこまで考えたステアは、小太刀を右手に持ち替えながら、再びイリーガルに向けて飛び出していく。そしてステアに全幅の信頼を寄せる魔族達も、また一気に駆け出していく。
イリーガルは思案する際中に、再び行動をする事を余儀なくされた。
戦力値を上げるでもなく、そして下げるでもなく中途半端な状態で動かされる。
戦闘の最中に自在に小太刀を持ち替えながら、器用にイリーガルの死角に入り込みながら次々とイリーガルに斬りかかっていく。
イリーガルはその全てのステアの攻撃を防ぎきるが、そうしている間にも次々とAクラスの魔族達が間合いに入り込んでくる。
イリーガルは一撃でも入れられると、試験を終了せざるを得なくなる。
『二色の併用』状態のイリーガルであれば、戦力値が500億付近の彼らであれば、容易にイリーガルに傷をつけられる。
「くっ……!」
ここで初めてイリーガルは『高速転移』を使って後退をさせられた。
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「馬鹿めが……っ! 下がるくらいなら斬り伏せて不合格を突きつけやがれ!!」
「へぇ? やるわね。あの魔族」
喫驚の感情を見せた者は『神速』のリーシャ。
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そして壁である『イリーガル』を立ち退かせた相手に対して、関心を示した者は『女帝』エイネであった。
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