最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第624話 時間との戦い
フルーフとエイネが居るコテージに、次々と魔人族達が向かってくるのをエイネ達は感知した。
「どうやらさっきの者達が、魔人族が支配する国の軍の指揮官達を呼んだようです」
「ふむ。お主が言うておった通りになったようだ。やれやれ相当な数のようだ」
こちらに向かってくる魔人族は、どうやらこの国の本軍のようであった。
先程怯えさせられた魔人族が本軍に伝えたのだろうが、予想をしていたエイネも流石にこれだけの数を呼び寄せるとは思わなかった。
どうやら魔族に舐められた態度をとられた事で、矜持を最優先とする魔人族は我慢がならなかったのだろう。そしてそれに加えてこの場所で多くの『龍族』を相手に『魔族』が撃退したという事も関係はありそうだ。
放っておいてもこの場所には、今度は龍族の同胞達が報復に来ると魔人の軍は考えたのだろう。何はともあれこの場所が、今後の戦場になる事は避けようがなさそうだった。
「こうなっては仕方あるまい? この世界に出来るだけ干渉をしたくないという、お主の気持ちも分かるが、放っておいても奴らは攻撃を仕掛けてくるだろう」
フルーフにとって今一番重要な事は、愛娘であるレアに会う事である。
エイネのソフィに対する忠誠心は尊敬できるが、最優先事項を省みるならば、この世界の魔人族の命を奪ってでもフルーフは『アレルバレル』の世界へ、向かわねばならない。
「はい。分かっています! ですが『フルーフ』様は手を出さないで下さい。こちらに向かってくる魔人族は全て武装解除を目指して、無効化させて生かせます」
とても現実的な言葉とは思えない事を言い始めるエイネに、フルーフは眉を寄せる。
「馬鹿なことを言ってもらっては困るぞ? 『金色の目』で操ろうと思っているのだろうが、ここに集まってきている者達は数十体から数百体規模程度ではなさそうだ。流石に全ての者達を操る事など出来ぬ。覚悟を決めて抑止のためには数体は命を奪う他はないじゃろう」
「フルーフ様。私は魔人たちを操ろうとは考えていません。言葉通りに全て無力化させます」
この期に及んでこの魔族は、一体何を言っているのかと『フルーフ』は天井を仰ぎ見るのだった。
魔瞳『金色の目』を使って操ることもせずに、数千からもしかすると、それ以上いるであろうこちらに向かってくる魔人族の軍。その全てを命を奪わずに無力化させるなど出来る筈が無い。フルーフが世迷言だと、考えるのも仕方がないことだった。
しかし私を信じて欲しいといわんばかりに、エイネはフルーフを険しい顔で睨む。
フルーフはエイネを見つめ返していたが、やがて溜息を吐いて口を開いた。
「分かった。ここの事はお主に全て任せよう。しかしお主の思い通りに行かぬと分かったならば、ワシはワシのやりたいようにやらせてもらうが……。それでもよいかの?」
「はい、もちろんです! ですがご無理を承知で言わせてください。アレルバレルの世界へと向かわれるのでしたら私も必ず連れて行っていただきたいのです……!」
「ああ。何度も言うがそれはもちろんだとも。お主は我が友人の配下だ。最初からお主が希望する通りに連れていくつもりだった」
「あ、ありがとうございます!」
険しい表情を浮かべていたエイネはようやく、元の世界へと戻る事の出来る手段を手に入れる事が出来て嬉しそうな表情を浮かべるのだった。
「しかしワシはヌーやミラといった連中に狙われておる。ワシの魔力を必死に探知して探しているあやつらの事じゃ『概念跳躍』程の大規模な『魔力』を使えば必ず奴らに見つかるじゃろう。つまり高確率で奴らと交戦になる事も考えておいてくれよ?」
フルーフの口から『組織』の者達の総帥の名前が出た事で、再びエイネは険しい表情へと変えていく。
「分かりました。貴方の魔力が少ない事は理解しています。もし『アレルバレル』の世界へ戻る事が出来れば、あとは……。私が命を懸けて『ソフィ』様の元まで貴方を護衛します!」
そう告げたエイネは、手を握りしめて覚悟を決めるのであった。
そして二人は遂にこの場所へ大勢の魔力が集まってくるのを感知して、同時に同じ方角に『漏出』を放つのであった。
「ああ。向こうについたら頼りにさせてもらう。それではここはお主に任せるとしようか」
「御意!」
フルーフは『時魔法』の為の『スタック』を始めるのだった。
……
……
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「どうやらさっきの者達が、魔人族が支配する国の軍の指揮官達を呼んだようです」
「ふむ。お主が言うておった通りになったようだ。やれやれ相当な数のようだ」
こちらに向かってくる魔人族は、どうやらこの国の本軍のようであった。
先程怯えさせられた魔人族が本軍に伝えたのだろうが、予想をしていたエイネも流石にこれだけの数を呼び寄せるとは思わなかった。
どうやら魔族に舐められた態度をとられた事で、矜持を最優先とする魔人族は我慢がならなかったのだろう。そしてそれに加えてこの場所で多くの『龍族』を相手に『魔族』が撃退したという事も関係はありそうだ。
放っておいてもこの場所には、今度は龍族の同胞達が報復に来ると魔人の軍は考えたのだろう。何はともあれこの場所が、今後の戦場になる事は避けようがなさそうだった。
「こうなっては仕方あるまい? この世界に出来るだけ干渉をしたくないという、お主の気持ちも分かるが、放っておいても奴らは攻撃を仕掛けてくるだろう」
フルーフにとって今一番重要な事は、愛娘であるレアに会う事である。
エイネのソフィに対する忠誠心は尊敬できるが、最優先事項を省みるならば、この世界の魔人族の命を奪ってでもフルーフは『アレルバレル』の世界へ、向かわねばならない。
「はい。分かっています! ですが『フルーフ』様は手を出さないで下さい。こちらに向かってくる魔人族は全て武装解除を目指して、無効化させて生かせます」
とても現実的な言葉とは思えない事を言い始めるエイネに、フルーフは眉を寄せる。
「馬鹿なことを言ってもらっては困るぞ? 『金色の目』で操ろうと思っているのだろうが、ここに集まってきている者達は数十体から数百体規模程度ではなさそうだ。流石に全ての者達を操る事など出来ぬ。覚悟を決めて抑止のためには数体は命を奪う他はないじゃろう」
「フルーフ様。私は魔人たちを操ろうとは考えていません。言葉通りに全て無力化させます」
この期に及んでこの魔族は、一体何を言っているのかと『フルーフ』は天井を仰ぎ見るのだった。
魔瞳『金色の目』を使って操ることもせずに、数千からもしかすると、それ以上いるであろうこちらに向かってくる魔人族の軍。その全てを命を奪わずに無力化させるなど出来る筈が無い。フルーフが世迷言だと、考えるのも仕方がないことだった。
しかし私を信じて欲しいといわんばかりに、エイネはフルーフを険しい顔で睨む。
フルーフはエイネを見つめ返していたが、やがて溜息を吐いて口を開いた。
「分かった。ここの事はお主に全て任せよう。しかしお主の思い通りに行かぬと分かったならば、ワシはワシのやりたいようにやらせてもらうが……。それでもよいかの?」
「はい、もちろんです! ですがご無理を承知で言わせてください。アレルバレルの世界へと向かわれるのでしたら私も必ず連れて行っていただきたいのです……!」
「ああ。何度も言うがそれはもちろんだとも。お主は我が友人の配下だ。最初からお主が希望する通りに連れていくつもりだった」
「あ、ありがとうございます!」
険しい表情を浮かべていたエイネはようやく、元の世界へと戻る事の出来る手段を手に入れる事が出来て嬉しそうな表情を浮かべるのだった。
「しかしワシはヌーやミラといった連中に狙われておる。ワシの魔力を必死に探知して探しているあやつらの事じゃ『概念跳躍』程の大規模な『魔力』を使えば必ず奴らに見つかるじゃろう。つまり高確率で奴らと交戦になる事も考えておいてくれよ?」
フルーフの口から『組織』の者達の総帥の名前が出た事で、再びエイネは険しい表情へと変えていく。
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