最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第597話 運命を左右する判断
『ダール』の世界にあるイザベラ城。
現在『レパート』の世界の支配者であったフルーフは、神聖魔法である『聖動捕縛』の効力が付与された枷をつけられた状態で、城の地下牢に幽閉されていた。
原因はまだ解明されてはいないが、長年洗脳状態であった筈のフルーフは、この世界で魔神が出現した後、その洗脳が解かれたのだった。
計画通りであれば今頃は『ミラ』達は『アレルバレル』の世界へと、戻っている筈であったが、フルーフへ施していた洗脳が解けた事で再びフルーフを操り人形にするべく、この世界へ留まる事となった。
しかし幸か不幸か大魔王ソフィが、戻ってきている『アレルバレル』へと油断したまま戻る事は、避けられたミラ達であった。
その情報を得る事となったのは『フルーフ』を地下牢へと閉じ込めてから、僅か数日後の出来事だった。その情報をミラの元へと届けたのは『アレルバレル』の世界へ居た『煌聖の教団』の『本隊』の者であった。
「これは驚いたな。あの化け物がすでに『アレルバレル』の世界へと戻ってきていたとは……」
ミラはネイキッドの命令でこの場にきた『煌聖の教団』の配下からの知らせを聞いて心底驚いたといった、表情を浮かべながらそう告げた。
「それだけではございません。あの化け物の魔力を感知した『ユーミル』様が人形達を引き連れて、化け物の元へと向かい……」
そこまで聞いてその場にいたミラやヌー。そしてルビリス達は、直ぐに何が起きたかを察した。
「……彼女がやられてしまったか?」
「は、はい。我々本隊の者達数人も『ユーミル』様の加勢へと向かおうとしましたが『ネイキッド』総隊長殿に、現場へ向かうのを止められました」
「そうか……」
ミラはネイキッドの判断は、正しいものだったと頷いて見せたが、まさか最高幹部であるユーミルが勝手な判断で、あの化け物に向かうとまでは思わなかった。
ミラがユーミルを『アレルバレル』の世界へと残した理由としては、今この場に現れた伝令役を、彼女にやってもらおうと考えていたからである。
これはユーミルをあの場に残すというミスをした『ミラ』自身が悪いだろう。彼女は人間であり、魔族のように長い年月を生きてきてはいなかった。
『アレルバレル』の世界という数多ある世界でも類を見ない程の大魔王領域の多い世界で『煌聖の教団』の最高幹部として五指に入る彼女は、相当の矜持を持っていた。
自他共に認める程の戦闘センスに優れており『大賢者』として『ミラ』に認められていたのである。彼女はソフィという正真正銘の『最強の大魔王』を噂でしか知らなかったのだから、倒せると自分で判断して先走ってしまうという事も十分に考えられただろう。
「み、ミラ様……?」
ルビリスは珍しく後悔に塗れた表情を浮かべるミラを見て、驚きながら言葉を漏らすのだった。
――ミラがこんな顔をするのも無理はない。
元人間であった彼は『ユーミル』という人間の大賢者に多大な期待を寄せていた。
いずれは自身の最高傑作の神聖魔法『仮初需生』と『復活生成』を覚えさせて、自分と同じく本当の意味での『大賢者』にしようと考えていたのだった。
それ程彼女を買っていたミラは、長年ミラの片腕を務めていたルビリスでさえ、見た事のない後悔に満ちた表情に驚かされてしまったのだった。
「それでどうするんだ? あの化け物はもう『アレルバレル』の世界に居るようだが」
それまで沈黙を守っていたヌーは、後悔の表情を浮かべるミラに問いかける。
「このまま戻っても負けるとは思えぬが……。流石にこれ以上の後悔は避けたい」
それはつまり幽閉しているフルーフを再び再洗脳を果たして『魔神』の『発動羅列』から『新魔法』を生み出したいという事だろう。
今ミラの中では自分が言葉通りの『神の如き強さ』を保持していると判断している。
しかし大魔王ソフィもまた『魔神』に打ち勝つ『神の領域』と呼べる程の強さを持っている。
万が一の事を考えて一つでも使える欠片を手に入れておきたいと考えるのだった。
たった一つの妥協で勝利が傾き兼ねない。
ソフィという大魔王はそれ程の存在なのだと『魔神の力』を有している今の『ミラ』でさえ、懸念を抱くのであった。
――そして、その判断は間違ってはいない。
ミラも確かに魔神の『技』を手にした事で『大魔王最上位』と呼ばれる者達より強くなり『神の領域』に大きく近づいたことは間違いはない。
『魔神』とソフィの決着の真実を知らないミラが増長するのも無理はなく、仕方の無い事かもしれないが、大魔王ソフィは、そんな神最上位に位置する魔神を相手に、僅か三割程に抑えた力で、簡単に力の魔神をねじ伏せてしまったのである。
いくら疑似的な不死の力を手にして『魔神の力』の一部を手にしたところでこのままでは、まだまだソフィより上に行く事はかなわないだろう。
フルーフの洗脳が解けた事が原因で『アレルバレル』の世界へと戻る事を取りやめたミラだったが、何かもう一つの欠片を手にしておきたいというミラの判断によって、このままアレルバレルへと向かう事を断念した事は彼自身を……。いや、彼の組織に属する全ての者の命を救い助ける判断となったのだった。
……
……
……
現在『レパート』の世界の支配者であったフルーフは、神聖魔法である『聖動捕縛』の効力が付与された枷をつけられた状態で、城の地下牢に幽閉されていた。
原因はまだ解明されてはいないが、長年洗脳状態であった筈のフルーフは、この世界で魔神が出現した後、その洗脳が解かれたのだった。
計画通りであれば今頃は『ミラ』達は『アレルバレル』の世界へと、戻っている筈であったが、フルーフへ施していた洗脳が解けた事で再びフルーフを操り人形にするべく、この世界へ留まる事となった。
しかし幸か不幸か大魔王ソフィが、戻ってきている『アレルバレル』へと油断したまま戻る事は、避けられたミラ達であった。
その情報を得る事となったのは『フルーフ』を地下牢へと閉じ込めてから、僅か数日後の出来事だった。その情報をミラの元へと届けたのは『アレルバレル』の世界へ居た『煌聖の教団』の『本隊』の者であった。
「これは驚いたな。あの化け物がすでに『アレルバレル』の世界へと戻ってきていたとは……」
ミラはネイキッドの命令でこの場にきた『煌聖の教団』の配下からの知らせを聞いて心底驚いたといった、表情を浮かべながらそう告げた。
「それだけではございません。あの化け物の魔力を感知した『ユーミル』様が人形達を引き連れて、化け物の元へと向かい……」
そこまで聞いてその場にいたミラやヌー。そしてルビリス達は、直ぐに何が起きたかを察した。
「……彼女がやられてしまったか?」
「は、はい。我々本隊の者達数人も『ユーミル』様の加勢へと向かおうとしましたが『ネイキッド』総隊長殿に、現場へ向かうのを止められました」
「そうか……」
ミラはネイキッドの判断は、正しいものだったと頷いて見せたが、まさか最高幹部であるユーミルが勝手な判断で、あの化け物に向かうとまでは思わなかった。
ミラがユーミルを『アレルバレル』の世界へと残した理由としては、今この場に現れた伝令役を、彼女にやってもらおうと考えていたからである。
これはユーミルをあの場に残すというミスをした『ミラ』自身が悪いだろう。彼女は人間であり、魔族のように長い年月を生きてきてはいなかった。
『アレルバレル』の世界という数多ある世界でも類を見ない程の大魔王領域の多い世界で『煌聖の教団』の最高幹部として五指に入る彼女は、相当の矜持を持っていた。
自他共に認める程の戦闘センスに優れており『大賢者』として『ミラ』に認められていたのである。彼女はソフィという正真正銘の『最強の大魔王』を噂でしか知らなかったのだから、倒せると自分で判断して先走ってしまうという事も十分に考えられただろう。
「み、ミラ様……?」
ルビリスは珍しく後悔に塗れた表情を浮かべるミラを見て、驚きながら言葉を漏らすのだった。
――ミラがこんな顔をするのも無理はない。
元人間であった彼は『ユーミル』という人間の大賢者に多大な期待を寄せていた。
いずれは自身の最高傑作の神聖魔法『仮初需生』と『復活生成』を覚えさせて、自分と同じく本当の意味での『大賢者』にしようと考えていたのだった。
それ程彼女を買っていたミラは、長年ミラの片腕を務めていたルビリスでさえ、見た事のない後悔に満ちた表情に驚かされてしまったのだった。
「それでどうするんだ? あの化け物はもう『アレルバレル』の世界に居るようだが」
それまで沈黙を守っていたヌーは、後悔の表情を浮かべるミラに問いかける。
「このまま戻っても負けるとは思えぬが……。流石にこれ以上の後悔は避けたい」
それはつまり幽閉しているフルーフを再び再洗脳を果たして『魔神』の『発動羅列』から『新魔法』を生み出したいという事だろう。
今ミラの中では自分が言葉通りの『神の如き強さ』を保持していると判断している。
しかし大魔王ソフィもまた『魔神』に打ち勝つ『神の領域』と呼べる程の強さを持っている。
万が一の事を考えて一つでも使える欠片を手に入れておきたいと考えるのだった。
たった一つの妥協で勝利が傾き兼ねない。
ソフィという大魔王はそれ程の存在なのだと『魔神の力』を有している今の『ミラ』でさえ、懸念を抱くのであった。
――そして、その判断は間違ってはいない。
ミラも確かに魔神の『技』を手にした事で『大魔王最上位』と呼ばれる者達より強くなり『神の領域』に大きく近づいたことは間違いはない。
『魔神』とソフィの決着の真実を知らないミラが増長するのも無理はなく、仕方の無い事かもしれないが、大魔王ソフィは、そんな神最上位に位置する魔神を相手に、僅か三割程に抑えた力で、簡単に力の魔神をねじ伏せてしまったのである。
いくら疑似的な不死の力を手にして『魔神の力』の一部を手にしたところでこのままでは、まだまだソフィより上に行く事はかなわないだろう。
フルーフの洗脳が解けた事が原因で『アレルバレル』の世界へと戻る事を取りやめたミラだったが、何かもう一つの欠片を手にしておきたいというミラの判断によって、このままアレルバレルへと向かう事を断念した事は彼自身を……。いや、彼の組織に属する全ての者の命を救い助ける判断となったのだった。
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