最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第623話 忠誠心と結界
「フルーフ様、魔力はどれくらい回復されていますか?」
コテージの中へと戻ったエイネは、ベッドの上で寝ているフルーフに声を掛ける。
「枯渇による眩暈などはなくなったが、全体の二割程と言ったところじゃな」
フルーフは目を瞑りながら自分の感覚からだいたいの残量魔力を判断する。
「そうですか。ではもう少しお休みになられてください」
エイネはそう言うとこのコテージとその周囲一帯に『結界』を張った様子だった。
「さっきの奴らの事ならもう問題はないんじゃないか? お主の脅しに相当参っていたようじゃが」
「いえ……。魔人族が我々魔族に脅されたという事実が問題なのです。先程の奴らの上役や軍の上層部がここでの龍族の襲撃があった事は知っている筈。そうなればここに調査をしに来るのは、時間の問題です。私の事はすぐに伝わり、軍は私を反逆罪で収監。もしくは攻撃をしてくることでしょう」
「成程『世界』が変われば『常識』も変わる。つまりはそういう事じゃな」
「はい。私はこの世界の常識を覆すような干渉はしたくありません。貴方の魔力が回復されるまで、奴らの攻撃から耐え忍びます」
どうやらエイネはこの場所を襲撃されてもやり返す事は一切せずに、フルーフの魔力が回復次第、この世界からこのまま立ち去ろうとしているようだった。
「やはりお主はソフィの配下じゃな。本来の魔族とは違う性格をしておる」
「そうかもしれませんね。ソフィ様の教えを守り、ソフィ様の望みを叶える事こそが私たちの本懐『我ら九大魔王』は、その為に存在していますので」
フルーフはエイネの目を見て、本気の覚悟を感じ取った。
「素晴らしい忠誠心じゃ」
フルーフはそう言うと起こしていた身体を倒して、再びベッドで横になった。
「ありがとうございます」
エイネはそう言い残すと、フルーフに頭を下げるとそのまま部屋を出て行った。
……
……
……
エイネが出て行った部屋の中で『フルーフ』は『エイネ』の結界の規模を探る。
「ふーむ。やはり彼女は魔法を得意とする魔族ではないようじゃな」
エイネがこの周囲一帯に張った結界の規模は『魔王・中位領域』。
戦力値が5000万程の戦力値を持つ者が相手であれば、十分過ぎる程の結界ではあるが、戦力値が1億を越える魔人族や、龍族といった種族の攻撃であれば僅か数度の攻撃で結界に亀裂が入り、決して長くはない時間で、結界が破壊されてしまうレベルである。
そもそもこの結界の本来の役目は敵意を持った存在が、結界を施した建物などに侵入した時、その存在の魔力を感知したりするのが目的の為に、あくまで攻撃を防ぐといった事はおまけ程度でしかない。
敵が放つ戦術級と呼べる魔法を完全に防ぎきってしまう『結界』など、本来は張れる物ではないのである。
『ディアトロス』や『ブラスト』。そして『フルーフ』の結界のように、敵の大魔王領域に居る魔族が全力で放つ魔法を無効化する事は、まさに常軌を逸しているモノなのである。
兎にも角にも今のエイネの結界では心許ないといえる。フルーフは身体を起こして僅かな『魔力』を使って『漏出』を使う。
――使う範囲は今フルーフが居るこの大陸全土。
「成程。この結界をあっさりと突破し得る存在はやはり多いな。武力抗争をするならば、敵勢力全てを沈黙させてしまえば問題はないが、こちらから攻撃をせずに耐えるだけというのであれば、やはりこの『結界』のままでは問題があるといえる」
もちろん結界が破壊されたとして、この世界の魔人族や龍族の攻撃で『エイネ』や『フルーフ』が命を落とす事はない。しかしそれでもフルーフの魔力が回復をするまでとなると、かなりの時間が掛かってしまう事だろう。
余り時間を掛け過ぎるとミラが、この場所を割り出して接近を許してしまうだろう。むしろそちらの方が問題であるといえた。
「一緒に連れていくとなるとやはり、生命を削って使うほかにないかもしれぬな」
『概念跳躍』は自分だけを跳ばすだけでもかなりの魔力を消費する魔法だが、他者を運ぶとなると一人の時とは、比較にならない程の魔力消費がある。
『聖動捕縛』を解いた時であればまだ『魔力』に相当の余裕は残っていたがその後の戦闘で『死神皇』を呼び出した事で、残されていたその『魔力』は枯渇してしまっていた。
現在はここで休んでいた事でようやく全体の二割程まで回復は果たしたが、それでも『概念跳躍』で二人分を『アレルバレル』の世界に『世界間移動』するにはまだまだ魔力が足りない。
『大魔王最上位』領域に長い間、身を置いてきたフルーフであれば、必要な魔力の分量を推し量り、魔法を使うのに必要な生命を浪費しても死ぬような真似をする事はないだろう。
しかしそれでも跳んだ先は『アレルバレル』の世界なのである。現在居る『アサ』の世界とは違い、あの世界は決して侮る事は出来ない世界の為に、ギリギリの生命で魔力が枯渇した状態で辿り着いたところでどうにもならないという事を考える。
フルーフはその事を踏まえながら、二人分の『世界間移動』が可能かどうかをゆっくりと計算し始めるのだった。
コテージの中へと戻ったエイネは、ベッドの上で寝ているフルーフに声を掛ける。
「枯渇による眩暈などはなくなったが、全体の二割程と言ったところじゃな」
フルーフは目を瞑りながら自分の感覚からだいたいの残量魔力を判断する。
「そうですか。ではもう少しお休みになられてください」
エイネはそう言うとこのコテージとその周囲一帯に『結界』を張った様子だった。
「さっきの奴らの事ならもう問題はないんじゃないか? お主の脅しに相当参っていたようじゃが」
「いえ……。魔人族が我々魔族に脅されたという事実が問題なのです。先程の奴らの上役や軍の上層部がここでの龍族の襲撃があった事は知っている筈。そうなればここに調査をしに来るのは、時間の問題です。私の事はすぐに伝わり、軍は私を反逆罪で収監。もしくは攻撃をしてくることでしょう」
「成程『世界』が変われば『常識』も変わる。つまりはそういう事じゃな」
「はい。私はこの世界の常識を覆すような干渉はしたくありません。貴方の魔力が回復されるまで、奴らの攻撃から耐え忍びます」
どうやらエイネはこの場所を襲撃されてもやり返す事は一切せずに、フルーフの魔力が回復次第、この世界からこのまま立ち去ろうとしているようだった。
「やはりお主はソフィの配下じゃな。本来の魔族とは違う性格をしておる」
「そうかもしれませんね。ソフィ様の教えを守り、ソフィ様の望みを叶える事こそが私たちの本懐『我ら九大魔王』は、その為に存在していますので」
フルーフはエイネの目を見て、本気の覚悟を感じ取った。
「素晴らしい忠誠心じゃ」
フルーフはそう言うと起こしていた身体を倒して、再びベッドで横になった。
「ありがとうございます」
エイネはそう言い残すと、フルーフに頭を下げるとそのまま部屋を出て行った。
……
……
……
エイネが出て行った部屋の中で『フルーフ』は『エイネ』の結界の規模を探る。
「ふーむ。やはり彼女は魔法を得意とする魔族ではないようじゃな」
エイネがこの周囲一帯に張った結界の規模は『魔王・中位領域』。
戦力値が5000万程の戦力値を持つ者が相手であれば、十分過ぎる程の結界ではあるが、戦力値が1億を越える魔人族や、龍族といった種族の攻撃であれば僅か数度の攻撃で結界に亀裂が入り、決して長くはない時間で、結界が破壊されてしまうレベルである。
そもそもこの結界の本来の役目は敵意を持った存在が、結界を施した建物などに侵入した時、その存在の魔力を感知したりするのが目的の為に、あくまで攻撃を防ぐといった事はおまけ程度でしかない。
敵が放つ戦術級と呼べる魔法を完全に防ぎきってしまう『結界』など、本来は張れる物ではないのである。
『ディアトロス』や『ブラスト』。そして『フルーフ』の結界のように、敵の大魔王領域に居る魔族が全力で放つ魔法を無効化する事は、まさに常軌を逸しているモノなのである。
兎にも角にも今のエイネの結界では心許ないといえる。フルーフは身体を起こして僅かな『魔力』を使って『漏出』を使う。
――使う範囲は今フルーフが居るこの大陸全土。
「成程。この結界をあっさりと突破し得る存在はやはり多いな。武力抗争をするならば、敵勢力全てを沈黙させてしまえば問題はないが、こちらから攻撃をせずに耐えるだけというのであれば、やはりこの『結界』のままでは問題があるといえる」
もちろん結界が破壊されたとして、この世界の魔人族や龍族の攻撃で『エイネ』や『フルーフ』が命を落とす事はない。しかしそれでもフルーフの魔力が回復をするまでとなると、かなりの時間が掛かってしまう事だろう。
余り時間を掛け過ぎるとミラが、この場所を割り出して接近を許してしまうだろう。むしろそちらの方が問題であるといえた。
「一緒に連れていくとなるとやはり、生命を削って使うほかにないかもしれぬな」
『概念跳躍』は自分だけを跳ばすだけでもかなりの魔力を消費する魔法だが、他者を運ぶとなると一人の時とは、比較にならない程の魔力消費がある。
『聖動捕縛』を解いた時であればまだ『魔力』に相当の余裕は残っていたがその後の戦闘で『死神皇』を呼び出した事で、残されていたその『魔力』は枯渇してしまっていた。
現在はここで休んでいた事でようやく全体の二割程まで回復は果たしたが、それでも『概念跳躍』で二人分を『アレルバレル』の世界に『世界間移動』するにはまだまだ魔力が足りない。
『大魔王最上位』領域に長い間、身を置いてきたフルーフであれば、必要な魔力の分量を推し量り、魔法を使うのに必要な生命を浪費しても死ぬような真似をする事はないだろう。
しかしそれでも跳んだ先は『アレルバレル』の世界なのである。現在居る『アサ』の世界とは違い、あの世界は決して侮る事は出来ない世界の為に、ギリギリの生命で魔力が枯渇した状態で辿り着いたところでどうにもならないという事を考える。
フルーフはその事を踏まえながら、二人分の『世界間移動』が可能かどうかをゆっくりと計算し始めるのだった。
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