最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第530話 二つの魔瞳
「あやつがお主と……」
「ちょっと待ってください。ソフィ様と戦っていたというあの男は『代替身体』だったのですか!?」
リーシャにとってそれは聞き捨てならない言葉だったようで、ディアトロスの言葉を遮ってまで、食い気味に被せる。
「む? うむ。それは間違いないだろうな」
ソフィは自身が『代替身体』を使ったことがないために、実際にどういうものかは分からないが、他者の話を聞く限り本体の時の魔力の感じ方が、全く違うものになるらしく、本来の力を扱っているつもりで魔法を使うが、それでも自身の慣れ親しんだ魔力とは違い、相手に与える効果や、威力の規模に違和感を覚えるものらしい。
ソフィは戦闘中にレキが少しの違和感に戸惑う場面を何度か見て勘づいていた。
レキが『代替身体』だと言っていた事は嘘ではなく、十中八九本当の事だろう。
「そ、そうですか」
リーシャは自分の攻撃をあっさりと止めて見せたレキが『代替身体』だったと聞かされて、自分はレキという魔族の本来の十分の一程度の身体に、あんな風に攻撃をいなされたのかと衝撃を受けていたようだった。
「……」
そしてその横で『ディアトロス』もまた『トウジン』魔国に居た『レキ』を思い出しながら、沈思黙考していた。
(……あやつはあれほどの練度の『三種』のオーラをあっさりと同時に発動させておったが、魔力のコントロールの精密性は本来の身体と遜色がないように思えた。一体『代替身体』になってからどれ程あやつの魂が、身体に馴染んでおったかまでは分からぬが、本来の身体ではない状態であれ程器用に扱えるのであれば、奴はワシより『魔王』としての『資質』は、上だという事を認めねばならぬだろうな)
『智謀』の大魔王『ディアトロス』程の魔族が他者をここまで認める事は珍しい。
だが、ここまでレキの存在に付加を及ぼしたのは、他でもない彼の主となったソフィである。
『ラルグ』魔国で『ディアトロス』が感じたソフィの『力』はそれ程までに『異常』だったのだった。
このソフィがレキと戦った時に見せた『力』はこの『ディアトロス』が思い出すのも億劫になる程の昔の事であった。
(……成程な。レキとやらはお主がそこまで執着する存在か)
先程『魔神』に結界を張らせて何度も魔法を使っていたのは、何かを確かめているようだった。
(どうやらようやく、会えたようじゃな)
ディアトロスとソフィは出会ってから数千年もの間、共に生きてきた。最初は敵として。そして次は共闘をする間柄、今では主従の関係である。一番近くで接してきたディアトロスは、今も嬉しそうに敵を仮想しながら何か対策を考えているソフィを見て配下として、そして更には『友人』として、感慨というものを覚えるのだった。
「しかしソフィよ。レキとやらはお主が『魔神』に結界を張らせてまで、対策を考える程なのか?」
戦いを直接見ていないディアトロスの質問を受けて、ソフィは即座に頷きを返した。
「……クックック、お主は『紅い目』と『金色の目』を同時に使えるか?」
「何? 同時にじゃと? 『金色の目』を使えるのであれば、わざわざ『紅い目』を使う意味などないじゃろうて」
大魔王の領域に踏み込んだ者であれば、誰であろうと同じ事を思うであろう。
ディアトロスもまた、例に漏れずそう告げるのだった。
「それはそうだ。そう思うのは当然の事だろうな」
ソフィはディアトロスの言葉に納得するように頷くが、本心では納得していなかった。
「レキの奴はこのままでは終わらぬよ。今後は我を倒そうとあらゆる手を考えてくるだろうな」
――それが楽しみで楽しみで仕方ないとばかりに、ソフィは笑うのだった。
「やれやれ。まさか『アレルバレル』以外の世界で、こんなソフィを見る事になるとは思わなかった。しかしソフィよお主に『組織』の存在を忘れてもらっては困るぞ? あちらこそ先に何とかしなければならぬのだ」
ディアトロスの言葉に、上機嫌だったソフィが表情を引き締め直す。
「ああ。もちろん忘れてなどおらぬよ」
何も悪い事をしていないレアに対して、二度も狙ってきた組織を思い出したソフィは、唇を噛むのだった。
――大魔王レキとの戦いよりも、為すべき事がある。
それら全てを終わらせるまでは、今は前だけを向いていかなければならないと、ソフィは気を引き締め直すのだった。
……
……
……
「ちょっと待ってください。ソフィ様と戦っていたというあの男は『代替身体』だったのですか!?」
リーシャにとってそれは聞き捨てならない言葉だったようで、ディアトロスの言葉を遮ってまで、食い気味に被せる。
「む? うむ。それは間違いないだろうな」
ソフィは自身が『代替身体』を使ったことがないために、実際にどういうものかは分からないが、他者の話を聞く限り本体の時の魔力の感じ方が、全く違うものになるらしく、本来の力を扱っているつもりで魔法を使うが、それでも自身の慣れ親しんだ魔力とは違い、相手に与える効果や、威力の規模に違和感を覚えるものらしい。
ソフィは戦闘中にレキが少しの違和感に戸惑う場面を何度か見て勘づいていた。
レキが『代替身体』だと言っていた事は嘘ではなく、十中八九本当の事だろう。
「そ、そうですか」
リーシャは自分の攻撃をあっさりと止めて見せたレキが『代替身体』だったと聞かされて、自分はレキという魔族の本来の十分の一程度の身体に、あんな風に攻撃をいなされたのかと衝撃を受けていたようだった。
「……」
そしてその横で『ディアトロス』もまた『トウジン』魔国に居た『レキ』を思い出しながら、沈思黙考していた。
(……あやつはあれほどの練度の『三種』のオーラをあっさりと同時に発動させておったが、魔力のコントロールの精密性は本来の身体と遜色がないように思えた。一体『代替身体』になってからどれ程あやつの魂が、身体に馴染んでおったかまでは分からぬが、本来の身体ではない状態であれ程器用に扱えるのであれば、奴はワシより『魔王』としての『資質』は、上だという事を認めねばならぬだろうな)
『智謀』の大魔王『ディアトロス』程の魔族が他者をここまで認める事は珍しい。
だが、ここまでレキの存在に付加を及ぼしたのは、他でもない彼の主となったソフィである。
『ラルグ』魔国で『ディアトロス』が感じたソフィの『力』はそれ程までに『異常』だったのだった。
このソフィがレキと戦った時に見せた『力』はこの『ディアトロス』が思い出すのも億劫になる程の昔の事であった。
(……成程な。レキとやらはお主がそこまで執着する存在か)
先程『魔神』に結界を張らせて何度も魔法を使っていたのは、何かを確かめているようだった。
(どうやらようやく、会えたようじゃな)
ディアトロスとソフィは出会ってから数千年もの間、共に生きてきた。最初は敵として。そして次は共闘をする間柄、今では主従の関係である。一番近くで接してきたディアトロスは、今も嬉しそうに敵を仮想しながら何か対策を考えているソフィを見て配下として、そして更には『友人』として、感慨というものを覚えるのだった。
「しかしソフィよ。レキとやらはお主が『魔神』に結界を張らせてまで、対策を考える程なのか?」
戦いを直接見ていないディアトロスの質問を受けて、ソフィは即座に頷きを返した。
「……クックック、お主は『紅い目』と『金色の目』を同時に使えるか?」
「何? 同時にじゃと? 『金色の目』を使えるのであれば、わざわざ『紅い目』を使う意味などないじゃろうて」
大魔王の領域に踏み込んだ者であれば、誰であろうと同じ事を思うであろう。
ディアトロスもまた、例に漏れずそう告げるのだった。
「それはそうだ。そう思うのは当然の事だろうな」
ソフィはディアトロスの言葉に納得するように頷くが、本心では納得していなかった。
「レキの奴はこのままでは終わらぬよ。今後は我を倒そうとあらゆる手を考えてくるだろうな」
――それが楽しみで楽しみで仕方ないとばかりに、ソフィは笑うのだった。
「やれやれ。まさか『アレルバレル』以外の世界で、こんなソフィを見る事になるとは思わなかった。しかしソフィよお主に『組織』の存在を忘れてもらっては困るぞ? あちらこそ先に何とかしなければならぬのだ」
ディアトロスの言葉に、上機嫌だったソフィが表情を引き締め直す。
「ああ。もちろん忘れてなどおらぬよ」
何も悪い事をしていないレアに対して、二度も狙ってきた組織を思い出したソフィは、唇を噛むのだった。
――大魔王レキとの戦いよりも、為すべき事がある。
それら全てを終わらせるまでは、今は前だけを向いていかなければならないと、ソフィは気を引き締め直すのだった。
……
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