最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第640話 禁句
案内された場所には人間や魔族達が好む形をした城で、エイネの居た世界『アレルバレル』でもソフィの魔王城と余り変わらない造りをしていた為、エイネはこの城を龍族達の城というよりは、身近な魔族達の城に感じられるのだった。
「それでは中に入りましょう」
『コープパルス・ドラゴン』という『龍種』のスベイキアの兵士がそう言うと、龍の大きな姿から人型へと姿を変えて行くのだった。
「え」
エイネは目の前で龍が人型になったのを見て、驚きで目を丸くして兵士を見る。
「知らなかったのかな? 我々龍族の中でも強い力を有する者は、人型をとる事も可能だ」
ヴァルーザ龍王はそう言うと、自身もまた人型の龍の姿へと変貌させる。
今までこの世界とは違う『アレルバレル』の世界しか知らなかったエイネは、大きな龍の姿をしている龍族ですら見た事が無かったのである。そうであるというのに、人型になれる事など知る由も無かった。
「そう。た、確かに城も大きいけど龍の姿のままだと城は入れないわね。そ、それにしても世の中は広いわね……」
エイネは自分の中の常識がボロボロと音を立てて崩れていくのを感じながら、何とかそう声を絞り出して平静を装うのだった。
ここまで魔族のエイネを恐怖の象徴として見ていたヴァルーザは、ようやくエイネの驚いている事を隠そうとする可愛らしい一面を見てほっとしながら笑みを浮かべる。
「何?」
人を侮るような視線を感じ取ったエイネは、ヴァルーザ龍王に詰めかけようとする。
ヴァルーザがエイネを一瞥し、何でもないとばかりに首を振った。
まだ納得ができないエイネだったが、そこで案内をしていた兵士が立ち止まった為に、そこで話の間は途切れた。
「こちらに国王は御座します」
そう言って兵士は扉を開け放つと、中には多くの人型の龍が中央の玉座に座るイーサ龍王を守るかのように、こちら側を向いて並び立っていた。
「ほほう。お前が我が同胞達を脅迫して、侵略を妨害した魔族とやらか?」
中央の玉座から威厳のある声で、圧を感じさせる言葉をエイネに放たれた。
「ええ、その通りよ」
イーサ龍王は間髪入れずに返事をするエイネに、少しばかりアテが外れたとばかりに深く椅子に座り直す。
「成程。確かにただの魔族ではないようだな」
イーサはそういうと周囲の側近達を一瞥する。
側近たちは直ぐに国王に頷きを見せると、離れた場所へと移動をしていく。
「すまないが、もう少し近くに来てくれないか」
イーサは側近達を離れた場所へ移動させた後、エイネとヴァルーザの方を見てそう口にする。
「構わないわ」
エイネがそう言ってイーサ龍王の方へと歩いていくと、その背後からヴァルーザ龍王も後をついてくる。そして互いに話しやすい距離になると、イーサは満足そうに頷く。
「それで、君の名前は何だったか」
「私はエイネ。魔族エイネよ」
「そうかエイネ。ひとまず君の立場をまずは聞いておきたいのだが、君は一体何なのだ? 魔人族の軍に所属はしてはいないのか?」
「申し訳ないのだけどね、私は急いでいるの。貴方と悠長に話をするつもりはない。とりあえずこちらの質問に答えていただける?」
「なっ……!?」
横に居るヴァルーザ龍王は元より、入り口付近で聞いていた側近達も驚いた表情を浮かべていた。
そして側近たちは直ぐに無礼な魔族を諫めようと口を開きかけたが、そこでイーサ龍王が手を上げて側近達を制止する。
「まぁいいだろう。遠路遥々こうして『魔族』が『スベイキア』まで来たのだ。そんな君を尊重して、話を聞こうじゃないか」
どうやら魔人族のように、最初から魔族達を見下さないイーサ龍王に、エイネは感心しながら少しだけ優し気に口を開いた。
「貴方たち龍族は、魔人達と戦争をするというのは、もう避けられない事なのよね?」
「当然だな。全面戦争をすると決めた以上、二度と覆す事はない」
「そう。じゃあ次の質問」
イーサ龍王は少しだけ首を傾けながら頷く。それはどうぞ質問を続けろという彼らの『ボディランゲージ』のようだった。
「魔人達に強引に従わされている魔族達を戦争が終わるまでの間、全員この大陸で保護し、戦争が終わった後は、彼ら魔族が生活できる拠点を確保してくれないかしら?」
「……ふ、ふはは、フハハハ!!」
笑うのを我慢していたイーサ龍王は、エイネの言葉に堪えきれないとばかりにとうとう大笑いを始めるのだった。
「……
他の龍族の側近達もイーサに釣られるように笑い始めていたが、エイネが本気でそう言っていると理解しているヴァルーザ龍王だけが無表情のままであった。
「私たち龍族を相手にその提案を出せる君は、大物だと感心はするが、たかが魔族の提案に、私たち龍族が従うとでも思っているのかね?」
「……たかが魔族ね」
ここにきてようやく龍族のイーサは、エイネに対して本音を出したようであった。
「そうだよ。たかが魔族だよ、魔族エイネ」
人型の姿をした最強の龍種である『コープパルス・ドラゴン』のイーサ龍王は、堂々と言い放つのだった。
見下された言い方をするイーサ龍王に対してエイネの顔から怒りや諦観といった表情は感じられず、まるでやるべき事をやる決心がついたような、そんな覚悟の決まった表情であった。
彼女には決して言ってはいけない禁句の言葉がある。
――それは魔族を馬鹿にしたり、見下したりするような蔑む言葉である。
イーサ龍王が言い放った『たかが魔族』という言葉は『女帝』エイネの中での許容範囲を越えた。
そして隣に居るヴァルーザ龍王は、そのエイネの表情を見てこの部屋で彼だけが恐怖に身体を震わせるのだった。
「そう。それは残念」
ヴァルーザ龍王はその言葉と同時、慌てて部屋の中で龍形態をとろうと力を示し始めた。
「ん……?」
イーサ龍王は突然のヴァルーザの行動に、眉を寄せながら玉座から立ち上がる。
「やめなさい。これ以上私を怒らせないで頂戴」
エイネはそう言いながら具現化した『鎖』を『ヴァルーザ』龍王に巻き付ける。
『ヴァルーザ龍王』は魔力を全てエイネに吸われてしまい『龍化』を防がれてしまう。そして心底怯え切った目でエイネを見る。
エイネはそんなヴァルーザに向けて言葉を発した。
「もう少し待ちなさい……」
……
……
……
「それでは中に入りましょう」
『コープパルス・ドラゴン』という『龍種』のスベイキアの兵士がそう言うと、龍の大きな姿から人型へと姿を変えて行くのだった。
「え」
エイネは目の前で龍が人型になったのを見て、驚きで目を丸くして兵士を見る。
「知らなかったのかな? 我々龍族の中でも強い力を有する者は、人型をとる事も可能だ」
ヴァルーザ龍王はそう言うと、自身もまた人型の龍の姿へと変貌させる。
今までこの世界とは違う『アレルバレル』の世界しか知らなかったエイネは、大きな龍の姿をしている龍族ですら見た事が無かったのである。そうであるというのに、人型になれる事など知る由も無かった。
「そう。た、確かに城も大きいけど龍の姿のままだと城は入れないわね。そ、それにしても世の中は広いわね……」
エイネは自分の中の常識がボロボロと音を立てて崩れていくのを感じながら、何とかそう声を絞り出して平静を装うのだった。
ここまで魔族のエイネを恐怖の象徴として見ていたヴァルーザは、ようやくエイネの驚いている事を隠そうとする可愛らしい一面を見てほっとしながら笑みを浮かべる。
「何?」
人を侮るような視線を感じ取ったエイネは、ヴァルーザ龍王に詰めかけようとする。
ヴァルーザがエイネを一瞥し、何でもないとばかりに首を振った。
まだ納得ができないエイネだったが、そこで案内をしていた兵士が立ち止まった為に、そこで話の間は途切れた。
「こちらに国王は御座します」
そう言って兵士は扉を開け放つと、中には多くの人型の龍が中央の玉座に座るイーサ龍王を守るかのように、こちら側を向いて並び立っていた。
「ほほう。お前が我が同胞達を脅迫して、侵略を妨害した魔族とやらか?」
中央の玉座から威厳のある声で、圧を感じさせる言葉をエイネに放たれた。
「ええ、その通りよ」
イーサ龍王は間髪入れずに返事をするエイネに、少しばかりアテが外れたとばかりに深く椅子に座り直す。
「成程。確かにただの魔族ではないようだな」
イーサはそういうと周囲の側近達を一瞥する。
側近たちは直ぐに国王に頷きを見せると、離れた場所へと移動をしていく。
「すまないが、もう少し近くに来てくれないか」
イーサは側近達を離れた場所へ移動させた後、エイネとヴァルーザの方を見てそう口にする。
「構わないわ」
エイネがそう言ってイーサ龍王の方へと歩いていくと、その背後からヴァルーザ龍王も後をついてくる。そして互いに話しやすい距離になると、イーサは満足そうに頷く。
「それで、君の名前は何だったか」
「私はエイネ。魔族エイネよ」
「そうかエイネ。ひとまず君の立場をまずは聞いておきたいのだが、君は一体何なのだ? 魔人族の軍に所属はしてはいないのか?」
「申し訳ないのだけどね、私は急いでいるの。貴方と悠長に話をするつもりはない。とりあえずこちらの質問に答えていただける?」
「なっ……!?」
横に居るヴァルーザ龍王は元より、入り口付近で聞いていた側近達も驚いた表情を浮かべていた。
そして側近たちは直ぐに無礼な魔族を諫めようと口を開きかけたが、そこでイーサ龍王が手を上げて側近達を制止する。
「まぁいいだろう。遠路遥々こうして『魔族』が『スベイキア』まで来たのだ。そんな君を尊重して、話を聞こうじゃないか」
どうやら魔人族のように、最初から魔族達を見下さないイーサ龍王に、エイネは感心しながら少しだけ優し気に口を開いた。
「貴方たち龍族は、魔人達と戦争をするというのは、もう避けられない事なのよね?」
「当然だな。全面戦争をすると決めた以上、二度と覆す事はない」
「そう。じゃあ次の質問」
イーサ龍王は少しだけ首を傾けながら頷く。それはどうぞ質問を続けろという彼らの『ボディランゲージ』のようだった。
「魔人達に強引に従わされている魔族達を戦争が終わるまでの間、全員この大陸で保護し、戦争が終わった後は、彼ら魔族が生活できる拠点を確保してくれないかしら?」
「……ふ、ふはは、フハハハ!!」
笑うのを我慢していたイーサ龍王は、エイネの言葉に堪えきれないとばかりにとうとう大笑いを始めるのだった。
「……
他の龍族の側近達もイーサに釣られるように笑い始めていたが、エイネが本気でそう言っていると理解しているヴァルーザ龍王だけが無表情のままであった。
「私たち龍族を相手にその提案を出せる君は、大物だと感心はするが、たかが魔族の提案に、私たち龍族が従うとでも思っているのかね?」
「……たかが魔族ね」
ここにきてようやく龍族のイーサは、エイネに対して本音を出したようであった。
「そうだよ。たかが魔族だよ、魔族エイネ」
人型の姿をした最強の龍種である『コープパルス・ドラゴン』のイーサ龍王は、堂々と言い放つのだった。
見下された言い方をするイーサ龍王に対してエイネの顔から怒りや諦観といった表情は感じられず、まるでやるべき事をやる決心がついたような、そんな覚悟の決まった表情であった。
彼女には決して言ってはいけない禁句の言葉がある。
――それは魔族を馬鹿にしたり、見下したりするような蔑む言葉である。
イーサ龍王が言い放った『たかが魔族』という言葉は『女帝』エイネの中での許容範囲を越えた。
そして隣に居るヴァルーザ龍王は、そのエイネの表情を見てこの部屋で彼だけが恐怖に身体を震わせるのだった。
「そう。それは残念」
ヴァルーザ龍王はその言葉と同時、慌てて部屋の中で龍形態をとろうと力を示し始めた。
「ん……?」
イーサ龍王は突然のヴァルーザの行動に、眉を寄せながら玉座から立ち上がる。
「やめなさい。これ以上私を怒らせないで頂戴」
エイネはそう言いながら具現化した『鎖』を『ヴァルーザ』龍王に巻き付ける。
『ヴァルーザ龍王』は魔力を全てエイネに吸われてしまい『龍化』を防がれてしまう。そして心底怯え切った目でエイネを見る。
エイネはそんなヴァルーザに向けて言葉を発した。
「もう少し待ちなさい……」
……
……
……
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