最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第667話 考え方改革
イリーガル達が『アレルバレル』の世界でリザート達と交戦していた頃『リラリオ』の世界でも『煌聖の教団』が全軍を集結させて『レイズ』魔国へと攻めてきていた。
そんな中、守護龍『ディラルク』によって『煌聖の教団』の襲撃をきかされた『レイズ』の女王シスは、自身の中に宿るもう一人の魂である『エルシス』と交代して、シティアス上空まで押し寄せていた『煌聖の教団』の者達や、ルビリス達の前に姿を見せていた。
そして更に『レキオン』の背に乗ってリディアとラルフは『レイズ』魔国と首都『シティアス』の間にある空で戦うシス女王とミラの元へ向かっていた。
元々レキオンはキーリから命令された通り、何が起きているかをリディア達に伝える為に『レイズ』魔国へ向かったのであった。そして彼らに伝え終わった後にレキオンは、レアという魔族を親友と呼んでいる主『キーリ』の元へ向かう筈だった。
しかしそこでリディアという人間がレキオンに対して。シス女王の元へ向かえと告げてきたのである。
何故最強の種族として君臨する龍族が人間に命令されなければならないと、高慢な性格をしていたレキオンは当然断ろうとしたのだが、リディアが自分の言葉に従わないのならば『斬るぞ』と言葉では言ってはいなかったものの、目で訴えてきた為に仕方なく従う事にしたのである。冗談や脅しでは無いと理解させられたレキオンは悔しい思いを抱いた。
そしてレキオンはリディアを背中に乗せて、シスの元に向かおうとしたが、そこでさらに人間のラルフにも連れていけと言われたのであった。
もうどうにでもしてくれとばかりにレキオンは、拗ねながらもラルフも背中に乗せたのだった。
…………
「……お前がついてきたところで、今は何も出来ないはずだ。何故ついてきた?」
レキオンの背の上でリディアは、ラルフに向けてそう言い放った。
「確かに今の私は確かに弱い……。しかし強くなる為には少しでも行動をしなければならないと思いました」
リディアの問いに対して何の答えにもなっていないとリディアは考えたが、しかし理由にはなってはいないが心情は理解出来る。弱いと言われた上に、完膚なきまでに歴然の『差』を見せられて尚、心が折れずに弱いと認めた上で強くなるための向上心を見せられたリディアはそれ以上は何も言わずに無言となるのだった。
「リディア。我々人間が魔族より強くなるためには、どうすればいいのでしょうか?」
少しの間があった後、そんな事を口にするラルフだった。
リディアは必死に考えて出たであろうラルフの言葉を一蹴すること無く、真面目にリディアなりの答えを教える。
「それはなラルフ。自分が弱いという事を理解したのならば、後は簡単な事だ」
ラルフは『それくらいは自分で考えろ』と言われると思っていたが、何かを教えてくれそうなリディアに顔をあげる。
「プライドを捨てて自分より強い者から何でも盗め。馬鹿正直に教わるだけではなく、そいつが何故強いのかを把握し、自分に見合った方法を見つけて全てを自分のモノにするんだ」
「……盗む。ですか?」
この表現は実際に現実にあるモノを盗めと言っているのではなく、相手の技術や強い理由の根底にあるものを自分のモノにしろと言われているのだった。
「お前もあの女に色々と教授されているようだがそれだけではダメだ。あの女はどこか甘いだろう? いつもどこかでお前が怪我をしないようにとセーブをしながら鍛えている」
――あの女とはユファの事だろう。
確かに彼女は自分を強くしようとしてくれているが、少しばかり自分の事を気遣いすぎているようにラルフも感じていた。
「俺やお前が魔族と同じように長生きできるのであれば、あの女のいう通りにしていればいずれは強くなるだろう。だが、やはりあの女は魔族だからだろうな、どこか俺達とはズレた考えをしている。お前が力をつける頃には、お前はもう年老いているだろう」
「!」
「何も教えてもらう事をやめろといっているわけではないぞ? 教えてもらうだけではなく、お前はお前で考えを巡らせろ」
「教えてもらうだけではなく考える……」
ラルフはリディアの言葉を反芻させながら、何かを考え始めるのだった。
「お前は必ず強くなるだろう。それはお前と手を合わせた俺が保証してやる。だが、それはお前が今のまま立ち止まらなければの話だ。あの女の元では強くなれないと思うならば、お前は更に強くなる為に考えろ。何でも使えるものは利用しろ。俺はあのレキを利用したしシス女王も利用した」
(……いや、厳密にいえばあれは、シス女王ではないのかもしれないがな)
リディアはエルシスによって地獄のような特訓を味わった。
『支配の目』を応用した『金色のオーラ』の体現。持続時間の向上や『魔力コントロール』。
それに『スタック』と呼ばれる技術の応用。敵の魔法の『発動羅列』をみてどんなものをかを察知する為に暗記する方法に、その魔法の対策方法。
何かを託そうと考えたリディアへのエルシスの教授の時間は、普段の女王からは考えられない絶望の時間だった。
「ありがとうございます。リディア」
「フン。お前がアイツの配下である以上は今以上の努力をし続けろ。全力で前に向かって走らなければ、上の連中に追いつける位置には辿り着けないぞ」
「プライドを捨ててでも強くなる為の方法を考え使える物を利用して、努力をし続ける……」
そこで会話は途切れたが、二人を乗せているレキオンは『リディア』と『ラルフ』の両名を気に入り始めていた。
(……人間も我ら龍族と同じ事を考えているのだな。我らとて強くなる為の努力を怠ったことはない。少しでも始祖様の役に立ちたいという気持ちがある)
『レイズ』魔国から『シティアス』上空へ向かうまでの間の僅かな時間だったが、ラルフの考えは大きく変わるのだった。
……
……
……
ミールガルドの大陸で一体の魔族が薄暗い洞窟の中で目を覚ました。
その魔族の名は『レキ』といった。この『リラリオ』の世界の魔族の始祖である。
「……何だ? そこそこ大きな魔力を持つ者が、うじゃうじゃといやがる……」
彼は『代替身体』でソフィと戦い敗れた後に『クッケ』の町の近くの山の麓の洞窟で身を隠していたが、多くこの世界に現れた『煌聖の教団』の者達の魔力を感知して、その身体をベッドから起こすのだった。
「……そろそろ新たな身体を手に入れなければ、この身体は限界だ」
そう言うとレキは残っている力を振り絞って『ヴェルマー』大陸の『レア』の居る岩陰付近へと向かうのだった。
……
……
……
そんな中、守護龍『ディラルク』によって『煌聖の教団』の襲撃をきかされた『レイズ』の女王シスは、自身の中に宿るもう一人の魂である『エルシス』と交代して、シティアス上空まで押し寄せていた『煌聖の教団』の者達や、ルビリス達の前に姿を見せていた。
そして更に『レキオン』の背に乗ってリディアとラルフは『レイズ』魔国と首都『シティアス』の間にある空で戦うシス女王とミラの元へ向かっていた。
元々レキオンはキーリから命令された通り、何が起きているかをリディア達に伝える為に『レイズ』魔国へ向かったのであった。そして彼らに伝え終わった後にレキオンは、レアという魔族を親友と呼んでいる主『キーリ』の元へ向かう筈だった。
しかしそこでリディアという人間がレキオンに対して。シス女王の元へ向かえと告げてきたのである。
何故最強の種族として君臨する龍族が人間に命令されなければならないと、高慢な性格をしていたレキオンは当然断ろうとしたのだが、リディアが自分の言葉に従わないのならば『斬るぞ』と言葉では言ってはいなかったものの、目で訴えてきた為に仕方なく従う事にしたのである。冗談や脅しでは無いと理解させられたレキオンは悔しい思いを抱いた。
そしてレキオンはリディアを背中に乗せて、シスの元に向かおうとしたが、そこでさらに人間のラルフにも連れていけと言われたのであった。
もうどうにでもしてくれとばかりにレキオンは、拗ねながらもラルフも背中に乗せたのだった。
…………
「……お前がついてきたところで、今は何も出来ないはずだ。何故ついてきた?」
レキオンの背の上でリディアは、ラルフに向けてそう言い放った。
「確かに今の私は確かに弱い……。しかし強くなる為には少しでも行動をしなければならないと思いました」
リディアの問いに対して何の答えにもなっていないとリディアは考えたが、しかし理由にはなってはいないが心情は理解出来る。弱いと言われた上に、完膚なきまでに歴然の『差』を見せられて尚、心が折れずに弱いと認めた上で強くなるための向上心を見せられたリディアはそれ以上は何も言わずに無言となるのだった。
「リディア。我々人間が魔族より強くなるためには、どうすればいいのでしょうか?」
少しの間があった後、そんな事を口にするラルフだった。
リディアは必死に考えて出たであろうラルフの言葉を一蹴すること無く、真面目にリディアなりの答えを教える。
「それはなラルフ。自分が弱いという事を理解したのならば、後は簡単な事だ」
ラルフは『それくらいは自分で考えろ』と言われると思っていたが、何かを教えてくれそうなリディアに顔をあげる。
「プライドを捨てて自分より強い者から何でも盗め。馬鹿正直に教わるだけではなく、そいつが何故強いのかを把握し、自分に見合った方法を見つけて全てを自分のモノにするんだ」
「……盗む。ですか?」
この表現は実際に現実にあるモノを盗めと言っているのではなく、相手の技術や強い理由の根底にあるものを自分のモノにしろと言われているのだった。
「お前もあの女に色々と教授されているようだがそれだけではダメだ。あの女はどこか甘いだろう? いつもどこかでお前が怪我をしないようにとセーブをしながら鍛えている」
――あの女とはユファの事だろう。
確かに彼女は自分を強くしようとしてくれているが、少しばかり自分の事を気遣いすぎているようにラルフも感じていた。
「俺やお前が魔族と同じように長生きできるのであれば、あの女のいう通りにしていればいずれは強くなるだろう。だが、やはりあの女は魔族だからだろうな、どこか俺達とはズレた考えをしている。お前が力をつける頃には、お前はもう年老いているだろう」
「!」
「何も教えてもらう事をやめろといっているわけではないぞ? 教えてもらうだけではなく、お前はお前で考えを巡らせろ」
「教えてもらうだけではなく考える……」
ラルフはリディアの言葉を反芻させながら、何かを考え始めるのだった。
「お前は必ず強くなるだろう。それはお前と手を合わせた俺が保証してやる。だが、それはお前が今のまま立ち止まらなければの話だ。あの女の元では強くなれないと思うならば、お前は更に強くなる為に考えろ。何でも使えるものは利用しろ。俺はあのレキを利用したしシス女王も利用した」
(……いや、厳密にいえばあれは、シス女王ではないのかもしれないがな)
リディアはエルシスによって地獄のような特訓を味わった。
『支配の目』を応用した『金色のオーラ』の体現。持続時間の向上や『魔力コントロール』。
それに『スタック』と呼ばれる技術の応用。敵の魔法の『発動羅列』をみてどんなものをかを察知する為に暗記する方法に、その魔法の対策方法。
何かを託そうと考えたリディアへのエルシスの教授の時間は、普段の女王からは考えられない絶望の時間だった。
「ありがとうございます。リディア」
「フン。お前がアイツの配下である以上は今以上の努力をし続けろ。全力で前に向かって走らなければ、上の連中に追いつける位置には辿り着けないぞ」
「プライドを捨ててでも強くなる為の方法を考え使える物を利用して、努力をし続ける……」
そこで会話は途切れたが、二人を乗せているレキオンは『リディア』と『ラルフ』の両名を気に入り始めていた。
(……人間も我ら龍族と同じ事を考えているのだな。我らとて強くなる為の努力を怠ったことはない。少しでも始祖様の役に立ちたいという気持ちがある)
『レイズ』魔国から『シティアス』上空へ向かうまでの間の僅かな時間だったが、ラルフの考えは大きく変わるのだった。
……
……
……
ミールガルドの大陸で一体の魔族が薄暗い洞窟の中で目を覚ました。
その魔族の名は『レキ』といった。この『リラリオ』の世界の魔族の始祖である。
「……何だ? そこそこ大きな魔力を持つ者が、うじゃうじゃといやがる……」
彼は『代替身体』でソフィと戦い敗れた後に『クッケ』の町の近くの山の麓の洞窟で身を隠していたが、多くこの世界に現れた『煌聖の教団』の者達の魔力を感知して、その身体をベッドから起こすのだった。
「……そろそろ新たな身体を手に入れなければ、この身体は限界だ」
そう言うとレキは残っている力を振り絞って『ヴェルマー』大陸の『レア』の居る岩陰付近へと向かうのだった。
……
……
……
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