最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第632話 戦争開始

 そして遂にスベイキアに居るイーサ龍王は、出撃命令をイルベキアのヴァルーザ龍王に発して、龍族の大陸全土に全面戦争開始の合図を告げた。

 これにより、直ぐにヴァルーザ龍王はイルベキア全土に出撃命令を発令。
 イルベキア軍のブルードラゴン達は群れを成しながら一斉に飛び立っていく。

 イルベキアの龍達が、魔人族の大陸へと向かったのを確認した後、ハイウルキアの龍族達も準備を開始する。

「いいか! 今回の戦争は魔人族との戦いだけではない! 我々ハイウルキアの忠誠心をスベイキアのイーサ龍王にお見せして更なる地位を確立させるのだ!!」

「「オオーッ!!」」

 ハイウルキアの民衆たちは、戦争前のガウル龍王の演説に大声で応える。

「イルベキアよりも多くの敵を撃ち落とせ! 燃やし尽くせ! 我らハイウルキアの恐ろしさを、魔人共に思い知らせるのだ!!」

「「オオーッ!!」」

「出撃っ!」

 ガウル龍王の出撃命令によって、ハイウルキア全軍も空を飛翔し出発する。
 ブルードラゴンが空を覆い尽くし、地上にその影を見せ続けるのだった。

 ……
 ……
 ……

「イルベキアとハイウルキアの軍が出撃したか」

 スベイキアの龍王『イーサ』は膨大な数の同胞達が、遥か西の魔人達の住む大陸へと飛び立っていく姿を見ながらそう告げる。

 スベイキアでも自国の龍族『コープパルス・ドラゴン』達が多く待機をしているが、正直に言って『イルベキア』軍と『ハイウルキア』の軍だけで魔人達を全滅させる事が出来るだろうと『イーサ』龍王は考えていた。

 数の上では魔人族には遥かに劣るが、魔人族と龍族とでは大きな力の差がある。
 ここ数百年の間で魔人達も『一流戦士』とか呼ばれる個体が出てきており、少しは龍族の強さに近づいてきたとはいえたが、それでもまだまだ龍族と魔人族の間には覆せない差がある。

 『』という魔人族が使う技は、龍族の一部が纏う『緑のオーラ』に似た性質を持ち、元々の戦力値を大きく上昇させる事が出来るようだが、それでも精々が戦力値2億から3億前後であり『ブルードラゴン』達で十分に対応が可能であると考える。

 ブルードラゴン達であれば、少しは手こずる事になるかもしれないが、ヴァルーザ龍王と、ガウル龍王が参列している以上は負けはないだろう。

 彼らもブルードラゴンの身ではあるが『のオーラ』を纏える龍種である。
 スクアードを纏う『一流戦士』とやらが相応の強さを持っているとはいっても、龍王達の力と比べてもまだまだ開きがある。

 しかしそこまで考えたイーサ龍王ではあるが、少しだけ懸念に思う事があった。

(……イルベキアから出したブルードラゴン達は数百体はいた筈だが、一体も戻ってこないというのが気になるところだ)

 魔人達の『一流戦士』とやらの中にはもしかしたら『』のように戦力値を向上させる『戦士』が紛れているのかもしれない。

 これだけの龍族たちが向かった以上、そんな戦士が一人二人紛れていたとしても、どうしようもないであろうが、気がかりな事には変わりがなかった。

(強い個体が居るのだとしたら、ヴァルーザ龍王に捕えさせて置くのも悪くはないかもしれないな)

 既に戦争で龍族が負ける事などありえないと判断しているイーサ龍王は、魔人族の戦士をその目で見ておきたいと考え始めるのだった。

 ……
 ……
 ……

 その頃カストロL・Kにあるエイネのコテージの中でフルーフは、レアの魔力を追い続けていた。
 どうやら少し前まで『アレルバレル』の世界に居た事は間違いないが、何か理由があったのか別世界へと跳んだようだった。何とかそこまでレアの魔力を追尾する事が出来たが、どうやらレアは何故か魔力を隠しながら『』をしているようで、ダールの世界のイザベラ城に居た時よりも遥かに探すのが困難になっていた。

「そうか『隠幕ハイド・カーテン』を使っておるのか。一体何に巻き込まれておるのだレアよ。お主は無事なのか……?」

 フルーフはレアの事を考えて心配でを抑えながら、必死にレアの魔力を探索し続けるのであった。

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