最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第529話 大魔王の新たな試み

 戦闘が終わった後ソフィの戦うところを見ていた力の魔神は、嬉しそうにソフィを見ていた。しかし勝負が終わった後だというのに、ソフィが自分の手を熱心に見ていたために魔神は首を傾げながら声を掛ける。

「――?」(どうしたの?)

「すまぬが少し試したい事がある。悪いが『結界』を使ってくれないか?」

「―――、―――?」(いいけど、規模はどれくらいにする?)

「全力で構わぬ」

「――」(分かったわ)

 魔神は両手を頭上高く掲げると風が凪ぎ、そして場が『固定』化された。
 『魔』の一つの到達点に居る『魔神』が全魔力を用いて『結界』を創り始めた。そして魔神とソフィの周囲一帯に『結界』が施された。最早それは『結界』というよりは『聖域』に近い程の規模である。
 『セルバス』や『ハワード』といった、大魔王上位の存在が、連続で極大魔法を放ち続けたところで、亀裂一つ入れられない程の『魔』を司る神の全力の『聖域』であった。

「――?」(用意はできたよ?)

「うむ。お主は少し離れておれ」

 ソフィの言葉に魔神が頷き、その場からゆっくりと離れる。
 ゆっくりと『魔力回路』に魔力を込めながら『を纏わせ始める。そして深呼吸を一つした後に一気に魔力を開放する。

 ソフィの髪が逆立ち『魔力』が可視化が出来る程に具現化されたかと思うと、バチバチとソフィの周りに迸る。ソフィはその魔力を完璧に操りながら『レパート』の世界の『ことわり』の利用を始めるのだった。

 ――自身の魔力を魔法発動の潤滑油として扱い、周囲の空気と混ぜ合わせた後に、全身に魔力を行き渡らせて最後に使う魔法をイメージする。そして頭に思い浮かべた、魔法を使う為の『詠唱』を開始する。

「『我の魔力によって生み出されし業火よ、我の視界の先の標的を燃やし尽くせ』」。

 『レパート』の世界の刻印が刻まれた魔法陣が高速回転を始めていき、超越魔法である『終焉の炎エンドオブフレイム』が発動されかけたその瞬間に、強引に魔力を制御して燃えあがる瞬間で魔瞳を使う。

 ソフィが『金色の目ゴールド・アイ』を発動させて、自身が放った魔法を魔力コントロールから魔瞳でのコントロール制御に変更しようとしたが、やはり『金色の目ゴールド・アイ』では、ソフィの魔力が込められた『終焉の炎エンドオブフレイム』の発動を止められなかった。

 ――そこで今度は目を紅くして『紅い目スカーレット・アイ』を使い始める。ソフィの狙いは『紅い目スカーレット・アイ』で『金色の目ゴールド・アイ』の効力を増幅させようというのである。レキが使って見せていた両目の使い方をソフィなりに観察して、応用してみようとしたのであった。

 しかし結局は思い通りにいかず『紅い目スカーレット・アイ』による『金色の目ゴールド・アイ』の効果増幅は行われずに『終焉の炎エンドオブフレイム』はそのまま発動されていった。

 『』を用いた、詠唱ありのソフィの『終焉の炎エンドオブフレイム』は絶大なる威力を以て、魔神の結界を破壊する。しかし破壊された結界は、即座に修正されて元通りになるのだった。

 大魔王『ハワード』の時との戦闘時とは違って、魔神は最初から結界を張る事に全集中している為に、外に一瞬でもソフィの魔法が漏れ出るような真似はさせない。

 ――これは『魔』を司る魔神の名に相応しい『聖域』と呼べる程の結界であった。

「やはりこういう事ではないのか。一体どういう仕組みで行ったというのだ?」

 ブツブツとソフィはレキの使った『両目』の効力に疑問を持つのだった。

 …………

 その後も何度かソフィは魔法を発動させて『紅い目スカーレット・アイ』や『金色の目ゴールド・アイ』を試していくのだった。

 魔神はその度に何度も結界を張り続ける。しかしソフィの力になっているという事が、魔神にとっては余程嬉しい事だったのだろう。ソフィの役に立っている事が、魔神の幸福に繋がっているようで、恍惚な表情を浮かべながらソフィが納得するまで延々と結界を張り直し続けるのであった。

 ……
 ……
 ……

「お主、一体なにをしておるんじゃ?」

 そして何度目かの検証の後に、遠くでそんなソフィと魔神のやり取りを見て、空気を読んで近づいてこなかったディアトロス達が痺れを切らして遂に、ソフィに近づきそう告げたのだった。

「む。お主達こそどうしてここに?」

「遠くでお前がそんな恐ろしい魔力を使って誰かと戦っていたら、ワシらが無視できるわけがあるまいて……」

 ソフィが納得顔で頷きを見せると、ディアトロスは溜息を吐くのだった。ソフィとディアトロスの二人が話し始めた後ろで『リーシャ』と『イリーガル』は『』を魔神に見せていた。

 魔神は二人の『』を見ると、頷きながら二人に微笑みを見せていた。

「それで誰かと戦っておったようだが、そっちはすんだのか?」

「うむ。前に『トウジン』魔国で出会った魔族が居たじゃろう? どうやらあやつは新しい『代替身体だいたいしんたい』の身体を探していたようでな? 我を呼び出してきよったかと思えば、そんな奴は身体をくれと言ってきたのだ」

「な、何じゃと?」

 ディアトロスは目を丸くして驚いていた。二人の会話を聞いていた『リーシャ』もまた、背後で驚いているようだった。

 ……
 ……
 ……

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