最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第601話 血の気の多い魔族
アレルバレルの世界の『人間界』。ダイス大陸でミラの到着を待っていた大魔王『リザート』達の元に『ダール』の世界から使者が戻ってきた。
「何だと? もう一度言ってくれないか?」
リザートはミラがこの場に来るものだと考えていたが、そのミラの姿はなく、そして代わりに現れた使者から聞かされた言葉に耳を疑う事となった。
「はい。例の化け物を見張る部隊を編成し、ネイキッド様かリザート様がその部隊の指揮を執り、残りの者達は速やかに『ダール』の世界へと移動させよとのミラ様からのご命令です」
これから『煌聖の教団』の誘いを断ったステア達を倒そうと、戦争の準備を整えていたリザートは眉を寄せて溜息を吐いた。
「魔王軍の数が少ない今が好機だというのに、むざむざと一万以上居る中立の魔族達を魔王軍に合流させる事を許すのは口惜しいな」
如何に化け物が強いとはいっても、総帥である大賢者ミラや幹部の者達に加えて数十万の大魔王の領域に居る魔族達が一斉に魔王軍達に仕掛ければ勝機は生まれると考えていたリザートは、落胆の色を隠し切れなかった。
「やれやれ。ミラ様のご命令だぞ、諦めろリザート」
「ね、ネイキッド様!」
いつの間にこの場所へ来たのか。魔王城付近の大陸で化け物達の動向を窺っていた『本隊』の総隊長であるネイキッドがこの場所に現れるのだった。
彼も使者からの話を聞いていたのだろう。
リザートを諭すような言葉を告げた後、ネイキッドはこの場所に集まっている魔族達の様子を見る。数秒程辺りを見ていたネイキッドは、何かを決心するようにリザートに口を開いた。
「よし……! 私が『ダール』の世界へと向かうから、お前が代わりにこいつらの指揮を執れ」
「わ、分かりました」
「お前にある程度の数の者達を預けてやろう。そいつらはお前が好きに使っていいぞ? 私がミラ様に伝えておこう」
「そ、それは本当ですか!」
その言葉にニヤリと笑みを浮かべるリザートだった。
そしてネイキッドはそのリザートの笑みに呆れるような表情を浮かべたが、やがてこの場に集まっていた『本隊』の三分の二程の数を引き連れて『ダール』の世界へと向かっていった。
そしてこの場に残った好戦的な者達の指揮を執る事となったリザートは、ネイキッドの好きなようにしていいという言葉に内に滾っていたモノを呼び起こす。
イリーガルとリーシャという強大な力を持った大魔王は居るが、この場に残った大魔王は全体の三分の一程だとはいっても、中立の者達の数より大魔王領域の者達が数倍以上残っている。
同じ化け物であっても『九大魔王』と『ソフィ』とでは比較にならないと考えるリザートにとって、再び訪れた好機に興奮するのだった。
そして最西端の大陸で中立の魔族達と合流を果たしたイリーガル達は、これからソフィの待つ中央大陸へと移動を開始しようとしていた。
「それではリーシャ様、イリーガル様。こちらの準備は整いましたので、いつでも飛び立てます」
ステアは仲間達を一瞥した後、ここまで護衛をしてくれたイリーガルにそう告げる。
「分かった。ソフィ様の元へ向かう前に一応伝えておくが、ここに来る前に明らかな尾行の気配を感じていた。お前達が使っていた結界のように全く魔力を感知出来なかったが、恐らくは間違いはないだろう」
ステアも勿論理解はしているが、黙ってイリーガルの言葉に頷いて見せる。
「奴らの目的は分かってはいないが、どうせ碌な事では無いだろう。そしてもし奴らが攻撃を仕掛けてくるとしたら、ソフィ様の元へ合流をする前。つまりこのタイミングで襲ってくるという事も考えておかねばならぬ」
ステアはこくりと頷き、周りの者達も唾を飲んで覚悟を決めた顔をする。
「お前達が俺達魔王軍と行動を共にするというのならば、戦う事も当然してもらわねばならない。お前達は今日まで中立の立場だった者達だが、襲ってくる連中からすれば、もう従わなければ殺すつもりで襲ってくるだろう。それは覚悟しておいてほしい」
「皆、聞いての通りだ。私たちは魔王軍、いやソフィ様についていくと決めたのだから、これからは『煌聖の教団』を明確な敵として扱う。襲ってくる連中には、躊躇無しに反撃をしてもらう!」
中立のリーダーの立場だったステアがそう言うと、一万の軍勢は怒号のような声をあげて返事をする。
――どうやら肚は決まったらしい。
イリーガルはそう確信してリーシャの顔を見る。リーシャも笑顔で頷く。
リーシャ達は護衛をする彼らの気持ちを知った事で動きやすくなった。
もし仮にこちら側を襲ってくる連中に対して生半可な覚悟でいられたならば、護衛出来るものも出来なくなるが、しっかりとした覚悟を見せてもらった事で動きやすくなるからである。
ここから中央大陸までは相当に長い道のりである。
イリーガル達だけでも『高速転移』を用いて、ここまで結構な時間を要した。
今度は一万の軍勢を率いて、移動を開始しなければならない。
ディアトロスやブラストであれば、一万の軍勢全員に『移動呪文』を使う事も出来ただろうが、残念だがイリーガル達では、そんな大規模な移動呪文は使えない。
ここは空を飛んで普通に移動をするのが、一番間違いがないだろう。そう考えたイリーガルはオーラを纏い始める。
「よし、それでは移動を開始するが……。いいな?」
イリーガルがそういうとステアが頷き、そしてその周囲に居る者達も『青のオーラ』を纏い始めるのだった。
――これより彼らによる魔界の中央大陸までの長い行軍が始まるのであった。
「何だと? もう一度言ってくれないか?」
リザートはミラがこの場に来るものだと考えていたが、そのミラの姿はなく、そして代わりに現れた使者から聞かされた言葉に耳を疑う事となった。
「はい。例の化け物を見張る部隊を編成し、ネイキッド様かリザート様がその部隊の指揮を執り、残りの者達は速やかに『ダール』の世界へと移動させよとのミラ様からのご命令です」
これから『煌聖の教団』の誘いを断ったステア達を倒そうと、戦争の準備を整えていたリザートは眉を寄せて溜息を吐いた。
「魔王軍の数が少ない今が好機だというのに、むざむざと一万以上居る中立の魔族達を魔王軍に合流させる事を許すのは口惜しいな」
如何に化け物が強いとはいっても、総帥である大賢者ミラや幹部の者達に加えて数十万の大魔王の領域に居る魔族達が一斉に魔王軍達に仕掛ければ勝機は生まれると考えていたリザートは、落胆の色を隠し切れなかった。
「やれやれ。ミラ様のご命令だぞ、諦めろリザート」
「ね、ネイキッド様!」
いつの間にこの場所へ来たのか。魔王城付近の大陸で化け物達の動向を窺っていた『本隊』の総隊長であるネイキッドがこの場所に現れるのだった。
彼も使者からの話を聞いていたのだろう。
リザートを諭すような言葉を告げた後、ネイキッドはこの場所に集まっている魔族達の様子を見る。数秒程辺りを見ていたネイキッドは、何かを決心するようにリザートに口を開いた。
「よし……! 私が『ダール』の世界へと向かうから、お前が代わりにこいつらの指揮を執れ」
「わ、分かりました」
「お前にある程度の数の者達を預けてやろう。そいつらはお前が好きに使っていいぞ? 私がミラ様に伝えておこう」
「そ、それは本当ですか!」
その言葉にニヤリと笑みを浮かべるリザートだった。
そしてネイキッドはそのリザートの笑みに呆れるような表情を浮かべたが、やがてこの場に集まっていた『本隊』の三分の二程の数を引き連れて『ダール』の世界へと向かっていった。
そしてこの場に残った好戦的な者達の指揮を執る事となったリザートは、ネイキッドの好きなようにしていいという言葉に内に滾っていたモノを呼び起こす。
イリーガルとリーシャという強大な力を持った大魔王は居るが、この場に残った大魔王は全体の三分の一程だとはいっても、中立の者達の数より大魔王領域の者達が数倍以上残っている。
同じ化け物であっても『九大魔王』と『ソフィ』とでは比較にならないと考えるリザートにとって、再び訪れた好機に興奮するのだった。
そして最西端の大陸で中立の魔族達と合流を果たしたイリーガル達は、これからソフィの待つ中央大陸へと移動を開始しようとしていた。
「それではリーシャ様、イリーガル様。こちらの準備は整いましたので、いつでも飛び立てます」
ステアは仲間達を一瞥した後、ここまで護衛をしてくれたイリーガルにそう告げる。
「分かった。ソフィ様の元へ向かう前に一応伝えておくが、ここに来る前に明らかな尾行の気配を感じていた。お前達が使っていた結界のように全く魔力を感知出来なかったが、恐らくは間違いはないだろう」
ステアも勿論理解はしているが、黙ってイリーガルの言葉に頷いて見せる。
「奴らの目的は分かってはいないが、どうせ碌な事では無いだろう。そしてもし奴らが攻撃を仕掛けてくるとしたら、ソフィ様の元へ合流をする前。つまりこのタイミングで襲ってくるという事も考えておかねばならぬ」
ステアはこくりと頷き、周りの者達も唾を飲んで覚悟を決めた顔をする。
「お前達が俺達魔王軍と行動を共にするというのならば、戦う事も当然してもらわねばならない。お前達は今日まで中立の立場だった者達だが、襲ってくる連中からすれば、もう従わなければ殺すつもりで襲ってくるだろう。それは覚悟しておいてほしい」
「皆、聞いての通りだ。私たちは魔王軍、いやソフィ様についていくと決めたのだから、これからは『煌聖の教団』を明確な敵として扱う。襲ってくる連中には、躊躇無しに反撃をしてもらう!」
中立のリーダーの立場だったステアがそう言うと、一万の軍勢は怒号のような声をあげて返事をする。
――どうやら肚は決まったらしい。
イリーガルはそう確信してリーシャの顔を見る。リーシャも笑顔で頷く。
リーシャ達は護衛をする彼らの気持ちを知った事で動きやすくなった。
もし仮にこちら側を襲ってくる連中に対して生半可な覚悟でいられたならば、護衛出来るものも出来なくなるが、しっかりとした覚悟を見せてもらった事で動きやすくなるからである。
ここから中央大陸までは相当に長い道のりである。
イリーガル達だけでも『高速転移』を用いて、ここまで結構な時間を要した。
今度は一万の軍勢を率いて、移動を開始しなければならない。
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