最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第638話 導き出された一つの仮説
「成程。そのような事があったとは……」
「しっかりしてくださいよバルドさん? 一歩間違えていれば貴方も潜伏場所が『化け物』に見つかっていたかもしれずに『ユーミル』さんのようになっていたかもしれないのですから……」
しかしルビリスはそう言いつつも『アレルバレル』の世界の『魔界』はとても広い為、魔王城がある中央大陸から離れた場所であれば、派手に魔力を開放でもしていなければ簡単には見つからなかっただろう。
しかしそれでもソフィが戻ってきているというのに気が付きもせずに、自分の研究に没頭をしていたバルドに、注意をせずにはいられないルビリスだった。
「まぁもう過ぎた事を言い続けていても仕方ありません。貴方にはこの世界のとある人物を拉致して頂きたい」
「ミラ殿の命令では背くわけには行かぬな。それでどこの誰を相手にすればよいのだ?」
バルドの目が本気になったのを確認したルビリスは満足するように頷き、ミラから仰せ遣った命令の内容をバルドに話し始めるのだった。
「……、……」
「……」
「……」
その内容を『隠幕』を使って聞き耳を立てていたレアは、みるみる顔を青くしていく。
(な、何ですって! こ、これは非常にまずいわねぇ……)
『隠幕』を使って『ルビリス』達の会話を盗み聞きをしていたレアは、差し迫っている危険をようやく知るのだった。
「ミラ様も直接は仰れませんでしたが、もう実験体であるフルーフを厄介に思っている筈。例の計画で『魔神の力』を会得した今はもう、メリットよりもデメリットの方が大きい『実験体』を消す筈です」
レアは盗み聞きしている『ルビリス』の言葉の中に、自分の『親』の名前が出てきた事で身体を震わせた。
「何故洗脳が解けたかまでは分からぬが、十中八九はその『魔神』が原因じゃろうな」
ルビリスはバルドの言葉に首を縦に振る。
「私程度の考察で申し訳ありませんが、例の計画でミラ様が得る筈だった『時魔法無効化』。予定とは少し違いましたが最後にこれを得た後に、その時にフルーフの洗脳が解けたように思えるのです」
「ほう。ルビリス司令官殿の考察から辿っていくとするならば、前者の『時魔法』ではなく『無効化』の部分が影響しておるのかもしれぬな」
「最後に洗脳し直したのは少なく見積もっても数十年近く前ではありますが、それ以降は何も綻びが生じてはおりませんし、あのタイミングで免疫のようなモノが出来たとは考え難いでしょう?」
「そうじゃな。若しくはミラ殿の洗脳を施す魔瞳『金色の目』の『発動羅列』にフルーフ殿の魔神の技を『羅列化』する『新魔法』が何らかの作用を起こして『魔瞳』に対して『発動羅列』を浮かび上がらせた後に『魔神』の『無効化』が示されたとかもあり得るかの?」
つまりバルドの仮説はこうである。
長年フルーフに掛けられていたミラの『金色の目』を魔神の『時魔法無効化』の『技』を『発動羅列』に置き換える事によって得た『時魔法無効化』を無意識にフルーフが編み出した新魔法によって『金色の目』の『発動羅列』を変更して無効化してしまった。
まだこれは仮説に過ぎないが、もし『魔瞳』にさえ干渉する『無効化の魔法』をフルーフが編み出したとするならば――。
『金色の目』を含めた『魔瞳』をフルーフは全てを無効化出来る術を身につけたという事になってしまうのであった。
「……」
「……」
バルドとルビリスは互いに互いの顔を見ながら、これはまずい事だぞという表情に変えていく。
フルーフがもし仮説通りに他者の『魔瞳』を無効化する術を得た事になれば、いずれはミラの最終目標である『全魔法無効化』までを体現してしまう恐れがあるからである。
もしそうなれば『魔瞳』や『時魔法』を無効化する事など問題にならない程の危険な事である。
大賢者や大魔導士などといった『魔』に精通する存在を全て過去の存在に変えてしまうからである。
そもそも魔神の持つ『技』を『発動羅列化』して『魔法化』させるというフルーフの魔法自体が、奇想天外でとても恐ろしい新魔法だったという事に今更ながらに気づかされる。
長年操っていた事で彼が脅威の存在だと言う事を薄れさせてしまっていたが、大魔王フルーフは、類まれなる『天才』なのである。
洗脳が通用しなくなると言う事は今後、大魔王フルーフが『全魔法無効化』などというフザケタ術を得たとしても抵抗する手段がなくなってしまうのである。
そこでようやくルビリスは自分の主である『煌聖の教団』の総帥『ミラ』が言っていた事の本質に気づく。
単純に大魔王フルーフと大賢者エルシスという二人の天才が、大魔王ソフィの元へとついてしまう事になれば手が出せなくなるという簡単な話ではなく『全魔法無効化』という恐ろしい魔法を編み出されてしまえば、大賢者ミラが苦労して会得した『仮初の命』を司る魔法『仮初需生』や『復活生成』をも無効化させてしまう恐れがあるのだった。
ミラという存在を失う事でこれまで通りに『煌聖の教団』が組織として成り立つのかといわれてしまえば怪しいところだろう。
『アレルバレル』の世界や、別世界から集められた多くの癖のある大魔王達は、大賢者ミラというカリスマを持つ総帥が居る事で成り立っているのである。
「どうやら我々の任務は、予想をはるかに上回る重大な任務だということでしょうね」
「そのようだな。この組織が機能しなくなればワシのやりたい事も出来なくなる。一旦全ての計画を凍結してでもワシも協力をせねばなるまいな」
「是非そうしてください……。取り返しがつかなくなる前に……!」
どうやら『煌聖の教団』の相談役として幹部に居る大魔王『バルド』もまた、事の重大さに気づいて本腰を入れ始めるようであった。
……
……
……
「しっかりしてくださいよバルドさん? 一歩間違えていれば貴方も潜伏場所が『化け物』に見つかっていたかもしれずに『ユーミル』さんのようになっていたかもしれないのですから……」
しかしルビリスはそう言いつつも『アレルバレル』の世界の『魔界』はとても広い為、魔王城がある中央大陸から離れた場所であれば、派手に魔力を開放でもしていなければ簡単には見つからなかっただろう。
しかしそれでもソフィが戻ってきているというのに気が付きもせずに、自分の研究に没頭をしていたバルドに、注意をせずにはいられないルビリスだった。
「まぁもう過ぎた事を言い続けていても仕方ありません。貴方にはこの世界のとある人物を拉致して頂きたい」
「ミラ殿の命令では背くわけには行かぬな。それでどこの誰を相手にすればよいのだ?」
バルドの目が本気になったのを確認したルビリスは満足するように頷き、ミラから仰せ遣った命令の内容をバルドに話し始めるのだった。
「……、……」
「……」
「……」
その内容を『隠幕』を使って聞き耳を立てていたレアは、みるみる顔を青くしていく。
(な、何ですって! こ、これは非常にまずいわねぇ……)
『隠幕』を使って『ルビリス』達の会話を盗み聞きをしていたレアは、差し迫っている危険をようやく知るのだった。
「ミラ様も直接は仰れませんでしたが、もう実験体であるフルーフを厄介に思っている筈。例の計画で『魔神の力』を会得した今はもう、メリットよりもデメリットの方が大きい『実験体』を消す筈です」
レアは盗み聞きしている『ルビリス』の言葉の中に、自分の『親』の名前が出てきた事で身体を震わせた。
「何故洗脳が解けたかまでは分からぬが、十中八九はその『魔神』が原因じゃろうな」
ルビリスはバルドの言葉に首を縦に振る。
「私程度の考察で申し訳ありませんが、例の計画でミラ様が得る筈だった『時魔法無効化』。予定とは少し違いましたが最後にこれを得た後に、その時にフルーフの洗脳が解けたように思えるのです」
「ほう。ルビリス司令官殿の考察から辿っていくとするならば、前者の『時魔法』ではなく『無効化』の部分が影響しておるのかもしれぬな」
「最後に洗脳し直したのは少なく見積もっても数十年近く前ではありますが、それ以降は何も綻びが生じてはおりませんし、あのタイミングで免疫のようなモノが出来たとは考え難いでしょう?」
「そうじゃな。若しくはミラ殿の洗脳を施す魔瞳『金色の目』の『発動羅列』にフルーフ殿の魔神の技を『羅列化』する『新魔法』が何らかの作用を起こして『魔瞳』に対して『発動羅列』を浮かび上がらせた後に『魔神』の『無効化』が示されたとかもあり得るかの?」
つまりバルドの仮説はこうである。
長年フルーフに掛けられていたミラの『金色の目』を魔神の『時魔法無効化』の『技』を『発動羅列』に置き換える事によって得た『時魔法無効化』を無意識にフルーフが編み出した新魔法によって『金色の目』の『発動羅列』を変更して無効化してしまった。
まだこれは仮説に過ぎないが、もし『魔瞳』にさえ干渉する『無効化の魔法』をフルーフが編み出したとするならば――。
『金色の目』を含めた『魔瞳』をフルーフは全てを無効化出来る術を身につけたという事になってしまうのであった。
「……」
「……」
バルドとルビリスは互いに互いの顔を見ながら、これはまずい事だぞという表情に変えていく。
フルーフがもし仮説通りに他者の『魔瞳』を無効化する術を得た事になれば、いずれはミラの最終目標である『全魔法無効化』までを体現してしまう恐れがあるからである。
もしそうなれば『魔瞳』や『時魔法』を無効化する事など問題にならない程の危険な事である。
大賢者や大魔導士などといった『魔』に精通する存在を全て過去の存在に変えてしまうからである。
そもそも魔神の持つ『技』を『発動羅列化』して『魔法化』させるというフルーフの魔法自体が、奇想天外でとても恐ろしい新魔法だったという事に今更ながらに気づかされる。
長年操っていた事で彼が脅威の存在だと言う事を薄れさせてしまっていたが、大魔王フルーフは、類まれなる『天才』なのである。
洗脳が通用しなくなると言う事は今後、大魔王フルーフが『全魔法無効化』などというフザケタ術を得たとしても抵抗する手段がなくなってしまうのである。
そこでようやくルビリスは自分の主である『煌聖の教団』の総帥『ミラ』が言っていた事の本質に気づく。
単純に大魔王フルーフと大賢者エルシスという二人の天才が、大魔王ソフィの元へとついてしまう事になれば手が出せなくなるという簡単な話ではなく『全魔法無効化』という恐ろしい魔法を編み出されてしまえば、大賢者ミラが苦労して会得した『仮初の命』を司る魔法『仮初需生』や『復活生成』をも無効化させてしまう恐れがあるのだった。
ミラという存在を失う事でこれまで通りに『煌聖の教団』が組織として成り立つのかといわれてしまえば怪しいところだろう。
『アレルバレル』の世界や、別世界から集められた多くの癖のある大魔王達は、大賢者ミラというカリスマを持つ総帥が居る事で成り立っているのである。
「どうやら我々の任務は、予想をはるかに上回る重大な任務だということでしょうね」
「そのようだな。この組織が機能しなくなればワシのやりたい事も出来なくなる。一旦全ての計画を凍結してでもワシも協力をせねばなるまいな」
「是非そうしてください……。取り返しがつかなくなる前に……!」
どうやら『煌聖の教団』の相談役として幹部に居る大魔王『バルド』もまた、事の重大さに気づいて本腰を入れ始めるようであった。
……
……
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