最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第609話 圧倒的な差

「クソッ! あの『死神』の野郎は俺の使役した『死神』共でも止められねぇっ! てめぇの魔法の効果で底上げされてる上に俺は『仮初増幅イフェメール・アンプ』を使っているんだぞ!」

 前回の戦いで格付けが済んだ筈と思っているヌーは、自分より格が低い筈のフルーフが使役したに、自分が使役した死神が相手にもならないのを見て苛立ちを募らせる。

「落ち着けヌー。あの死神はどうやらお前の呼び出している死神と、神格が違いすぎるようだ」

「黙りやがれミラ! 俺は大魔王ヌーだぞ!? あらゆる世界を含めて上位の世界である『アレルバレル』で、ソフィを除けば俺がなんだ! たかが魔力が高いだけの存在に負けてたまるかよ!」

 ヌーはそう言い放つと視線をミラから外して『スタック』させた極大魔法をフルーフ達に放つ。

 ――神域魔法、『闇の閃日ダーク・アナラービ・フォス』。

 『闇の閃日ダーク・アナラービ・フォス』は、ソフィやブラストといった大魔王が好んで使う極大魔法『普遍破壊メギストゥス・デストラクション』級の殺傷能力を持つ、ヌーが編み出した極大魔法である。

 『闇の閃日ダーク・アナラービ・フォス』は、戦力値が百億未満の『大魔王領域』の極大魔法程度であれば、その相手の攻撃魔法、極大魔法を一瞬で飲み込んでしまう程の殲滅力である。

 しかも今はミラの補助魔法と共に自身の魔力を増幅させる『仮初増幅イフェメール・アンプ』が使われている為、その威力は計り知れないものとなっている。

 『死神皇』は自身に刃向かう死神達を全て幽世へと還らせた後、フルーフに向けられたヌーの極大魔法『闇の閃日ダーク・アナラービ・フォス』からフルーフを守る為に『高速転移』で、フルーフの前に立ちはだかる。

 そして『死神皇』は持っている大鎌をクルクル回し始めた後に、大鎌を振り切る態勢を取りながらゆっくりと口を開いた。

 ――周囲に低い声が響き渡る。

「――」(無駄な事だ)

 その言葉と同時に、迫りくる『ヌー』の魔法に向けて思いきり振り切った。

 死神皇の大鎌はヌーの迫りくる『闇の閃日ダーク・アナラービ・フォス』だけではなく、空間そのものにまで亀裂を入れて衝撃波はそのままヌーの元にまで向かっていった。

 呆けた目で『死神皇』を見ていたヌーは、その衝撃波に対応しようともせずに、立ち尽くしている。

「何をしているんだ! 死にたいのかヌー!」

 大賢者ミラはヌーの元へ移動した後、ヌーの襟首を掴んで『高速転移』で『死神皇』が放った衝撃波から身を躱す。

 その『死神皇』が放った衝撃波はヌーの居た場所を突き抜けてそのまま勢い弱まらずに、イザベラ城を真っ二つに斬り裂いていった。

「ちっ! 所詮は『だと思っていたが、どうやら考えを改め無ければならないようだ」

 ミラは振り返りながら勢いそのままに、通り過ぎていった衝撃波を見送りながらそう言った。

「見つけたぞ!!」

 『死神皇』と『ヌー』の戦いなど全く気にせずに、居る世界の違う『愛娘レア』の魔力を探知する為に『漏出サーチ』を続けていたフルーフは、何と『アレルバレル』の世界に居るレアの魔力を『ダール』の世界から探知するという事をやってのけてみせるのだった。

「『死神皇』! ワシは今から『時魔法タイム・マジック』で別世界へと移動する。完全にその間は身動きがとれぬ! ワシの命お前に預けるぞ!」

「――」(カカカッ! 死神に命を預けるとは皮肉がきいておるなぁ。大魔王よ!)

「――」(任せるがよいぞ。親愛なる大魔王フルーフ!)

 『死神皇』は再び大鎌を回したかと思うと鎌の柄の部分を大地に突き立てる。

「――!」(契約に基づきを全霊を持って死神の王たるこのワシが守ってみせよう!)

 『死神皇』が両手に魔力を込めると、新たにが姿を見せ始めた。

 一体目はミイラ化している馬に跨り『』。

 二体目はで、更には死神皇よりも大きく長い鎌を両手でしっかりと持った『小柄な女型の死神』。

 互いに『死神皇』に呼び出された死神だが、存在感が先程ヌーが呼び出した数十体の死神とは明らかに違う。

 ――それもその筈。この二柱は『』と呼ばれる存在で『死神』の中でも最上位に位置する『』であった。

「――」(よくきた。お前達は大魔王フルーフを死守せよ)

「――」(分かりましたよ。

「――」(仰せのままに。

 『死神皇』が呼び出したこの二柱の『死神貴族』達は、ヌーが『魔法』で契約をしている死神達とは違って、直接この『死神貴族』達が契約をしてもいいだろうと認めなければ、たとえ膨大な魔力を有している『魔族』達であっても『契約』を行えない程の『自尊心』を持っている。

 そんな『死神貴族』達が『死神皇』の命令とはいっても、同じ世界に同時に二柱が姿を現すのは前代未聞の出来事であった。

 ――それこそ遡って省みてもこの場に居る長寿の『魔族』や『元人間』であっても記憶に存在しない程に。

 フルーフが『概念跳躍アルム・ノーティア』の詠唱に入ると『』達は、詠唱の為に無防備となっている『フルーフ』を守るように周囲に並び立った。

 二柱の死神達は黒いオーラで身を纏い、こちらを見ている大賢者ミラを敵と判断する。
 そして『死神皇』は地面に突き立てていた鎌を手に取り始める。

「――」(障害を取り除く)

 その言葉と共に『』もまた『』を纏い始めるのだった。

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